コラム7:検証ー「中腹」は美味しいか?
ずいぶん前に、「ぶどう畑は中腹が良い」といった話を色々なところで聞いて、それならばと検証してみたことがある。
「コルトン」という、斜面が3層に分かれた格好の特級畑があるのだ。ワイン会で、上層の「クロ・デュ・ロワ」、中層の「ブレッサンド」、下層の「マレショード」を吟味した結果、ブレッサンドがかなりの票を集めた。 結構納得する結果だったことを憶えている。
丘の上では雨で表土が流れ落ち、丘の下ではその分、表土が厚くなり場所によっては粘土質になったりする。中腹が都合が良いということが理由の一つである。
ブルゴーニュのぶどう畑は、南北に帯のように伸びでいる。コート・ド・ ニュイの地図を見ると帯の中、左側に細い赤色の線が平行して走っている。 ワイン関連の地図では、グラン・クリュ(特級)は濃いピンクか赤で示されていることが多い。よく見るとコート・ド・ニュイの赤い線は、標高250m~300mの巾の中に収まっており、まさにグラン・クリュは中腹にあるのだ。
気になっている畑がある。V・ロマネの1級畑「レ・スショ」。北からエシェゾーまで伸びたグラン・クリュの帯が、レ・スショで切れ、また南のサン・ヴィヴァンから続いている。グラン・クリュに挟まれたプルミエ・クリュ(1級)とは、いかにも不可思議だ。 しかし等高線の入った地図を見ると推測出来ることがある。レ・スショの西の方(斜面上部)に谷らしきものがあり、畑も周囲よりやや低い。推測するに、昔ここには川が有ったと思われ、土壌や水捌けが関係して、グラン・クリュではなくプルミエ・クリュに格付けされているのだろう。飲んだ人の話では、グラン・クリュに匹敵する味わいだそうである。
畑は地形と深い関係にあるが、昔の川の記憶も残っているだろうか。
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