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■ 其の81■ 怪物生まれし町、宇部

えっ、宇部なのか。
いや、でも全然宇部っぽくないな。
まてよ、そもそも宇部っぽいって何?

🔣芸人のやす子さん(以下、やす子)が山口県の宇部出身と知ったときの感想です。宇部はそれまでの価値観を簡単そうに塗り替えてしまう人間を生み出す町です。
あの丸っこい体形。了解というより遮断するような「ハイーッ」という返事。芸人として使えそうなのが「元自衛隊員」という肩書だからあのスタイルでやり始めたのだろうという感じ。ぽちゃっとしているけれど体幹のある動き。自分の負の側面や鬱屈した感情を武器にしている女芸人とは異なるカラッとした空気感。だからといって内面まで乾いてスカスカなのではなく、濃いエネルギーの塊を秘めている雰囲気。それもこれも合わさって、「絶対に見たい訳ではないけど、また見てみたい」と思わせてしまうあの唯一無二の存在感。
そう思うと、只者ではない怪物やす子のブレイクは必然なのかもしれません。

🔣「怪物」という表現は、もちろん肯定的な意味です。
ボクシングの井上尚弥や、野球の松坂大輔を表するときの「怪物」です。
宇部市の人口は16万ほどで、さして大きくもない地方都市です。東日本の人だと、名前を知っているかどうかという市かもしれません。明治以降に炭鉱の町として発展してきた工業都市です。

🔣そんな宇部出身者には、単に成功したというレベルを超えた、全く新しい怪物を造り出す「怪物」が生まれています。
  ユニクロ創業者 柳井正
  エヴァンゲリオンを生んだ 庵野秀明
  YOASOBの楽曲制作 Ayase
わたしは、宇部にはなにか「怪物」を生み出す土壌があるのだろうと思っています。思い当たるのは、歴史が浅いことと、埋立地につくられた人工的な工業都市という二点です。
日本の本質的な特徴といえば、森林が七割という自然豊かな土地と国造りの神話を持つ長い歴史ですが、それとは真逆です。「日本的」ではない土地柄が、常識やしがらみに縛られずに生きる人間を生んでいる気がするのです。
うさぎ追いしかの山も、錦を飾る故郷もないので、既成概念の成功を目指す感覚も薄いのでしょう。心の重しや刷り込まれる事が少ない分、縛られずに思いのままに行動できるのでしょう。他の芸人にはないやす子のあの存在感は、宇部という土壌が生んだものなのではと思います。
もしこの考えが当たっているとしたら、案外宇部には、失われた30年と言われる日本の未来を拓くヒントがあるのかもしれません。

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