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コラム8:「階段で」思い出したシャルドネ

コラム1「プイィ・フュッセは馬の風味」の原稿を送信した後で思い出したことがあった。
こんな時フランス語では、「エスプリ・ドゥ・レスカリエ〈esprit de l'escalier〉」と言うらしいが、話が終り、ドアを締め、階段〈escalier〉に来て思い出すという意味か。

1970年代に、ワイン関係者や一部の人の間で、プイィ・フュイッセの名が広まったことがあった。私がそのワインの名前を知ったのは、75年前後に読んだ吉行淳之介のエッセイからである。その後、何冊かの本からの情報では、安岡章太郎がフランスで飲んで感動し、帰国後文壇に喧伝したことが発端のようだ。それを、開高健や吉行淳之介がエッセイなどで広めた。
ワインのことなど何も知らない、20歳前後の若僧だった私がプイィ・フュイッセを知っていたのはこんな理由(ワケ)だ。  

有名人が喧伝すれば人も金も寄ってくる。ひと頃このワインは、実力以上にもてはやされ、実力以上の値がついた。よくもわるくもこのワインは、黄昏時、オードブルをつまみながら、友人と愉しむのにはとても良い相棒となる。
ぶどうは言わずと知れたシャルドネである。

コラム1で、ソリュトレの丘の下にプイィ・フュイッセの畑が広がると書いたが、その昔は一面に薊(あざみ)の生える野原であったらしい。薊はフランス語で〈le Chardon〉。
Chardonnay(シャルドネ)の語源と言われている。

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