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遅すぎるなんてことはない!? 英語学習と年齢の関係性

 みなさん、ごきげんよう。

 「いまさら勉強を始めても、もう手遅れでしょうか?」
 「自分の年齢だと、これ以上の上達は望めないでしょうか?」

 このようなご相談をいただくことがしばしばあります。
 何か新しいことに挑戦しようとするとき、さらなる高みを目指して踏み出そうとするとき、「年齢」という要素は多かれ少なかれ気になるものですよね。

 社会人を対象とした英語学校(30代後半以上の生徒が多いそうです)で指導している私の知人は、最初の授業で生徒たちに次のように言うそうです。

「みなさんは若いころに真剣に英語を勉強しなかったから、いまこの場にいるのでしょう。英語の習得は年齢とともにどんどん難しくなりますが、しかたありません。若い頃に怠けたツケを払うつもりで必死になって勉強してください!」

 しかし彼の言葉は本当でしょうか?年齢とともに言語の習得は加速度的に困難になるのでしょうか?今回は英語学習と年齢の関係性を考えてみたいと思います。

「臨界期」という考え方

 臨界期(Critical period)という言葉をご存知でしょうか。ある技能を習得するために最も適している時期、逆に言えばそれを過ぎると技能の習得が難しくなる時期を「臨界期」と呼びます。

 英語も技能である以上、臨界期が存在すると考えられてきました。さまざまな説が唱えられていますが、12歳~15歳あたりで線引きをすることが多いように思われます。そしてこの年齢を過ぎると言語習得は難しくなると考えられています。

 この臨界期の考え方は幅広く信じられているようで、「自分の年齢ではもう…」と言語学習に二の足を踏む人は少なくありません。
 またせっかく学習を始めたのに「この年齢だから…」と英語の伸びをあきらめてしまう人にもしばしば出会います。

臨界期は仮説にすぎない!

 しかし臨界期は科学的に証明されたものではありません。ですから、臨界期に関する考え方は正確には「臨界期仮説」と呼ばれます。あくまで「仮説」であって実証された理論ではないのです。

 実際に臨界期を過ぎてから英語学習を始めて高度な英語力を身に着けることに成功した人は数多く存在します。40代、50代から学習を始めて目標とするレベルに到達することができたという人も多々存在します。

 「臨界期仮説は『俗説』だ!」とまでは言いませんが、少なくとも言語習得を断念したり上達に見切りをつけたりする根拠にはならないと言えるでしょう。

目指すゴールは「ネイティヴ」ではない!

 そもそも臨界期仮説はその言語のネイティヴになることを前提としたものです。たしかに「ネイティヴになること」を目標とするなら、いわゆる「臨界期」より前に学習を開始することが必須かもしれません。

 ところが、学習者の目標は「ネイティヴになること」ではないと思います。英語を用いてネイティヴを相手に必要にして充分なコミュニケーションを取ることができれば良いはずです。

 ノン・ネイティヴでありながらネイティヴにほぼ匹敵する言語運用能力を習得した人のことをニア・ネイティヴと表現することがあります。

 いわゆる「臨界期」を過ぎて英語の学習を開始しニア・ネイティヴの域に達している人は一定数存在します。
 その割合は調査や分析方法によっても異なりますが、カナダのMcGill Universityで調査研究を行ったLydia WhiteとFred Geneseeは、12歳以降に英語学習を始めた人の中でニア・ネイティヴの域に達している学習者が約35%存在したという結果を報告しています。これはかなり勇気づけられる研究結果ですよね。

 このように考えると、ニア・ネイティヴを目指して学習するならば臨界期は絶対的な障壁にはならないということが分かります。「自分の年齢ではもう…」などと悲観することはないということです。

年齢よりも大切なこと

 英語学習が成功するか失敗するかについて大切なのは年齢ではありません。年齢という要素がまったく無関係だとは言いませんが、それがすべてではありませんし、上達しない理由を年齢に求めることはまったく生産的ではありません。言うまでもなく年齢を元に戻すなんてことはできないのですから。

 では英語の習得において年齢よりも大切なものとはなんでしょうか。ここでは特に大切だと思われることを3つ挙げておきたいと思います。

目的と目標を設定する

 第一に目的と目標をきちんと設定することです。

 前述のとおり「ネイティヴになる」ことを目指すならば年齢は大きな意味を持つことになりますが、それを目指す人は多くはないでしょう(そもそも学習を通してネイティヴになるのは不可能ですが…)。

 大切なことは英語を学習する目的を明確にすることです。目的が明確になれば目標が定まります。その目標に向けて着実に進んで行くことの方が、学習成果を上げるためにはずっと重要だと言えます。

 目的と目標の設定方法についてはまた別の機会に詳しくご説明したいと思います。

最適な学習方法を選択する

 目的が定まったら目標が定まります。目標が定まったらそれを達するために必要で最適な学習方法を選択することが大切です。

 英語力の土台を築くための学習は多くの人に共通する内容になると思いますが、レベルが上がってくればくれほど、個々人の目的や目標にふさわしいアプローチが必要になります。

 また日本語ネイティヴならではの学習方法ということも考慮する必要があるでしょう。日本語ネイティヴである私たちとネイティヴは文化的背景や思考回路が異なります。ネイティヴとまったく同じ方法で英語を習得するのは限りなく難しいのは当然のことです。
 日本語ネイティヴに合った学習方法を選択することも成功のためには重要なカギと言えるでしょう。

学習をコツコツ継続する

 目的や目標を設定し、最適な学習方法を選択したとしても、その学習を継続しなければ効果は上がりません。

 英語の習得に失敗している多くの人が学習を断続的に行っているようです。つまり学習を「やったりやらなかったり」という状態に陥っているということです。

 英語はスポーツと同じだと言われることがしばしばあります。スポーツは1日練習を休めば3日分後退するなどと言われることがありますが、英語も同じです。特にある程度の英語力が着くまではいかに学習を継続させられるかが重要です。

 学習を継続させるための工夫についてはまた別の機会にご紹介したいと思いますが、とにかく毎日、コツコツでも学習を続けなければ、英語力を身につけることはできないのです。

 今回は英語の勉強と年齢の関係性について考えてみました。

 たしかに年齢を重ねるにつれて記憶力や集中力が減退することはあります。また職場ではより責任ある立場となり、家族のこともケアしなければならないなど、自分だけの時間がとりづらくなるのも事実です。

 しかしその一方で人間は年齢とともに理解力と知恵を発達させます。このような要素をうまく活用することも、年齢に関係なく英語を習得するためには大切です。

 そして最も大切なこと、それは「自分の年齢では…」というネガティヴなマインドセットを捨て去ることです。「やる!」と決めた以上は自分を信じて前を目指して進むことが重要です。

この記事のまとめ

1.「臨界期」は仮説に過ぎず実証された理論ではありません。
2.臨界期を過ぎて学習を始めてニア・ネイティヴの域に達している人は一定数存在します。
3.ニア・ネイティヴを目指すなら学習は絶対的な障壁とは言えません。
4.英語学習を成功させるには年齢よりも大切な要素があります。
5.その要素とは「目的と目標を設定する」「最適な学習方法を選択する」「学習を継続する」の3つです。

 最後まで読んでくださりありがとうございました。
 それではまた。ごきげんよう。

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