栄養ケアマネジメントについて

栄養士を元気にする栄養士、サチコです。

今日は栄養ケアマネジメントについてお話ししようと思います。







福祉施設では、平成17年より

「栄養ケアマネジメント」が

厚生労働省より導入されました。




栄養ケアマネジメントが

導入された経緯は

以下のようなことです。



タンパク質・エネルギー低栄養状態

(以下「低栄養状態」という.)は,
高齢者施設に入所者の4 割以上にみられ,
要介護高齢者に広がっていると

考えられることから,


施設及び居宅サービスにおいて,

低栄養状態を早期に把握し,
個別の身体状況,栄養状態を

アセスメントし,


適正な栄養ケア計画を実施する

栄養ケア・マネジメント
を導入することが必要である。




つまり、


老人ホームに入っていても

栄養失調の高齢者が

4割以上もいた、

ということなんです。






栄養が足りないと、

筋肉が落ちて、転びやすくなったり、

風邪から体調を崩しやすくなって

歩けていた入居者が、

1度入院すると、さらに筋力が

落ちて寝たきりなる

という、負のループが出来上がって

いたのです。








これを「どうにかしよう!」

としたのが、栄養ケアマネジメント

でした。



栄養ケアマネジメントが

導入されるまでは、

施設入居者全体の栄養管理を

していればよく、

食事も「栄養摂取」という側面と

「食の楽しみ」という側面が

ほぼ同じ割合で
考えられていました。



しかし、栄養ケアマネジメントが

導入されて以降、

「食事は栄養を摂取し、

健康を保つためのもの」という

意味合いにシフトされました。




決して「食の楽しみ」の部分が

ないわけではなく、高齢者にとって、

特に施設に入居されている方にとっては

「食事は数少ない楽しみの一つ」

であることには変わりはありません。







栄養士もその視点がなくなった

わけではありませんが、

日々、栄養ケアマネジメントの
視点で情報を得ていると、

どうしても「栄養摂取」の意味合いが

大きくなり、


褥瘡ができているから、

たんぱく質が強化されたゼリーを

1日1個食べてもらおう



最近、よくむせて、誤嚥が心配だから、

ミキサー食に変更しよう



となってしまいがちで、









タンパク質やその他の栄養素を

強化するために

マスキングの意味で

人工香料がたっぷりのゼリーを

提供していたり、




食べる時の姿勢や、

足底が床にしっかりついているか、

顎が上がっていないか、

一口量が大きくなりすぎてないか、など、

食事以外の要素の検討をあまりせずに、

食事形態だけを変えていって

しまったりします。





しかし、私は常々疑問に思うのは、

栄養ケアマネジメントを行うときに、



食事の場面だけを

見ていていいのか?



ということです。



当たり前ですが、



食事は生活の中の一部分




です。



寝て、起きて、テレビ見て、

おしゃべりして、お風呂に入って。。。



こういった



生活の中に

「食事はあります」







体力のない人が、

お風呂のすぐ後に食事をとっても

あまり食べられないでしょうし、



脳梗塞の後遺症がある人が

寝不足でいたら、

より嚥下機能は低下するでしょう。



私が今まで経験した中で、

ほぼベッド上で生活していて、

食事の時だけ食堂に

リクライニング車いすで

出てこられる方がいました。

職員の間の認識では、

「嚥下の悪い人」という理解で、

時間内に全部食べられなかったら

それでいい。

と思われていた方でした。


ある日、

お部屋で休んでいる時間に

その方を訪ねてみると、

上半身と下半身の向きが

違う状態で寝ていました。



みなさんも軽く膝を立てて、

上半身のみ横向きで

寝てみてください。

その寝心地の悪さや

体への負担が実感できるはずです。



このような場面は、

褥瘡ができた方の体位交換時に

見られるように思います。

患部に圧力がかからないように、

体位を変えるときに、

体や骨の構造に反した姿勢に
なってしまうのです。


しかし、これはちょっとした気づきで

修正することができます。

「この姿勢は苦しそうだ」と

気づくことから始めればいいのです。


私は、介護部の部長さんに話をし、

寝る時の姿勢について

介護の方々に研修をさせて
もらいました。



すると、リラックスした姿勢で

寝ることにより、

今まで緊張していた筋肉が緩み、

しっかり休めるようになったため、

食事量が少しづつ増えてきました。



次に、車いす座位での姿勢も、

よりリラックスした姿勢になるよう

工夫をし、食事中むせることが頻回

だった方がムセの回数が減ったのです。



栄養ケアマネジメントの情報の

項目にはないことですが、



「食事」は「生活の一部」

という視点を持つことで、

「食事摂取」が

変化するのです。






そして、「好み」も「食べること」には

重要なファクターになります。







これも経験談ですが、

以前、認知症の症状で

自分で食べることができるのに

食事をほとんど食べない方がいました。

軽い雑談のつもりで

お話を聞いていたら、

「昔は甘夏を近所からもらって、

よう食べたわ」というお話を

されていたのです。

ちょうど翌日の朝のメニューに

オレンジがあったので

「明日、オレンジが出ますよ」
とお伝えしたら

「外国のもんはよう食わんわ」

とおっしゃったのです。



この話を介護部長さんと生活相談員に

話をし、その方のお金で「甘夏」を

買ってきて、むいて差し上げたところ

とても喜んで召し上がりました。

一袋で何個か入っているので、

あとは介護の方に食べたいときに

差し上げてください
と言って渡しました。



それから数日後、

介護の方が「サチコさん、〇〇さん、

食事の時に甘夏を出すと、

それを先に食べて、

そのあとご飯を食べるように

なったんですよ!」と

連絡をもらいました。




昼食の時に様子を見に行ってみると、

確かにお食事を召し上がっている

〇〇さんの姿がありました。

全部は召し上がっていませんでしたが、

今までの○○さんからは

考えられない量を召し上がったのです。



その時に、

「人の好み」というのは

こんなにも

「食べることに」

影響する

のだと勉強させて

いただきました。




しかし、実際に、日々、

栄養士業務を行っていく中で、

そこまではなかなかできない

という方も多いと思います。



それでも、覚えていてほしいのです。


生活の一部を

改善すること

その人の好みを

尊重することが

「食べること」に

影響を与えるのだ

ということを。




そして、私は、この思いを

一人でも多くの人に伝えて

いきたいのです。



老人ホームに勤めていると、

介護保険の縛りで

自由に出来ないことも

ありますし、


職員がみんな余裕がなく、

やりたいことを

やることができない場面も

たくさん経験しています。



それでも、人が人を見るからこそ

そこにたくさんの気づきがあり、

それの気づきを実現していくことが

働く私たちのやる気へと

繋がっていくのだと思っています。









一人の力ではどうにもならないことも

仲間があれば動かせる。


今ある制度が完璧ではないなら

思いを共有し、動き出すことで

未来は変わっていきます。




私は1人でも多くの人に

そんな思いを伝え、

「栄養士を元気に」するために

何をすべきか、

これから試行錯誤しながら

進んでいきたいと思っています。

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