音楽の釈義 #2 Haircuts For Menの清新
#2 Haircuts For Menの清新
『音楽の釈義』第二回はホノルル出身のビートメイカー、Haircuts For Men。
▼BARBER BEATS
午前3時頃、Youtubeで音楽をディグっていると洗いのかかった(緑と紫の)サーモグラデーションをサムネイルにした3時間のBGM動画が出てきた。
ジャケットに惹かれ、すかさず再生するとスピリチュアルなアンビエントミュージックが始まった。くだらないチルBGMかと思い、期待もせず再生バーをいじった。その瞬間、予想した音楽はこのプレイリストにないことに気づき、同時にそのミスティmistyで軽快なサウンドの、初めて感じるムードに衝撃を受けた。そしてこの動画のサムネイルの右上には「BARBER BEATS」と書かれていた。
▼ミスティな包装
Barber Beatsというジャンルに出会ってすぐにこの界隈の開拓者を探した。まだ歴史の浅い(Barber Beatsという言葉は2020年から)ジャンルであるため、目的の情報がすぐ手に入った。そのパイオニアの名はHaircuts For Men。彼の曲”フェザー級”を聞いてみよう。前記事「#1 Lonnie Liston Smithの涼」で言った「緊張と弛緩」の両立が彼の音楽でも成されていることがわかると思う。Haircuts For Menの音楽の「緊張と弛緩のギャップ」はLonnie Liston Smithのそれに比べ遥かに小さく、ミスティ(ヴェイパー)なパッケージで封をしている。これにより中身の輪郭がぼやけ、ひとまずムードミュージックとしてリスナーに現象したのち、リスナーの音楽経験によって中身の歪みが整形されていく。(テクスチャを担う)パッケージのミスティなムードプレゼンによるBGMとしての能と、中身のビートの爽快さ(スネアやラテンパーカスをはじめとする切れ味の良いサウンド)を併せ持つ清新さが彼(あるいはBarber Beats)の音楽にはある。
上のアルバムは他アーティストによりbandcampにアップロードされたBarber Beats。bandcampでBarber Beatsのタグ検索をかけるとさまざまな音源がヒットする。そして、その多くはHaircuts For Menのジャケットのようなコラージュアートを採用しており、怪しい日本語を題名に添えたカセットテープの作品として販売されている。