マジック:ザ・ギャザリングのアーティストプルーフとは?

アーティストプルーフの歴史

アーティストプルーフとは、マジック:ザ・ギャザリング(以下MTG)販売元のWotC社がアーティストにサンプル・カードとして配布したカードのことである。最初のアート・ディレクターであるJesper Myrforsによって考案された。

最初のアーティスト・プルーフはα版発売時ではなく1993年12月発売のコレクターズ・エディションと同時に印刷され、カードセットがβ版と同じであることから一般的にβプルーフと呼ばれている。βプルーフはコレクターズ・エディションのカードと同じように角が四角くなっているという特徴がある。現在はWotC社は任意でアーティスト・プルーフを配布しており、そのため配布されない場合もある。

βプルーフ(itsukiさん提供)

アーティスト・プルーフの特徴

①枚数が限られている

1993~1996年までアーティスト・プルーフのは配布枚数はセットごとに大きく異なり、いくつかの言語で用意されていた。1997年からは、すべてセットについてNon-Foil版のアーティスト・プルーフ50枚の配布が標準となり、2015年からはこれに加えてFoil版のアーティスト・プルーフも30枚配布されるようになった。2020年からはトークンカードのアーティスト・プルーフも配布されるようになった。いずれにしてもこの枚数は非常に限られた枚数であり、最初期に印刷されたα版のカードである《Black Lotus》は1100枚と言われているため、それよりも枚数は少ない。

参考文献:
AP101: Artist Proofs &Where to Find Them

②裏面が白紙

アーティストプルーフは通常のカードと異なり裏面が白紙になっている。これを利用し、サインを入れたりスケッチなどのアートを描いたりするのが文化となっている。何も描かれていないこの状態のアーティスト・プルーフはブランクと呼ばれている。

左:通常カード
右:アーティスト・プルーフ
左:サイン(Aleksi Briclot)
真ん中:スケッチ(Zezhou Chen)
右:ペインティング(Slawomir Maniak)

コンベンションやプロツアーなどの大型イベントではファンとアーティストの交流の一環として、アーティスト・プルーフにイラストをその場で描いて販売されることもある。

プロツアー・名古屋11の様子(公式HPより)

③ホログラムがない

通常カードと異なる点は他にも有り、アーティスト・プルーフは一般的に偽造防止用のホログラムが付けられていない。(例外的にホログラムがついているものも存在している。)

左:通常カード
右:アーティスト・プルーフ

そのため、アーティスト・プルーフがアーティストから入手したものであることを証明するためにサインを入れるのが通例となっている。

アートワークの大まかな種類

アーティストによってどんなイラストを描くかと同じようにどんな画材を使って描くかも多種多様でそれぞれに魅力がある。一概に定義はしきれないものの、背面のアートワークを大まかに3つに分類して解説する。

①スケッチ

一般的に最も手頃な価格帯で売られていることが多い。鉛筆やペンなどで描かれる。スケッチは細かな線が特徴的で特に鉛筆でのスケッチは筆圧の差や陰影がイラストに反映されやすく個人的にはかなりおすすめ。

左:Joseph Meehan
真ん中:Lucas Graciano
右:寿多浩

②カラースケッチ

色鉛筆やカラーペンやカラーマーカー、コピックなどを使用して描かれたもの。スケッチの良さとカラーの色鮮やかさの良いとこ取り。

左:Justine Jones
真ん中:Alayna Danner
右:弥生しろ
(ヨロさん提供)

③ペインティング

アクリル絵の具、水彩絵の具、油絵の具など主に絵の具を使用し描かれたもの。多くの場合、フルペインティングは最高峰のオプションとなっている。

左:Nana Qi
真ん中:Slawomir Maniak
右:Romas Kukalis

特殊な背面アートワーク

アーティストによっては特殊な画材や手法を使って背面アートワークを作成する場合もある。その一部を紹介。

左: 墨絵師「御歌頭」
右:中島 綾美
(ヨロさん提供)

左の墨絵師「御歌頭」さんの作品は墨によって描かれている。
右の中島 綾美さんの作品はイカ墨インクによって描かれている。
どちらもアーティストが普段の制作でも使用している画材を使っておりアーティストの技術の高さが色濃く現れている。

左:Oka Yuka(なのジーさん提供)
右:Simon Dominic

左のOka Yukaさんの作品は、コーヒーでムラができるように着色しており模様がアートごとに毎回異なるように描かれている。
右のSimon Dominicさんの作品は表面のカードのスケッチ段階で作製された別バージョンのアートを背面に印刷したものとなっている。

その他にも複数枚のアーティスト・プルーフを使用した贅沢な作品もある。

アーティスト・プルーフが刷られていないカード

最初期のコラボ(WotC×東宝)などではアーティスト・プルーフが刷られていたものの、現在は"他社IPとのコラボ"ではアーティスト・プルーフは刷られなくなった。"自社IPコラボ"ではアーティスト・プルーフは基本刷られている。そのため、WotCが権利を持つダンジョンズ&ドラゴンズや親会社ハズブロ社が権利を持つマイリトルポニーのアーティスト・プルーフは存在する。

また、シリアルカード限定イラストの(少なくとも《エリシュ・ノーン》の)アーティスト・プルーフはアーティストに配布されなかった。

シリアルナンバーカード限定アート

意外にもアーティスト・プルーフが刷られているカード

Jumpstartに封入されていたサマリーカードや、プレインチェイス用の大判カードなどもアーティスト・プルーフは存在している。(今後も刷られるかは不明)

アーティスト・プルーフの入手方法

基本的にはイベントでの販売とアーティストのホームページから注文できる場合が多い。私の管理しているDiscordサーバーではアーティストが直接ホームページで販売しているデータやURLを約100名分ほど分まとめているので興味ある方は参加して下さい。欲しいアーティスト・プルーフがある場合もさがすのにも協力できると思います。アーティストの方は手数料なしで販売や告知をできるようし、専用の資料も読めるようにしています。アーティストの方も含め是非とも参加お願いします。

アメリカの取引サイトEtsyでは多くのアーティストが作品を直接取り扱っており、一部保証もあり注文システムも簡潔なためおすすめ。

最後に

個人的にのみ受け付けているアーティストやイベントのみの販売で一般販売をしないと決めている、イラストのオーダーを受ける受けない。販売を全く行っていないなどアーティストによって本当に様々です。(※迷惑となる連絡はやめましょう。)
副業やファンとの交流目的のサービスの一環として本業の合間にアーティスト・プルーフの販売をしているアーティストが多いこともありスケッチやペイントを頼んだ場合などに注文してから届くまで時間が(場合によっては数年間)かかる場合もありますが気長に待ちましょう。過度な連絡によってアーティスト・プルーフを売らなくなったアーティストもいます。また、海外からの発送の場合は荷物がロストする可能性もあります。また、トーナメントでの使用はできません。

本記事は多くのアーティスト・プルーフコレクターの協力によって作られました。本当にありがとうございます。


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