えじり

美術 / 建築 / アラマホシ書房

えじり

美術 / 建築 / アラマホシ書房

最近の記事

[書評] Andrew Blauvelt "Hippie Modernism: The Struggle for Utopia"

Hippie Modernism : 異なる価値観の緊張関係 本書は2015年にウォーカー・アートセンターで開催された同名の展覧会のカタログである。1960-70年代のヒッピー・カルチャーに関わる300点以上の作品を総覧し、それらを美術史やデザイン史、メディア論、政治思想など様々な角度から検証していくという野心的な展覧会であり、そのカタログである本書もかなり分厚く異様な存在感を放つ。450ページを超える本書には展示された作品のほかに11本のエッセイと8本のインタビューが掲載さ

    • [書評] 観念的物体としての書物──平倉圭『かたちは思考する』とデザインについて

      芸術の形に物体化された思考と力 「形は思考する。形には力がある。」(p.1)という一節から始まる本書では、芸術作品の形それ自体を注意深く見ることによって、形に物体化された思考と力を遡行的に読み解く過程が記述されている。そのため本書が扱うのは「人を捉え、触発する形を制作する技、またその技の産物」(p.2)としての芸術である。人類学者のアルフレッド・ジェルは「西洋近代的『芸術』の概念や制度がない地域や時代」(p.3)にも芸術のように人の心を捉えるものが存在していたとして、芸術を「

      • [書評] 文化的芸術への侵入言論──ジャン・デュビュッフェ『文化は人を窒息させる』

        アール・ブリュットという「別の芸術」  本書は、「アンフォルメル」[*1] の先駆者であるとともに「アール・ブリュット」の名付け親としても知られるフランスの画家、ジャン・デュビュッフェの初の邦訳書である。デュビュッフェは、画家として自身の制作を行うかたわらで、精神科医ハンス・プリンツホルンによる『精神病者の芸術性』を手がかりに、精神病院や刑務所などを頻繁に訪れ、幻視者や精神障がい者の作品を蒐集した。そして、彼らの表現は「自分自身の衝動からのみはじめて、完全に純粋で生の芸術的行

        • 空中分解する「どないやねん」──Aマッソ「トマソン」におけるアイロニーとユーモア

          これは、Aマッソが好きな友人たちとやっている企画の一環です。 『Aマッソのゲラニチョビ』は2016年10月から2020年3月までの約3年半、静岡朝日テレビで放送されていたAマッソ初の冠番組である。DVD化された「マジカル・オオギリー・ツアー」などの旅企画のほかに、ロケともコントとも言い切れないユニークな単発企画が多く、コアなファンを集めてきた。中にはドラマ仕立ての回もあり、コントや漫才には収まりきらないAマッソの世界観を垣間見ることができる。(毎回、加納が番組企画を担当する

        [書評] Andrew Blauvelt "Hippie Modernism: The Struggle for Utopia"

        • [書評] 観念的物体としての書物──平倉圭『かたちは思考する』とデザインについて

        • [書評] 文化的芸術への侵入言論──ジャン・デュビュッフェ『文化は人を窒息させる』

        • 空中分解する「どないやねん」──Aマッソ「トマソン」におけるアイロニーとユーモア

          関係性なしの連帯へむけて ──キュンチョメ「いちばんやわらかい場所」

          ぬいぐるみになってぬいぐるみと歩く いちばんやわらかい場所、というなんともいえないタイトルと、ホームページに載っていたコアラのぬいぐるみのビジュアルにやられてしまい、具体的な内容は分からないまま申し込んだ。運良く抽選に当たり、「子供の頃にいちばん大切にしていたぬいぐるみをお持ちください。」というメールが届いたので、実家にあるキモリ(ポケモン)のぬいぐるみを送ってもらいワークショップに持っていった。  当日は悪天候とコロナウイルスの流行の中、20人くらいの参加者が集まった。ま

          関係性なしの連帯へむけて ──キュンチョメ「いちばんやわらかい場所」