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『エルフの工房物語』マスク&ポーチ1

「ふぇっくしょん!」

 花粉症というのは、免疫反応の許容量が、ある一定オーバーした時に
現れる。だからそれは徐々にでなく、唐突に、本当に唐突にやってく
るものだから、

幸田亜子25才の人生で、いきなりそれはやってきたのだ。
勿論予備知識としては知っていた。花粉症は突然なるものだと。だから職場の同僚の花粉症の人に対してマウントを取った事も無いし、何時か自分もなる事もあるだろうなと思ってた。

けれど、そんな心構えなんて意味が無かった事を知る。
鼻がつまって鼻からいっぱい鼻水が出てくる事が、ここまで生活に支障をきたすなんて。

「あー……」

 いきなりなったものだから、耳鼻科の薬も効き目がよくない。花粉症というものは、流行になる数ヶ月前から薬を飲むことで対処できるもの。マスクの下で鼻がぐずぐずする。
 憂鬱な気分はもう一つ、目を擦りたい衝動を必死でこらえながらの帰り道、ふと、ガラスに映る鏡など見た時に、

「……」

 マスク姿の自分の顔を見る事。
当たり前の話だけど、顔が隠れてしまっては、オシャレの意味が無い。

(はぁ)

 服は、社交の為の嗜みであると同時に、見せる楽しみももったものである。季節毎のコーデを纏い、誰かと、自分自身に見せる為、散歩する事は彼女の楽しみであった。
 けれどこの花粉症というものは、外出を防ぐだけでなく、身だしなみまで防いでしまう。
 どんなファッションも、マスク一つで整わなくなる。

(当たり前の事だけど……)

 

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