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たぶん、出る。いや、きっと出る。

ヒューストンマラソンからすぐに心と身体を切り替えて、マラソンからトラック、それも5000m仕様に短期間で移行する。そのスタートとなる日に新谷仁美選手はこういうツイートをした。

これを書いているのが2023年2月1日。3〜4ヶ月後くらいに5000mの日本記録を目指し、またその3ヶ月後にベルリンでフルマラソン日本記録を狙う。彼女のツイートにある「ベルリンと5000mの共通する部分」というのがとても興味深い。5000mとフルマラソンを別ものと考えずに、「フルに活きる5000m」をやろうとしているということだ。トレーニングメニューや負荷のかけかたについてはわからないけれども、彼女がヒューストンで感じたこと。そこはピンとくるものがあった。それは「シューズを活かす」という考え方から産まれているように思う。

マラソンとトラックのどちらも記録を追い求める。これは一昔前ではできなかったことだ。どちらも身体へのダメージが大きかったからだ。ダメージが大きいということは、故障のリスクも高まり、長距離練習にとって一番大事な「練習の継続」が途切れることになる。しかし、シューズが進化したいま、ダメージが少なくなったぶん、リカバリーも早くなり、過去とは違うアプローチが可能になった。

横田コーチも新谷選手も公言しているように、シューズが進化し、レース終盤でも脚が残るようになったことで、脚づくりのための距離を踏むという練習が(全くゼロとはいわない)必ずしもマラソン練習の一丁目一番地でなくなったことである。終盤まで脚を残すことを考えるよりも、絶対的スピードをあげて、余裕をもった動きとスピードでマラソンを走りきる。というものだ。

筆者は今回、ヒューストンへ日本からレースシューズを届けることになった。

ロストバゲージでレースシューズがなくなるリスクもあったこともあるが、新谷選手のためにアディダスフットウェアラボで調整された、未使用のフレッシュなシューズを届けることになった。レースシューズを練習で使ったりしながらならしていくのだが、どうしても反発性などはまっさらの新品に比べると劣るのは間違いない。慣らしたシューズで走るか、まっさらなシューズで走るか、シューズチョイスの選択肢をひろげておいたようなのだ。新田コーチとトラックで走る新谷選手は基本的にクッションが薄めのアディダスタクミセンを履いてスピード練習を行っている。

ヒューストンマラソン前日。ジョグシューズでジョギングをしたあと、新谷選手はトラックに戻り、届いたばかりのアディオスプロ3に足をいれた。

歩いてはシューレースを締め直し、走っては締め直しと繰り返しながらシューズのフィット感を高めていく。

やわらかいトラックで念入りに感触を確かめたあと、そのままロードに走りだしていった。戻ってきた新谷選手は横田コーチに自分の感覚を伝えている。それをうんうんと聞く横田コーチ。練習のあとは、給水ボトルを渡したり、ユニフォームやシューズの主催者チェックがある。この日はそれで終わった。

そして、レース当日。アップを終え、新谷選手が履いたのは、昨日試していた新品のシューズではなかった。

12月31日に富津で行われた16kmの距離走でも使った古いアディオスプロ3を選んだ。

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