できることは全部やった
箱根駅伝コースガイドでもある「あまりに細かすぎる箱根駅伝」シリーズ。今回は「テレビをさらに深く楽しむ」という切り口で再編集することにしました。日本テレビでの箱根駅伝中継に初回から総合演出として関わってきた田中晃さん(現WOWOW代表取締役社長)に、「最初から変わらない箱根駅伝の放送フィロソフィー」をじっくり訊くことで、いつもはぼんやりと眺めていた箱根駅伝のテレビ中継が違ったものに見えてくるはず。そういうことを狙ってのこと。
WOWOWの大会議室でインタビューに備え、前のめりで待っていたら、会議室に入ってきた田中さんが開口一番きりだした内容がすごかった。
「いやー、あの女子の3000m障害の話。あれは続きが気になるねえ!」
つい、こちらも「それはお目が高い!」と返しちゃいましたよ。
田中さんが指摘した「女子の3000m障害の話」とはこちらの話。
2018年の日本選手権3000m障害で優勝した石澤選手。
翌、2019年は大東文化大の吉村選手にその座を奪われてしまう。
そこから石澤選手が奪還を目指し、フォームを変え、シューズも選び、あらゆる手をつくし、吉村選手との差を縮めていくその過程を書いたもの。
本来は箱根駅伝のことをしっかり訊くはずだったのですが、こっちの話で大幅に時間を使ってしまい、田中さんには補足のために追加原稿をお願いすることに。(おかげで各区間のみどころが充実しました!)とはいえ、「箱根駅伝は選手個人のドラマを見せること」にあそこまでこだわった田中さんが、3000m障害に注目していることがとてもうれしかったのです。
12月に行われた日本選手権長距離。大きく報じられることはなかったけれども、女子3000m障害が熱かった。
結果は石澤選手が途中、転倒するもラストスパートで詰める吉村選手を振り切って優勝。この優勝を確実に引き寄せた石澤選手の準備がすごかった。
12月に行われる3000m障害。水郷に着地するたびに体温が奪われていく。
この日の3000m障害、女子では吉村選手が、男子では荻野選手が転倒。その他の選手もゴール後、身体が動かなくなるほど身体が冷え切っていた。つまり、3000m障害には厳しい条件下のレース。
大半の選手が身体が冷えて、本来の動きができなくなっている中、石澤選手は序盤から抜け出してペースをどんどんあげていく。まず脚元のハイソックスに目がいく。よくみると、これが単なるハイソックスでないことに気づくはずだ。
ウェットスーツのような素材でおそらく自作したと思われるゲイター。
ここから先は
月刊 EKIDEN NEWS
月刊といいながら、一日に何度も更新する日もあります。「いつかビジュアルがたくさんある陸上雑誌ができるといいなあ」と仲間と話していたんですが…
サポートと激励や感想メッセージありがとうございます!いただいたサポートは国内外での取材移動費や機材補強などにありがたく使わせていただきます。サポートしてくださるときにメッセージを添えていただけると励みになります!