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悪態をつきながら大根を抜く日々 ①売り先のない大根をなんとかしたい

2000本の大根を育てるべく、種を蒔き、間引きをし、成長を見守った。収穫を迎えたいま、売れなくて困っている。

そもそも、
なぜ大根を作ることになったか


西和賀町には大根の一本漬け(以下「一本漬け」)という冬の名物がある。かつては各家庭で作られていたものらしいが、近年は町をあげて一本漬けの生産に取り組んでおり、その原料大根は1本120円で買ってくれるという(一本漬けの生産を請け負っている会社を以後「bou社」と呼ぶ)。

zenがbou社の生産主任をしていたツテもあって、bou社の畑の一角を借りて大根を作らないかと話があった。
・畑は貸してくれる。トラクターで耕起もしてくれる
・タネを播いて、途中で間引きをしたら、あとは成長を待つだけでよい
・収穫作業は力仕事だから大変。土から抜いて、葉っぱを切り落とし、泥を洗い落とし、重量別に選別する

わたしたちは話に乗り、8月に2000本分のタネを播いた。
うまくいけば120円*2000本だと皮算用をした。
全部がモノにならなくても、7割りでもまあ良いだろう。

そして収穫時期を迎えた。
世の中そんなに甘くはなかった。。。


畑に線虫が出た

10月22日、初収穫の日。
bou社に運び込んだ大根約180本のうち、正規の値段で買い取ってもらえたのは、わずか2割程度だった。

理由は、大根の表面にクレーターみたいな痕がついて、見た目が悪い。

ちなみに、これらはNG。規格外となり、千切り大根等の加工にまわされるらしい。1本20円也(昨年時)。

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1日置いたら、余計に痕が目立たなくなった...これで規格外って信じられない。

ei「え、これ、ダメなの?ふつうに綺麗だと思うけど」
zen「消費者は東北食べる通信の読者みたいに理解がある人ばかりじゃない」
ei「理解を求めるべきじゃないの?」
zen「見た目ですぐクレーム来るから」

ぎえーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!

大根を洗いながら計算してみた。

180本収穫して、30本が製品化、150本は規格外となると
2人で朝から3時間働いて、6000円くらいの収入。

加えて、慣れない労働で腕と肩甲骨がバキバキ(大根ってマジ重い)
この労働が毎朝2週間ほど続く。

東北食べる通信で一次産業を盛り上げたいと心底思って働いていたのに、
生産者さんには本当に恥ずかしい気持ちでいっぱいだけども、



萎える・・・・・・😭



畑をほっぽりだして、他のバイトでもした方がよくないか?
と思ってしまう自分を止められない。

かくして悪態をつきながら収穫・洗浄・選別をしている。
(が、大根に罪はない。新鮮な大根はとても美味しい)


規格外大根どうしよう

問題は、規格外大根が1本20円にしかならないことである。
いまさらながらに、様々な大根加工品がずいぶんと安く思える。

スーパーで1本100円とかで売ってる大根って、農家さんの手取りいくらなんだろう……と考えると、暗澹たる気持ちになる。

zenに言わせれば、「他では規格外になると買い取ってすらもらえないから、まだ20円になるだけマシ」だそうだが、bou社に買い取ってもらう以外の道はないものか。

そこで私が安易に考えてみた方法は以下の3つ。

・一本漬け以外の加工品にする
・直売する
・生活習慣病(予備軍含め)の方に配布する

それぞれの可能性について検討してみた。

一本漬け以外の加工品にする

大根は、待ったなしで連日掘らなければならない。
成長しすぎても、規格外品扱いになってしまうからだ。

良い大根はbou社に売りたいし
良し悪しは掘ってみなければわからない。

しかし、毎日150本出る規格外品を加工(干すor漬ける)するには
場所も道具も時間も愛もない。

もし、この大根たちに対して私がもっと情熱を注いでいたならば
なんとかこれを換金しようと、必死に工夫をするのだろうか…?

・・・でもね、そもそも、漬物の製造販売は許可制だから、いまさら間に合わないっていう。ね。

試しに10本を割り干しにして軒先に吊るしたが、それで軒下はいっぱいになった。その他、おすそ分け、沢庵漬け、酢漬け、はりはり漬け、べったら漬け…など少しずつ作って食べているが、焼け石に水だ。

そして1日が大根仕事で終わっていくのがなんとも言い難い。

現実的に、我が家は作業するにも保存をするにも狭すぎる。

先日家にホームステイしたベトナムとタイからの訪問者は、なんでこんなに大根を食べるのか?と聞いてきたが、たくさん育ってしまったからです。ご協力に感謝。


直売する

一番現実的である。
だけど送料がかかるのはダメだ。
例えば大根無料、送料だけで発送します、として
5本で5kg以上になる大根を送料1000円かけて送ったら、近所で大根買う方がよっぽど安い。

では町民に販売するか?
家の前で、無人直売所とかやるくらいならいいかもしれない。

ちなみに、先ほどbou社の畑で大根つくった、と言った。
線虫が出て大変なのは、bou社も同様なのである。
私たちの大根の他に、畑には7〜8000本ほどの大根が。

これの半分が規格外になったら…3500〜4000本?
私たちのと合わせたら、西和賀の町民5500人に一人一本ずつくらい配布できるんじゃなかろうか。

この規格外大根、全部切り干し大根にするのかなぁ。。。


もう一つの案は、スーパーオセンに話をつけて、仕入れにしてもらうか。
(bou社はやっているらしい)。鮮度良い状態で納品しまっせ。


生活習慣病(予備軍含め)の方に配布する

1本20円の大根だって、1500本あれば30000円になる。
30000円をバカにはできない。 
が、労働の大変さを思うと苦しい。

自分でも不思議だけど、茅葺き屋根の修理とかぶどう作り隊とか
お金にならない労働でも嬉々としてやるときもあるのに
お金になる労働がこんなに苦痛だなんて。

むしろお金のためと思って始めたことが全ての間違いの始まり。

だったら、1本20円で販売するよりも、町のためになることができないか。

大根の加工品の製造方法を調べていたときに、
「大根おろしを食前に食べると痩せる」という情報に出会った。

半年後、私が痩せていたらそれは大根のおかげ

じゃなくて、

人間ドックや健康診断で生活習慣病あるいはその予備軍と診断された人に、大根を上げて、食べて健康になってもらう、というのはどうか。

大根で健幸な町、西和賀。

欲しい方いたら本当に差し上げます。


反省

下請けはダメだ。やるなら自分で販売しなければ。
愛がない農業はやっちゃダメだ。
つまり、中途半端はダメなんだ。

毎朝大根を洗いながら、反省を繰り返している。

次回は・・・
今回のことを通じて、西和賀の一次産業について考えてみた。理屈じゃなくて、当事者になったからわかることもあった。

ei


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