見出し画像

見えない敵

田中希実選手のラストスパートはいつも単独走だが、その横にケニア・エチオピア勢がいると思ってみると、彼女のレースが俄然、面白くなる。彼女は見えない敵とずっと戦いつづけてるからだ。

「電池が切れたかのように崩れ落ちた」

画像3


木南記念800mでの田中希実選手のフィニッシュをファインダーからのぞいていたときの印象だ。ライブ配信映像や遠目からみると「勝利にこだわった田中が最後にダイビングして勝利をもぎとった」ようにも見えなくはないが、たぶんそれは違うだろう。これまで田中選手はどんなときであってもフィニッシュは駆け抜けてきたからだ。日本記録を出した3000mも1500mもフィニッシュラインで腕を広げたり、ガッツポーズをすることなく一気に駆け抜けた。

画像1

3000m日本新記録

画像2

1500m日本新記録

その美学は練習においても変わらない。流しでは距離やタイムが予測できる100mで出し切ってブレーキがかかることを嫌い、あえて150mという距離をとりフィニッシュラインを走り抜けることを意識づけてきたという。フィニッシュラインを軽快に駆け抜けることに美学すら感じる彼女(なにせ1500mで日本記録を出した直後にトラックに「ありがとうございました」と一礼するくらいだ。)が崩れ落ちる姿を見たのは世界陸上ドーハ5000m決勝のこと。

画像4

世界陸上ドーハ5000m決勝で15:00.01(当時日本歴代2位)を叩き出すも14位でフィニッシュ。ゴールすると、珍しくその場に倒れ込んだ。日本での報道は「日本歴代2位」という記録が大きく報じられたが、レースそのものには全く参加させてもらえなかった。田中希実の800m1500m3000mへの積極的なチャレンジはこのときのレースへのリベンジが核になったように感じる。

ここから先は

1,187字 / 5画像
ツイッターや「今日の一枚」では掲載するタイミングをうしなった写真やテキスト、これからやってみたいことなどを、ここでこっそりとはじめています。ちょっとびびって月10回と書いてますが、一日10回更新する日もたまにあると思います(笑)情報誌のようなことを期待している方はやめておいたほうがよいかも。ツイッターやオープンなネットとは違ってクローズドかつバズらない場を作ろうと思います。

月刊 EKIDEN NEWS

¥700 / 月

月刊といいながら、一日に何度も更新する日もあります。「いつかビジュアルがたくさんある陸上雑誌ができるといいなあ」と仲間と話していたんですが…

サポートと激励や感想メッセージありがとうございます!いただいたサポートは国内外での取材移動費や機材補強などにありがたく使わせていただきます。サポートしてくださるときにメッセージを添えていただけると励みになります!