侯爵嫡男好色物語 コミカライズ第5巻の感想

原作小説がエタりかけて非常にはらはらしている本作、
コミカライズ巻末にて作者AL氏の新しい文を読むことができる


エルシニアの病禍はまるでコロナ禍を象徴するようであると改めて思った。本作が執筆され始めたのは2016年であるからコロナ禍に発想を得たものではないことは明確だ。(それよりも前に発想されている。)

 AL氏の作品の特徴として、物事を単純な一面性で描かないというものがある。特に主租を主体とする貴族の言動には必ず二面性があり、表現型と裏に秘められた意図が一致していないことも多い。そのことを描くのが非常に上手な作者であるし、本作の魅力にも繋がっている。

 これは現実社会を生きる私たちにも馴染むことである。いま世界で起きている戦乱を紐解いてもそうだと言える。決して単純な一面性の論理では説明が付かないのだ。その複雑さから逃げることなく一統した見解を持ち続けるのは容易なことではない。

 目にした情報に飛びついてすぐに何かを判断するのではなく、二面性があるかもしれないと複雑な世界を見るときの”スコープ”を養っておかなければ必ず失敗するだろう。

本作はそのことを間接的に教えてくれているような気がする。

話が完全にそれてしまった。これはコミカライズ5巻の感想の記事なのだった。
原作を忠実かつ漫画にしかできない表現で描きだしている。これは作画のGEN氏の実力によるものだろう。ウィルクの父母の情事まで描かれているのには少し新鮮な驚きがあった。

小説の方が更新されなくて寂しい思いをしているのでコミカライズが進んでいくことは喜ばしいことである。