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【Wine ワイン】Montes Alpha Chardonnay 2018


良作年のカジュアルリッチなチリ産白ワイン

■Producer (生産者)
Montes

■Country / Region (生産国 / 地域)
D.O Aconcagua Valley / Aconcagua / Chile

■Variety (葡萄品種)
Chardonnay 100%

■Pairing (ペアリング)
Empanada エンパナーダ(具入りのパン)


https://a.r10.to/hlGkPv


Chile

■プロフィール

チリは「3Wの国」といわれる。すばらしい天候Weatherに恵まれ、コロンビア、コスタリカと並び南米3C"と称されるきれいな女性Womenがいて、おいしいブドウ酒Wineの産地として名を馳せているという3つのWである。
2016年のチリワイン輸入量(ボトル) は前年を少し下回る591万ケースだった。これにバルクで輸入して日本国内でボトリングする製品を加えると711万ケース(前年比0.5%増)になる。前年に続き国別輸入量で第1位を維持している。
チリワインの輸入増加は2007年から始まった。そのきっかけは2007年9月3日に日本とチリの二国間で発効された経済連携協定に基づく関税率の通減だった。
これは2019年4月1日に相互の貿易にかかる関税を無税にしようとするもので、毎年、関税率が通減されていく協定である。ワインもこの恩恵にあずかったのでチリワインは他国産ワインより安く輸入できて、しかも年々安くなる。
いまチリワインにかかる関税とその他の国のワインにかかる関税は、2017年4月現在、ボトル1本(CIF価格500円の場合)につき63円の差がある。日本の港に着いた時点で、チリワインには63円のアドバンテージが生まれる。高額ワインなら原価63円の違いに大した意味はないが、 スーパーやコンビニで販売されている低価格チリワインにはとてつもなく大きなアドバンテージになっている。
チリワインのもつ優位性はそれだけではない。ブドウ栽培にうってつけの自然環境に恵まれていることだ。
チリは南アメリカ大陸の西海岸にあり、その国土は南端がパタゴニアの南氷洋、北端はアタカマ砂漠でその南北の隔たりは4.274kmにも及ぶ。その反対に国土の東西はとても狭い。最も狭いところはわずか90km、最も広いところでも380kmしかない。ブドウ栽培地域は国土のちょうど中間部分、南緯27度から39度までのおよそ1.400kmに広がっている。中央部では古くからブドウはもとよりさまざまな果樹栽培が盛んで、ドールやデルモンテなど米国大手食品企業の果汁工場がパンアメリカンハイウェイに沿って軒を連ねている。
隣国アルゼンチンとの国境は6,000m級の山々の連なるアンデス山脈。
古くは硝石、 近年は銅など豊かな鉱物資源がこの国の経済を支えてきた。また、 国土の西側はとても長い太平洋の海岸線である。南氷洋から北に向かって流れるフンボルト海流は冷たい寒流で、真夏でも海水浴ができない。人々は砂浜に集まって甲羅干しするだけだ。そのかわりたくさんの漁場に恵まれており、サーモンなどチリ産の魚介類
は日本全国のスーパーの魚売り場の定番になっている。

■歴史
16世紀〜19世紀(鉱山富豪がワイン産業のスポンサー)

チリのブドウ栽培は16世紀半ば、スペインのカトリック伝道者が聖餐用ワインを造るためバイス種を植えたことに始ま
る。Francisco de Aguirreフランシスコ・デ・アギーレのブドウ畑がチリ最初のものとされる。
1818年にスペインから独立したチリは、 銅、 銀、硝石などの鉱物資源をもとに経済成長を遂げる。いわゆる鉱山富豪
が続々誕生し、彼らがワイン産業のスポンサーになってチリワインの新しい時代が始まる。
1851年、フランスから大量にブドウの苗木を輸入し、マイポ・ヴァレーをはじめセントラル·ヴァレーの各地に植え付けた。その時輸入されたのはすべてボルドー品種だった。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、 カベルネ・フラン、マルベック、カルメネール、そして白品種ソーヴィニヨン、セミヨン、ミュスカデルである。同じころ、 これとは別にドイツのリースリングもほんの少し持ち込まれている。甘口ワイン全盛の時代だったからだ。19世紀半ばのブルゴーニュワインは、 まだ田舎のワインだったのでピノ・ノワールとシャルドネはチリに輸入されていない。またチリでは長らくスパークリングワインを飲むことが稀だったのでシャンパーニュへの関心は薄かったようだ。
この品種構成が後に大きな問題を生むことになる。1980年代から1990年代にかけて世界的に広がったヴァラエタルワインブームは、カベルネ・ソーヴィニョンとシャルドネの2品種が主役だった。 チリには大量のカベルネ・ソーヴィニョンはあったが、シャルドネがまったくなかった。だからセミヨンやソーヴィニヨンの樹を切ってそこにシャルドネを接ぎ、何とか需要に見合うだけの生産量を確保しようと躍起になったのである。
19世紀後半にはブドウの苗木だけでなく、栽培・醸造技術者もフランスから招聴し、本格的なワイン造りを始めた。
当時の鉱山富豪は、ワインや醸造機器はもとより豪勢なシャトーやゲストハウスまで気にいったものはすべて輸入した。
現在、チリの大手ワイナリーがホテルやオフィスとして使用している建物の建築様式や家具調度は、当時のフランスそのもの。まさに鉱山が生み出したバブルの時代であった。
19世紀末にはフィロキセラ満に職ぐヨョーロッパのワイン生産地から、醸造家や栽培家がフィロキセラの被害のないチリに続々と移住してきた。そして彼らの造ったワインを、ワインが枯渇し始めたヨーロッパに向けて輸出した。1889年のパリ万国博覧会ではチリワインの品質は大いに評判になった。


20世紀〜1980年代(生産過剰、荒廃から復興へ)

20世紀に入ると接木の技術が導入され、 ヨーロッパのワイン生産が徐々に復興し、 チリワインを必要としなくなった。消費不振で生産過剰に陥ったブドウ農業は、新植禁止という事態になる。
1970年代から1980年代初めに至るまでチリのブドウ農業は深刻な生産剰問題を抱え、ブドウ価格はほとんどただ同然になってしまいブドウ栽培から離れる人が多かった。
1979年にスペイン・カタルーニャのミゲル・トーレスがクリコ・ヴァレーに土地を購入してステンレスタンクやオーク樽などの新しい醸造機器を設置し、フレッシュ&フルーティなワインをチリのプドウで造ってみせた。そうこうするうちに農産物の価格引き上げ策が効を奏し、1980年代半ばになってようやくワイン産業に活気が戻った。
フィロキセラ禍もなければ秋雨の心配もないチリでは、19世紀半ばの状態が手つかずのまま連綿と引き継がれたのである。畑の新陳代謝はプロヴィナージュ(成木の枝を誘引して土中に埋め、発根したら切り離して新株を得るフィロキセラ禍以前の伝統手法)で行った。
ともかくこうしてチリワインは、1985年以降、最も遅く国際市場に参入した。そして先述のような、競って新品種シャルドネを植える動きが生まれるのである。ワイナリーでは、 発酵槽として使っていたラウリ(チリ原産の木)の大樽を撤去してステンレスタンクを新設・増設する突貫工事をしながら、その傍らでワイン造りを同時進行させる。しかし、でき上がったワインは値段が安く品質の良いものだった。


2000年代(適地適品種の考え方で新しいワイン造り)

1990年代に入ると、先駆けの大成功を目の当たりにした人達が次々とワイン造りに新規参入してきた。これには、それまでワイナリーにブドウを販売していた栽培者が自前でワインを造るようになったケースと、新しく土地を買いプドウを植えたまったくの新規参入者の2通りがあった。
チリワイン産業は21世紀を目前にして、新しいステージを創造しなければ国際市場で生き残ることができないという大きな課題に直面していた。そこで、 「シンプルでジャムのようなヴァラエタルワイン」と言われる状態から、 付加価値のあるプレミアムワイン造りへと舵を切ったのである。
余談だが、残念なことに日本におけるチリワインに対する印象はヴァラエタルワイン全盛時代で止まったままだ。
2007年から日本向け輪出が大幅に増えているといっても、その中味は1990年代に活躍した低価格ヴァラエタルワインの復古品が主役で、日本の料飲店関係者や消費者には進化したプレミアム·チリワインの存在がきちんと知らされないままになっている。
チリワインの新しいステージはテロワール(テルーニョ)をコンセプトにしたワイン造りをすることだった。テロワールが土と空(気候)と人為という3つの要素で構成されるとするならば、チリがそれらをはっきりと意識してブドウ畑の選定と排作に取り組んだのは最近のことである。1980年代にパブロモランデが先鞭をつけ、1990年代に開拓ラッシュになった海岸近くのカサブランカ・ヴァレーは、 絶対量の不足していたシャルドネの生産適地を冷涼地に求めたという意味で、 その走りだったと言えるだろう。
ともかく、平凡なヴァラエタルワインから脱却し、新鮮な果実味と複雑味を備えたワイン造りを目指して、チリの生産者は先を競って具合のよい傾斜地を探し、 涼しい風の吹きこむ土地を見つけて、 そこをブドウ樹で埋め尽くしてきた。そして10年以上が経過したいま、 その樹がようやく最良の生産樹齢に達し、興味深いワインを産み出している。

■紀行風土

チリは南北に細長い国で、東側をアンデス山脈、太平洋岸に海岸山脈が走り、 その中間部が広い平地になっている。冬の数カ月だけ集中して雨が降り、晩春から夏の終わりまでは乾燥している。典型的な地中海性気候で、最も暑い月の日中の気温は30℃に達する。夜になると夏でもかなり涼しくなる。昼夜の気温差は、海岸沿いのブドウ畑で15℃~18℃、アンデスの麓の畑では20℃以上にもなる。
セントラル・ヴァレーの雨は冬に降るだけ。ここでの耕作には灌漑用水が欠かせない。だから耕作地は河川の流域に限られた。チリの河川はみなアンデスから太平洋へ向かって東西方向に流れる。流路の短い急流が何本も走る。マイポ・ヴァレーにはマイポ川、 アコンカグア・ヴァレーにはアコンカグア川、コルチャグア・ヴァレーにはティングイリリカ川という具合だ。いずれも夏には干上がって川床が刻き出しになる。同じ南米大陸を流れる川でもアンデス山脈の東側を悠然と流れる大河アマゾンやラブラタとは対照的だ。

■伝統的な灌漑の方法

それぞれの耕作地には古くからアンデスの雪解け水を引き込むための瀧渡用水路がある。
チリの伝統的な灌漑の仕方は、 雪解け水を貯めて(あるいは川から引きこんで)畝間に流すナチュラル・イリゲーションである。アンデスからの水の供給量が不足している地域や、水がほとんど来ないカサブランカ・ヴァレーなどでは、井戸を掘って水を確保し、 ドリップ・イリゲーション(点滴灌漑)で水の浪費を防いでいる。
ブドウ樹が水を必要としているかどうかを確認するために、樹間に1mほどの深さで管を通し、その部分の湿度を定期的にチェックする。 あるいはカリカタ (畝間に掘った土壌分析のための穴)を掘り、土質を分析するとともに有効な灌水量の調査も進めている。そして最近では、乾燥の烈しい斜面の畑を除けば、自然のままに任せて灌水をしないドライファーミングの畑が増えてきた。 灌水するにしてもその時期と給水量に十分な注意を払っている。一般に収穫の1カ月前には完全に灌水を中止する。給水によるブドウ果粒の水ぶくれを避けるためだ。

■ブドウ成熟期の涼しさの確保

チリで水の確保とともに重要なことは冷気、ブドウ成熟期の涼しさである。
チリのみならず南半球のブドウ栽培地は、北半球のそれに比べいったいに緯度の低いところに位置している。いや、寒さや雨による栽培リスクを避けるためにわざわざそういう土地を選んでブドウ畑を拓いたといった方が正しい。緯度が低いと日射角が鋭くなり日射量が多くなる。日射量が多いと紫外線も強い。ブドウは強い紫外線に抵抗して果皮を厚くする。厚い果皮にはポリフェノールが豊富に含まれる。だからチリワインは冷涼地のブドウ(ピノ・ノワールやシラー)で造ったものでも色の濃いものが多い。
涼しさはどこにあるのか。ひとつは万年雪を被ったアンデスの山々から風が吹き下ろす山麓·斜面の畑、 もうひとつは太平洋を流れるフンボルト寒流で冷やされた海風の吹きつける海岸に近い畑である。アンデスの麓と海岸山脈の斜面は異なる理屈であるけれども涼しいという共通項を持っている。

■土壌の特徴

次に土地の成り立ちや土壌組成の特徴をみる。地質学的にみると、今から1億年前~8000万年前にナスカ・プレートが南米プレートにぶつかって南米プレートの下に滑り込んだ。その衝撃で地震や造山活動が活発になり、その結果としてアンデス山脈が形成された。海岸山脈(沿岸山脈)はアンデスの山々よりはるかに低い丘陵だが、その成り立ちはアンデスより古い。アンデス形成以前の海岸山脈は幾つかの島であり、現在のチリの国土は水面下にあったと考えられている。
セントラル・ヴァレーは、2つのプレートの衝突によって隆起して陸地になり、そこにアンデスの造山活動で降ってきた火山を 岩や灰が堆積し、その上に河川の運んだ砂利や粘土が層を成してできあがった。また、海岸山脈はアンデスのように南北にきれいに連なった山々ではなく、褶曲、隆起、陥没を繰り返し、あるものは伸び、あるものは縮み、 あるところでは川に浸食されて、まったく混沌として無秩序な形になってしまった。だから、その斜面はじつに多様で、ところによってさまざまな方角を向いている。たとえばアパルタなどの有名な畑のあるコルチャグア・ヴァレーは東西に伸びる海岸山脈の斜面にある。アパルタは海岸山脈の南向き斜面(南半球では南向き斜面が涼しい)に拓いた畑である。
そういう成り立ちからアンデスの麓は主に火山性土壌や崩積土、中央部の平地は肥沃な沖積土、海岸山脈側は砂が多く痩せた古い土壌、石灰質土壌などが支配的になっている。

■チリにフィロキセラの被害がない理由

ブドウの生育期間(発芽から収穫まで)を通じて乾燥状態が続くからボトリティスやベト病など菌類の病気に置らないこともチリのブドウ栽培の特徴だ。またチリにはフィロキセラの被害もこれまでのところない。だから北米品種の台木に接木する必要がない。これまでブドウ樹はプロヴィナージュで植えてきた。チリではムグロンと呼ぶ(フィロキセラ禍以前のヨーロッパでも行われていた)増植法である。しかし、隣国アルゼンチンのメンドーサがそうであったように、 水田のようなナチュラル灌漑からドリップイリゲーションに切り替えると、フィロキセラの現われる危険性が高まると言われている。だからチリでは、いつ何時、フィロキセラの棲息が確認されても良いように保険の意味合いで北米台木に接木をして新植する畑が増えている。
北米台木との接木を採用する理由は他にもある。ひとつはネマトーダ(ネコブセンチュウ)という害虫対策だ。ネマトーダは根に大小の虫こぶをつくって時に根を腐らせることもあるが、フィロキセラのような強い感染力(繁殖力)はない。もう一つは最近の土壌分析で明らかになったことだが、ヴィティスヴィニフェラの根は怠情で地表近くに水分があるとそこに居座り、地中深くまで入り込もうとしないことだ。それに比べると北米品種の根の多くは地中深くまで伸びて深層のミネラル分を吸収する。だからそれぞれの地層に適合した北米品種の台木を選んで接木する。ちなみに現在、台
木品種は数多く販売されているが、 いずれも北米原産のヴィティスリパリア、ヴィティス・ルペストリス、ヴィティス・ベルランディエリのうちの2種を交雑したものである。リパリアは比較的根の浅い性質、ルベストリスは乾燥に耐え根が深い性質、ベルランディエリは乾燥と石灰質土壌に強い性質がある。これらの中から土壌構成に合わせて台木を選ぶようだ。
蛇足をひとつ。1990年代にカリフォォルニアのブドウ樹が台木を使っていたにも関わらずフィロキセラの被害に遭って改植を余儀なくされた。当時、 カリフォルニアではAXRという台木を使っていた。AXRはA=アラモンとR=ルペストリスの交雑種であり、アラモンはヴィティス・ヴィニフェラだ。このアラモンの性質が新種のフィロキセラに弱かったというわけだ。
チリにフィロキセラの被害がない理由を聞くと「東をアンデス、西を太平洋、北をアタカマ砂漠、南を南氷洋に囲まれているチリは自然の要塞でフィロキセラを寄せ付けない」と説明されることがしばしばある。だが、 フィロキセラの棲む
メンドーサとは、毎日たくさんのトラックが往来しているから、いつでもフィロキセラは侵入できるはずだ。だからこの説明には無理がある。それでも、 ともかく今のところチリにはフィロキセ
ラの被害の報告はない。そしてチリの農業省農牧庁SAG=Servicio Agrícola y Ganadero Departamento Protección Agricolaの植物検疫は非常に厳しく、新品種を外国から輸入する際には検疫所で2~3年かけてウイルスチェックなどを行うことが義務付けられている。

■主なブドウ品種

2015年のチリのブドウ栽培面積は141,918ha。赤ワイン用品種105,544ha、白ワイン用品種36,375ha。 チリで栽培するワイン用ブドウ品種は75種になった。主なブドウ品種の栽培面積は次の通り。

Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニヨン
43,211
Sauvignon Blancソーヴィニヨン・ブラン
15,173
Pais パイス
12,521
Merlot メルロ
12,243
Chardonnay シャルドネ
11,698
Carmenère カルメネール
10,861
Syrah シラー
8,233
Pinot Noir ピノノワール
4,149
Malbec マルベック
2,313
Carignan カリニャン
843

■カベルネ・ソーヴィニヨン
カベルネ・ソーヴィニヨンが全体の30%を占めている。これにその他のボルドー品種を加えると6割強の占有率になる。
マイポ・ヴァレーが主産地で、プエンテ・アルト、 ピルケ、プイン、アルト・ハウエルなどアンデスの麓の斜面に位置する畑が有名だ。ことにマイポ川北岸のプエンテ・アルトからはチリを代表する赤ワインが生産されている。

■ソーヴィニヨン
チリにはソーヴィニヨン・ブランではなくSauvignonasse ソーヴィニヨンナス=Sauvignon Vertが多かったので、ラベルには「ソーヴィニヨン」とだけ表示される時期があった。その原因は19世紀半ばにボルドーから苗木が輪入された時に遡る。当時からセミヨンにSauvignonasse ソーヴィニヨンナス=Sauvignon Vertが混ざって植えられた。1990年代のチリ産ソーヴィニヨン・ブ
ランは、トロピカルフルーツの香りのものが多かったが、涼しい畑で栽培する生産者が増えて野菜っぽい香りのするソーヴィニヨンブランが主流になり、このところはグレープフルーツの香りのものに移っている。

■カルメネール
カルメネールはボルドー品種で、19世紀半ばにボルドーからカベルネソーヴィニヨン、メルロなどと一緒に持ち込まれた。受粉の時期が低温になるとすぐに花震いをおこしてしまうこと、熟期がとても遅いなどの理由で、ボルドーでは栽培が途絶えてしまった品種である。
ところが天候の良いチリでずっと生き続けた。ただチリではそれを長らくメルロだと思っていた。初めてカルメネールが発見されたのは1994年11月24日のことだった。フランスのブドウ学者クロード・ヴァラが、当時のチリで栽培されていたソーヴィニヨンのほとんどがソーヴィニヨンナスだと主張し、1991年に初めてソーヴィニヨンブランのクローンをチリに紹介した。俳せてクロード・ヴァラは、 チリのメルロの一部もメルロであるかどうか疑わしい。 カベルネ・フランではないかと持論を述べた。
ヴァラの薫陶を受けたフランス人ブドウ学者ジャンミッシェル・ブルシクオがマイポ・ヴァレーのビニャカルメンの畑に出向き、「カルメネール」と結論付けた。当時、カルメンのエノロゴだったアルバロ・エスピノサは早速そのブドウでワインを造った。しかし、 農業省農牧庁SAGのワイン用ブドウ品種リストに「カルメネール」はなかったのでラベル表示することができず、アルバロは「グラン・ヴィデュール1994」として市場に紹介した。
1996年になってようやくSAGはカルメネールを認証しラベル表示を許可した。しかし、当時のカルメネールは、しっかり畑で熟させていなかったのでピーマンのような青い香りを持っていた。その後、畑でメルロとカルメネールの植え分けが進み、カルメネールの栽培法もヴィンテージを重ねるごとに理解されるようになった。
カルメネールの特徴は色素の濃さにある。語源の
Carmineは「深紅色の」という意味。香りの成分がしっかり熟すまでにとても時間のかかる品種で、早いうちに摘むとメトキシピラジンの青い香りが残る。しっかり成熟したブドウを摘むと熟した果実、さらに樽熟成によってコーヒーやチョコ
レートのような香りになる。 口に含んだ時の味わいには、やわらかくて丸いタンニンと凝縮した果実味が感じられる。

■メルロ
カルメネールの進展の一方で、メルロが等開視されてきた。かつてメルロとカルメネールが混植·混同されていた時代のチリのメルロは、熟した果実にパプリカのニュアンスの加わったバランスの良いワインだった。しかしカルメネールを分離独立してからというものジャムのような香味のワイン
になっている。近年栽培適地を求め、メルロはセントラル・ヴァレーから北のリマリ・ヴァレーやエルキ・ヴァレー、 あるいはカサブランカ・ヴァレーなどの冷涼地に移動している。

■シラー
チリの新品種の中ではシャルドネに次いでシラーが大きな栽培面積を確保している。初めはコルチャグア・ヴァレーなど比較的暖かい産地に植えられることが多かったが、 最近はサンアントニオ・ヴァレーなど冷涼地で栽培される引き締まった味わいのシラーが評価され始めている。

■ピノ・ノワール
ピノ・ノワールも着実に栽培面積を広げている。 新しく冷涼地を拓くとソーヴィニヨン・ブラン、 シャルドネなどの白品種とともに必ずピノノワールが植えられている。ブルゴーニュの醸造家をコンサルタントに招いて栽培·醸造の両面から改善の取り組みが進んでいる。チリのピノ・ノワールは味わいが軽快でも色は濃くアロマに強さがあるのが特徴だ。海風が直接吹き込むサン・アントニオ・ヴァレーなどで育ち素晴らしい酸味をもっているが、日射量には低緯度特有の強さがあり果皮が厚く、色素が濃くなるからだ。

■パイス
チリのブドウ畑はパイスとともに歩んできた。しかし21世紀を迎えると年々歳々、栽培面積が減少した。マウレ・ヴァレーには零細なパイスの栽培農家が多く、 彼らの経営を守るために行政が幾つかのワイナリーにパイスの再生策を委嘱した。その結果、パイスで造った素晴らしいスパークリン
グワインや、軽快な赤ワインが誕生している。 ことに、 ながらく放置されてきた非灌漑地のパイスは、 樹齢が古くなり自然に収量がおちて品質が向上している。

■カリニャン
栽培面積わずか843haのカリニャンが話題になっている。2009年11月に12ワイナリーがヴィーニョVIGNO=Vignadores de Carignanを結成し、ヴュー・カリニャンのラベルに共通のロゴマーク「VIGNO」を表示して販売したからだ。このグループは2016年12月末現在、14ワイナリーを数えている。
VIGNOの製造基準は、 D.O.マウレ・ヴァレーのカリニャンを65%以上使用したワインであること。そして、①樹齢30年以上のブドウを使用、②灌漑をしていない (ドライ・ファーミング)畑で株仕立て(エンバソ)であること、③マウレ・ヴァレー
(カウケネス、メロサル、サウサル、ロンコミージャ)のブドウであること、④木、セメント、アンフォラ、 ガラスの容器で24ヵ月以上熟成したもの、 が必要条件である。
1939年イタタ・ヴァレーの大地震でカウケネスのブドウ畑のパイスが壊滅した。1940年以降、パイスに代わる新品種がフランスから導入され新植された。 大量生産の時代ゆえ、持ち込まれたのは収穫量の多いラングドックのカリニャンだった。戦後の混乱と1970年代の動乱、 それに続くヴァラエタルワインの全盛期に、 カリニャンはすっかり放置されていた。その結果、年を経て老いた樹はほんの少しの実しか付けなくなった。ところがそれをワインにしてみるとすばらしい品質だった。こうしてヴュー・カリニャンを売り出すVIGNOが誕生した。

■ワイン法と品質分類
チリのワイン製造に関するルールは法NO.18455
(1985年。アルコール飲料の生産に関する規則)に定められ、それに沿って1986年に農業省令N0.78が制定された。それによるとワインは、* ヴィティス・ヴィニフェラのブドウ果汁を発酵させたものに限る。
* ワインの製造工程でアルコール、 離糖などの糖類、 人エ甘味料を使用してはならない。ワインはブドウ果汁の糖分だけで造らなければならない。
* ワインのアルコール分は11.5%以上でなければならない。と、定義されている。
また、スパークリングワインEspumoso エスプモーソは、密閉容器中の二次発酵で得られた炭酸ガス(20℃で3気圧以上)を有するワイン。ボトルもしくはタンクで二次発酵をうながすとき(licor de tiraje リコルデティラへ) に蔗糖、licor de expedición : リコルデエクスペディシオンワイン、ブランデーなどのスピリッツを加えることができる。最終製品の残糖分の量で次のように分類できる。

• Brut Nature ブルットナトゥレ
3g/ℓ未満

• Extra Brut エクストラブルット
0~6g/ℓ

• Brut ブルット
12g/ℓ未満

* Seco セコまたはDry
12~21g/ℓ

* Demi Sec デミセックまたはMedium Dry 21~50g/ℓ

• Doux ドゥー
50g/ℓ以上

ワインの原産地呼称Denominación de Origen
(D.O.)とワインの品質表示は1994年に農業省令N0.464が規定され、1995年5月26日付官報で公告された。SAGはこの省令に定められた原産地呼称、 品質規定などを保護監督し、輪出ワインの品質保証·統制を担当する。
チリの原産地呼称D.O.ワインにはフランスのA.0.Cのような収穫量の制限や栽培品種の特定、熟成期間などの醸造法等に関する規制がない。
州はさらに県Provinciaに分割され、県はさらに市町村Comunasに分けられる。 ワインの原産地呼称D.O.にも別表で示したように県、 市町村単位で細分化されたD.O.がある。しかしそれぞれのD.O.の関係は、A.O.C.のようなピラミッド型の品質階層ではなく、栽培範囲の大小を表しているに過ぎない。
義務付けられているラベル表示の項目ワインのラベルには次のことがらを表示することが義務付
けられている。

①ワインの種類(赤ワイン、 白ワインなど)

②製造者(瓶詰者) 名と所在地

③ワインの容量

④アルコール含有量

⑤PRODUCE OF CHILEなど原産国がCHILEであることの分かる語
さらに次のことがらは必要な条件が満たされたときに任意でラベル表示できる。

⑥ワインの原産地呼称D.O.
当該産地のブドウを75%以上使用し、 消費者に供することのできる容器(瓶、 BIBなど)にチリ国内で詰めたワインに限る。
D.O.ワインには次の品質表示を加えることができる。

Superior スペリオール
香味に独自性が認められる場合。

Reserva レセルバ
アルコール度数が法定最低アルコール度数より少なくとも0.5%以上高く独自の香味がある場合。

Reserva Especial レセルバエスペシアル
アルコール度数が法定最低アルコール度数より少なくとも0.5%以上高く、独自の香味があり樽熟成したワイン。

Reserva Privada レセルバ・プリバダ
アルコール度数が法定最低アルコール度数より少なくとも1%以上高く、独自の香味がある。

Gran Reserva グランレセルバ
アルコール度数が法定最低アルコー
ル度数より少なくとも1%以上高く、独自の香味があり樽熱成したワイン。

⑦ブドウ品種名
当該品種が75%以上使用されているものに限る。2品種もしくは3品種をアサンプラージュした場合、いずれの品種も15%以上使用し、使用比率の多い順に左から右に並べて表示できる。

⑧ワインの収穫年
当該生産年のワインを75%以上使用しなければならない。

⑨生産者元詰Embotellado en OrigenまたはEstate Bottled
自社ブドウ畑と醸造·瓶詰設備が当該D.O.内にあり、 醸造、瓶詰、保管が一貫して自己の設備内で完結している
場合に限る。醸造協同組合の場合は組合員の栽培したブドウで生産され組合の醸造所で瓶詰めされたワインに限る。

⑩残糖量に応じたワインのタイプの表示
Seco/Sec/Dry 残糖分4g/ℓ未満。ただし総酸度(酒石酸換算)が残糖分を2g/ℓ以上上回っている場合
は9g/lまでの残糖分を許容する。
Semi seco/Demi sec/Medium Dry 4g/ℓ以上
12g/ℓ未満。総酸度が2g/ℓ上回る場合は18g/ℓ未満。
Semi dulce/Moelleux/Medium Sweet 18g/ℓ以上45g/ℓ未満。
Dulce/Doux/Sweet 45g/ℓ以上。

11.EUは原産地呼称ワインの製造基準を産地名、品種名、生産年とも「85%以上使用」としている。 そのためSAGの指導監督のもと、 輪出向けチリワインはすべて「85%以上使用」している。

■ワインの産地と特徴
チリのブドウ栽培地域は大きく分けると北部、中央部、南部の3つに分けられる。 その長さは1.400kmにも及ぶため気候条件や土壌に大きな違いがある。現在、原産地呼称D.O.に認定されている地域を北から順に紹介する。 

参考資料 日本ソムリエ協会教本、隔月刊誌Sommelier
最後までお読み頂きありがとうございます。
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