私の大好きな百合漫画を紹介するよ!
はじめに
今日がいつなのかいつまでも覚えられないのでいつのことか忘れてしまったが、きっと去年のいつごろか、私はある記事を読んだ。
そうして気が付いた。私は百合が好きなのだと。正しく言えば、百合が好きだと言ってもいいのだと思ったのだ。
この記事を読んだあとによくよく考えてみたら、私が今まで書いてきたものはほとんど百合だったのだ。これもまた正しく言えば、百合と言ってもいいのだ、と思った。
もちろん、カテゴリーしてしまうことで失われる情緒というものもあるだろうけれど、それにしても私が百合を好きだということは、どうも確実なことのように思えたのである。
しかし、もちろん私は百合に詳しくない。
というより、何にも詳しくない。調子がよければ多少一般より多くの近代文学の作家を唱えられるかもしれないが、別にその人たちの小説を読んでいるわけではない。あるいは調子がよければ一般よりほんの少し妖怪の名前を多く唱えることが出来るかもしれないけれど、その妖怪が何であるかは知らない。
そうして私は、大抵の場合調子がよくないのだ。
だからこれから大好きな百合漫画について語ろうと思っているけれど、詳しいわけでないので怒らないで欲しいし。褒めたり共感したりしてほしい。あわよくば私の書いた百合も読んで欲しい。
宣伝が出来て偉かったので始める。
1 『乙女ケーキ』タカハシマコ
恐らくこれが百合とのファーストコンタクトだった。私は、私のことを褒めてあげたい。この漫画を手に取ったことは、とても偉い。天才なんじゃないかと思うくらい偉い。
短編集なのですが、正直どのお話も好きなので冷静にピックアップしておすすめすることが出来ません。
百合という概念に対して、私が抱いている感覚の源流がここにあると思います。つまり、少年から女に変わっていく「揺らぎ」の期間の中で起る関係の変化。それに伴う未来への嫌悪。そうして、そういう予感に揉まれながら尚も今の関係にしがみつこうとしたり、あるいは夢を見てやりすごしたり。
私の百合の源流にはいつもそういった「どうしようもなさ」があります。
思春期のただ中にあって、未来において我々は別の物になるのだという予感を持っている女の子たちが好きだ。酷く自覚的な、冷静な、それでいて現実を捨てるような女の子。
タカハシマコさんの描く漫画にはそれが全部詰まっていて、何年経っても読み返す度に「これだ~」となります。
イメージですけど、このまま一緒に死んじゃえばいいのにね、って言って甘いもの食べたあとに遊びで一緒に飛び降りちゃうような、そういう危うい関係が盛りだくさんです。ぜひ読んでください。
2 『終電にはかえします』雨隠ギド
みなさんはどんな女の子が好きですか。私は自分のことを「可愛い」と知っている女の子が好きです。すごく好き。
容姿のことをうんぬんかんぬん言うのはよろしくない、という風潮もありましょうが、それとこれとは別の話であって、やはり自分の可愛さを知っている顔の良い人間の傲慢さとか、顔がよいばかりに押し上げられた地位に対する怒りとか諦めとか、強かにならざるを得ない状況とか、勿論さまざまタイプはありますが、ともかく自分が「可愛い」ことを知っている女の子が可愛いということだけは分かる。
このお話の表題作は表紙の女の子たちが可愛い話なのですけれど、黒髪の女の子は自分が可愛いということを完全に理解している高校生で、ミスコンで優勝して女子アナになって、ゆくゆくはサッカー日本代表と結婚して玉の輿、という未来のビジョンを持っています。
そんな野望の独り言を電車の中でぽろりとこぼしているところに、金髪プリンの後輩ちゃんがやってきて、彼女をチカンの手からスマートに守ってくれるんですが、この子がまた可愛い! 金髪! スカートの下にジャージ! 一年生! 敬語!!!(敬語はよいものですよねとても)
そんな出会いを経て二人が一緒の電車に乗って登校をしはじめる、というのが表題作の前のお話「ひらがな線、あいう駅より」なのですが。これ18ページとかなんですけど、最短距離で苛烈な可愛さを突き刺してくるすごいお話です。
金髪プリン頭のクール後輩ちゃんのデレに、顔の可愛いしたたか先輩が陥落するところがが見所です。崩れ落ちそうなほどの可愛さ。
表題作以外も、とても良いです。ぜひ読んでください。
誰も仲間はずれにならない、完璧な三角関係が描かれている「一瞬のアステリズム」これは本当に理想の三角関係の姿だと思います。可愛い。さっきから三角って打つと予測変換で△ばっかり出てきて嫌になっちゃう。いつ使ったんだろう△。
3 『きれいなあのこ』吉田丸悠
みなさん、アイドルは好きですか? 私は大好きです。出来れば将来はアイドルという概念になりたいくらい好きです。アイドルが好きなんだ。本当に好きで好きで、好きなんだ。
これは「平成絶対領域委員会」(通称絶会)というリアルJCJKアイドルグループを主軸にした連作短編です。各話で各メンバーが主役になって可愛いことになっています。
女の子アイドルって、もうその概念だけで多分の百合を含んでいると私は思っているのですが、それはなぜかというと、彼女たちの活動に期限があるからなのです。前述したように、私は「近い未来に終わりを迎えるだろう今」を一緒に生きている女の子たちの関係を百合と捉えている節があるので。
アイドルというのは、完全に期間限定の「今」の中でしか生きられません。永遠に一種のアイドルとして存在しているTHE ALFEEのような例もありますが、彼らは結果的にアイドル的存在になっているだけで実際にはミュージシャンなので、やっぱり違った。やはりアイドル、取り分けグループという活動には必ず期限があるものなのです。
そしてこの「平成絶対領域委員会」(通称絶会よくないすか?)(すごくアイドルっぽい)もまた解散を迎えます。それが中盤くらいに出てくる「ミニスカートよさようなら」というお話。
他の話ではアイドルの子と、アイドルじゃない子が百合な感じになる話ですが、このお話はグループ内百合になります。なんてこと!!!!
絶会は六人組でトニセンカミセンよろしくJC組とJK組に三人で分れているんですけれども、そのうちのJC組の二人、ツリ目・ツンデレ・ツインテの俺っ子(俺っ子!)の麻由と、天使の顔の小悪魔とよばれている骨の髄までアイドルな美優とのお話です。正直このミユマユの存在と関係性だけでしばらくもだえていられるのですが。
この美優ちゃんが「絶対に18までに死ぬの!」って言うんですよね。「かわいいまま死んで、永遠のアイドルになるの!」って。で、麻由はそれに対して「ケッ」って感じなんですね。そこまでアイドルにかける理由が分からないって。
もうね、ウッってなる。そのまま死んじゃう。
彼女たちの関係、そして彼女たちの選択によって絶会は解散を迎えるわけなんですけれども、これがもう、もう、本当に読んでください。私は男の子アイドルを担当してますが、女の子アイドルも勿論好きで、でも、女の子アイドルに関してはもう正気を保っていられないので、あまり多量に摂取しないようにしていて、そういう私の「ウッ」ってところをずんずん刺してきてくれるお話です。正直、この文章とかもしっちゃかめっちゃかなんだろうなーと思っていますが、情熱が伝わったら嬉しいな。
あとこれは本当、アイドルっていう一つの性癖だと思うんですが、メンバーの構成とか、謎の曲名の感じとか、解散したあとの感じとか、もう本当、いいなって感じです。読んでね。
4 『philosophia』 天野しゅにんた
みなさん、煙草を吸う女の人は好きですか? 私は好きです。マジで好き。っていうか煙草が好き。男でも女でも煙草を吸ってる所が好き。
愛と知のお話です。
私は残念ながら学がないので、そして学がないということを言ってしまえるくらいにはもう教養に関しては諦めていて、と言っているだけで本当はぜんぜん諦められてなくて、どうにか生まれ直して学を手にいれたいと思っているけど、生まれ直してとか言っている時点でだめだお前は。
今の一文は全く関係なかった。けれど、こんな感じでぐるぐるしてしまうくらい、このお話の二人の関係が私は羨ましい。
そもそも大学生というものにものすごく憧れがある。美人な愛(名前の読み方は最後まで明かされない)が喫煙所で先輩の知(これも同じく)と出会い、喫煙所でなんかお喋りしたりとか、喫茶店で本読んだりとかそういう時間を過ごして、互いを知っていくお話。
悲恋なのかもしれない。でも恋ではなくて愛のお話なので。美しいです。
愛は美しいばかりに、人生にさまざまな弊害が伴います。妬みであるとか、理想の押しつけであるとか、単純な煩わしさとか。知はそんな愛に対して「美は絶対的な善だ」と言います。「人にあげたりもらったり出来ない、どうしようもない徳だ」と。
これはまぁ、ほとんど呪いです。実際に愛はこの呪いの言葉と共に生きていくことを決めるんですね。
愛と知はフィロとソフィアの擬人であり、またプラトンとソクラテスなのだそうです。あとがきに書いてありました。そう、つまり私はまだ愛も知も獲得できていないので(俗に言えば学がないので)このお話についてかみ砕くことが出来ていません。
けれど、ものすごく好きで、いつかかみ砕きたいなと思っているので紹介しました。全然魅力が伝えられなかった。読んでね。
5 『Vespa』大北紘子
みなさん、女の軍人さんは好きですか? 私はとても好きです。戦う女の子が好き。戦う女の子は可愛い。
男の出生率が減り、ほとんど女性しか生まれなくなった世界のお話。女と女の世の中に、かつての男と女のような、あるいは貧富と貴賤の差が出来上がる。そんな世界で、女という性を捨て労働をすることで自由を手に入れた軍人と、女という性を生きることで国を守る不自由なお姫さまの恋を主軸にした百合です。
私自身が女なので個人的なことを言いますが、女であるということはそれだけで呪いです。これは男性と比べてどうのこうの、というわけではなく絶対的な感覚として、強大な呪いであると感じています。
難しい話を理論で理解できないので、フェミニズムとか、もっと言えばLGBTの諸問題とか、確固たる意見がなにもないので、本当に心底フィーリングの話になりますが。
単純に「子供を産める体である」ということ、あるいは「子供を産める体であると認識されている」ということは酷くおぞましいです。産む機械、みたいな言葉が問題になったことがありますが、当事者としてまったくその通りであると感じるようなことがあります。生まれつき、何か社会的な役割を押しつけられているみたいな。
このお話はあとがきで著者が言っているように、まさに自分に与えられた「役割」とそれに対する「身の振り方」のお話です。女ばかりが生まれる世界になったら、その中でまた今でいう男の「役割」を女が担うようになるのではないかというSFでもあります。
私はこの世界観が大好きです。つまり、これは今のこの世界ということでもあります。結局、私たちは役割からは逃れられません。それでその中で、苦しめられたり、辱められたり、あるいは、喜びを感じて生きていくしかないのです。
この世界の女の子たちは、ともかくそれぞれが役割に苦しめられていますが、彼女たちはどん詰まりの状態でももがき続け、戦っています。それが本当に可愛い。
特に私はこの女軍人の思い人である姫が嫁ぐ、大国の女王が大好きです。彼女は姫に自分の子供を産ませるために、まず男に犯させたり、エッチな折檻とも思われる感じのことをしたりするのですが、この女王もまた、役割にしばられ酷い仕打ちをうけ、それでも生きている可愛い女の子のうちの一人です。
この女王はいつも黒い服を着ているのですが、姫がその理由を聞いたときの返答が、しびれるほどかっこよく、これはぜひ読んでもらいたいのでぜひ読んでください。
あとわたしは巻末のおまけ的漫画出てくる、女軍人の初恋的な女の子(天真爛漫メイドさん)が、軍人に金をせびって首都に出て行く話が大大大好きで、女の子、女の子だー! 大好き! ってなります。
結局、女の子を好きだ、という気持ちもまた女の子を「女の子」という役割に押し込めているに過ぎないのかもしれません。それでも、その可愛さ(勿論、可愛くないという可愛さも含まれてます)を肯定することが、私自身の救いになることを信じて、私は女の子を可愛いと言い続けているのかな、とか思ったり。
大北さんの百合はほとんど全部ぐさぐさ刺さるので、何を紹介しようか迷ったのですが、この本は女の子の強かさが本当に可愛いのでぜひ読みましょう。
大北さんは来月に新刊もでます。ぜひ予約して読んでください。
6 私が書いたやつ
この手の記事で自分が書いたもの宣伝するの死ぬほど恥ずかしいのですが、そういうことちゃんとやらないとこの先生き残れないぞ! って誰かが言ってたので宣伝します。
なにせ自分が書いているものが百合だと気が付いたのが去年のことなので、それからなんか「あ、百合かも」と思って「百合だ」と思って書いたものが二つあります。
一つめ~
pixivでやっていた百合文芸になげたものです。意識的に百合を書いた初めての小説です。
何年か前に診断メーカーの「ねどこ」というものをやったとき【観客席で寝る。思い出せない】という結果が出て、大変に感銘を受けとりあえずメモっていたのを引っ張りだしたものです。
観客席で目覚め続ける女の子と、もう死んでしまった女の子のスピリチュアルでエモーショナル百合です。このスピリチュアルでエモーショナルというのは、いつぞや誰かがそういう感想を言ってくれて大変に嬉しかったので使っています。すぐ感情を吐き出してしまう。
先輩と後輩というものが好きで、敬語というものが好きで、なにより非人間的なモチーフが大好きなのでそういうもの全部詰めって感じです。
私はいつも才能と非才能の話と、感情と非感情の話をしていまう。感情の平坦な子が感情を解き放つ場面が好きなんですね。気が向いたら読んでね。
二つめ~
真夏のガールズ不理解です。それだけ。
互いを理解しない女の子たちがそれでも一緒にいる図、というのが好きで、それはやっぱり一緒にいるということが「終わる今」に対する唯一の対抗策だからですね。一緒にいる限り今は終わらない。終わらないかもしれないという、願いが百合だなと思ったんだと思う。
あと「二階に父親が住んでいる」というのは私の手癖でして、きっと多分死ぬまで「二階に住んでいる父」というモチーフを使うんだろうな、という予感がしました。
そしてこれも非人間的なお話です。死体と意味不明物体が出てきます。死体と女の子は百合だからね。仕方がないね。地元のいつまでも終わらない巨大な商業施設の駐車上を歩いているときに思いつきました。
番外でもう一つ
https://novel.line.me/r/general/novel/1528
これはちょっとまだiosのアプリでしか見られなくて、Androidのアプリは9月になったら出来るらしいのでぜひ、その暁に読んでくれたら嬉しいなというファンタジーです。
魔法使いになりたい風俗嬢と、翼を欲しがる僕っ子が、互いの「世界」になる物語です。救いと祈りの気持ちで書きました。性癖を全部詰めたのでよろしくどうぞです。
あともう一つ。
冬くらいに風俗嬢がボーイを殺してひと夏を廃校で過ごす話をカクヨムに上げるつもりです。百合のつもりで書いているわけではないけれど、確実に百合になると思われます。たぶん冬に。
あらすじをちょっとあげておこう、そうしよう。
こんな感じのお話~。まだ今書いてる途中なんでどうなるか分からないですけど、もし興味がわいたら覚えていてくれると嬉しいです!とっても!
おわりに
自分の宣伝して変な汗掻いちゃった。好きなものを読み返して、あーすきー!ってなりながら書いたので時間もかかっちゃった。
かなり自信のある漫画ばかりを並べたので、読んでくれるととっても嬉しい。女の子はよいものだね。これを書いているあいだ、長濱ねるちゃんの動画をあさりながら号泣したりしていたよ。アイドル、すきだな~
そんな感じで今回はこんな感じです。しばらく作業であまり上げられそうにないのが残念だけど、また何か上げるねー。読んでくれたかた、とってもありがとう! 夏が終わってもよろしくね!
あるか分かりませんが、サポートがあったら私はお菓子を食べたいと思います!ラムネとブルボンが好きです! あと紅茶!