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今週の新聞[2022.11.12-11.18]

「母語には危険な罠があるんですよ。なんでも自由に言えると思っているけれど、母語に隠された暗黙のプレッシャーを無意識に引き受けてしまうので、だんだんものが言えなくなってしまう。(中略)シンプルな言葉のほうがうまくコミュニケーションできる瞬間があって、面白いなと思っていたんです」(朝日新聞夕刊2022.11.16, p2)。

作家、多和田葉子さんが『太陽諸島』刊行に際して語った言葉です。

私は50歳を超えても英語を学び続けている。母語、日本語を話す時、言葉が持つニュアンスを考えすぎて、「こんにちは」という挨拶さえもためらうことがある。なのに英語だと無邪気に「Hi!」と軽々と発してしまうのです。外国語を自由に操れないのに、外国語を操ろうと四苦八苦しているときの方が、気持ちが開放的になっているところに面白みを感じる。ただ学んでいる。活用することを考えずに。

そんな私の潜在的心理を代弁してくれている気がした言葉でした。

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