スモビジ起業一年目の教科書 初期費用100万円での最適解
スモビジ起業について相談されることが多くなってきたので、自分の起業や本業である資金調達コンサルティングの経験からおすすめの起業プロセスを思いつくままにまとめてみました
具体的な起業アイデアといったものではなく、どの事業でも共通して必要になってくる会社設立や資金調達などの方法について、おすすめの制度やツール等を紹介しながら具体的にイメージができるようになることを目的として書きました
想定読者として
・自己資金100万円以上準備できる
・ベンチャービジネス(深いJカーブのビジネスモデル)ではない
・従業員0で始める(自分や役員仲間のみ・5名以下)
を考えています
事業計画の作成
事業の具体性・解像度を上げるため
口座開設・賃貸契約・資金調達のため
に事業計画を作成することをおすすめします
フォーマットはなんでもいいですが、最低限
・何を誰にどうやって売るのか
・収支(数字)はどうなるのか
のところははっきりさせておいたほうが良いです
参考までに日本政策金融公庫で公開されている事業計画書の場所を示します
中段のところの創業計画書・創業計画書記入例にあるファイルをいくつか見れば事業計画書のイメージが付くかと思います。
ぶっちゃけ話ですが、融資相談において上記計画書のみでは情報量が少なすぎて基本的に融資不可になることが多いです。そこでより具体的な計画書を作成したり、補足の見積書の添付や実績資料などの作成が必要になります(※後述の資金調達 創業融資 の段落で補足します)
おすすめのプロセスは
金融公庫のフォーマットでまずは事業計画書を自力作成
そのフォーマットを持って行政の提供している「認定創業支援」を利用しブラッシュアップ
完成した事業計画で口座開設・賃貸契約・資金調達
になります
認定創業支援でお得起業
市区町村が提供している創業支援
中小企業診断士との面談やセミナーの受講で認定
登録免許税の割引や資金調達が有利に
探し方は「起業予定の自治体名+認定創業支援」で検索すればでてきます。自治体ごとに内容が若干違うそうですが、基本的には
中小企業診断士との面談
起業セミナーの受講
になります
自分でも事業計画書が書けるという人も多いと思いますが、
無料かつ数時間のコストで
中小企業商売の専門家に壁打ちができる
登録免許税7.5万円減額や補助金上限額200万円増額などの特典
を考えると絶対に受けたほうがいいかと思います
先生や授業のあたりはずれはあるらしいので注意
例:
私が利用した千代田区の認定創業支援は以下の通りで、ワンストップ相談窓口の制度を利用して中小企業診断士の先生と一回一時間×4回の面談を行いました。面談の内容は事業計画書のブラッシュアップなど
会社設立
オフィスの契約:シェアオフィスはええぞ
選択肢は原則的に家orシェアオフィスorバーチャルオフィス(住所のみ)
おすすめはシェアオフィス。バーチャルオフィスは注意
契約前に口座開設・融資の実績を聞く
オフィスについてはモチベーションの観点からシェアオフィスをおすすめしています。家やバーチャルオフィスで登記をして、家やカフェで業務もありですが、起業して頑張っている同志(ライバル)に囲まれて頑張る楽しさの観点からシェアオフィスを推します
特に以下に記載の施設は東京都が支援している関係からか割安で、起業支援サービスなども付加されていたりするのでおすすめです
一点、シェアオフィス・バーチャルオフィスを契約する際は口座開設・融資の実績を聞くようにしてください。というのも上記の登記場所が審査上NGになるケースがあり、今後の事業展開に大きな制限が出てしまうリスクがあるからです。特に月数千円のバーチャルオフィスなどではトラブルが多発しているという話も聞くので要確認です
会社設立・登記:自分でできる!
UIUXが超いいのでfreeeをおすすめしています
会社設立周りの法務手続きは無知でしたが簡単にできました
許認可が必要だったり、複数投資家の絡む複雑な起業でも無い限り自分でやっちゃいましょう
小ネタ:印鑑のクロスセルをしてきますが、割高なのでやめましょう笑
DXが叫ばれていますが、なんやかんやで印鑑は必要になります。とはいえ利用頻度は限られており、価格で機能が損なわれるものでもないので格安のものをおすすめします
※会社設立周りはカモポイントで色んなところからセールスが来るので注意
会社設立にあたってもろもろの初期投資が必要になることから、その需要をとるためのセールスが色々やってきます(印鑑・HP製作・税理士紹介など)。基本の手口は無料相談や割安サービスで接点を作って、そこからのクロスセルを仕掛ける感じです。往々にして不要だったり割高だったりするので要注意です
一方でfreee会計の契約はおすすめです
後述しますが、スモビジ一年目であれば税理士をつけずに自分で記帳・決算をすることをおすすめしており、その上で大きな助けになります
※会計(簿記3級レベル)がまるでわからないという人は勉強しましょう!3日でマスターでき、一生使える知識なのでサクッとやっちゃいましょう
※上記でfreeeを推していますが、弥生やMoney Forwardの類似サービスでも大枠は変わらないと思います。自分は個人的にfreeeに対して好印象だったことから利用し、とても便利だったのでそのままおすすめする形としました
株式会社か合同会社か:とりま合同会社
外部投資家からの出資・M&Aによる売却・IPOを想定→株式会社
上記を想定しない→合同会社
の認識で良いと思います
私は株式による資金調達やIPOを想定していなかったので合同会社にしました。「合同」会社で損をした経験は今のところありません
最悪困っても合同会社→株式会社できます
定款の目的をどうするか:やりそうなこと全部載せ
事業計画で検討した事業目的に加えて、幅を取ってやりそうなものを記入しておくのが新規事業・PIVOTの観点からおすすめです。
口座開設:これがないと始まらないのでなるはや着手
会社の設立が完了してから口座の開設を行います
口座の悪用防止などのために口座開設に関しても一定の審査があります。先述のオフィスの形態などに加えて、事業実態の確認や信用調査が行われます。ネット銀行一つあれば当分問題ありません(当社はGMOあおぞらネット銀行です)
メアド・資料作成ツール:Googleが神
ビジネスメール・資料作成ツールについてはGoogle Workspaceがおすすめです
月1,000円弱でもろもろのGoogleサービスが使えるようになります
メールはもちろんですが、大容量のGoogle DriveなどGoogleツールの有料サービスが使えるようになるのでとても便利です。
余談ですがGoogle App ScriptというNo Codeツール(非エンジニアのためのプログラミングツール)を使うと自動メールやスクレイピングなど色々便利なことが格安でできるようになるのでおすすめです(不要なSaaSを契約しなくてすみます)
名刺の作成:営業の基本
なんやかんやで必要になってくるのでまずは100枚準備するのが必要です
名刺印刷サービスは色々ありますが、個人的なおすすめはアクセアの印刷サービスです。
アクセアはビジネスコンビニのようなサービスで、都内の各所にあります。そこで名刺データを持ち込めば2000円ほどで100枚の名刺ができます。すぐにアクセスできる×印刷が速いというのがおすすめポイントです
ケチるなら100枚無料のサービスもあります
名前と連絡先とやってることが伝わればいいので、奇をてらう必要はないかと
クリエイティブ(名刺・ロゴ):テンプレで十分
名刺デザインについては特にこだわりがなければまずデザインツールCanvaのフォーマットで作っちゃうといいかと思います。初期的な名刺は事業拡大につれて使えなくなっていくのでデザイナーに外注してもコスパが悪いです。Canvaの無料機能でもフォーマットにそって作成すればそれっぽいものができるので試してみてください。ロゴやその他クリエイティブも同様です
HP・LP:オンライン名刺みたいなものなので必須
SEOメディアを作成する予定がある(オウンドメディア)
HPを映えさせたい
といった目的がない人であれば無料かつ簡単にいい感じのサイトが作れるサービス(No Code)で問題ありません。おすすめは以下のSTUDIOというサービスです
小一時間でそれっぽいHPが作れるので事業の滑り出しには最適かと思います。事業拡大に応じて必要になったタイミングでHPのバージョンアップ(外注)などを考えるのがいいかと思います
資金調達
自己資金:100万円は最低限必要
基本的に100万円はないと起業できないと考えておいたほうが良いです
理論上1円資本金からの起業は可能ですが、会社設立やその他諸々の費用がかかってくる点や銀行・取引先への信用の観点から最低100万円は必要です
自分で貯めるのが原則ですが、家族や友達から借りるという手もあります笑
創業融資:創業直後に金融公庫から500万円くらい借りときたい
創業融資というと日本政策金融公庫に借りに行くというイメージがありますが、正確には
日本政策金融公庫から借りる創業融資
行政×地銀信金から借りる制度融資
の2つの選択肢があります
詳細は省略しますが、条件的に前者のほうがよいのでひとまず金融公庫から借りることを想定して計画を立てるのが良いかと思います(1,000万超の調達を考える場合は後者の検討も必要になるかと思います)
創業融資の審査のポイントは以下4つ
事業計画書:金融公庫のフォーマット+α
自己資金:融資額は自己資金額の1-5倍かつ1,000万円以下が目安
経営者の経歴:取り組む事業に活きる経歴
信用情報:家賃の未払いやクレカ情報など
①事業計画書
金融公庫のフォーマット
これの作成は必須です。これに加えてより具体的に自社事業を説明する資料を作成するほうがベターです
+αの計画書の一例です。市場分析や仕入れ・販路、費用構造の詳細をまとめると印象がぐっと上がります。ここらへんは前述の認定創業支援の面談時にやりきっちゃうのも手です
②自己資金
これがとても大切になります。基本的に融資額は
自己資金額の1-5倍
上限1,000万円
だいたい200~800万円程度が落とし所
を前提になります
確かに融資上限額が3,000万円や7,200万円などの記載もありますが、基本的に自己資金で1,000万円超の準備ができないことや支店決済の上限額が1,000万円であることを踏まえると実際の融資額は200~800万程度になるかと思います
③経営者の経歴
基本的に取り組む事業の経験や役立つ資格などを持っていることが前提になります。経歴の原則は7年超と言われていますが、7年未満であったりアルバイトの経験であっても評価はされます。完全未経験の事業で融資を引く際はチームに経験者を入れることをおすすめします
④信用情報
家賃やクレカの未払い情報などすべてに調査が入ります。汚れていたら一発アウトになるわけではないですが、ネガティブ評価になります。自分の信用情報は以下サービスから確認できます
条件について(経営者保証・担保・利率・期間)
経営者保証・担保についてはつけるつけないで融資額や利率が変わってきたりするので担当者の方と相談しましょう
利率については相談の上で一番低い利率で調整してもらえるようにしましょう。一方で数百万の借入で0.1%の違いなどは誤差みたいなものなので、こだわりすぎる必要はないかと思います
期間は最長期間で引きましょう。手元の現金が多ければ多いほどチャレンジができるので引けるだけ引きましょう
創業前後に相談がおすすめ
融資は創業前・直後に実施することをおすすめします。
というのも創業前後に審査を出すと事業計画書のみで審査をしてもらえるからです。これが3ヶ月も経ってくると実績値の提出が求められるようになり、その数字をベースに融資審査が行われるため、希望額の融資がおりにくくなりがちです(滑り出しから業績好調なら問題ないのですが)。利息費用や借金に抵抗があるかもしれないですが、現金があることによる経営の選択肢の幅を考えると使わなくてもとりあえず借りておくのがおすすめです(後述の補助金の話にも繋がります)
補助金・助成金:起業補助と小規模事業者持続化で500万円くらい狙いたい
補助金・助成金は積極的に使っていくべきです。ここで共通して知っておくべきこととおすすめの補助金をお伝えします
「社会にとっていいことをしてそう」→補助金を探す
各補助金の目的・対象経費・補助上限額・要件・期限を確認
補助金・助成金は後払いが原則のため資金調達がセット
補助金の探し方
「HP製作 補助金」など「やりたいこと 補助金」で検索する、もしくは色々なまとめサイトがあるのでそのサイト内で探す
各補助金の目的・対象経費・補助上限額・要件・期限を確認
補助金は
公募要項と呼ばれるマニュアルをもとに事業計画書を作成→事務局が評価→評価上位から予算を割り当てて行って予算額いっぱいまで採択→それ以下は不採択
というシステムになります。そこで公募要項から高い評価を受けるための情報を確認・学習する必要があります
一例:小規模事業者持続化補助金
資金調達がセット
後払いが原則になるため、そもそもの補助金対象事業の実施に必要な資金の確保ができるかが審査の重要ポイントになります。そこで自己資金・融資・利益を積み上げる形で数百万円を準備しておく必要があります
小規模事業者持続化補助金
HP製作やWeb広告、OEMでの製品開発、新規設備の導入など販路開拓に資する費用に出る補助金です。上限50-250万円で年に4回募集があります。
起業補助金(東京都創業助成)
起業に関しては行政全体で推進していく機運があるので、「起業する自治体名+創業補助金」で検索すると色々補助金がでてきます。
東京に関しては「東京都創業助成制度」というもので人件費・家賃・広報費などに利用可能な上限300万円の補助金がでているのでとてもおすすめです。
※東京都創業助成については申請時期が年2回で少なく、要件がやや複雑なので事前確認と丁寧な準備が必須です。申請要件の一つを先述の行政による認定創業支援で満たすことができるため、重ねてですが認定創業支援の受講をおすすめします
ものづくり補助金
ものづくりという名前から製造業のみを対象にした補助金の印象を受けますが、システム開発などにも利用可能ですのでアプリ開発などを検討している場合はおすすめです。製作外注費について上限750万円まで補助が出ます
※おすすめしない補助金・助成金
助成金:従業員の雇用が前提になるので事業が軌道に乗ってから検討
事業再構築補助金・IT導入補助金:一期目には使えません
よくある質問と私の意見
Q.会社設立に行政書士、会計処理に税理士、融資・補助金にコンサルなどプロへの外注を検討したほうがいいですか?
A.基本的に自分でやったほうがいいと思います。
そもそも論、起業周りのことは起業の素人ができる程度に制度設計されているので自分で頑張るのがいいかなと思います。色々勉強になる点や外注コストが割高である点が理由です。壁にぶち当たっても行政や商工会議所などで無料サポートを提供してたりもします。一方で特殊な事業(許認可が必要など)やとにかく事業(売上)に集中したいという場合には一考の余地ありといった感じです。
Q.士業系のトラブルで困ったときは?
A.無料相談が充実しているのである程度自分で解決できます
Appendix.
とはいえ外注の検討はあり。理由は時間とモチベ。
一人起業に関連する諸施策についてまとめてきました。
企業に必要なことは自分である程度できる(それで節約しよう)というのが本記事のメッセージではあるのですが、一方で一人起業では時間とモチベがお金と同程度もしくはそれ以上の価値があります。大企業やライバル企業よりも速く動くことで先行者利益を取りにいかなければならない点や自分が事業のエンジンのため高いモチベーションをキープしながら日々の仕事に取り組まなければならない点がその理由です。そこでHP製作や資金調達など自分で勉強・手を動かせばできるけど、より効率的に進めたい・本業に集中したいという場合は外注も選択肢にはいるでしょう。
これは個人的な反省ですが、自分は本記事で記載したとおり自分でできることは自分でやっちゃおうの精神で普通なら外注してしまいそうなことでも内製化してやってきました。そのため事業推進スピードの鈍化・モチベーションの低下があったなと後悔しています。
ここからは宣伝です
当社では創業融資・補助金を主とした資金調達支援サービスを提供しています。本記事を読んで相談してみたい・外注を検討したいという方は以下宛にご連絡をいただけると幸いです!
h.fuwa@elen-onsulting.org
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