非公認レースをうまくつかえ
「次回のOTT、うちの選手をペースメーカーじゃなく、エントリーさせようと思うんです」と、マラソン博士こと城西国際大駅伝部監督の森岡芳彦さんは言うのです。OTTことオトナのタイムトライアルは非公認レース。大学陸上部が非公認レースを走るというのは、あまり聞いたことがなかったから驚きました。「競技者こそ、OTTのような非公認レースを練習にうまくとりいれるべきだと考えたのです」ともいいます。
非公認と文字にすると非合法と勘違いする方もたまにいらっしゃるので、ちゃんと説明しておくと、各地域の陸協が審判として入ってタイムが公認タイムとして記録されるレースが公認レース。ちゃんと計測はするけれども、審判がなく、公認タイムとして認められないのが非公認レース。日本記録や参加標準タイムとして必要なのが公認。自己ベストとしてプロフィールに書けるのが公認。「台風で追い風20mで走ったら100m9秒台で走れてさ」というのは非公認。酒の席で「中学の体力テストで1500mを3分台で走ったもんだよ」というのも非公認。ボストンマラソンも非公認。いろんなパターンがあるのですが、OTTは非公認レースなのです。
OTTは地域陸協による審判がいないこと、男女一緒にスタートすること、入れ替わり立ち替わりペースメーカーが入ること。などの公認レースに出来ない理由です。ただ、この3つはOTTの大きな特徴でもあります。たとえば、審判がはいると、トラックでカーボンが入った厚底シューズはつかえません。公認レースでトラックを走るためにはWAが定めた規定以内の厚さのシューズじゃないと走ることができません。先日のOTTのように女性市民ランナーを箱根駅伝を走ったランナーが引っ張るなんてこともできませんし、
中央大三浦選手のように、「おっ、あのひと単独走でつらそうだな」と、気まぐれに引っ張ったりすることなんて不可能笑
これらはすべて「助力」という行為にあたり、公認レースでは認められないのです。
冒頭の森岡さんの「競技者こそOTTを」の話に戻りましょう。一昨年のホクレンディスタンス、1500mや3000mで田中希美選手の力がずば抜けすぎてしまい、ついに田中選手を引っ張ることができるケニア人選手がついにいなくなりました。同じことが10000mにおける新谷仁美選手にもおこりました。日本記録を出した日本選手権。もはや競り合う相手が国内にいなくなったのです。田中選手はショートインターバルを繰り返すことや、800mから5000mまであらゆる種目を走ることで、普段の練習では得られない刺激を身体にいれていきますし、新谷選手を引っ張るのは横田真人コーチや新田コーチといった男子トップ選手です。
一方で記録会にエントリーすると、同じくらいの走力をもった選手で番組が組まれます。5000mの持ちタイムが16分台の男子高校生が15分を切るスピードのレースを経験することはなかなかできない。でも、OTTであれば、ペースメーカーの力を借りながらチャレンジができます。そして15分をきれなくても、15分切りのペースの刺激を身体に入れることや、どこまでついていけるかチャレンジすることで、次につながっていける。つまり、「いい失敗」ができる場なのです。
3月12日は駒沢陸上競技場でOTTを開催いたします。種目は1500mと5000m。マラソン大会が中止になってモチベーションが下がり気味の市民ランナーも、春のトラックシーズンに向けて力試しをしたい競技者もぜひ、駒沢へおこしください。公認レースでは味わえない「助力」でみなさんをアシストいたします。
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