見出し画像

社会主義よりカルヴァン主義でいこう。

社会主義経済は、品質が進歩の結果10になったものを3にしてしまうような経済体制だと書いた)。具体的には、昔の建物が200年もったのが、30年しかもたなくなるという例である。これを私は逆生産と言うが、現代の日本に見られる。テレビなどの家電もやはりそうである。進歩してそうというイメージであるが、テレビ本体としては、90年代に、2万円で買えて、20年もったものが、今では5万円出して、10年もつという感じであろうか。仮に20年もったとしても、コスト/パフォーマンスは、1年あたり1000円と、2500円という差がある。これは何を意味するかというと、品質が悪くなったである。社会主義体制ではこういうことが起こる。もっとひどくなると、労働者が賃金をもらっているにもかかわらず、働かなくなる。そうすると、モノが不足し、インフレが起こる。これは、ソ連に見られた例である。そんな経済体制ではしょうがない。確かに、国内は、わりと平等に保たれるかもしれないが、品質が悪くなるということは、国際競争から脱落する。つまり、競争力がないから、輸出できない。その結果、日本人はさらに貧乏になるということである。だから、社会主義的に「経済をまわす」という考え方は、毒であると思う。そういう考え方はしなくてよい。
 また同時に、政府が公共投資をするという考え方や期待がある。これは、20世紀初めに経済学者ケインズが提唱した需要刺激策であろう。これもまた幅をきかせている。日本でこの考え方をとらない経済学者は少ないようだし、悪く言われる。それだけ景気信仰が根強い。しかし、これもまた社会主義政策のようである。どういうことかというと、1年という予算の短い期間で、また逆生産を行うからである。その差は一時的かどうかである。そのような政策も不要である。自然な需要を満たしていく。それだけでよいであろう。
 先に書いた社会主義経済体制と需要刺激策は、集団的に行われる。しかし、基本的に財布は個人の物である。だから、個人がしっかりと財布のマネジメントを行えば、個人は豊かになるはずである。雇用がないという問題もあるが、雇用があるという前提で言っている。個人の集合が集団なわけだから、個人が強ければ、集団も強い。ご存知のように、今の日本は、政府が弱い(権力が弱いという意味ではない。)。赤字がひどい。そうだとすると、政府と付き合っていると、赤字の面倒をみさせられる可能性があるということだ。その赤字の政府に期待するのはよいことではないだろう。個人も、政府も、財布の状態が良ければいい。それだけだ。
 ではどうすれば、個人や政府の財布の状態が良くなるか。よくあるのは、仕事をして収入を得て、その範囲内で買い物をすることだろう。残念ながら、個人はともかく、政府はそれができていない。政府は政府で努力する必要があろう。それは、政府関係者のやることである。個人はどうすればいいか。財布の状態が良いなら、貯金をすることである。他の金融資産でもいい。今の日本では、全労働者の3割は、必ずしも必要でない。どういうことかというと、社会主義的な経済体制だから雇われていると考えればいい。国際的に競争力をもつには、良い品質のものを安く提供すればよい。しかし、社会主義的な経済体制だと、逆生産が生ずるから、競争ができなくなる。7割の労働者が1.4倍多く(生産性が1.4倍ということである。)働けば、トップクラスの競争力をもてる。残念ながら、10割の労働者が1.4倍働いても、それだけ需要はないだろう。だからそうなる。それでは、3割の労働者が失業する。しかし、何度も言うように、国際競争力がないと、日本は貧しくなるだけである。その3割は、訓練したり、新しい仕事を見つけたりすればよい。ただ、貯金があれば、それなりに食べていける。だから、すべての労働者は3割の収入を貯金すればよい。そうすれば、3割の期間失業しても、貯金で食べていける。心配ならもっとの割合で貯金をすればいい。失業する人も、率で言えば3割の期間である。その期間は貯金で食べられる。
 昔、カルヴァンという宗教者がヨーロッパにいた。その人は、政治家のようになって、その地域の人に、倹約をさせた。それも強制的にである。果物がテーブルにたくさん置いてあれば警察のような役割の人に没収させたという。夜も、ロウソクがもったいないからと早く寝させた。そうすると貯金もできる。こうして培われた生活態度が、今のプロテスタント派(合衆国人、英国人、ドイツ人)の豊かさの種になっているという。これは、社会学者マックス・ウェーバーの有名な著書『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の論拠である(川口マーン惠美『世界一豊かなスイスそっくりな国ニッポン』)。別に、強制的に倹約する必要はないが、自発的にそれを行うこともできるだろう。戦前生まれの日本人はそれができていた。社会主義でも、ケインズ主義でもなく、カルヴァン主義でどうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?