『Star Wars: Galactic Starcruiser』製作者の講演は最高だった

『The Immersive Industry Homecoming Summit』というイマーシブ系イベントのカンファレンスがあります。2021年8月に初開催され、今年は2022年6月26日~27日(現地時間)にラスベガスで第2回が開催されました。

イマーシブ系イベントは欧米が中心ですので、そのトップクリエイターたちのカンファレンスが、英語とはいえオンラインでも参加できる、とても有り難いイベントです。
その中でも『Star Wars: Galactic Starcruiser』についての講演が自分的に最高だったので、簡単な記事にしたいと思います。

セッション内容を詳細にレポートすると、より価値が出るのでしょうが、何しろ英語のセッションを機械翻訳頼りに参加したので、内容の理解が表面的で、正確に書こうとすると永遠に完成しないと思うので断念。
しかしセッションの簡単な内容や、登壇者やその会社の関連リンクをまとめるだけでもそれなりに意味があるかなと思い、こうして書くことにしました。
セッションの詳しい内容を期待された方には肩透かしになってしまいますが、ご容赦ください。



『Star Wars: Galactic Starcruiser』とは

『Star Wars: Galactic Starcruiser』は2022年3月にフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートで開幕した、スター・ウォーズを題材にした2泊3日(ただし3日目はチェックアウトするだけ)の宿泊型体験アトラクションです。

https://disneyworld.disney.go.com/star-wars-galactic-starcruiser

開始前に話題になったのは何といってもその参加費で、たとえば家族4人で$6,000からというテーマパークのアトラクションとしては破格の値段。

開始時のレビューのほとんどに「値段だけの価値があるか?」という項目が書かれていたことからも、アメリカ人にとってもかなり高い値段設定であることは間違いないでしょう(ましてや今の日本人にとっては)
しかし、スター・ウォーズ世界を見事に再現した宇宙クルーズ船内とキャスト、そして2日間に渡る濃厚な冒険の体験は、他に類を見ないものであることは間違いありません。

以下に日本語で読めるレビュー記事をリンクしておきます。


体験型エンタメ制作の情報満載だった講演内容

公演内容としては『Star Wars: Galactic Starcruiser』がどのような体験を意識して設計されているか、かなり具体的に踏み込んだ内容で、私はこれを聞けただけでカンファレンスのオンラインチケット代の元を取れたと思いました。
最初に書いたように英語力の問題から詳細となると怪しいので、覚えている範囲で一部を箇条書きしたいと思います。機械翻訳に頼って内容を聞いていたので、もし間違いがあったらごめんなさい。

  • 計画が発表されたときにスター・ウォーズの「ホテル」「リゾート」と書かれたけどそうじゃない。クルーズという形式で長時間のイマーシブな体験をさせるものであって、宿泊はその結果でしかない。
    (上のレビューなんかでもいまだに「スター・ウォーズホテル」って書かれていますね)

  • クルーズ船に入ったらスター・ウォーズの世界に没入してもらうために細部まで気を配っている。
    たとえばキャビンの窓には常にリアルタイムな宇宙の景色が広がっているし、ブリッジで誰かがハイパースペースへのレバーを起動させると、ブリッジだけでなく他のキャビンの景色もちゃんとハイパースペースのものになる。(他の乗客に自分の行動が影響を与えている感)

  • 基本は三幕構成だが、参加するイベントや追いかける物語によって乗客の物語体験は異なるし、乗客自身が物語を構成してく部分もある。
    ただの乗客がどうやってヒーローの一員になるか、という視点で体験を作っている。

  • トレーニングスケジュールを組むと、それに合わせてイベントや会話がコントロールされるようにして、全体の体験になるようになっている。

  • ゲームとイマーシブシアターの組み合わせは、とても相性がいいと思っている。乗客の多くの人はロールプレイが得意ではないし、即興も特別なスキル。ゲームのノウハウを使うことで、どうすればこの役を演じることができるのか? 自分のセリフがわからない状態でどうやってこの世界に入り込めばいいのか? どうすれば効果的だと感じ、実際に参加して変化を起こすことができるのか?といった構造を多くの人に提供できる。また、自由度も高い。

  • データパッドのすべてのゲストは、私たちが割り当てた、あるいはブリッジトレーニングなどのために予定したイベントのパーソナライズされた旅程を持っている。これは「今、何をしたらいいかわからない」というときに便利。「15分後にブリッジ・トレーニングがあります」「とりあえず行ってみよう」。

  • 「スケジュールされた体験」+「スター・ウォーズ キック」(スターウォーズの知識による補完)+「個人の選択」によってそれぞれの独自の体験が生まれる

  • 「ストーリーイベント」→「物語の選択」→「計画の更新」というループを航海中に何度も繰り返すことで体験を作っていく

  • 選択のあるゲームは枝分かれしていく構造が多いと思うが、我々はそれをひっくり返して枝分けれがだんだんまとまっていって、1つのエンディングに集約する形。
    なぜならばこれは「スター・ウォーズ」の世界で、最後に大団円で壮大な物語が完結することをみんな期待しているから(講演では具体的なエンディングの内容を話していましたが、ネタバレになるので伏せておきます)

  • 自分の選択が重要で、自分が経験してきたことを感じ、自分にとってベストだと思える結論にたどり着けるようにしたい。それが、参加者の物語を最も良くすることになるので。そのために3つのことにフォーカスした。
    ①関係作り(あなたの知っているキャラクターで締めくくる)
    ②あなたの選択(何をしたかによって決まる関係)
    ③あなたが知っていること(結論は、あなたが遭遇したことの筋書きに基づく)

  • 参加者自身の選択も含めて、すべての参加者の選択を評価し、イベントの空き状況、定員、同行者、彼らの行動と比較し、それぞれの参加者にとってエンディングに向かって最適な二幕目の各イベントにつなぐ仕組みを作った。

  • アクターが演じるNPCは2日間の航海中すべて同じ役を同じ人間が演じ続けるようにしたが(「いきなり船長が変わったら変でしょう?」)、ずっとステージにいるわけにもいかないので、それを補完するためにチャットボットなどを使って休憩中も「その世界にに存在し続ける」仕組みを作った

  • ライブパフォーマーのような魅力的なキャラクターと、チャットボットのようなキャラクターが同じ人間であると感じさせるようにしなければならない。キャラクターの声や人物の個性が、ストーリーを伝えるさまざまなプラットフォームを通じて同じように伝わるよう、綿密な打ち合わせを重ねた。

  • 大きな部屋や大きな集団のシーンなど、公共的なスペースで起きるイベントは参加者の行動が所属(例えばレジスタンス派かファースト・オーダー派か)に影響を与えないように工夫している。
    例えばブリッジにいて、小惑星帯を無事通り抜けられるように船長を助けることは、たとえ船長個人に同意していなくても私たち全員が支持できること。公共の場での大きな出来事を協力プレイに利用することで、公共の場での大きなストーリーを発展させることができる。


『Galactic Starcruiser』ゲーム設計関係の情報

セッションで語られた詳細はこれ以上書けませんが、一部内容が重なる部分のある英語記事をいくつかピックアップしたいと思います。

まずは『Star Wars Galactic Starcruiser』が、どのような先行作品の影響と経験から作られているかというLA Timesの記事です。とても良い内容ですが、残念ながら有料記事です。

次は『Star Wars Galactic Starcruiser』でのデータパッドとアクティビティの話。 どのような体験を意識して設計したかの具体的な例があって参考になります。

最後はゲーム開発者向けのカンファレンス『GDC2022』で今回と同じお二人が登壇したセッションのレポート。GDCはビデオ配信も行われることが多いのですが、ディズニーの意向なのかビデオ中継もビデオアーカイブもない、現地のみのセッションだったので、このレポートは貴重です。


Walt Disney Imagineeringと2人の登壇者

Walt Disney Imagineeringは世界のディズニー・テーマパークの設計・開発やアトラクションの企画・クオリティー管理などを担当する会社です。

登壇したAnisha DeshmaneさんとSara ThacherさんはいずれもWalt Disney Imagineeringのクリエイティブ・ディレクターです。
プロフィールは『The Immersive Industry Homecoming Summit』のサイトにも記載されていますので、そちらも参考にしてください。

お二人のTwitterアカウントはこちら。

Sara Thacherさんが偉いなと思うのは、こういったカンファレンスに招待されて登壇しても、それだけで終わらずに、他のセッションにたくさん参加してその内容をツイートしているところですね。勉強熱心さが伝わってきます。

Sara Thacherさんは個人のサイトもあります。

経歴をみていてちょっとびっくりしたのは、有名なARG(代替現実ゲーム)の1つ『The Jejune Institute』の制作チームの一員だったことですね。

『The Jejune Institute』ARGについて日本語で知りたい方は、映画『ザ・インスティチュート』を見るのが手っ取り早いです。iTunesAmazon Primeでレンタルできます。
イベント当時に作られた映画ではないので、正確性には若干怪しいところもあるみたいですが、どんなイベントだったかの全体イメージは伝わると思います。Sara Thacherさんも登場します。(見返すまで気づかなかったw)


以上『The Immersive Industry Homecoming Summit2022』で行われた『Star Wars: Galactic Starcruiser』のセッションと登壇者情報でした。
他のセッションについてもなかなか豪華な内容だったので、いずれ簡単な登壇者情報だけもまとめられればいいなと思っています。



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