Alta Foxの「Free The Wizards」運動からマジックの未来を考える。

「Free The Wizards」運動の始まり

あなたはJon Finkelを知っているだろうか?

Jon Finkel

Kai Buddeと並んでマジック史上最強のプレイヤーの1人として挙げられ、Magic: The Gatheringでの生涯獲得賞金額は$485,884で引退してしばらく経った2022/10/07現在でも15位。彼はヘッジファンドの Landscape Capital Management のマネージングパートナー兼ファンドの運用や調査部門の最高責任者であり、今回Alta Foxからハズブロの取締役候補として推薦された5名の中の1人でもある。Magic: The Gatheringをプレイする意欲的な大学生に学費の奨学金を与えることで支援する非営利団体Gamers Helping Gamersの理事会の会計責任者でもある。

そんな彼がTwitter上で1枚のカードともに投稿した内容が「Free The Wizards」運動の始まり。(現在投稿は削除されている)

カード名は《Free the Wizards》
イラストは魔法使い(ウィザード=WotC)がBluePrint・Brand・Strategyに縛り付けられている。Brandはハズブロというブランド。BluePrintというのはハズブロの掲げるBluePrintという戦略的枠組みのこと。Strategyは、ハズブロの経営戦略だと考えられる。

ハズブロの決算報告書などで度々登場するBluePrint

BluePrintとはブランドを買収した後、標準化された戦略(BluePrint)で運営する戦略。IPを買収後、アクションフィギュア、テレビ番組、テーブルゲーム、デジタルゲームなどを作る。その後、新しいIPを獲得してを繰り返す経営戦略の枠組み。

フレーバーテキストは"ハズブロの深い巣窟 "に潜入した影魔道士(=Jon Finkel)は、魔法使いの仲間(WotC)を縛っていた鎖を断ち切った。しかし、新たに解放された魔法使いたちは、自分たちが独立を得るために確実に脱出しなければならなかった。"

《Free the Wizards》は影魔道士=Jon Finkelのインビテーショナルカード《影魔道士の浸透者》であり、Jon Finkel自身を指し、彼がハズブロの巣窟(取締役会)に侵入し、魔法使い(WotC)を解放することを暗示していると考えられる。

なぜ「Free The Wizards」は展開されたのか

Alta Foxはハズブロの約2.5%の株を持つ大株主。
「Free The Wizards」が展開された背景には、Alta Foxが内々にハズブロの問題点を指摘し協働を模索したが、ハズブロ経営陣が現在の経営戦略に固執し改革されなかったため、今回の外部を巻き込んだ「Free The Wizards」の運動に発展したと語る。そしてAlta Foxは現在のハズブロは、長年に渡る期待外れの業績、お粗末なガバナンス、疑問の多い情報開示慣行があると痛烈に批判し、取締役会の変更を求める株主宛書簡を発行した。そして、取締役会の刷新、新戦略、資本配分の改善、WotCの独立。により、株価200ドル達成に向けた3年間の道筋を提示した。
ハズブロの場合、3年間継続して3%の株式を保有している場合、取締役候補者を直接投票に参加させる制度がある。しかし、Alta Foxはこれを満たしていない。そのため、他の株主を動かすためのキャンペーンという意味合いもあるかもしれない。

Alta Foxの指摘するハズブロの問題点

1.ハズブロのお粗末な経営体制

Alta Foxの分析によるとハズブロは、優れた資産、忠実な顧客、情熱的な従業員、真に特別なブランドを有している。しかしながら、経営陣による効果のない「Brand Blueprint」戦略、欠陥のある企業構造、一貫した資本の誤配分のため、著しく過小評価されている。
特にWotCはハズブロの一部であり、独自の評価額を持っておらず、経営陣の不十分な情報開示とWotCのプレゼンテーション不足により、投資家はWotCをハズブロの一部と認識し、より広範なエンターテイメント分野で人気を集めるのに苦労している低成長の玩具ビジネスと認識し続けていると指摘している。

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