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模型用Li-Poバッテリーを用いたロボット製作は危険です!


ロボカップ世界大会2017 メジャーレスキューLi-Poバッテリー火災事故

模型用のLi-Poバッテリーは安全対策”ゼロ”です。


自動車や家電製品が安全に使用できているからLi-Poバッテリーをロボットに使っても問題ないと思っている方が大変多いです。
この認識は模型用のLi-Poバッテリーと自動車や家電製品のLi-Poバッテリーの安全対策に違いがないと誤解している事に起因します。

Li-Poバッテリーに必要な安全対策

Li-Poバッテリーは熱暴走によって発火や爆発を起こす故障モードが存在します。(ニッケル水素バッテリー・Li-Feバッテリーは熱暴走しません)
この為、熱暴走を防ぐ安全対策を厳重に施す必要があります。
安全対策の有無を比較したのが以下の表です。

安全対策比較

冒頭の ”模型用のLi-Poバッテリーは安全対策”ゼロ”です。”
は、キャッチーなコピーを狙ったものでも、誇大表現でもありません。

正しい設定による充電を行っても火災が発生します。

Li-Poバッテリーは80℃以上で熱暴走の可能性があり、温度異常検出は重要な安全対策です。
しかしながら、模型用Li-Poバッテリーには温度異常を検出する為の温度センサがありません。
この為に、Li-Poバッテリーを充電する際に充電設定が適正であっても熱暴走を生じる可能性があります。
実際に正しい充電設計にも関わらず火災が発生した事例が報告されています。
東京消防庁調査ニュース ”模型自動車等の充電池を充電中に出火した火災について"
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/hp-cyousaka/kasaijittai/h26/1-10.pdf

充電回路フローチャート(日立マクセル(株) 電池総合カタログ2015年1月・設計上のご注意 より引用)

上図の通り、模型用のLi-Poバッテリーの充電においては温度異常検出機能そのものがないので、異常停止せず火災に至ります。

動作時の火災事故


動作時の火災事故の主な要因は内部短絡です。
この夏流行った携帯扇風機に、発生した火災事故は落とした際にLi-Poバッテリーが変形した事による内部短絡に起因しています。
内部短絡防止の安全対策としては、強固な外装を施してLi-Poラミネートセルに変形が及ばない様にする必要がありますが、模型用のLi-Poバッテリーはフィルム1枚のみで、外力が直接伝わる状態にあります。

左:家電製品のLI-Poバッテリー 中央・右:模型用のLi-Poバッテリー

自動車・家電のLi-Poバッテリーと模型用のLi-Poバッテリーの安全対策の違いを御理解頂けたと思います。
見出し写真の”ロボカップ世界大会2017”に続いて”ロボカップ世界大会2018”ではジュニア・オンステージでLi-Poバッテリー火災事故があり、会場から一時避難する騒ぎでした。
私が近々で同行した3つの世界大会、2013オランダ、2017名古屋、2018カナダの全てでLi-Poバッテリー火災が発生している事になります。

左:2013オランダ 右:2019カナダ

そもそも、ロボカップ メジャー(大人の大会)がLi-Poバッテリー火災事故を起こしているのに、ジュニアに”起こさない様に”と言うのは無理があります。

まとめ


・模型用Li-Poバッテリーは安全対策が全く無く、全ての安全対策をロボット製作者が準備するには、Li-Poバッテリーを用いた製品を設計しているエンジニアと同等のスキルが必要

・Li-Poバッテリー火災事故はレアケースではない

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