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それでも若者は逆転を信じて疑わなかった

北海道民なのだが、横浜DeNAベイスターズがご贔屓のチームである

30代の頃は、北海道で観戦できる横浜戦はすべて足を運んでいたが、ここ十数年はテレビ中継も全く観ず、野球からは興味が薄れていた

話は変わるのだが、一番大切だと思っていたことの歯車が弾け飛んでからそろそろ一年が経とうとしているのだけど、あれで正解だったと思う日もあれば、後悔で居た堪れない気持ちになったりの繰り返しを未だ続けている

そんな不安定な状態を上書きするように、不乱に日々仕事をやっつけ、バンドマンとして沢山の曲を作り、自分にはちょっとだけ無茶な数のステージもこなしている

バンド活動の中、もちろん素敵な瞬間は沢山あるが、心の中の到達点は全然低く、それでも自分に出来る事などバンドしかなくて、とにかく創造の興味が少しでも向く事には闇雲に首を突っ込みまくっている毎日だ

今年の3月29日

仕事から帰宅後、プロ野球の開幕戦が自分の利用しているサブスクで観られることを知り、本当に十数年振りにベイスターズの試合を最初から最後まで観た

監督の三浦大輔を筆頭に、当時熱を上げて応援していたナイン達が皆、コーチになっていて酷く驚いた

しかも、あれだけ開幕戦に弱いベイスターズがとてもいい試合内容で勝った

自分の知らない若い選手ばかりだったけど、本当に久しぶりに胸が熱くなった

それからテレビで観れる時は出来る限り観戦していたのだが、やっぱり生で選手達を応援したくなった
長らく収納ケースに仕舞っておいた25番のTシャツに袖を通し、交流戦最終日に初めてエスコンフィールドに単身足を運んだ

6月2日、対日ハム交流戦3日目

今回、チケットが取れず、入場券だけの立ち見で観戦したのだが、隣で試合開始から必死で応援している若者がいた

序盤に先制され、その後同点に追いついたタイミングで声を掛けると、3日目しか来れないと分かった時点でチケットはソールドアウトで、自分と同じく立ち見入場券で観に来たという

1戦目、2戦目と劇的な試合展開で2連勝しており、流石に3戦全勝はムシが良すぎるかなと思った矢先、試合中盤で大きく点差を開けられ、久しぶりの野球観戦も絶望的な状況になった

試合はスコア2-9の7点差となり、6回に入ったところでその若者に「今日はもう仕方ない、、せっかくだから、もう1点くらい点入るとこ見たいよね」と、自虐的に笑いかけた

すると若者は、

「いや、ここで2、3点は入れとかないと最後追いつけないっす」

と、力強く冷静に答えた
逆転を信じてまるで疑っていない口振りだった

真摯で凄くカッコいい奴だなと思った

勝手に負け試合と決め付けた自分がちょっとだけ恥ずかしくなった
まだ終わってないんだもの、仕方ないなんて簡単に口にしちゃ駄目だよな

ファンとして早々に試合を諦めてしまったお詫びと、その健気さに心打たれ、若者にビールを奢りこの後の巻き返しを祈って乾杯した

残念ながら試合は良いところも無くそのまま終了
ラストバッターの三振に、2人で力無く項垂れ、存分に悔しがったあと、また来年会おうねと握手して別れた

下手な考えなんていくら逡巡したとしても、届けたいところに届かせるまで物事は決して分からない
結果は試合が終わって初めて判明するもの

それまでは持てる気持ちの全部を掛けて、丁寧にフルスイングし続けるしかない

ちょっと忘れていたな、この感覚

帰路のシャトルバスに揺られながら、ボンヤリとそんな事を考えていた

名も知らない若者くん、本当にありがとう
物凄く大事な事を思い出させてくれた
十数年振りの野球観戦、お陰で物凄く楽しかったよ

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