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國學院 平林清澄の世界線

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「あいつが先頭にいないということは、集団はよっぽど速いんですよ」

ドイツ・アディダス本社の敷地を使って行われたレースRoad To Records。コロナ禍でレース出場機会を失われた世界のトップクラスのアディダス契約選手のために、ハーフ、10km、5kmで世界記録を狙うロードレース。2022年4月30日、昨年に続き、2回目のレースが開催された。世界各国のトップアスリートに混じって、國學院大の2年生の二人もドイツに招待された。山本歩夢、平林清澄である。国際的には超無名の二人が最高峰の国際レースを走るとアディダス・ジャパンから聞かされたとき、「これは面白い!」とドイツ行きを決めた。このふたりの背景が面白い。2022年の箱根駅伝以降、二人は好調そのもの。

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山本は2月の実業団ハーフで日本学生歴代2位1時間00分41秒。

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平林は3月の日本学生ハーフで2位に大差をつけ1時間1分50秒で優勝。学生ハーフで優勝して、ユニバ日本代表をゲットしたとはいえ、國學院一負けん気が強い(ように見える)平林は同級生の山本がもつ、ハーフ日本学生歴代2位、國學院大記録更新を狙っているはず。超高速で推移するに決まっている、adidas Road To Recordsはうってつけの機会と考えているに違いない。アップダウンのある砧公園でひとり別メニューで走る平林を見かけて、「平林はハーフだな」と確信。現地について調整状況を関係者に聞くと、「國學院の二人は本気で仕上げてきている」という。

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前田監督も「調子にのってるくらい元気のいい二人」を連れてきたと笑。一方で「どれくらい世界との差があるか鼻っ柱を折られるくらい味わってもらいたい」とも。

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周回コースで行われたハーフマラソン。1周目こそ平林は先頭集団の最後尾につけたが、2周目以降、大きく離されていく。

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冒頭の言葉は沿道から平林に声援を送っていた、山本(山本は5kmに出場)がぽつりをつぶやいたこと。日頃の練習からバチバチやりあってる仲だけに平林のスタイルを熟知する山本がいうのだから間違いないだろう。

平林によると、入りの1kmが2分47秒であったという。
「1km2分50秒を切って入るハーフなんて経験したことないです」
1km2分50秒イーブンでハーフを押し切ればちょうど1時間。小椋 裕介がもつハーフマラソン日本記録。「しかも、これが突っ込んだわけではなく、2分47秒は彼らにとって『リズム』だったんです。そこからギアがどんどんあがっていって、すーっと前に消えていったんです」と。平林がこんなにあからさまに差を感じたのは高校二年の都大路以来だという。「あのときもいつもまにかおいていかれてました。そこから頑張って差をうめてこれたと思ったんだけどなあ。」

落ち込む以前にただただ世界のスピードにびっくりしたという平林が関東インカレ10000mに出場。3月、4月と2本のハーフマラソンを走り、ユニバでもハーフを走るつもりで仕上げていた彼が10000mを走る。体力的にもきついはず。よく出たなあ。とレースをみていると、脚を温存することなく平林が序盤からガンガンと攻める。
勝負に徹するのであれば、ハーフ仕様に仕上げてきたスタミナを活かし終盤まで温存。絞られたところでロングスパートで後半勝負という手もあるだろうが、先頭を走る。途中ラップは2分50秒を切るペースに。なるほどな。と思った。ユニバもなくなったいま、彼はドイツで体感したことを、この関東インカレのトラックに持ち込んでいるのではないかと。周りの大学生との勝負だけでなく、ドイツで自分のはるか向こうに消えていった選手を、このトラックでもおいかけているのではないかと。

ドイツではきつかった2分50秒を切るペースを彼らと同じようなリズムとして走れるかチャレンジしているのだなと。ドイツではるか向こう消えていった集団を目指して走っていれば、その手前に田澤や三浦といった学生トップ選手も見えてくる。関東インカレの配信をみながら感じた平林清澄の世界線。

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おもいかえせば、最下位でゴールしたはずなのに、その目が強い希望にあふれていた。これからやるべきことがくっきりと見えたのではないか。

と、ここまで書き終えて最後に気になったので
「平林の高校二年の都大路1区」を調べてみることにした。


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