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火力発電所の各種効率


火力発電所の基本図

図1 基本図

図1の基本的なサイクルを用いて、各種効率を見ていく。効率の基本的考え方は、

$$
\begin{align}
&\notag\\
効率 &= \frac{出力}{入力}\tag{1}\\
\end{align}
$$

である。よって、何が入力で、何が出力なのかという点に着目していくと覚える必要がなくなる。

ボイラ効率

図2 ボイラ効率

ボイラは、燃料を燃焼させて蒸気を発生させる設備である。また、過熱器は通常ボイラ設備の中にあるため、過熱器までをボイラ効率として考える。入力と出力はそれぞれ、
入力:燃料のエネルギー
出力:発生した蒸気のエネルギー
となる。

燃料のエネルギーは、燃料の発熱量$${H}$$と消費量$${B}$$から求まる。
蒸気のエネルギーは、蒸気量$${Z}$$とボイラ入口蒸気の比エンタルピー$${i_{1}}$$から過熱器出口蒸気の比エンタルピー$${i_{2}}$$を引いた値から求まる。
よって、ボイラ効率$${\eta_{\rm{B}}}$$は、

$$
\begin{align}
&\notag\\
\eta_{\rm{B}} &= \frac{蒸気量\times 比エンタルピーの差}{燃料発熱量\times 燃料消費量}\notag\\
&\notag\\
&=\frac{Z(i_{2}-i_{1})}{BH}\notag\\
\end{align}
$$

となる。

タービン効率

図3 タービン効率

タービンは、蒸気のエネルギーを機械的エネルギーに変換する。
したがって、入力と出力はそれぞれ、
入力:蒸気のエネルギー
出力:機械的エネルギー
となる。

蒸気のエネルギーは、蒸気量$${Z}$$と比エンタルピーの差で求まる。
機械的エネルギーは、タービン出力$${P_{\rm{T}}}$$から求まるが、蒸気エネルギーの単位と合わせるために単位[$${\rm{J}}$$](ジュール)に合わせる必要がある。そこで、1時間当たりの電力量を考えて、

$$
\begin{align}
\rm{kW\cdot h =kW\cdot (60\cdot 60)s} &\rm{= kJ}\notag\\
P_{\rm{T}}\,\, [\rm{kW}] \cdot 60 \cdot 60 &\rightarrow 3600 P_{\rm{T}} [\rm{kJ}]\notag\\
\end{align}
$$

と変換する。
よって、タービン効率$${\eta_{\rm{T}}}$$は、タービン入口蒸気の比エンタルピーを$${i_{2}}$$、タービン出口蒸気の比エンタルピーを$${i_{3}}$$とすれば、

$$
\begin{align}
&\notag\\
\eta_{\rm{T}} &= \frac{タービン出力}{蒸気量\times 比エンタルピーの差} \notag\\
&\notag\\
&=\frac{3600P_{\rm{T}}}{Z(i_{2}-i_{3})}\notag\\
\end{align}
$$

となる。

タービン室効率

図4 タービン室効率

タービン室効率は、復水器までを考えた効率である。したがって、タービン効率との違いは、タービン出口蒸気の比エンタルピーを考えるのではなく、復水器出口の蒸気の比エンタルピーを考えることである。
復水器出口蒸気の比エンタルピーを$${i_{4}}$$とすれば、

$$
\begin{align}
&\notag\\
\eta_{\rm{t}} &= \frac{タービン出力}{蒸気量\times 比エンタルピーの差} \notag\\
&\notag\\
&=\frac{3600P_{\rm{T}}}{Z(i_{2}-i_{4})}\notag\\
\end{align}
$$

となる。

発電端熱効率

図5 発電端熱効率

発電端熱効率は燃料のエネルギーから発電機が発生させる電力までを考えた効率になる。したがって、入力と出力は、
入力:燃料のエネルギー
出力:発電機が発生させた電気エネルギー
となる。

燃料のエネルギーは、ボイラ効率でみたように、燃料の発熱量$${H}$$と消費量$${B}$$から求まる。
発電機の発生電力を$${P_{\rm{G}}}$$とする。単位をエネルギーの単位[$${\rm{J}}$$](ジュール)に合わせるためにタービン出力と同様に3600をかける。
よって、発電端熱効率$${\eta_{\rm{P}}}$$は、

$$
\begin{align}
&\notag\\
\eta_{\rm{P}} &= \frac{発電機出力}{燃料発熱量\times 燃料消費量}\notag\\
&\notag\\
&=\frac{3600P_{\rm{G}}}{BH}\tag{2}\\
\end{align}
$$

となる。
発電機の出力$${P_{\rm{G}}}$$は、発電機の効率を$${\eta_{\rm{G}}}$$とすれば、入力はタービン出力$${P_{\rm{T}}}$$なので、

$$
P_{\rm{G}} = \eta_{\rm{G}}\cdot P_{\rm{T}}\tag{3}
$$

と求めることができる。
また、タービン室効率で考えた復水器出口蒸気の比エンタルピー$${i_{4}}$$とボイラ効率で考えたボイラ入口蒸気の比エンタルピー$${i_{1}}$$は、それぞれ、図5の給水ポンプの入力と出力になっているが、給水ポンプでは外部との熱のやり取りがないため、エンタルピーは変化しない。そのため、$${i_{1}=i_{4}}$$が成り立つ。

ここでボイラ効率とタービン室効率をかけてみると、

$$
\begin{align}
ボイラ効率\times タービン室効率 &= \frac{Z(i_{2}-i_{1})}{BH}\times \frac{3600P_{\rm{T}}}{Z(i_{2}-i_{4})} \notag\\
&= \frac{Z(i_{2}-i_{1})}{BH}\times \frac{3600P_{\rm{T}}}{Z(i_{2}-i_{1})} \notag\\
&= \frac{3600P_{\rm{T}}}{BH}\tag{4}
\end{align}
$$

となる。式(2)と式(4)を見比べると、式(4)のタービン出力が発電機出力に変われば同じ式になる。式(3)の関係を使うと、

$$
\begin{align}
ボイラ効率\times タービン室効率 \times 発電機効率 &= \frac{3600P_{\rm{T}}}{BH}\times  \eta_{\rm{G}}\notag\\
&= \frac{3600 \eta_{\rm{G}}P_{\rm{T}}}{BH}\notag\\
&= \frac{3600P_{\rm{G}}}{BH} =\eta_{\rm{P}} \tag{5}
\end{align}
$$

となる。よって、式(5)より発電端熱効率は、別の表現として

$$
\begin{align}
発電端熱効率 &=ボイラ効率\times タービン室効率 \times 発電機効率\notag\\
\eta_{\rm{P}} &=\eta_{\rm{B}} \times \eta_{\rm{t}} \times \eta_{\rm{G}}\notag\\
\end{align}
$$

と表すことができる。

送電端熱効率

図6 送電端熱効率

発電機が発電した電力は、発電所内の電力としても使用される。そのため実際に発電所の出力となる電力は、所内電力を引いた値となる。これを送電電力といい、送電端熱効率は、燃料のエネルギーから送電電力までを考えた効率となる。したがって、入力と出力はそれぞれ、
入力:燃料のエネルギー
出力:送電電力
となる。

燃料のエネルギーは、燃料の発熱量$${H}$$と消費量$${B}$$から求まる。
送電電力は、発電機出力$${P_{\rm{G}}}$$から所内電力$${P_{\rm{inside}}}$$を引いた値となる。また、単位を合わせるために3600をかける。

よって、送電端熱効率$${\eta_{\rm{L}}}$$は、

$$
\begin{align}
&\notag\\
\eta_{\rm{L}} &= \frac{発電機出力-所内電力}{燃料発熱量\times 燃料消費量}\notag\\
&\notag\\
&=\frac{3600(P_{\rm{G}}-P_{\rm{inside}})}{BH}\notag\\
\end{align}
$$

となる。

また、発電機出力と所内電力の比率を所内率といい

$$
L = \frac{P_{\rm{inside}}}{P_{\rm{G}}}\notag
$$

で定義される。

復水器

図6 復水器の損失

復水器は、タービン出口の蒸気を冷却するための設備なので、冷却した分の熱量は損失と考えることができる。
タービン室効率$${\eta_{\rm{t}}}$$は、復水器まで考えた効率なので、復水器以外の損失が無視できる場合には、

$$
\begin{align}
&\notag\\
\eta_{\rm{t}} &= \frac{タービン出力}{タービン出力+復水器の損失}\notag\\
\end{align}
$$

と考えれる。したがって、復水器の損失$${E_{\rm{c}}}$$は、

$$
\begin{align}
\eta_{\rm{t}} &= \frac{E_{\rm{T}}}{E_{\rm{T}}+E_{\rm{c}}}\notag\\
E_{\rm{T}}+E_{\rm{c}} &=\frac{E_{\rm{T}}}{\eta_{\rm{t}}}\notag\\
E_{\rm{c}} &= \left(\frac{1}{\eta_{\rm{t}}}-1\right)E_{\rm{T}}\notag\\
\end{align}
$$

と求めれる。
また、復水器の損失$${E_{\rm{c}}}$$は、冷却水量$${Q}$$、冷却水の比熱$${c}$$、冷却水の密度$${\rho}$$、温度変化$${\Delta T}$$を用いて、

$$
E_{\rm{c}} = \rho \, c\, Q\,\Delta T\notag
$$

で求まる。

復水器の問題の場合は、単位に注意して解く必要がある。
タービン出力を$${E_{\rm{T}}}$$としているのは、単位をジュールで考える必要があるためである。

サイト

https://sites.google.com/view/elemagscience/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0

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