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過疎の町にカフェを開業してから3ヶ月経って思うこと

カフェがオープンしてから約3ヶ月。地域に起こった微妙な変化と今後について記します。

風の音を聴く通り

我々がカフェを始めた場所は駅から徒歩3分。商店がある通りからちょびっと外れた場所にあります。湖沿いには民家が並び、閑静な住宅通りです。

錦秋湖がよく見えるデッキの席を勧めると大抵の人はそちらに行きます。

デッキに抜けるにはお隣さんと我がカフェの間の狭い通路を抜けていかなければなりません。カフェ表の県道側からは想像ができないのですが、狭い通路を抜けると視界が一気に開けます。

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特に子供連れのファミリーだと、子供は大はしゃぎです。思わず「わぁ!」って大きな声が出てしまうこともしばしば。

今まで10年間空き家だった家をリノベーションをしてカフェを作ったわけですが、家の裏にこんなに人が行くことなんて今までなかったことです。お隣さんとの距離もそんなに無い中で、近所の方々からちょっとした苦言を言われることもありました。

我々としては、ここに暮らす人々が改めて「いい場所だ!」と言える空間にしたいわけで、大勢の人が来る観光地にしてしまってはもともと暮らしていた人が住みにくくなる。それは避けたかったので、夫婦二人でできるサイズで、忙しくなりすぎないお店設計をしたわけですが、思わず声が出るくらい錦秋湖の景色に感動してくれるとは思いませんでした。

来る人がうるさくなりすぎず、住む人が気持ちよく受け入れをするためにどうすればいいのか。考えた末に行き着いたのはこの看板。

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知人からのアイデア。音を聴くときは静かにするよね。っていう素敵なアイデアからこの看板が生まれた。全員がこの看板を見てくれているわけではないが、効果はまあまああったかと。これを見て、ここは住宅地だったねと思い出すとともに何か物語の世界に入ったような不思議な気持ちになれる通り。「なんかジブリっぽい!」って言われることもしばしば。

メディアとその効果

自分たちでお店を持つという事業をやったことがなかったし、ましてカフェという一見道楽に見られそうな生業だったため、1年目はそんなに人が来ないだろうと思ってました。あといっぱい人が来すぎても我々だと対応しきれなくなることが予想されたので、カフェをオープンしてからテレビ等の取材の話もたくさん来ていたのですが、全部お断りさせていただいていました。

こういうことを言うと地元の方からは「取材を断るとはなんて贅沢なんだ」と驚かれたりもしますが、そもそもたくさん人が来てたくさん儲けたいということよりも、自分たちの欲しい豊かな暮らしから逆算してカフェづくりをしたので、忙しすぎて伝えたいことが伝えられなくなってしまっては意味が無いこと。未だに数字と量の価値観が幅を効かせていることに少し残念さを感じる。若い人たちは“質と思い”の価値観に少しずつ変化しているというのに。。。

しかし、全部断っていたわけではなく、こちらの想定顧客設定から逆算し、来てほしい層に響きそうな紙媒体の取材は受けさせていただいていました。

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岩手日報に定期的に付いてくる情報誌「mekke」の絶景カフェ特集。来ていた客層から若い人たちが多く見られた。

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同じく岩手日報地方欄まちかどビジネスのコーナーにこんなに大きく。地元の信頼を得ることはとても重要なことだと思ったので固めの取材も受けました。地元では TV>新聞>SNSの順番で信頼度が上がる気がする 。みんなが見ているという安心感から来るのだろうか・・・。
口コミやブログを書いてくださる方も増えてきました。本当にこういうのが心から嬉しい。

地元新聞紙に二週続けて載ったこともあり、そこからはお客さんが一気に増えました。mekkeは9月の連休前に載ったこともあり、席数が少ないカフェで開店10分前に駐車場が満車だったときは焦りました。

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オープン5分前のカフェの様子。

駅前通りで地元の人も他所の人もよく通る通りにカフェをオープンしたため、それなりに反響もありました。地元の信頼を得るためにメディアにも出たというのは正解だったのかなと。

「商売楽しいべ!」

ある夕方、一人のおじさんがカフェに駆け込んできました。

「デッキはどこですか?」と、先払いの仕組みも無視してコーヒーを頼んでいそいそと裏のデッキへ。

コーヒーを届けて事情を聞いてみると、どうやら新聞に載ったオンラインの記事が同級生たちのLINEグループで首都圏に暮らす人達が話題にしていたようです。近くに暮らしているのに何も知らないのは恥ずかしいからと見に来てくれました。

その方は定年して地元西和賀に帰ってきたそうですが、日中そんなにすることもなく、お隣の横手や北上によくでかけて行っているそうですが、近くにこういうお店ができたことをとても喜んでくれました。

また、毎日のようにほっとゆだ駅の温泉で一緒になるおっちゃんは、地元に人がたくさん来ているのが誇らしげで嬉しいのか「商売楽しいべ!」といつも陽気です。「商売は粗益4割だからよ!」というのが口癖。

他の地元の方たちからも「商売繁盛でいいわね〜」とよく言われます。

地元の人も他所の人もよく見る場所で事業をやる効果は意外と大きなことなのかもしれません。

個人事業主の喜び

サラリーマンを辞めて、自分で起業したときはいつか法人化をしたいと思ってましたが、人を雇う前に自分たちがどれくらいの規模感だとやっていけるかを体感しておくことってとても重要なことと感じます。

どれくらいの忙しさで、人が何人いれば上手く回せるのか。そういう意味でカフェ運営はとてもいいトレーニングになっています。

自分たちだけではいっぱいいっぱいなので近所の方をアルバイトでお願いすることも出てきました。

地元では衰退の原因を所得と雇用が無いからだと考えがちなところがありますが、もしかして我々のようなミニマムな企業を増やしていったほうが地域の活性化は生まれると確信に近いところまで来ています。

サラリーマンのときにはあまり考えなかった町のこと、地域のこと、国のことが個人事業主という立場だとよく見えてくるのです。

どれくらいたくさん消費するかという豊かさじゃなく、どれくらい自分が幸せだな〜って感じられる豊かさをつくっていくか。家族で過ごす時間、子供と遊ぶ時間、森の中でゆっくりする時間、昼寝をする時間、友達とおしゃべりする時間、、。豊かに感じる時間は突き詰めていくとそんなにお金がかからないことに気づくはずです。

リスクを負わないことがリスク

カフェをやりはじめて、いろんな方がカフェに訪れるようになりました。まあまあ多いのが今の生き方に疑問を持っている方。具体的に言うと安定したサラリーが有り、それなりの生活を送っている方。その方たちの中で「こういうことやりたいよね」とか「こういうことやればいいのに」と言ってくる方がいます。「あなたがやればいいのではないですか?」と言うと、「リスクを負ってくれるならやるよ」とか「そんなリスクなことはバカバカしい」と言ってくる方がいます。でも、岩手県で一番人口減少が激しくて、真っ先に消滅すると言われる町で、何もしないほうがリスクだと思うのは、行動した人間だから言えることなのでしょうか?。不安を感じてカフェに訪れる人のように私も数年前不安に感じてました。そして多分その直感は当たります。カフェに訪れて何かを感じたら、ぜひ小さくてもいいから何か行動をしていってほしいと思います。そのための"ネビラキカフェ"です。

カフェの今後について

7月15日からスタートしたカフェですが、11月3日で一旦今年の営業は終わりにします。寒くなってきてお客さんが減ってきたということと、これからの事業展開に向けての準備期間として一旦休まさせていただきます。

こんなことを言うとすぐに「冬はどうやって食べていくの?」と心配の声をいただきますが(どうしてこんなにみんな他人のことが気になるんだろ?)、冬はガイドの仕事もあり、そちらもブラッシュアップして行く予定です。

それに、生活の水準を上げなければそれなりに暮らしていくことは可能だと思います。たくさん稼いでその分たくさん消費するからいつまでたっても貧しいのでは?と疑問に思うことがありますが、こんなこと言うと「綺麗事だ」と言われるのでこの辺に。

今朝も裏のデッキから見える錦秋湖が綺麗でした。

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zen

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