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Prologue:ストレンジランドの案内図

このマガジンは、2016年6月の韓国旅行の日記だ。

記事をアップしていく前に、旅行の目的や行き先、そして、なぜ今公開するのかなどをまとめておきたいと思う。

旅行の目的は4つ

まずは、自分へのご褒美

同年3月に会社を退職したのだが、それまでの数年間が波乱に満ちていたため、なんとか生き抜いた自分を祝福したかった。

次に、独立系書店巡り

2014年、韓国で「改正図書定価制」が施行された。これは、書籍の割引率を定価の15%以内に制限する制度だ。

それ以前は、実店舗とインターネットの販売価格に差があった。発行後1年経たなければ割引できない実店舗に対し、インターネットでは発行初日から割引が可能。その結果、小型書店の店舗数は、2003年からの10年間で3分の2まで減少した。この状況を危ぶんだ政府は、図書定価制を改正するに至った。

小型書店を保護する環境が整ったことで、2015年ごろから独立系書店ブームが起こった。リトルプレスが中心の「Your mind」や「Hello Indiebooks」、絵本に特化した「책방 피노키오(本屋 ピノキオ)」、社会課題に取り組む「The Book Society」、出版社を併せ持つ「MILLIMETER MILLIGRAM」や「1984」など、ユニークな個人経営書店が話題になった。

本屋好きとして、そして、紙媒体の編集に携わってきた者として、ぜひこのタイミングで書店巡りをしたいと思った。

そして、BTS(防弾少年団)の聖地巡礼

2015年の「花様年華」シリーズで彼らのファンになったので、同作のロケ地や、メンバーの故郷を巡ってみたかった――というのは嘘ではないのだが、何かしらの軸がないと旅行の計画が立てられないので、"聖地"というクリアなテーマを掲げてみることにした。

最後に、これまでとこれからを考えること

一心不乱に駆け抜けてきた数年間を見つめ直すこと。そして、今後のキャリアについて答えを出すこと。見慣れた景色や人から距離を置いて、じっくりと考えてみたかった。

行き先は6都市

前述の目的にそって選んだのは、以下の通りだ。

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ソウル(6月1日~10日・9泊10日)
おもに独立系書店巡り。あとは「花様年華」のロケ地であるソウル大学の廃棄プール、東湖大橋など。

② 光州(クァンジュ/6月10日~11日・1泊2日)
J-HOPEことホソクさんの故郷。

③ 大邱(テグ/6月11日~15日・4泊5日)
SUGAことユンギさんの故郷。ここを拠点に、「花様年華」のロケ地である慶州(キョンジュ)、韓紙の生産地である安東(アンドン)にも行く。

④ 盈徳(ヨンドク/6月15日~16日・1泊2日)
Google Mapで3時間ほど調べた結果、「花様年華」に出てきた灯台らしきものがあったため、行ってみることに。完全に賭けである。

⑤ 釜山(プサン/6月16日~21日・5泊6日)
JIMIN(ジミン)、JUNGKOOK(ジョングク)の故郷。韓国第2の都市なので、比較的長めに滞在する。

⑥ 済州島(チェジュド/6月21日~6月23日・2泊3日)
ロケ地でもメンバーの故郷でもないけれど、一度は行ってみたかった韓国のリゾート地(ただし、リゾート的なことはしない。ひとり旅だし)。

①'ソウル(6月23日~27日・4泊5日)
最後はもう一度ソウルへ。郊外にある、RMことナムジュンの故郷である一山(イルサン)、JINことソクジンの故郷である果川(クァチョン)に行く。

3年後の今アップする理由

先日押し入れを整理していると、手帳が出てきた。旅行のときに持ち歩いていたものだ。書店での取材(というか、ただ話しかけただけ)の記録、地方都市を回っていたときの日記、出会った人の名前とハングル表記……。

実は当時、帰国後にZINEを制作しようかと考えていた。そのため、日々の出来事を書きとめ、写真も撮りためていたのだ。

しかし、結局は転職活動と社会復帰でバタつき、企画倒れになってしまった。古くなった情報には価値がないと、手帳を押し入れの奥にしまったのである。

それを偶然見つけた。実に3年ぶりだ。

うっすら覚えていること、すっかり忘れていたこと、読み返しても思い出せないようなことがたくさん詰め込まれていた。深夜2時のショートケーキ、海雲台のチムジルバンでの昼寝、異国の地で観た映画「百円の恋」、27歳の"何者でもない自分"……。

まるで他人の旅行記を読んでいるような気分だった。それはつまり、私はあの旅を、自分のものとして消化できていないということだと思った。

まあ、それをやったところで今更とは思うし、誰の利益にもならないのはよくわかっているのだが、このnoteは無料だし、ちょっとしたエッセイのような感じで残しておくのもいいかな、と思った。いつも理屈っぽい記事ばかり書いているし。そんな軽い気持ちだ。

ただ、紹介する情報はすべて2016年6月時点のものなので、そこをきちんと伝える必要があると思い、まずはこの記事を書いた。

また、記事の公開順だが、6月10日・光州からアップしていく。というのも、前半のソウル滞在中は書店取材に集中しており、コンスタントに日記を書いていなかったからだ(書店メモは、すでに閉店・移転した店舗もあるので、アップしようかどうか決めかねている)。

それでは、お付き合いくださる方、よろしくお願いいたします。

▼参考資料
・KBS WORLD Radio「図書定価制