象を洗う2

小説に登場する象

小説で扱われた象のご紹介をふたつ。写真は『象を洗う』の挿絵(牛尾篤)から。

ひとつめは阿川弘之の小説、『エレガントな象』。中学生男子(檀ふみの甥)の英語の家庭教師の最中の話。おっきい⇒象(エレファント)。
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「エレガントは何の意味?」
「ええと、ええと、ええと」甥は答へられない。おふみ(筆者注:檀ふみのこと)はちょっと気取ってみせる。
「ぢゃあね、叔母さん(筆者注:檀ふみ)のことを考へてごらん。叔母さんの姿を、人が日本語で上手に言ひあらはすとしたら、どんな言葉を使ふでせう」
「分かった」、中学生が叫んだ。「象だ」
 檀ふみの大柄な容姿、さう言へば象を連想させないでもない。
〜〜〜〜〜一部抜粋

檀ふみは、楚々とした雰囲気で、象のように落ち着いて賢いタレントさんだったなぁ、と懐かしく思い出す。

ふたつ目は、佐藤正午の小説『象を洗う』。小説家は体力勝負らしい。小説家が親戚に本を送ったお礼にそうめんを80束を送られる。

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 毎日まいにち、机に向かって小説家らしい儲け方に励んでいる。仕事をするのはおもに深夜、夜食は当然そうめんである。夜食のあとにはアリナミンを服用する。必ず服用することに決めてある。これは去年テレビで「アリナミンを飲めば象を洗える」とさかんに宣伝していたからだ。象を洗えるほどの効果があれば、小説を書くくらいは何でもない。そう思いながらのむことにしている。
 そうめんを食べては象を洗い、象を洗っては、そうめんを食べる。いまはその繰り返しで毎日が過ぎていく。退屈な繰り返しだが、そうめんをたいらげる頃には、象を一頭洗い終える予定である。
〜〜〜〜〜一部抜粋

象を洗うという肉体労働と小説を書くという仕事。ともにアリナミンは必要だったらしい。