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神仏まざりて蛇と皮

神仏まざりて蛇と皮

 熱が出ると決まって仏の夢を見る。それは蛇であり神様であり伯母である。
 伯母は今では点鬼簿の中にいて、私はもう声を思い出せない。顔も思い出せない。匂いも思い出せない。ただ薄い皮の骨ばった指だけを思い出せるのであって、熱に魘されて夢にみるのは、その死んでいる人間のような、やけにつるりとした指だけなのだった。
 寺の門のそばで、私は伯母のその指に手を包まれながら、蛇であり神であり仏であるそれを見た。

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