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読書感想文 神さまたちの遊ぶ庭

北海道に関する本を読んでみようと選んだ1冊。てっきり小説だと思って読み始めると、え、エッセイ?
北海道の大自然の話を実体験するってことが私の想像力から欠如していて、てっきり小説と思い込んでしまっていたのでした。すごい行動力のある人がいるもんだ…理想として自然の中で暮らしてみたいっていう気持ちはとてもある。よくわかる。でも、実現させるのはなかなか…と現実的な思考に囚われる私なのでした。

自然公園の中にある小さな集落に山村留学として1年間暮らす日々。3人の子供達が小中学校合わせて15人の学校生活を通じて町の様子が伝えられていくのですが、町の人たちの圧倒的なキラキラ感、生命力みたいなものが強くて、田舎や過疎からくるネガティブなイメージがない。作中にも触れられていて、全くない訳ではないようだけれど、僻地と呼ばれる場所に住み続けるにはそれだけパワーがないと難しい、望んで、選んでそこに住む人たちの楽しむ力みたいものを感じました。

自由度の高い学校生活、地域一帯となって子供達を見守り、育て、一緒に楽しむ様子は素敵だなと思うと同時に、あまりに自分の過ごした学生生活とは違ってなんだか違う世界の話を見ているようでした。この本が書かれてからまだ10年も経っていない、なんなら私の学生生活の方がうんと前なのに、テレビが映らなかったり、ネットも繋がりにくい、近くのコンビニまで40km…そんな中に入っていてどんどん楽しそうで1年が終わる頃には帰りたくないと家族みんなが思う場所。神さまたちが遊ぶ庭。トムラウシ。圧倒的な自然と人のやさしさが現在の便利さ、不自由さを上回る世界。凄い。

もちろん移住された宮下さんご家族のその世界を楽しむ力があったからこそ、共鳴し、離れ難い場所になっていって、宮下さんの視点や宮下さんが書かれる文章によって発見、気付かされた良さが詰まってるように思いました。お母さんから見る3人の子供達が、クスッと笑いを誘う表現で書かれていて、おもしろいし、かわいらしい。
お父さんの出番は少ないのだけど北海道が好きで言い出しっぺ。でも無口で読書家。なんとなく町に馴染めてるのかな?と思っていたのですが、福井に帰ってきてからの一節に1番変わったのは夫かもしれない、人はいくつになっても変われるのだとあり、お父さんも素敵な時間を過ごされていたのだなぁと思いました。
宮下さんやお隣さんのなっちゃんに起こったハッとする出来事に、心ってわからない。自分でも分からない。分かるふりをしたり、分かったつもりになったりするよりいい、少なくとも分からないことがあると分かってよかったとあり、すごく真をつく言葉だなぁと思いました。

あとチャンスの神様はわりとふさふさで、もし前髪しかないなら掴んじゃダメだろうっていう考えもユーモアあふれてて素敵だなぁと思いました。コロナ禍でこの本を読むと一年の過ごし方でとても濃い一年と何もかも我慢の一年と比べてしまうところでこの一節は救いのある言葉になりました。

素敵な時間を過ごし、素敵な経験が出来る、素敵な場所。羨ましい、でも自分に出来るか?と考えるとちょっと躊躇してしまうかも…そんな気持ちを一歩踏み出す勇気がある人だけが味わえる特別な場所なのかなぁと思いました。

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