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音楽レビュー|Sen Morimoto(森本 仙)


Sen Morimoto

───Japanese jazz rap multi-instrumentalist.



 彼は京都生まれ、マサチューセッツ州西部出身で現在はシカゴに住んでいる。ジャズラップのマルチインストゥルメンタリスト、10歳でサックスを学んだ。

「子どもの頃は、ニューオーリンズのバンド、The Neville Brothersのサックス奏者チャールズ・ネヴィルが近所に住んでいて、とてもラッキーなことに週末にサックスのレッスンをしてくれました。歌詞がなくても楽器を使って感情を表現し、歌詞をメロディとハーモニーに解釈する方法など、たくさんのことを学びました。」

▲のちにジャズとヒップホップをクロスオーバーさせるマルチ楽器奏者となる。

ジャズラップ


 米R&Bバンド「ネヴィル・ブラザーズ(The Neville Brothers)」のメンバーでサックス奏者のチャールズ・ネヴィル(Charles Neville)から音楽におけるリズムとブルージーさを10歳という若さで学んだ。

 大人でもジャズやブルースなどの音楽は縁遠いものだが、やはり思春期の頃の彼は少々尖っていて、10代半ばを過ぎた頃には仲間内で悪さをしてはRAPにのめり込んでいった。

 といっても大きな問題は起こすこともなく、音楽にそのエネルギーを注いでいく、ある意味ではその若き日のRAPと幼い頃に学んだR&Bを自身の中で消化し、彼の中の音楽の数々が生まれていったのでしょう。

マルチインストゥルメンタリスト


 サックスの他に、ギター、ドラム、ピアノ、あらゆる楽器を演奏する彼はその肩書に”マルチインストゥルメンタリスト”(multi-instrumentalist)と称される程に音楽に精通している。

”マルチ・インストゥルメンタリスト (multi-instrumentalist)とは、複数の楽器の演奏が出来る音楽家や演奏家の呼称 ”

レーベルに所属


 音楽家のNnamdï(ナムディ)に評価され意気投合。彼のレーベルSooper Recordsより2018年『Cannonball!』をリリース。このアルバムは88Risingでも取り上げられ、88Rising・Sooper Records双方からリリースされることとなり注目を集めた。

影響を受けたアーティスト


▲彼が音楽活動を始めた頃に影響を受けたのは「OutKast」で特に”Gasoline Dreams”に夢中になったと語っている。OutKastの全ての曲の曲調としていえるのがPOPな要素が強く、そこに文脈としてRAPが入っているという印象だ。

▲マイルス・デイビス(Miles Davis)の「So What」のサックスでのソロの部分、初めて耳コピしたのがこの曲だと彼はあらゆる媒体で語っている。

▲R&BとRAP、そこに彼の今の音楽性のアイデンティティを示すのものが要素として入っているのかもしれない。


”アリス・コルトレーン(Alice Coltrane)の「Going Home」は、僕の心を大きく開いてくれたんだ。映画的で空間的で宇宙的な感覚を持った作曲やサウンドデザインへのアプローチを感じるよ。この作品が僕に与える感覚は他のどんな音楽とも違う。それは何か超自然的なものと深く調和してるみたいで、僕はいつも自分の音楽でそれに到達しようとしてるんだ”

ーSen Morimoto.


▲この曲には特に思い入れが強いようで、これを完成形と捉えて目標のような位置づけとして彼は考えていて、自然を取り入れる要素として音楽に落とし込もうと常に想像し創作しているようだ。

 彼の音楽にある歌詞には資本主義の限界を歌っているものが多くあり、これらアーティストの影響や彼の生活環境、境遇など含めての経験から来る人生観なのかもしれない。

映画からのアイデア


 映画『エターナル・サンシャイン』、『Be Kind Rewind』(邦題『僕らのミライへ逆回転』)、『The Science of Sleep』(邦題『『恋愛睡眠のすすめ』』)の大ファンであるとしながら、自身の楽曲であるMVにその要素を取り入れたそうだ。

▲「これ(このMV)はミシェル・ゴンドリー(Michel Gondry)から多大な影響を受けた私のミュージックビデオです。」と公言している。

 即興ジャズをベースにソロのラッパーとしての活動を開始しながら、徐々にジャンルにとらわれない独自のインストゥルメンタルの制作へと傾倒、ジャンルから解放された自由奔放な表現力はMVにも表れている。

▲DTMの要素を取り入れているのも彼の特徴としてある、通常このようなアプローチはある一定の層に偏る傾向にあるが、こういった自身にある音楽性をしっかりと表現できるのはそのセンスにあるだろう。


|最後に。

 彼はマサチューセッツの森の中にあるとても小さな町で育った、その影響からか彼の作る音楽には自然に通じる静けさを持っている。

 マサチューセッツには日本人の移民や一時的な滞在者の小さなコミュニティがあるそうで、その近くにあった大学がコミュニティの子どもたちが日本のルーツと日本語にコネクトできるように、地元の教会で日本語学校を週1回開いていた。

 彼はそこの出身であり、当時はあまり良い印象では無かったようだ。

 彼曰く「本当に悪い生徒だったので通いたくありませんでしたが、今となっては、本や漫画、そして同年代の人たちと日本語で話すことを通して、日本とコネクトする方法をもたらしてくれたコミュニティにとても感謝しています。」と語っている。

 こういった経験からもある種世間への反抗の要素としてRAPという音楽性に触れ、表現の幅を増やしてはサックス以外にもドラムやギター、DTM(デスクトップ・ミュージック)を学び、それらを活用した曲作りに没頭していった。

 古典的な音楽に現代の要素を足しては、MIX性の音楽を作曲していったのはこの経験が生かされているからなのでしょう。

|以上。


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