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『エルフの工房物語』マスク&ポーチ4

 手で、なぞる。肌触りは結構良い。それに厚手の布を使ってるせいか、立体構造みたいに型がしっかりしてる。崩れない。職人が作ってるだけあって、強度はしっかりしてるようだ。
 ……と、ここまでベタベタ触って気付く。

「あ、あの、良く考えたらマスクみたいな衛生品、こんなベタベタ触ったら」
「それは展示用だから大丈夫です」
「あ」
「もし、どうしても今手にもっているものがよろしければ、洗濯する事は出来ますが」
「え、洗えるんですか」
「はい、繰り返し使えます」

 それは経済的かもしれないと考えた、けれど、

「ただその、あくまで帆布とガーゼを組み合わせたものです。市販されている使い捨てマスクと比べると、花粉症やウィルスの除去率は落ちます」
「え、……ああそうなんですか、……言っていいんですか」
「商品についてはきちんと説明させていただきます」

 にこっとエルフは笑った。

「でも、冬などはマスクが売り切れになる事も多いですから、間に合わせとして、持っておいても損にはならないかと。あと、歌やナレーションなどが仕事の人にも好評ですね」
「なるほど……」
「最近は、咳エチケット、という言葉もあります。咳は勿論、唾とかもかけたくないという状況で、付ける方も多いですね、美容師さんとか」
「……」

 意見をまとめてみる。
 まず、この帆布という厚手の布と、ガーゼを組み合わせて作られたマスクは、あくまでマスクの代用品。使い捨てのマスクより性能は落ちる。
 けれど立体構造をしてるおかげで、ただ布に紐を結わえたものよりは息がしやすい。
 洗う事で繰り返し使える、とはいっても、何度も洗い続ければ痛んでくるだろう、それでも、コスパで考えれば使い捨てより断然良い。
 それに、カラーリング。
 真っ黒とか真っ赤とか、極端になっておらず、チェック柄とかで個性的な訳でもない、落ち着いた色合いのマスクは、身につけてても自然に馴染む。
 二色くらい買って、使い回すのもいいかもしれない。

(花粉症や風邪とかじゃなくても、冬、喉の乾燥気になる時とかに使う分には、凄いいいかも)

 亜子はすっかり気に入ってしまった。キラキラした目で、展示用のマスクをもって、鏡の前で顔に重ねたりして。

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