見出し画像

1-3「キャラクターの設定の、物語への組み込みについて」/キャンペーンデザイナーズノート

1-3「キャラ設定の、物語への組み込みについて」

ストーリーラインはこちら

ほとんどのTRPGプレイヤーは、自ら生み出したキャラクターが好きだと思います。

今まで作り出してきた、思い出深いキャラの話だけで、知らない人を置き去りにしながら一晩語り明かせる。僕は話せるぞ!悪い大人だから自重してるけど。

自らが創作したキャラクターが物語の中で一定の役割を果たし、自分の分身たるキャラクターがカッコ良く活躍することを楽しむのが、TRPGの面白さの一部であることは、多くの人が同意するところだと思います。

今回のような長期キャンペーンにおいては複数のシナリオを通過するため、このキャラクターの表現描写をすることに、もう少し踏み込んだ描写をしやすいメリットがあります。

敢えてまとめれば、それは2点。

キャラクターの設定が物語に組みこまれること

キャラクターの数値的ではない成長を表現すること

前回(※)のシナリオは、この2点を表現するべく組んだものになります。

※第一部第3話「聖剣の護り手」

プレイヤー・キャラクターのひとり、ライエル=クラージュを担当するプレイヤーは、キャラ作成当初から「両手に武器を持って戦うファイター」のビルドを希望していました。

しかし、ソードワールド2.5というシステムにおいて、作成直後からそのスタイルを利用するにはやや工夫とリスクを伴います。特技 《両手利き》の取得で実現可能になるものの、命中-2のペナルティは、命中バッファの手段が少ない序盤においてかなり重いものです。

そこで、ライエルのプレイヤーは、序盤は片手剣+盾というスタイルで冒険し、成長を重ねレベルが5になった段階で特技《二刀流》を取得して、命中へのペナルティを解決した上で、戦闘スタイルを片手剣+盾から片手剣二刀に変更するロードマップを描いていました。そのスタイル変更に説得力を持たせるためか、自らのキャラクターに師匠がいる設定を作っています。

前回のお話は、その設定を拾ったものです。

ゲームマスターは、このキャンペーンの開始時に「キャラクターの設定があれば、それをキャンペーンのストーリーに組み込むよう努力するので、是非積極的に教えて欲しい」と宣言していました。

開始時点でソードワールドの世界観や、TRPGそのものに慣れようとしている段階のプレイヤーもいたので、キャラクターの設定まで詳細に作りこんでいたのは半数くらいでしたでしょうか。

そこで、残りの半分に「こんな風に組み込むよ!」ということを示すために、序盤の内から「キャラクター設定を組み込んだシナリオ」を作成しようと考え、ライエルの担当プレイヤーと打合せをしつつシナリオを作成しました。

そこで、名前と種族性別くらいしか決まっていなかったライエルの師匠、ヴィオラ=カルティを、物語の本筋に絡めることにしました。ライエルの師匠ヴィオラは序盤に提示した聖戦士の関係者であり、プレイヤー達が知らない情報を知っている。これによって「キャラクターの設定を物語に組み込む」ということになります。

序盤にいきなり敗北イベントを設定したのもこれが影響しています。「敗北を成長の糧とし、自分の剣術を高める」というストーリーを、キャラクターが成長して二刀流を取得するタイミングと合わせたかったという思惑がありました。

「生き残っているクリスや村人を助ける方向ではなく、勝てるかどうかもわからない敵の指揮官を倒す方向に行ったのは、ライエル、君が未熟だからだ。私の教えは、まだ君に届いていないようだね」

という台詞をヴィオラに言わせたうえ(※)で、その失敗を乗り越えるべく戦う…という方向性を、ゲームマスターとプレイヤーの打合せの上で定めました。これによって「キャラクターの数値的ではない成長」の物語を組む意図が出来ました。

※アスタローシェと戦うよう誘導したのはGMなのにね!悪い奴ぅ

さて、楽しい楽しいキャラセッションなのですが、特定のキャラクターを中心に据えて進めるシナリオの運用にあたっては、いくつか注意することもあります。

・シナリオの意図を事前に全プレイヤーに説明し、不公平感を軽減する努力をすること

卓に参加するプレイヤーは、中心に据えたキャラクターだけではありません。卓や物語は参加者全員で作り上げるものです。ストーリーの中心に入れないシーンが存在する、ということはプレイヤーにとって結構なストレスになることがあります。目立ちたがり屋のプレイヤーほど、不満を持つかもしれません。
このキャンペーンにおいては「出来る限り全員にその機会を用意する」と宣言することで不公平感を多少緩和することが出来ると考えていましたが、セッション開始前に「このシナリオは誰のために作ったのか」を共有することで各プレイヤーに役割演技を意識させる助けにすることにしました。

・プレイヤーのやりたい方向性を理解して寄り添い、GMの理想を押し付けすぎないこと
今後も言及する予定なのですが、キャンペーンにおいてプレイヤー達のやりたいことをストーリーに組みこもうとすると、大体ストーリー展開が終盤ほど苦しくなります。破綻まである。


そりゃそうだ。プレイヤーはゲームマスターが胸に秘めている今後の展開なんて知らないんだから。

物語としての完成度が落ちることを嫌がるゲームマスターは、自分が描く物語の方向性とプレイヤーのやりたい方向性にずれがある場合、大体自分のやりたい方向性を優先しがちです。人として。


だって今後の展開知ってるの大体自分だけだし。


もちろん、自分の美意識その他を投げ捨ててプレイヤーの物語に奉仕するのも理想なんでしょうけど、ゲームマスターだって人間。好みの展開を入れたい気持ちはよくよく、わかります。それを無理やり捨てることもないでしょう。
それでも、出来る限りプレイヤーのことを優先する意識を持った方がうまくいく気がします。どこまで出来るかは、わからない部分があれど。


総論として、TRPGにおいては卓の満足度が優先されるべきだと考えています。難しいのは、ゲームマスターの満足度もそこに要素として入ってくるからなのですが…

今回については、まだ序盤ということもあり、今後の展開は特に気にせず組むことが出来ています。
近々物語の全体構成というテーマで言及しようと思っておりますが、TRPGのキャンペーンは物語の起承転結の前提で「承は易く、結は難い」方式です。「転や結」でキャラセッションを仕込むときのゲームマスターの工夫はまた稿を改めてしたためたいと思います。

結果としてこのセッションのプレゼンテーションは上手く行った方だと思います。
今回をきっかけにして、各プレイヤーが担当キャラクターの内面や過去を考えてくれて、キャラクターのバックボーンを厚くしてくれる方向性に誘導することが出来ました。

僕自身も、「キャラクターの数値的ではない成長に関わる」形のセッションを組むのが好きな人間なので、楽しんでシナリオを書ける手ごたえがありました。

まあ上手く行ったり、上手くいかなかったりするわけですが…予測性が低いのはTRPGのしんどい点でもあり、楽しい点でもありますね。

ここから、残りのメンバーの設定で決まっている部分を拾いながら、物語の全体構成を詰めていくことになります。さすがにこの人数のプレイヤーの設定を公平に拾いきれるのかは、とても不安でした。

本当に上手く行ったのかどうかはプレイヤーに聞いてみないとわかりませんが、全力を尽くしたつもりではあります。その思考過程なども、今後記述していこうと思います。

結論としては、やっぱりTRPGプレイヤーは自分が物語の中心になりたい瞬間があるものだと思います。それを拾ってあげるのはGMの役目だし、TRPGの楽しさの一つだと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

それでは、また次回。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?