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音楽レビュー|Yvette Young


Yvette Young

───She is the front-woman for the math rock band Covet.

Years active 2009–present


 繊細で美しいメロディラインを紡ぐ唯一無二のプレイスタイル。ソロで活躍していた彼女はのちにCovetを結成し、マスロック界ではタッピングの女王と呼ばれた。


 イヴェット・ヤング(Yvette Young)はアメリカのミュージシャンでマスロックバンド「Covet」のギタリストとしても活動している。彼女は1991年6月28日にカリフォルニア州サンノゼで生まれる。

 父のフィルは歌手であり、アコーディオン奏者、作曲家だ。母はオルガン奏者、アコーディオン奏者である。4歳からピアノ、7歳からヴァイオリンのレッスンを受け、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で美術学士号を取得しては2009年にギターの演奏を投稿してキャリアをスタートさせた。

マスロック 


 マスロック (Math Rock) とは、その音楽の特徴である「数学的な複雑さ」から「数学的 (Math)」と形容されるようになった。このジャンルは変拍子やポリリズム、複雑なリズム構造を多用する。起源としてまずジャズがあり、次にプログレッシブロックと続く。

精神性


 彼女は中学2年生から高校卒業までの間に、拒食症、うつ病、不安神経症などで何度も入院した経験があり、これらの疾患はピアノのコンクールや学業のプレッシャーから来るものだった。

 精神的な疾患を抱えていた時期にギターを始めたことが彼女の救いとなったそうで、重苦しいクラシックの音楽へのプレッシャーや将来への不安、そういった様々な要因から解放を望みギターを弾くことで彼女は自身の感情を表現した。

 ギターという開放的な音楽によって心の安定を取り戻すことができたとyoutubeで友人と語っている動画もある。

▲突出すべきはその技法とセンス、音楽というのは理屈で語れば必ず周波数とポジション、度数の進行やリズム、ジャンルや音楽史の話になってしまうが、その理屈込みでも音として優れている。

 数学的 (Math)要素として捉えられるマスロックというジャンルだが、彼女は摂食障害で入院した後、独学で耳でギターを学んだ。彼女はそのパートを声に出して歌い、それをギターで再現して自分が書いた曲のパートを解読するテクニックを使っている。


"「私は耳で書くのでコードシェイプに関してはあまり枠に入らない。伝統的な形をまったく使用していないから多くの人からびっくりされるの。私は多種多様な種類のチューニングを使っているけどすべてのチューニングですべての形状を学ぶのに本当に時間をかけなかったわ、それは他者からすれば馬鹿げているようにみえたと思うわ。」"


 ギターのチューニングは「F-A-C-G-C-E」と「D-A-C#-F#-A-E」が多いようだが、この変則チューニングに対してのアプローチとして声として出して歌った内容をそのまま割り当てるらしく、所謂ギター理論(音楽理論)に基づいてというものではない。

 しかしながら、その過去の音楽の経験から理論は出来上がっているだろう、ピアノなどの音楽理論からの発想での基礎そのものから音へのアプローチを行っているのだから、これ程に繊細な音楽を演奏することが可能となっていると捉えて良いでしょう。

ルーツ


 彼女が影響を受けたバンドは「toe」と「American Football」だと語っている。

▲日本のマスロックバンドである「toe」。そのもの悲しくも切ないメロディー、歌詞にも『上手くいかない』というもどかしさがテーマとしてある。

▲American Footballのギターの変則チューニング(F-A-C-G-C-E)は間違いなく彼女の音楽性に影響を与えている。

 音楽は理で語るのが非常に難しい、例えば最も優れている音楽とは?と聞かれると再生数でいえば園児や幼児向けの音楽が代表格となるし、何をもって正解かと問われると明確に答えることが出来ない。

 ただひとついえるのはファッション性であったり、文化的側面もあって流行のスタイル、例えばその年代に合った内容というものも個人にとっては重要な要素でしょう。

 伝統的なクラシック音楽というのもある種退屈とも取られる場合もある訳で、最もらしく語ろうともその音楽性を押し付けているに過ぎない場合が殆どだ。

 ただ少なくとも彼女のプレイスタイルや歌声は理もセンスも技量も他よりも突出している、個性もあり技術も高い、それは彼女が歩んできた音楽にそのルーツがあるでしょう。

美術と音楽


 大学では美術を専攻。

 将来の職業について音楽か美術か、とりあえず両方をやってみようと彼女は大学を卒業してしばらくは美術の教師を務めながら仕事終わりの時間を使って作曲をしていた。

▲「Catharsis |Covet」EPのデザインは彼女自身が描いている。

Covetでの活動


 2014年には初のソロEP『Acoustics EP』を発表し、2015年に3人組バンドのCovetを結成した。

 1人で書き溜めていた楽曲をバンドでプレイするために古い友人らに声をかけ集まった。単なるガレージ・バンドとして自由に活動を続けていたが、Covetとしての初EP『Currents』がマスロック界隈で一躍話題になり、彼女のYouTubeチャンネルやSNSも爆発的に再生回数が伸びていった。

▲バンドでの活動は楽器での演奏を重視している所謂インストゥルメンタルであり、一切歌っていない。

使用機材


▲エフェクターの所有数はかなりの数だ。

Ibanez Talman YY10


Ibanez Talman YY20


Strandberg 7弦ギター


 2本のアイバニーズ・タルマン・ギターにSeymour Duncan Five-Twoシングルコイルを搭載、彼女の殆どのギターにこのピックアップが使われている。そして彼女がペイントした7弦のStrandberg Boden J7。他にもTM1702やTM730、TC630をピンクに塗装したもの、Cort GA5F-MDのアコギ、ヤマハA5Rのエレアコも使用しているようだ。

エフェクター


 ペダルに関してはシーンによって違うようで、彼女のyoutubeチャンネルでもその演奏スタイルによって頻繁に変えられている。

EarthQuaker Devices The Warden :
ノブはTone:12時、Attack:1時、Release:2時、Level:1時、Ratio:1時、Sustain:3時でセッティング。ブースターとして用いている。

EarthQuaker Devices Avalanche Run :
リバーブ&ディレイペダル。

MXR Carbon Copy Deluxe :
アナログディレイ。

Caroline Guitar Company SOMERSAULT :
コーラス・ビブラートペダル。

a Fathom Reverb :
ショートテール・リバーブ。decay:11時、dampen:12時、mix:1時、X:9時、program:off、modはLOに設定。

Julia Chorus :
rate:8時、depth:4時、log:3時、d-c-v:4時。音色により深く揺らぎを与える時に用いている。

MXR Carbon Copy Deluxe Analog Delay :
ディレイ。セッティングはMIX:4時、REGEN:1時、DELAY:2時、SPEED:12時、WIDTH:12時。

MXR Bass Octave Deluxe :
ベース用エフェクターだが、音を重厚にするために用いている。GROWL、DRY、GIRTHともに1時でセッティング。

Electronic Audio Experiments Longsword :
クリーンブースターとして使用。ノブはLEVEL:11時、HIGH:9時、MID:2時、LOW:3時、DRIVE:21時、BOOST:9時。

Meris Mercury7 :
アナログリバーブ。SPACE DECAY:8時、MODULATE:8時、MIX:11時、LO FREQUENCY:12時、PITCH VECTOR:OFF、HI FREQUENCY:1時の設定。

Ground Control Amaterasu V2 :
ブースター。セッティング不明。

TC Electronic PolyTune3 :
チューナー。

MXR Ten-Band EQ :
イコライザー。基本的にストランドバーグとともに用いる。

TC Electronic Ditto :
ルーパーとして使用。楽曲「Glimmer」などで使用。

▲他にもWalrus AudioのSlöやMeris系も使用するようだ。

アンプ


 ツアーやライブではVOX AC-30W、表面にTOYOTAのロゴが貼付されている。セッティングはTREBLE:1時、BASS:9時、REVERBはレベルは低め、TOMEは12時にしていてTREMOLOとTONE CUTは使用していない。他にRoland JC-40も使用している。

ピアノとヴァイオリン


▲小気味よく細やかなタッチが永遠に続く、この曲以外にもピアノ曲は多数あり、ピアノ曲だけを集めたEPもリリースしている。


|最後に。

 彼女はギター以外にもピアノやヴァイオリンも演奏できる、そのどれもが技術が高くセンスもある、何より辛かった学生時代の音楽がギターという遊びに向かったことで音楽をより楽しみ、そこに精神的な要因も加わって表現の幅が広がっている。

 こと音楽というジャンルはその人の個性が現れるので、そこに対してある種の様が生まれる様式美のようなもの、音楽にはライトな音楽とそうでないといわれるジャンルもあるが、それ全てに対して同等の位置に存在するのがその様、様式美だ。

 このシーンに対して作られたとか、自身の表現であるとか、それは多種多様、深いも浅いも無いというのが音楽でしょう。

|以上。



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