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音楽の釈義 #4 相対性理論のちぐはぐ

#4 相対性理論のちぐはぐ


 『音楽の釈義』第四回は日本の4ピースバンド、相対性理論。(2012年までの作品について)

▼相対性理論っぽい
 "スマトラ警備隊"を聞いてみよう。出だしはBa.とDr.とGt.の斉奏のダイナミック。少しするとDr.は簡易的な基礎を築き、割と大きめで存在感のあるBa.が限られたピッチで動き出す。Gt.はだらしなく雑味を多く含んだ具合だ。以上の3ピースからなるバンドサウンドはどこか学園祭のライブにも近い即興感を残しながら、シンプルの中に行方知れずの絶妙なムードを作る。そして、極め付けはVo.やくしまるえつこ。天声を持つ彼女には、誰かに言われ仕方なく歌っているかのような脱力感がある。理想とする音程が出せているのか不安になるほどのちぐはぐだ。そんな彼女が読む詩が「やってきた恐竜 街破壊 迎え撃つ 私 サイキック」。SF×ちぐはぐという一見ミスマッチにも思える2つは、異様な化学反応を起こす。
 どこからか同例を持ってきて相対性理論の良さを説明したいが、それは叶わぬ望みである。なぜなら、「ちぐはぐしたファンタジー・サウンドスケープが天声を軸に展開される」というこの世に2つとない固有音楽であるからだ。また、それゆえに相対性理論の音楽はジャンルや他アーティストを持ち出して「○○みたいで良い」「△△のジャンルの中でも群を抜いている」などと語られることはない。そして、相対性理論ファンはその風変わりな音楽をこう形容する。
「相対性理論っぽい」

↓ファン制作のやくしまるえつこ専門サイト

▼渋谷系
 突然変異とも表現される相対性理論というバンドの独自性。他の類似品を見つけ出すのは困難を極めるが、僅かにその音楽のニュアンスを纏うジャンルがある。そのうちの1つが渋谷系。このプレイリストからその風情を感じることで、相対性理論というヌエ的存在に迫るための綱を掴んでほしい。そして、改めて相対性理論の音楽を聞き直し、ほつれた綱に結ばれた問題作の不可解さと特異性を味わってもらいたい。


 以下に、相対性理論メンバーが所属していた2つのバンドを紹介する。

・TUTU Helvetica
 やくしまるえつこと真部脩一によるユニット。以下は自動車メーカーHONDAの公式サイトにBGMとして起用された「well-known blueberry」。

・進行方向別通行区分
 真部脩一がギタリストとして加入した、大学時代の田中先輩(笑)のバンド。モブキャラ感満載に紹介した田中先輩という人は、実は相対性理論のサウンドに最も直接的に影響を与えている重要人物なのである。

 最後に、2012年までの作品についてどのような所に田中先輩らしさがあるのかを説明したブログを載せておきます。

 相対性理論はメディア露出が非常に少ないため、希少な音源をdigるのも楽しい。本当に好きな人だけが辿り着けるライブ音源やデモを初めて聞いたときの感動と達成感は音楽の良し悪しとは別のところではあるが、まさにこれもまた一興なのだ。

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