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メモアプリ放浪の旅:Notionを超えてAnytype


Notion最高!でも…

まず始めに誤解ないように言うが、私はNotionも大好きである。会社でもNotionを使っているし、Anytypeの前のメモ管理にはNotionを用いていた。Notionは大変素晴らしいサービスであり、特に以下の点で優れていると言えるだろう。

  • 階層化されたメモ

  • 外部ツールとの連携(API連携など)

  • クロスプラットフォーム

  • オンラインでの共同編集

  • 柔軟でわかりやすいデータベース

  • MD記法が利用できる

  • etc

いずれをとっても他のメモアプリの追随を許さないほどの完成度を誇っていると感じる。こんなに素晴らしいNotionなのだが私は不満を感じている。これが私のメモアプリの旅の始まりである。

ここが不便

雑多なメモへの不寛容

まず始めに雑多な文章を書くときに向いていない。基本的に階層化された文章管理に非常に効果を発揮する。例えば、「買い物のメモ」「上司への連絡のメモ」など突発的なメモや散漫なアイディアを書き溜める時に適切な階層を瞬時に選択、または新たな階層を作成するのは難しい。

Notionのプロフェッショナルである諸氏は「雑多な文章用のメモのデータベースを作ればいいのでは?」というように思うかもしれないし、自分もAnytypeへの移行以前はそのように管理していた。私はメモ魔なので基本的に日に3,4件、多ければ10件以上の書き捨てのメモなどを作成する。

こうなってくるとデータベースが肥大化する。そうするとロード時間が長くなってきてストレスを感じる。300もメモを追加すると若干のカクつきを感じることができる。

またこのメモは単位が定まっておらず、「いいなと思ったサイトのURLだけ」「参考になるなと思った人のツイートのリンクとそれに対する考察」「買い物のメモ」などなど粒度も正確さもまばらである。そのうち清書するものもあったりし、清書したものも混在する。清書したら別のDBに移せばいいのだがそれも面倒だった。

階層構造と参照関係の難しさ

ぶっちゃけると私は階層構造というもの自体が難しいと考えている。というか階層構造は明快であるが表現力という観点では柔軟性が劣ると考えている。特にNotionでは階層構造の把握の難易度が高い。

例えば大学の授業がA, B, Cとあった場合、「大学」のページを作成し、その中にA, B, Cのページを作成するだろう。しかしA, Cの両方で同様の内容のページDをメモする場合、Dの実体をどちらに置くべきだろうか。それともA,B,Cに連なって大学のページ内にDを記載し、参照によってA,C両方から参照するほうが良いだろうか。

参照形式の違い

またDを見た時に当然A,Cの両方からの参照を把握することはできるが、このA,Cが大学ページで同じレイヤーということをDのページから容易に把握することはできない。知識や学問は相互参照的であり、同じレイヤーに配置して参照関係でその階層を表現するのは適切には思えない。
(数学で言えばA, Cを解析学,集合論、Dを測度論などと考えれば良い)

というようにNotionは親や子の要素との関係を把握するのは簡単だが、親要素同士の関係性や子の子要素の把握などは困難であり、そもそもそこは想定されていない。というか階層構造自体が、相互の関係性を把握するための構造化というわけではない。

さらにいうと階層構造はその階層構造を理解している人向けの知識構造になっている。具体例をあげよう。

最近はNotionをドキュメント管理に利用している企業も多いが、新しいメンバーに「わからないことがあったらNotion見てね」と言っても大体探すのに苦労する。それは階層の分け方(授業で言うなら数学や理学などの学術分野で別れているのか、ただ単純に科目で別れているのか)が不明瞭でそれぞれのNotionで異なるため、初見で探すのを困難にする。

ビジネスで例を挙げるならセールスからCSへの引継ぎのマニュアルはセールスの配下にあるのか、それともCSの配下にあるのか、それとも両方に「CSへの引継ぎ方法」「セールスからの引継ぎ方法」のような分割されたドキュメントなのかわからない。もしかしたらそれらとは独立にマニュアルのデータベースが存在し、タグで管理しているのかもしれない。これはドキュメントの粒度の定義が明確になされていないことやそもそもそう言った粒度自体の定義を策定しづらいことによるものだ。

クラウド前提

これは私の思想としてメモはできるだけローカルで管理し、高速に扱いたいというのがある。そのためデータベースのクラウドから持ってくる時間も惜しい。なんならデータは基本ローカルで管理し、適宜バックアップなりを取れるようにしとけば良いと考えている。

Notionはこの点で劣っていると感じる。もちろんクラウドの良さはあるのだが、それを差し引いても速度面での快適さを優先したい。近年のクラウド偏重のサービスは速度面で犠牲にしている部分が多分にあるし、私はクラウドの障害があろうとなかろうとメモを取りたい。

そもそもメモなんて他人に公開を前提にしないのであれば、PCなどのメイン端末にデータを蓄積し、そのデータファイルをバックアップし、PCからスマホに同期するような所謂P2Pである方が適していると感じる。これはNotionが劣っているのではなく、Notionが既にメモの領域を超えたプラットフォームになりつつあることが起因する。

メモアプリを探す旅

ここまで書いたがNotionが悪いわけではないのだ。ただ私にとってNotionはリッチすぎるのだ。正直言って手に余る部分もあるし、相容れないところもある。こうして私は最高のメモアプリを探す旅に出るのだが、まず最初に自分にとって最高のアプリを定義しよう。

最高のメモアプリとは何か

まず用途について考えよう。

• メモの対象はURL、格言、上司の一言、買い物のメモ、清書した文書、記事の原稿など多種多様だが、ある程度のタイプが存在し、これを整理して扱える。
• メモ同士で参照関係や親子関係を表現できる機能
• メモの種類ごとで粒度を揃えて書くことを強制する
• スマホとPCの両方でメモを取れる。少なくともiOS, Macに対応
•基本的にクラウドではなくローカルにデータを保存

パッて書くとこんな感じ。API連携も不要でただただメモを管理したいという究極のおひとりさまメモアプリを探しているのだ。さて、これに最適なアプリを探していこう。

Cosense(元 Scrapbox)

まずは有名どころに手を伸ばしてみた。Scrapbox自体は元々利用したことがあり、開発のナレッジなどが転がってたりして非常にありがたい。最近は自作キーボードのScrapboxを発見し、非常に重宝している。

まずは最初の項目に照らし合わせてみよう。

△ メモの対象はURL、格言、上司の一言、買い物のメモ、清書した文書、記事の原稿など多種多様だが、ある程度のタイプが存在し、これを整理して扱える
基本的には最小単位がNotionで言うところのページ。短い内容でも長い内容でも気にせず書くことができる。この点では優秀だが、書き捨てのようなどうでもいい内容でも同じ階層になるため若干不満が残る。

△ メモ同士で参照関係や親子関係を表現できる機能
参照関係の表現は非常に優秀。それぞれの単語などをページとして独立に作り、それぞれに詳細を記載するような運用が主になっていてその点で良い。さらに参照したページはページ下部に一覧で表示され、そのページから必要な知識が一目でわかる。
親子関係などは基本なく、全て1レイヤーで管理することになる点が不満。

× メモの種類ごとで粒度を揃えて書くことを強制する
前述のとおり基本的には1レイヤーで全て同じ形式に限られるため、清書と書き捨てが同じものとして扱われるため不満。

○ スマホとPCの両方でメモを取れる。少なくともiOS, Macに対応
Webから利用可能なのでOK。ただしiOSでは若干ソフトウェアキーボードの表示が崩れたりする。

×基本的にクラウドではなくローカルにデータを保存
これは完全にオンラインが前提。

総評としては悪くはないが理想ではないという感じ。階層構造がないため構造化の難易度は下がってはいるが、すべてを1レイヤーかつページ形式のみで管理するというのはいささか大雑把すぎる。ある程度情報を整理してから利用する分には非常に優秀であり、さらに検索性能は高いので利便性は高い。探索的な知識の保存ではなく、既存の知識を落とし込むのであれば非常に有用だと感じた。まさにCo-senseに関しては最適だ。

HackMD

基本的にはScrapboxに近いため詳細は省く。総評としては慣れ親しんだMD記法で書けるのが嬉しいメモ共有という感じ。1人で使う分にはメリットを享受できていないと感じた。(そもそもCollaborative Markdown Knowledge Baseと書いてあるのだから当然ではある)

Google Keep

完全に力不足で知識体系を記録するための媒体ではない。それこそWiFiのパスワードとかくらいの情報を書くものという印象。当然階層もないのでタグで管理するが、タグで管理するのは階層構造より困難だろう。

iOS標準メモアプリ

一周回って標準はどうだろうかと思ったが、階層構造で管理するメモ帳。もはや説明することもないのだが、メリットとしてはいずれのノートアプリでもあまり対応していない手書きとテキストを混在して書くことができ、管理できるところだろう。この点ではもっとも優れていると言ってよく、私は大学のノートはこれで取っている。

Obsidian

正直こいつが本命ではあった。知らない人も多いと思うのでざっくりObsidianを説明しよう。マークダウンエディタであると同時にパーソナルナレッジベースツールでもある新しいノートアプリである。

公式サイトを見ればわかるが、階層構造が表現でき、さらにグラフで相互関係を表現できる。Obsidian自体も「個人的なメモからジャーナリング、知識ベース、プロジェクト管理に至るまで、アイデアを考え出し、整理するためのツールを提供します(和訳)」というように語っている。

Obsidianは非常に優秀であり、今まであげたアプリそれぞれの良さを持ち合わせていると言っても過言ではない。

リンクの機能はScrapboxであげた強い参照機能である。単語などでページを作り、それを参照することで文中の未知語へのアクセスなども容易になっている。

グラフの機能が特に革新的で、それぞれのメモの相互関係を一目で把握することができるのだ。

さらにローカルでデータを保存しており、Obsidian Vaultとしてクラウドにも保存できてアプリから編集もできる。データ形式も非常にシンプルにMDファイルが保存されているのでFinderから確認することもでき、そういった意味でも扱いやすい。

「おいおいおい、最高のメモアプリ見つかっちまったか〜〜〜〜〜???」
落ち着いてもう一度条件を確認しよう。

△ メモの対象は多種多様でこれを整理して扱える
MDファイル限定なのでここだけが不満。

○メモ同士で参照関係や親子関係を表現できる機能
リンク機能とグラフ機能、そして階層構造ですべてを表現できる。

△メモの種類ごとで粒度を揃えて書くことを強制する
MD記法に限られるため、自分である程度制限したりする必要はあるがタグとテンプレートなどで対応可能。

○ スマホとPCの両方でメモを取れる。少なくともiOS, Macに対応
もちろんできる。

○基本的にクラウドではなくローカルにデータを保存
完全にその通り。

こうして振り返るとObsidianは非常に素晴らしいアプリである。最高であると言ってもほぼ差し支えない。加えて良い点をあげていくが、独自の暗号化をしておらずObsidianが仮になくてもMDファイルとして扱いやすい。さらにプラグインが非常に充実しておりカンバンボードなど任意のビューを柔軟に利用可能にします。

この時点で既にObsidianが最強に思われるかもしれないが、Obsidianの弱いところは「メモの種類ごとで粒度を揃えて書くことを強制する」ことである。やはりここは大きなネックとなった。例えば「これいい記事だな。URLだけメモっとこ」というような感じでページに1行URLがペタッと貼られているページがほかのページと同格、というよりは一目で判別できず同様の詳しさとして管理されてしまうというのは少し歯痒い。

「ああ、最高のメモアプリというものはないのだろうか…!」

Anytype

そして私はAnytypeに出会った。すごいざっくり解説するとほぼObsidianである。ローカルに保存するところやグラフ機能、参照機能などの諸々は完全に同じと言って差し支えないが、ファイルは暗号化されるためObsidianよりはその点で劣る。普通にMD記法は使えるし、MacにもiOSにも対応している。

「いやいや、じゃあObsidianでいいじゃないか」という気分になるが、Anytypeに唯一にして最大の機能がある。それがタイプである。

Anytypeの真髄:タイプ

タイプの機能だけで私はNotionもObsidianも通り過ぎ、全てのノートやメモをAnytypeに移行した。プログラマー向けに言うのであればタイプは変数の型である。

利用しているタイプの一覧

タイプはそれぞれのページに型を持たせることができる。例えばURLだけを入れたのであればBookmarkのタイプにするとこのようにメモができる。

Bookmarkタイプでは本文などを入力することをメインとせず、ただリンクを参照するだけである。私はよく趣味開発のネタ帳としてアイディアをメモする。そのときにはアイディアタイプを使う。アイディアタイプは自分自身で定義したものだ。

ほかにはHumanタイプというのがあり、人を管理できる。高度な連絡帳のような運用ができる。人のページなどどう使うのだろうと思うかもしれないがこれが覆ったより便利なのである。

よく論文のURLや記事だけをBookmarkタイプで作成し、その作者をHumanタイプのページで作成しそれぞれ紐付ける。こうするとグラフ構造でその人がどのような内容を書いたかなどを体系的に見ることができる。もちろんBookmarkタイプ同士で参照することもできるので、どのような流れで書かれたかなどを表現することが可能だ。

さてでは雑多な文章などはどうすればいいだろうか。そういうときにはNoteタイプで書けばいい。

そして清書した場合にはタイプを変更し、Pageタイプに昇格する。

タイプの変更


Pageに昇格したNote

これぞ私の求めていたメモアプリだ…。

またObsidianとは違ってNotionぽさもある。見ればわかるがページの上に絵文字をおける。そんなことかみたいな内容だがこれだけで少しポップになるのがデザインとしても嬉しいところだ。Obsidianは良くも悪くも玄人向きであまりにも質実剛健な印象を受けるが、Anytypeはその点ではもう少しNotion寄りである。

もはやここからはただのAnytypeのさらなる良さの紹介である。
Anytypeはローカルファーストである。
「ああ〜〜〜いいね〜〜〜〜。もう最高よその思想。大好き。」
さらにPeer-to-Peer
「うん、もう言うことないわ。」
そしてOpen code
「も〜〜〜〜どこにも非の打ち所がないじゃないか。」

ここまでいいところばかり書いてきたが当然欠点もある。まず安定動作。基本的にAnytypeはαリリースなのでその点はやはり理解が必要だ。といってもいつも発生するというよりはたまに日本語での動作が想定されていないような挙動を見受けられる。@を打つことで他のページを参照するための候補リストを表示することが出来るのだが、日本語の場合は変換状態で検索したいがEnterを押した時点で確定文字列として処理されて正常な絞り込みができない(たまに出来たりもする)。この場合は回避方法があり、まず検索ボタンで参照したいページを検索する。そのあと元のページで@を入力するとさっき検索したページが@の候補の1番上に表示される。アドホックな回避方法でできるだけやりたくない。細かいところの完成度は明らかにObisidianに劣る。スマホアプリでもUndoなどがなかったり色々不便だ。

おすすめする人

これはぶっちゃけ万人とは思っていない。まずそもそもいい感じのタイプを定義する必要があるし、プログラミングで言う型をわかってる必要がある。理解していなくても使えるがそれでは100%の魅力を感じれないのでNotionを使えばいいと思う。
次にローカルでデータを管理できるのを良いと感じれること。ここを感じるかの個人差は大きいので強くは言えないが、こういう考えの人はプログラマに多いように思う(主観)。
さらにαリリースというのがまだまだ不便なこともある。今後に期待したい。安定挙動を第一にするならObsidianを爆推しする。Obsidian -> Anytypeの移行は割と簡単なので一旦Obsidianで腰を落ち着けつつ、いい感じに完成してきたAnytypeを利用するというのもアリだと思う。

最近は検索エンジンの検索結果の汚染が激しいように感じるので、自分のメモにデータ蓄積をしていきたいと考えている。その一環としてAnytypeをヘビーユーズしているので、みんなが自分の知識蓄積をしていくのであればAnytypeは最適だと思う。

まとめ

メモアプリの旅を通じて、私は様々なツールを試した。それぞれのアプリには利点と欠点があり、最適なアプリを見つけるのは簡単ではなかった。Notionは多機能で強力だが、雑多なメモや瞬時のアイデアの管理には不便さを感じた。特に、階層構造の複雑さやクラウド依存が大きな課題となった。

次に試したScrapbox(現Cosense)は、シンプルな1レイヤー管理と強力な参照機能を持っているが、すべてが同じ階層に配置されるため、情報の整理が難しい点があった。HackMDは共有に優れていますが、個人利用には向いていない印象だった。Google KeepやiOS標準メモアプリは簡易的すぎて、知識の体系的な管理には不向き。

Obsidianは非常に優秀で、ローカル保存、グラフ機能、強力な参照機能など多くの利点があるが、メモの種類ごとに粒度を揃えて書くことを強制することが不向きな点がネックとなった。ただAnytypeより安定的に動作し、スマホアプリもクオリティが高いので、現時点においては安心して1番推せる。

最終的に出会ったのがAnytype。AnytypeはObsidianに似ているが、タイプ機能が決定的な違いを生んでいる。このタイプ機能により、メモを目的別に整理しやすく、URLメモ、アイデアメモ、人の管理など多様な情報をタイプとして情報を持たせて効率的に扱える。さらにローカルファースト、Peer-to-Peer、Open codeといった思想も私のニーズにぴったりであった。ただまだまだ完成度の点ではObsidianより不安定であったり日本語に最適化されていなかったりと諸々不安な点はあるが、それでもその不安を上回る期待を私はAnytypeに持っている。

総じて、Anytypeは私が求めていたメモアプリの理想に最も近く、今後も活用していく。しかし、すべての人にとって最適かと言えばそんなことはないので、この記事を読んでAnytypeを魅力的に思った人がいればおすすめしたい。

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