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Dr.ヒロの心電図ワンポイント8

割引あり

◆こんな心電図どうですか?

問題:
45歳,男性。詳細不明だが,30歳台で心筋梗塞の既往あり。某年8月末,前日深夜に嘔吐し,以後,胸がつまる感じがあったが就寝。起床後,漠然とした胸部違和感が遷延し,呼吸苦も伴った。ほぼ1日我慢していたが,改善しないため,深夜に自身で救急要請。BP 153/127mmHg,PR 118bpm,SpO2 98%(O2: 鼻カニュレ2L/min)。心電図診断は?

【図8-1】45歳,男性の心電図

◆心電図所見と診断

問題の心電図【図8-1】を丁寧に読みましょう。
 洞頻脈(123bpm)
 頻発性・多源性心室期外収縮
 左房異常(拡大 or 負荷)
 左脚前枝ブロック
 R波の増高不良
 時計方向回転
 ST上昇:I,aVL,V1~V4
 ST低下:II,III,aVF(,V6)
 陰性T(波):I,aVL,V5,V6

診断としては,「急性広範囲前壁梗塞」(extensive anterior MI)が除外できるまで疑うべきでしょう。
ちなみに,心電図の世界で
  前壁梗塞かつ「I,aVL上昇あり」⇒LAD近位部
を疑うのが鉄則であり,今回もそれで正解でした。aVRとV1のST部分の大小関係から,“LMCA/LM[T]”は積極的には疑いません。

実際には,この男性は何と30代で心筋梗塞を起こし,左前下行枝(LAD)の近位~中間部(#6-7)にステント留置がなされていました。急性期にしては,IやaVLに既に異常Q波が形成されていてること(やR波の増高不良)に違和感を覚えた方もいたかもしれません(後述する左脚前枝ブロック[LAFB]の影響もあります)。

大なり小なりV1~V4にもST変化が残っていますから,実際の判断は,病歴に加えて症状や採血,心エコーなどの検査所見を総合して考えていくことが重要な症例です。

実際に1日続く胸部症状や(発熱などない中で)の洞頻脈やPVC頻発などからホンモノと考えるのが普通ですよね。この方は,いつからか抗血小板薬が中止されており,ステント血栓閉塞による心筋梗塞でした。
今回のレクチャーのポイントは,“その先”です。2,562文字,6枚の画像は勉強になると思いますよ❗


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