瓜を破るの感想第1~8巻の感想

瓜を破るを第1巻から8巻まで読んだ感想です。

 たまに広告などで入ってきていてかわいらしい絵柄に対して結構重いテーマを扱ってるんだなというのが第一印象。

 ためしに読んでみるかと読んでみると惹きこまれるものがあった。続きが気になる。おそらく決して男性向けのテーマや内容ではない。のにもかかわらずだ。
 これは女性作者だろうなと思うような視点がふんだんに盛り込まれている。(実際に女性作者だった。)
 現代社会の抱える病理とでも言おうか 特に女性が味わうであろう等身大の心情がキャラクターを変えることで手を変え品を変える形で非常に丁寧に描写されている。

 登場するキャラクターたちはそれぞれ立場に応じた問題を抱えているのだがエピソードごとにちょっとした救いがあるのも読後感を良くしていて読みやすい。あまりにも残酷な現実ばかりを突き付けられてもテーマが重いこともあり読むのがつらくなってしまっただろう。この辺りのバランスのとり方が上手い。基本的に相手のことを思いやることのできるキャラクター達ばかりでこの辺りは作者の人間性が反映されているだろうか。Twitterの投稿を拝見しても思いやりのありそうな人だなあという印象を受けた。
本作は端的に言えば読んだ後に温かい気持ちになれる作品だと思う。

 少しネタばれになってしまうが、作中では将棋の話題が出てくる。
将棋ファンなので最初は「おっ藤井聡太八冠こんなとこまで出てるなw」と思っていたらよもやの元奨の青年のトラウマをえぐる展開で「あっ…」となってしまった。(元奨とは元奨励会、プロ棋士になることを断念した人のことを指す)
奨励会員は文字通り人生を掛けてオールイン(全てを投げ打つ)しているわけで非常に重いことなんです。途中でドロップアウトした場合ほぼ何もない状態で年齢だけいっているというかなり厳しい状況でまだ人生は続いていく・・・という状況になるから。

本作、今度ドラマ化もされるらしい。内面を繊細に描いているし、視点が的確で共感もできると思うのでこれは女性から人気が出そうですね。

女性をモノのように扱う(例えば性欲の対象としてだけ見ているとか)男性が出てきて女性が恐怖や落胆を感じる、しかし誠実に向き合ってくれる男性もいて救われる、という展開が何度か出てくる。非常にリアルだと思う。どっちの男性も実際にいますしね。作者の方の人間観察力、人間観が優れているのだと思います。


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