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音楽の釈義 #3 石川晶とアフロ

#3 石川晶とアフロ


 『音楽の釈義』第三回は日本のジャズドラマー、石川晶。

▼レアグルーヴ
 1975年にオリジナルリリースされた石川晶とカウント・バッファローズのアルバム『GET UP!』が、ここ数年で80,000円〜179,800円(ヤフオク)のプレミアで落札された。ストリーミング主流の現代において再評価されている事実は、(流行という変動するシチュエーションの影響下にはない)石川晶のアフロビーツに対する造詣に基づくクロスオーヴァーサウンドの堅牢さを物語っている。レアグルーヴとして時代を超えて賞賛される『GET UP!』は、YouTubeでも60万再生を突破しており、コメント欄では”We need a documentary on the Japanese music scene in the 70s.”のように日本の昭和音楽の魅力を再認識する意見が支持されている。

▼生命のアフリカ
 ”Get Up !”を聞いてみよう。まず初めに寺川正興さん* のベースがシンプルながら多少のズレを含んだ生きたリフを生み出す。すぐに後を埋めるように石川晶さんの小粒のスネアがこれまた畝りを生み出す。寺川・石川の2つの波は僅かに振動数を変えて互いに強めあったり弱めあったりする。この唸りのような現象はブラスサウンドとも行われ、「互いの存在によって初めて生まれる差(ピッチや時刻のギャップ)」が膨らんだり萎んだり(呼吸を)すると音楽に息が吹き込まれる。彼らのアフロジャズファンクとも言えるサウンドは石川晶のアフリカ観を礎とし、生命のエネルギーに満ちている。


 * 以下は、ベーシスト寺川正興さんの代名詞であるエレベーター奏法(2オクターブほど上下する)が聞けるプレイリスト。『夜汽車の女』は特にLed Zeppelinを思わせる音数の多さとサイケギターのような音色がカッコイイ。他曲でも粒が細かく跳ねるようなファンクベースを鳴らしている。

 アフロファンクであわせて紹介しておきたい「稲垣次郎とソウル・メディア」の『ファンキー・スタッフ』。こちらは石川晶に比べムードミュージックとして籠った音でまとまっている。

 石川晶、稲垣次郎といったアフロビートを得意とする日本人はマラカスやコンガの入れ方が上手く、(日本と関わりの深いVaperWaveにも多用される)それらのサウンドに対する理解が進んでいるように感じる。日本とブラックミュージックの間では案外面白い化学反応が起きているのかもしれない。

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