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【Wine ワイン】NV Deutscher Zekt Riesling Brut



引き締まるような辛口というよりもエクストラドライでたまには良いかも。

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■Producer (生産者)
⁃ Peter Frimuth

■Region / Country(地域 / 生産国)
⁃ Mosel / Germany

■Variety (葡萄品種)
⁃ Riesling

■Pairing (ペアリング) 
⁃ オードブル

■生産地概要
⁃ Germany ドイツ

プロフィール

 EUではワイン生産地域を、 ブドウの栽培環境によって ゾーンAからCIIIbまで6段階に分けているが、ドイツの大半はその中で最も冷涼とされるゾーンAに属し、 最南部のバー デンのみゾーンBに属している (EU委員会規則(EC) No 479/2008) ドイツのワイン生産地域は北緯47~52度の範囲に分布し、これはおおむね樺太(サハリン) の北緯に相当する。
 ドイツには全部で13のワイン生産地域がある。 旧西ドイツの11生産地域は、 フランス寄りの南西部にあり、 すべてライン川とその支流に沿って分布している。 旧東ドイツの2生産地域は、チェコ・ポーランド寄りの東部にあり、どちらもエルベ川とその支流に分布している。
 ワイン生産地域の大半が分布する南西部は、大西洋と大陸の両方の気候的影響を受けて、冬は温暖で夏は涼しくおおむね乾燥している。 だが、近年は気候変動の影響で、夏は最高気温が30℃を超える日も珍しくない。また、4月下旬から5月上旬にかけては遅霜の、夏は雹(ひょう)のリスクが高まっている。そして収穫時期もまた、リースリングの場合、20世紀は10月上~中旬頃に始める年が多かったが、近年は9月中に始める年が増えている。
 一方東部は南西部よりも大陸性気候の影響が強く、 夏はより暑く乾燥し、冬の寒さは厳しく、遅霜のリスクも高い。
 地中海沿岸の産地と比較した場合、とりわけブドウの成長期に当たる夏から秋にかけて雨が降りやすい点に特徴が あり、病害虫への対策が欠かせない。
 伝統的に川沿いの斜面を利用してブドウ栽培が行われているが、これは斜面は日照効率や水はけが良いといった栽培環境のほかに、19世紀後半に鉄道が敷設されるまで、河川が物資の輸送に重要な役割を果たし、 交易の拠点となる都市が川沿いにあったことによる。近年は温暖化が進み、80年代までは容易に完熟しなかったフランス系品種も毎年熟すようになったが、 優れた品質のワインは一般に、斜面にあるブドウ畑で産することに変わりはない。
 ドイツの13生産地域を合計したブドウ栽培面積は103,180ha (2020年) で、 ボルドーのブドウ栽培面積の約9 割に相当し、国際的にはギリシャに次ぐ第18位 (2020年、OIV) 2020年に収穫されたブドウ果汁とワイン生産量の。合計は約841万hℓで、2019年を約2%上回った。
 日本においてドイツは、甘口白ワインの生産国というイメージが根強いが、現在はブドウ畑の約33%を赤ワイン用品種 が占め、生産されるワインの約70%が辛口かオフドライであ る。その背景には、90年代の赤ワインブームとともに、食習慣の変化があった。つまり、かつては家族や友人が集まった際の会話の合間に、舌とのどを潤すために、ワインを単独で飲むことが多かった。しかし90年代以降は、それまで夕食はパ ンとチーズなどで軽く済ますことが多かったのが、調理した温かいものを食べることが増えるとともに、フランスやイタリアのように、食事に合わせてワインを飲む機会が増え、辛口の需要が高まっていった。やがて産地や土壌、ブドウ畑を表現した辛口がもてはやされるようになり、1999年からラインガウでブドウ畑の格付け制度が始まった。近年は気候変動とともに、フランス系の品種の栽培面積が増えている。
その一方で、ドイツならではの低アルコール濃度で繊細なスタイルが、改めて評価されている。
 さらに1990年代末頃からの動きとして、各地で結成された若手醸造家団体の活動を見逃すことはできない。仲間同士でオープンに意見を交換しながら、互いに切磋琢磨(せっさたくま)し、毎年3月下旬にデュッセルドルフで開催される国際ワイン見本市 Pro Wein(プロヴァイン)で、存在をアピールしてきた。彼らの活動が、ドイツのワイン業界のイメージにも、ポジティヴな影響を与えた。国外で経験を積んだ醸造家や、醸造に縁のない業界の出身でワイン造りに取り組む生産者も増えている。
 2021年1月には新しいドイツワイン法が施行され、格付けの基準が 「収穫時の果汁糖度」から、EUで共通の「地理的呼称範囲」に変わった。ただ、2025年産までは移行期間で、新ドイツワイン法に基づくラベル表記が登場するのは2026年産からとなる見込みである。
 また、2021年7月にワイン生産地域アールは、大洪水により深刻な被害を受けた。国内外に支援の輪が広がったが、その復興には長い時間がかかるとみられている。


■歴史
 ドイツワインの歴史は、紀元前5~4世紀にさかのぼる。当時ライン川やモーゼル川周辺のケルト族貴族は、地中海産のワインを輸入していたことが、 エトルリア様式のアンフォラなどの出土から明らかとなっている。紀元前16年頃に、モー ゼル川沿いのトレヴェラー族居住地にローマ軍が進駐しアウグスタ・トレヴェロールム (現在のトリーア) を設立した。そこはやがて、西ローマ帝国皇帝居住地として栄え、4世紀末に最盛期を迎えた。当時の繁栄の様子は、220年頃にワイン商の墓碑として制作され、19世紀にノイマーゲンで発見されたワイン輸送船の石碑や、主としてモーゼル中流域に50ヵ所余り発掘された、3~5世紀のブドウ圧搾所の遺跡と、ボルドー出身の詩人アウソニウスが、371年頃に著した詩「モゼラ」の中の、ブドウ畑の描写に見ることができる。
 5世紀にゲルマン民族大移動をきっかけとして、西ローマ 帝国が滅亡したが、 やがて588年に詩人ヴェナンティウス・フォルトゥナートゥスが、メロヴィング王キルデベルト2世に随行して、モーゼル川を航行したときの様子を詠んだ詩に、急斜面の岩肌で赤ワイン用ブドウが栽培されていたと記されている。当時ブドウ畑を所有し、ワイン造りに取り組んでいた のは、教会と修道院であった。6~7世紀にかけて、アイルランドとスコットランドから宣教団が、ライン川を越えて現在のドイツ東部と北部にキリスト教を布教するとともに、各地にブドウ栽培が広がって行った。
 フランク王国カロリング朝の王で、800年に西ローマ皇帝の称号を得たカール大帝は、各地の所領に勅令を出して、適切なブドウ栽培と衛生的な醸造を指示するとともに、教会や修道院にブドウ畑を寄進して、ワイン造りの普及に貢献し た。インゲルハイムの居城からライン川対岸の斜面の雪解けを見て、後のヨハニスベルクのブドウ畑の開墾を命じたという逸話は有名だが、 史料的な根拠はない。また、シュペートブルグンダー (ピノ・ノワール) を884年にドイツのボーデン湖畔に持ち込んだのは、カール大帝の曾孫(そうそん)のカール3世肥満王だといわれているが、ラインガウでは、1136年に設立されたシトー派のエーバーバッハ修道院が、本拠地のブルゴーニュから持ち込んだという説がある。
 12世紀以降各地に都市が成立し、市場経済が発達するとともにワイン商業が盛んとなった。都市では特に水の衛生状態が悪かったので、ドイツ南部ではワインは必需品として毎日1~2ℓ飲まれた。 一方ドイツ北部では、ワインはアルザスなどの産地から河川を経由して、遠距離を運ばねばならなかったので、専ら高価な嗜好品として取引され、日常的には、地元で醸造されたビールが飲まれた。1500年頃まで温暖な気候に恵まれて、ブドウ栽培面積は15世紀後半から16世紀前半にかけて、約35万haと今日の約3.5倍の面積まで広がった。リースリングやシュペートブルグンダーが、史料で言及されはじめるのも15世紀のことであるが、 同時に偽造や有害物の混入も横行し、それを取り締まる法律が度々出された。やがて1430年代から1680年頃まで、断続的に続く寒冷期による不作や飢饉(ききん)、三十年戦争 (1618~48)、ファルツ継承戦争 (1688~97) などの戦乱で国土は荒廃し、ブドウ栽培も衰退した。
 18世紀に入るとブドウ栽培の改善が各地で行われた。1720年にフルダ修道院院長の所領だったヨハニスベルクで、リースリングの苗木が大量に植樹された。エーバーバッハ修道院が所有するシュタインベルクでは、1753年と1760年に貴腐ブドウの収穫が行われ、ヨハニスベルクでは 1775 年から、貴腐ワインの醸造が毎年試みられるようになった。1786年に、モーゼル一帯を支配するトリーア大司教で選帝侯だったクレメンス・ヴェンツェスラウスが、質の劣るブドウを引き抜いて、リースリングとみられる高品質なブドウを栽培するよう命じた。

 1789年にフランス革命が起きて、1802年にライン左岸、1803年にライン右岸がフランスの支配下に入ると、教会や修道院が所有していたブドウ畑を含む地所は接収されて、競売にかけられたり、領邦君主の管理下に置かれることになった。ラインガウ (1867年) とモーゼル (1868年) では、ブドウ畑の格付けが行われ、19世紀後半に鉄道が敷設されるとワインの市場は一気に拡大した。1874年にドイツでも最初のフィロキセラによる被害が確認されたが、間もなく終息し、ドイツワインはヨーロッパ各地で、ボルドーの1級シャトーやブルゴーニュのグラン・クリュとならび高値で取引された。
 しかし第一次世界大戦の敗北と、賠償金支払いによるハ イパーインフレや世界恐慌 (1929年)に続き、ナチスの政権掌握でワイン業界からユダヤ人が追放され、国外への販路を失ったワイン産業は、苦難の時期を迎えた。第二次世界大戦後は、1960年代から70年代にかけての高度経済成長時代に、甘口ワインがブームとなり、ブドウ畑が大幅に増えるなど好景気となったが、オーストリアに端を発する1985 年のジエチレングリコール (不凍液) 混入事件で、甘口ワインへの不信感が蔓延(まんえん)し、生産者はドイツ国内向けには辛口ワインに活路を求め、甘口ワインは輸出に力を入れた。1990年代の赤ワインブーム以降の状況は、プロフィールで述べた通りである。



気候風土
 気候変動により、ドイツでは1989年以降ほぼ毎年ブドウが熟すようになった。年間平均気温はおおむね9~10℃前後と南方の産地に比べれば冷涼ではあるが、夏の最高気温は40℃近くまで上昇することもある。だが温暖化によってブドウが熟しやすくなったばかりではなく、遅霜、豪雨、雹などの極端な気象条件に見舞われることが増えている。
 ドイツではブドウの成長期に雨が降る。年間平均降水量は約500~1,000mmと生産地域によって開きがあり、また年間日照時間も1,400~1,800時間と南欧の産地よりも短い。冷涼な気候に向く、リースリングやシュペートブルグンダーの栽培に適している。
 雨が比較的多いので、水はけの良し悪しが重要な栽培条件となり、高品質なワインの栽培には斜面が有利である。斜面による日照効率の高さと、川の豊かな水量による保温効果もある。しかし近年は標高の高い畑など、むしろ冷涼な栽培条件が注目されつつある。
 栽培面でも、キャノピーマネジメントで光合成を抑制して果汁糖度の上昇を抑えたり、風通しを良くしつつ果実の日焼けを防ぐよう配慮した除葉が行われたり、果汁の酸度を保った状態で収穫することが重要となったりしている。 

2020年ヴィンテージレポート
 5月末には開花が始まり、6~9月まで暑く乾燥し、8月末には収穫本番を迎えた。多くの品種が同時に熟したため、収穫作業が急がれた。ブドウの実は小粒で健全に熟したが、果汁糖度はやや控えめで、適度な酸が保たれた。収穫量は東部は遅霜で3、4割減った。その他は平年よりおおむね多かったが、同じ地域でも局地的に差があった。


主なブドウ品種 (2020年資料による)

ドイツのブドウ品種~近年の傾向~
 気候変動と栽培技術の向上に伴い、1990年代以降、栽培品種は大きく変化している。1980年代初頭には11~13%ほどしかなかった赤ワイン用ブドウ品種の栽培面積は、世界的な赤ワインブームを背景に1995年には20%を超えた。2005年には36.8%とピークに達し、とりわけシュペートブルグンダーとドルンフェルダーが栽培面積を増やした。2017年以降、赤ワイン用ブドウ品種の割合は約33%で、やや減少傾向にある。
 一方で白ワイン用ブドウ品種の割合は、2005年以降増加に転じ、リースリングのほかにもヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランといった国際的な辛口白品種が、温暖化の恩恵もあって増え続けている。逆に70年代~80年代初頭にかけてもてはやされたミュラー・トゥルガウ、ケルナー、バッフス、ショイレーベなどの交配品種は、90年代以降減少している。これらの早熟で栽培条件を選ばず、収量が高く、アロマティックな交配品種の栽培面積減少は、ドイツのワイン業界が量から質へ、甘口から辛口へと向かったことを反映している。このほか、ゲヴルツトラミーナー、ゲルバー・ムスカテラーといった、アロマティックな品種の栽培面積が、近年次第に増えつつある。1985年をピークに減少を続けていたショイレーベも、「ドイツのソーヴィニヨン・ブラン」として再評価され、ブドウ畑全体に占める栽培面積の割合は、2013年以降は1.4%で下げ止まっている。
 また、2000年代に入り有機農法に取り組む生産者が増えるとともにカビ菌耐性品種 (Pilzwiderstandsfähige Rebsorten ピルツヴィダーシュタンズフェーイゲ・レープソルテン、略称PIWIピーヴィ)が注目されるようになった。 代表的な品種に赤のRegentレゲント, 白のCabernet blancカベルネ・ブラン、Solarisソラリス、Johanniterヨハニターがある。栽培のメリットは明らかなものの、消費者の知名度が低く、栽培面積は伸び悩んでいる。


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[品種別ブドウ栽培面積2020年]

参照: Deutscher Wein Statistik 2021/2022; 連邦統計局 (Statistisches Bundesamt) Fachserie 3 Reihe 3.1.5 Grunderhebung der Rebflächen 2020


[白ブドウ]

品種
栽培面積 (ha)
割合 (%)
2020-1995 (ha)

1
Riesling=Rheinriesling
リースリング=ラインリースリング
24,150
23.4
1,011

2
Müller-Thurgau=Rivaner=Riesling×Madeleine Royale
ミュラー・トゥルガウ=リヴァーナー=リースリング×マドレーヌ・ロイアル
11,453
11.1
-12,036

3
Grauburgunder=Ruländer=Pinot Gris
グラウブルグンダー=ルーレンダー=ピノ・グリ
7,356
7.1
4,821

4
Weißburgunder=Pinot Blanc
ヴァイスブルグンダー=ピノ・ブラン
5,922
5.7
4,100

5
Silvaner
ジルヴァーナー
4,581
4.4
-2,965

6
Chardonnay
シャルドネ
2,377
2.3
2,106

7
Kerner
ケルナー
2,257
2.2
-5,303

8
Sauvignon Blanc
ソーヴィニヨン・ブラン
1,661
1.6
1,661

9
Bacchus=[Silvaner×Riesling]×Müller-Thurgau
バッフス=[シルバーナー×リースリング]×ミュラー・トゥルガウ 
1,614
1.6
-1,835

10
Scheurebe=Riesling×Bukettraube
ショイレーベ=リースリング×ブケットトラウベ
1,437
1.4
-2,169

11
Roter Traminer
ローター・トラミーナー
1,119
1.1
282

12
Gutedel=Chasselas=Fendant
グートエーデル=シャスラ=ファンダン
1,105
1.1
-211

13
Gelber Muskateller
ゲルバー・ムスカテラー
506
0.5
506

14
Weißer Elbling
ヴァイサー・エルプリング
475
0.5
-663

15
Ortega=Müller-Thurgau×Siegerrebe
オルテガ=ミュラー・トゥルガウ×シーガーレーベ
395
0.4
-851

16
Huxelrebe=Elbling×Courtilier Musqué
フクセルレーベ=エルブリング×クルティリエ・ムスケ
373
0.4
-1,074

17
Morio-Muskat
モリオ・ムスカート
333
0.3


18
Auxerrois
オクセロワ
285
0.3


その他の品種
2,019
2.9


合計
69,418
67.3
-16,054



[黒ブドウ]

品種
栽培面積 (ha)
割合 (%)
2020-1995 (ha)

1
Spätburgunder×Pinot Noir
シュペートブルグンダー=ピノ・ノワール
11,660
11.3
4,461

2
Dornfelder=Helfensteiner×Heroldrebe
ドルンフェルダー=ヘルフェンシュタイナー×ヘロルドレーベ
7,332
7.1
5,449

3
Portugieser
ポルトギーザー
2,548
2.5
-1,892

4
Trollinger=Vernatsch=Schiava
トロリンガー=フェルナッチ×スキアーヴァ
2,051
2.0
-475

5
Lemberger=Blaufränkisch
レンベルガー=ブラウフレンキッシュ
1,940
1.9
1,021

6
Schwarzriesling=Müllerrebe=Pinot Meunier
シュヴァルツリースリング=ミュラーレーベ=ピノ・ムニエ
1,807
1.8
-309

7
Regent (Silvaner×Müller-Thurgau) ×Chambourcin
レゲント(シルバーナー×ミュラー・トゥルガウ)×シャンプールサン
1,722
1.7
1,722

8
Merlot
メルロ
790
0.8
790

9
Sankt Laurent
サンクト・ラウレント
601
0.6
533

10
Cabernet Sauvignon
カベルネ・ソーヴィニヨン
449
0.4
449

11
Acolon
アコロン
448
0.4
448

12
Domina=Portugieser×Spätburgunder
ドミナ=ポルトギーザー×シュペートブルグンダー
354
0.3
245

13
Cabernet Mitos=Lemberger×Teinturier du Cher
カベルネ・ミトス=レンベルガー×タントゥリエ・デュ・シェール
292
0.3
292

14
Cabernet Dorsa=Lemberger×Dornfelder
カベルネ・ドルサ=レンベルガー×ドルンフェルダー
269
0.3
269

15
Frühburgunder=Pinot Madeleine
フリューブルグンダー=ピノ・マドレーヌ
233
0.2
185

16
Dunkelfelder=Färbertraube×Portugieser
ドゥンケルフェルダー=フェルバートラウベ×ポルトギーザー
206
0.2
9

17
Muskat Trollinger
ムスカート・トロリンガー
126
0.1


18
Blauer Zweigelt
ブラウアー・ツヴァイゲルト 
116
0.1


その他の品種
818
2.4


合計
33,762
32.7
13,600

白ブドウ+黒ブドウ 合計
103,180
100
-2,454



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[品質等級別ドイツワインの指定地域 ]

原産地呼称保護ワイン (g.U.Qualitätswein/Prädikatswein)
地理的表示保護ワイン (g.g.A. =Landwein)

Bestimmte Anbaugebiete (13)
Bereiche (42)
地区数
Landweingebiete (26)


Ahr アール 

Walporzheim/Ahrtal ヴァルボルツハイム / アールタール
1
1Ahrtaler Landwein アールターラー・ラントヴァイン
Landwein Rhein ラントヴァイン・ライン


Hessische Bergstraße ヘルシュトラーゼ

Starkenburg シュタルケンブルグ 
Umstadt ウムシュタット
2
Starkenburger Landwein シュタルケンブルガー・ラントヴァイン


Mittelrhein ミッテルライン

Loreley ローレライ 
Siebengebirge ジーベンゲビルゲ
2
Rheinburgen Landwein ラインブルゲン・ラントヴァイン 
Landwein Rhein ラントヴァイン・ライン


Naheナーエ

Nahetal ナーエタール
1
Nahegauer Landwein ナーエガウアー・ラントヴァイン
 Landwein Rhein ラントヴァイン・ライン


Rheingau ラインガウ

Johannisberg ヨハニスベルク
1
Rheingauer Landwein ラインガウアー・ラントヴァイン


Rheinhessen ラインヘッセン

Bingenビンゲン
Nierstein ニアシュタイン 
Wonnegau ヴォンネガウ
3
Rheinischer Landwein ライニッシャー・ラントヴァイン 
Landwein Rhein ラントヴァイン・ライン


Pfalz ファルツ

Südliche Weinstraße ズュードリッヒェ・ヴァインシュトラーセ 
Mittelhaardt-Deutsche Weinstraße ミッテルハールト・ドイチェ・ヴァインシュトラーセ
2
Pfälzer Landwein フェルツァー・ラントヴァイン 
Landwein Rhein ラントヴァイン・ライン


Mosel モーゼル

Burg Cochem ブルク・コッヘム 
Bernkastel ベルンカステル
Obermosel オーバーモーゼル
Saar ザール 
Ruwertal ルーヴァータール 
Moseltor モーゼルトーア
6
Landwein der Mosel ラントヴァイン・デア・モーゼル 
Landwein der Ruwer ラントヴァイン・デア・ルーヴァー 
Landwein der Saar ランドヴァイン・デア・ザール
Saarländischer Landwein der Mosel ザールレンディッシャー・ラントヴァイン・デア・モーゼル
Landwein Rhein ラントヴァイン・ライン


Frankenフランケン

Steigerwald シュタイガーヴァルト 
Maindreieck マインドライエック
Mainviereck マインフィアエック
3
Landwein Main ラントヴァイン・マイン
Regensburger Landwein レーゲンスブルガー・ラントヴァイン


Württemberg ヴュルテンベルク

Bayerischer Bodensee バイエリッシャー・ボーデンゼー
Remstal-Stuttgart レムスタール・シュトゥットガルト 
Württembergisch Unterland ヴュルテンベルギッシュ・ウンターラント 
Kocher-Jagst-Tauber コッハー・ヤクスト・タウバー 
Oberer Neckar オーバラー・ネッカー
Württembergischer Bodensee ヴュルテンベルギッシャー・ボーデンゼー
6
Bayerischer Bodensee Landwein バイエリッシャー・ボーデンゼー・ラントヴァイン
Landwein Neckar ラントヴァイン・ネッカー
Landwein Rhein-Neckar ラントヴァイン・ライン・ネッカー 
Schwäbischer Landwein シュヴェービッシャー・ラントヴァイン


Baden バーデン 

Bodensee ボーデンゼー
Markgräflerland マルクグレーフラーラント
Kaiserstuhl カイザーシュトゥール
Tuniberg トゥニベルク
Breisgau ブライスガウ
Ortenau オルテナウ
Badische Bergstraße バーディッシェ・ベルクシュトラーセ
Kraichgau クライヒガウ
Tauberfranken タウバーフランケン
9
Badischer Landwein バーディッシャー・ラントヴァイン 
Landwein Oberthein ラントヴァイン・オーバーライン 
Landwein Rhein-Neckar ラントヴァイン・ライン・ネッカー 
Taubertäler Landwein タウバーテーラー・ラントヴァイン


Sachsent ザクセン

Meissen マイセン
Elstertal エルスタータール
2
Sächsischer Landwein ゼクシッシャー・ラントヴァイン


Saale-Unstrut サーレ・ウンストルート

Thüringen チューリンゲン
Schloss Neuenburg シュロス・ノイエンブルク
Mansfelder Seen マンスフェルダー・ゼーン 
Werder (Havel) ヴェアダー(ハーフェル) *
4
Mitteldeutscher Landwein ミッテルドイッチャー・ラントヴァイン


13地域外
Mecklenburger Landwein メックレンブルガー・ラントヴァイン

13地域外
Brandenburger Landwein ブランデンブルガー・ラントヴァイン

13地域外
Schleswig-Holsteinischer Landwein シュレスヴィヒ・ホルシュタイニッシャー・ラントヴァイン・

* Bundesministerium für Ernährung und Landwirtschaft (連邦食糧・農業省 略称 BMEL), Bekanntmachung der geografischen Bezeichnung für deutschen Wein (2015), S. 36, 11.4参照 

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ワイン法と品質分類

1. ワイン法の歴史

 1871年にドイツが最初に統一され、最初のワイン法が成立したのは1892年のことである。当時砂糖水を果汁に添加してアルコール濃度を高め、酸度を抑える操作(湿式補糖法/ガル法)が横行し、絞りかす、干しブドウ、滓(おり)を用いた人造ワインが増加していた。ここでは湿式補糖法を例外として認める一方で、添加量の上限を25%までと定め、消費者を詐欺・偽造から保護することが目的であった。1901年の改正で、いわゆる「ナトゥアヴァイン」 (Naturwein) が定義され、自然なブドウ果汁のみから醸造したワインを保護することとなった。その後1909年、1930年に改正があったが、自然・純粋をもって良しとする基本方針に変わりはなかった。
 1971年に施行されたワイン法で、ドイツワインの格付けシステムは根本的に変わった。肩書きの基準が数値化され、 収穫時の果汁糖度に応じて格が上がることになった。それまでは実際に遅摘みしたものをSpätlese(シュペートレーゼ)、粒選りしたものをAuslese(アウスレーゼ)その中でも上質なものをfeine Auslese(ファイネ アウスレーゼ)などと表記していたが、 1971年のワイン法では例えばSpätlese(シュペートレーゼ)は果汁糖度76エクスレ以上、Auslese(アウスレーゼ)は83エクスレ以上というように、計測可能で客観的な基準で区別することになった。同時に複数の単一畑 Einzellage(アインツェルラーゲ) をまとめた集合畑Großlage(グロスラーゲ) という呼称を創出するとともに、無名な単一畑を有名な単一畑に統合することで、約25,000あった畑名を約2,650まで削減した。集合畑は複数の村にまたがる平均 600ha前後の広大な畑である。 一方、単一畑は基本的には5ha以上だが、なかには1ha未満のものや200haを超えるものまで、様々な面積のものがあるが、その多くは数haから数十haである。また、集合畑名は知識がなければ単一畑名と区別が付かない (例:Piesporter Michelsberg ピースポーター・ミヒュルスベルク=集合畑、Piesporter Goldtröpchen ピースポーター・ゴルトトレプヒェン=単一畑)。
 この背景には第二次世界大戦後の経済復興に伴う甘口ワインブームがあり、どんな栽培条件のブドウ畑でも、肩書き付きで高価に売れるワインを造れることを制度的に支援したものである。だがその一方で、手作業が欠かせない急斜面のブドウ栽培も、機械化の容易な平地での栽培も、市場では同等の価格競争にさらされたため、20世紀末にかけて過剰生産による価格の低下と小規模生産者の経営難、ひいては急斜面のブドウ畑の耕作放棄を招いた。しかしながらこうした状況が、異業種の人材や資金力に乏しい若手が銘醸畑を入手するチャンスを提供することにもなった。
 1971年以降、ドイツワイン法には小規模な改正が何度も行われたが、最も大きな変化は2009年8月にドイツを含むEU全域で施行された、地理的呼称制度の導入である (EU指令479/2008,607/2009)。これにより、ドイツワインにも地理的呼称による格付けが導入されたものの、その表記は任意とされ、補糖の有無と収穫時の果汁糖度による肩書 きは伝統的表記として維持された。
 一方、ラインガウでは1999年に、ドイツワイン法のヘッセン州条例として、 ブドウ畑の格付けが施行された。
2001年から、生産者団体VDP. Die Prädikatsweingüter(ディー・プレディカーツヴァインギューター) (プレディカーツヴァイン醸造所連盟) も、独自に地理的呼称範囲による格付けを始めた。
 そして2021年1月27日に、第10次改正ドイツワイン法Weingesetz(ヴァインゲゼッツ)が施行され、3月には各州における実行上の細則を定めた第24次ドイツワイン規則 Weinverordnung(ヴァインフェアオルドヌング)が連邦参議院を通過した。ただし、2025年産までは移行期間であり、新ドイツワイン法に基づくラベル表記に切り替わるのは2026年産からの見込みである。


2. ドイツワインの地理的構成
 13の特定ワイン生産地域(Bestimmtes Anbaugebiet ベシュテムテス・アンバウゲビート=単数形、複数形はBestimmte Anbaugebiete ベシュティムテ・アンバウゲビーテ) があり、Qualitätswein クヴァリテーツヴァイン(=原産地保護呼称ワイン、g.U.)以上は、特定ワイン生産地域内でのみ生産することができる。
 各特定ワイン生産地域は1地区から9地区のBereich ベライヒ(複数形: Bereiche ベライヒェ)に分かれ、全部で42地区のベライヒがある。
 ベライヒの次に大きな地理的単位は集合畑 (GroBlage グロースラーゲ) で、複数の単一畑 (Einzellage アインツェルラーゲ) を包括する。ただし、一部に集合畑に属さない単一畑も存在し、例外的にベライヒにも属さない単一畑も存在する。
 13の特定ワイン生産地域のほかに、26のラントヴァイン生産地域がある。Landwein ラントヴァインはフランスのVins de Pays ヴァン・ド・ペイに相当する日常消費用ワインのカテゴリーである。
 このほか2014年から、1971年のワイン法で統合される以前の、伝統的なブドウ畑 (Gewann ゲヴァンもしくはKatasterlage カタスターラーゲ)の名前を、各生産地域が管理するブドウ畑登記簿(Weinbergsrolle ヴァインベルクスロレ ) に登録すれば、ラベルに表記できることになった。これはフランスのLieu-dit リュー・ディと同様、地理学あるいは歴史的な特性に基づく小地区名で、生産規定とラベル上の表記は単一畑に準じる。


3.品質分類
 2009年のEUワイン市場改革に伴うワイン法改正により、 ドイツワインは以下の2つのカテゴリーに分けられることに なった。

A. 地理的表示のないワイン
(Wein ohne geschützter Herkunftsangabe ヴァイン・オーネ・ゲシュッツター・ヘアクンフツアンガーベ)

B. 地理的表示付きワイン
 (Wein mit geschützter Herkunftsangabe ヴァイン・ミット・ゲシュッツター・ヘアクンフツアンガーベ)

 2009年当時、1971年施行のドイツワイン法の格付けは、ほとんど変更されないまま、EU共通の地理的呼称に関するカテゴリーが、枠組みとして追加された。追加された地理的呼称に関する用語のラベルへの表記は任意だったので、人目に触れることはほとんどなかった。


A. 地理的表示のないワイン

(1) EUワイン
・加工用ベースワイン

(2)地理的表示のないドイツワイン 
(Deutscher Wein ohne Herkunftsbezeichnung ドイッチャー・ヴァイン・オーネ・ヘアクンフツベツァイヒヌング) 
・従来の Tafelwein ターフェルヴァインの呼称は廃止。
・Winzer ヴィンツァー(ブドウ栽培醸造家)、 Weingut ヴァイングート(醸造所)、 Winzergenossenschaft ヴィンツァーゲノッセンシャフト (醸造協同組合) といった表記は禁止。
・Erzeugerabfüllung エアツォイガーアプフュルング (生産者直詰め)、 Gutsabfüllung グーツアプフェルング( 醸造所直詰め)、 Schlossabfüllung シュロスアプフュルング(城を名乗る醸造所直詰め)といった表記も禁止。 
・Bereich ベライヒ、 Großlageグロースラーゲ,、Einzellage アインツェルラーゲなど、 地理的呼称に関する表記も禁止。
・白、ロゼ、 赤ワインをブレンドすることができる。
・Rosé ロゼ Rosewein ロゼヴァインの語のラベル表記は禁止。
・g.U. やg.g.A. に指定されている地理的呼称を含む、 以下のブドウ品種も記載してはならない。 
Grauburgunder グラウブルグンダー
Weißburgunder ヴァイスブルグンダー
Frühburgunder フリューブルグンダー
Blaufränkisch ブラウフレンキッシュ,
Rheinriesling ラインリースリング
・Rieslingリースリング、Silvanerジルヴァーナー、Müller-Thurgauミュラー・トゥルガウなど、 主要な栽培品種とその同義語を記載してはならない。


B. 地理的表示付きワイン

(1) 地理的表示保護ワイン
(Wein mit geschützter geographischer Angabe. ヴァイン・ミット・ゲシュッツター・ゲオグラーフィッシャー・アンガーベ略称g.g.A.)

・Landwein ラントヴァイン指定地域で栽培収穫されたブドウを85%以上使用すること。
・基本的にはtrocken トロッケン(辛口) またはhalbtrocken ハルプトロッケン(オフドライ)。
・ただし、Landwein ラントヴァイン指定地域Neckar ネッカー、Rhein-Neckar ライン・ネッカー、Oberrhein オーバーライン、Rhein ラインでは、甘口 (lieblichリープリッヒおよびsüß ズュース) も醸造できる。
・公的審査を受ける必要がないので、亜硫酸塩無添加で醸造したワインや、白ワイン用ブドウをマセレーション発酵した、いわゆるオレンジワインなど、特定ワイン生産地域のラントヴァイン典型性に欠けるとみなされがちなワインは、Landweinとして販売されることが多い。

(2) 原産地呼称保護ワイン
(Wein mit geschützter Ursprungsbezeichnung ヴァイン・ミット・ゲシュッツター・ウアシュブルングスベツァイヒヌング略称g.U.)

①Qualitätswein クヴァリテーツヴァイン
・2021年施行のドイツワイン法で、 Qualitätswein クヴァリテーシヴァインの生産
規定は、原産地呼称保護ワイン (g.U.) の生産規定として引き継がれる。
・新ドイツワイン法では、 原産地呼称保護ワイン (g.U.) の 表記があれば、Qualitätswein クヴァリテーツヴァインの表記は省略できる。 
・施行から約5年は、移行期間として現行のドイツワイン法に基づく表記が認められる。
・生産条件は以下の通り。
a. 13 ある特定ワイン生産地域の、いずれか1つの地域内で栽培・収穫されたブドウを100%用いる。
b. ブドウが収穫された生産地域内で醸造すること。
c. 各生産地域で認可されたブドウ品種を用いること。 
d. 各生産地域で定められた最低基準値 (ブドウ品種により異なるが、 55~72°エクスレ) を上回る糖度の果汁から醸造されていること。
e. アルコール濃度を補うための補糖(シャプタリゼーショ ン) が可能。 補糖の上限値は以下の通り。 EUの定めるワイン生産地帯A (バーデン以外) : 3.0% vol = 約24g / ℓAlc.(ショ糖換算で約60g / ℓ)
EUの定めるワイン生産地帯B (バーデン): 2.0% vol = 約16g / ℓAlc.(ショ糖換算で約40g / ℓ)
f. 各特定生産地域の審査委員会による品質検査を受け、公的検査番号 (Amtliche Prüfungsnummer アムトリッヒェ・プリューフングスヌマー / A.P. Nr. アー・ペー・ヌマー) をラベルに表示しなければならない。 検査番号の読み方は次の通り。


検査場番号
事業所所在地
事業所番号
ロット番号あるいは樽番号
検査年

5 347 078 009 03


②Prädikatswein プレディカーツヴァイン
・生産条件はQualitätswein クヴァリテーツヴァインの規定に準じるが、e.の補糖は禁じられている。
・収穫時のブドウの状態と果汁糖度およびワインのスタイルにより、以下の6つの肩書がある。

a. Kabinettカビネット
補糖を行わず、各生産地域が品種ごとに定めた、収穫時の果 汁糖度基準を満たしていること。 繊細で軽いスタイルのワインで あることが期待される。収穫時の果汁糖度の最低基準は生産 地域とブドウ品種により異なる (70~85℃ Oe以上)。

b. Spätlese シュペートレーゼ
遅くまで待ち、 完熟した状態で収穫したブドウを用いなければならない。Kabinettカビネットよりも香り高く、味わいに深みのあるスタイルであることが期待される。 収穫時の果汁糖度の最低基準は、生産地域とブドウ品種により異なる (80~95°Oe以上)。

c. Auslese アウスレーゼ
完熟しているか、貴腐のついたブドウを用いなければならない。香り高く複雑で深みがあり、 貴腐独特の香味が混じっていることが期待される。収穫時の果汁糖度の最低基準は、生産地域とブドウ品種により異なる (88~105°Oe以上)。

d. Beerenauslese ベーレンアウスレーゼ 
貴腐化したブドウか、少なくとも過熟したブドウ果粒を、手作業 で収穫しなければならない。手間の掛かる選果作業が欠かせな い。香り高く濃厚で複雑なスタイルが期待される。収穫時の果汁糖度の最低基準は、生産地域により異なる (110~128°Oe 以上)。

e. Eiswein アイスヴァイン 
樹上で氷点下7℃以下の寒気で凍結したブドウを、凍結した状態で圧搾し醸造する。氷結により果汁が凝縮し、糖分とともに酸度の高い、濃厚な甘口であることが期待される。生産年の天候により、収穫時期や生産量が左右され、生産できないこともある。収時の果汁糖度はベーレンアウスレーゼの基準に準ずる。

f. Trockenbeerenauslese トロッケンベーレンアウスレーゼ 
相当程度に乾燥した貴腐ブドウを、手作業で収穫・選別して用いなければならない。 濃厚かつ複雑で高貴な甘口であることが期待される。収穫時の果汁糖度の最低基準は、生産地域により異なる (150~154°0e以上)。


残糖値とスタイル
 ドイツワインにはEUの規定に基づく、残糖値に応じた以下の表記がある。ただし、ラベルへの表記は任意なので、書いていないこともある。また、分析上の残糖値はtrockenトロッケンの基準を超過していても、味覚上は酸度とのバランスで、甘味が目立たず辛口に感じることがある。そのため、残糖値によるスタイルの表記はかえって誤解を招くとしてあえて記載せず、キャップシールの色などで区別している生産者もいる。また、残糖値の誤差1g / ℓ未満は許容範囲である。

残糖値によるスタイル / 残糖値の条件
trocken トロッケン
残糖値が4g / ℓ以下。もしくは9g / ℓ以下で、総酸度が残糖値を2g / ℓ以上下回らないこと (例:残糖値9g / ℓなら総酸度 7g / ℓ以上)。

halbtrocken ハルプトロッケン
残糖値がtrocken トロッケンの基準値を超えており、かつ
・12g / ℓ以下か、
・18g / ℓ以下で、 総酸度が残糖値を10g / ℓ以上下回らないこと (例:残糖値 17g / ℓなら総酸度7g / ℓ以上)。

lieblich リープリッヒ
残糖値がhalbtrocken ハルプトロッケンの基準値を超えており、かつ45g / ℓ以下であること。

süß ズュース
残糖値が45g / ℓ以上であること。

feinherb ファインヘルプ
法的な数値基準はないオフドライ。
残糖値はhalbtrocken ハルプトロッケンの基準を若干上回っているが、酸やミネラルとのバランスで、甘味が抑制されて感じられる場合に使われ ることが多い。

 かつて発酵を途中で止める技術がなかったころ、ドイツで は気候が冷涼なため発酵が自然に途中で止まり、糖分が残って酸味やエキストラクトと調和したオフドライのスタイル になることが多かった。 第二次世界大戦後に甘口ワインがも てはやされると、亜硫酸塩の添加や冷却で酵母の活動を止めたり、あるいは後述するSüßreserve ズュースレゼルヴェで甘味を加えたりして、辛口・中辛口・甘口と多様なスタイルが生産された。しかし1990年代以降辛口の需要が増え、多くの生産者が辛口やオフドライでテロワールの表現を目指すように なった。近年は酵母が自然に発酵を終えて、ある程度残糖が残ってもよしとする伝統的なスタイルが増えている。

Oechsle エクスレ(Öchsle)
 ドイツ人技師Ferdinand Oechsle フェルディナンド・エクスレが、 1830年代に提唱した比重計によるブドウ果汁の糖度測定法。 20℃の1ℓの水と果汁の重さの差がエクスレ度となり、 潜在アルコール濃度を求めることができる。 ドイツ以外ではスイスとルクセンブルクで用いられている。
 1971年のドイツワイン法の肩書きの基準でもあり、収穫時 「期の判断に重要な意味をもっていた。 しかし今日では果汁 糖度のみではなく、種の色や果肉の崩れ具合、 アロマの乗り 具合などで判断される、ブドウの生理的成熟が重視されている。

Süßreserve ズュースレゼルヴェ
 発酵後に添加されることがある、未発酵のブドウ果汁。専ら早摘みされ、糖度が低く酸度の高い果汁から醸造した廉価なワインに、甘味を補ったり、酸度とのバランスを取るために用いられる。添加量の上限は、総量の25%。
 高品質なワインの場合は、発酵中の残糖度をこまめに管理し、目指す残糖度に近付いた時点で冷却し、酵母を死滅させて発酵を中断後、適切な量の亜硫酸塩を添加することで甘味を残している。


スパークリングワイン

(1)Perlwein ペールヴァイン
 弱発泡性ワインで、 炭酸の気圧が20℃で1~2.5気圧のもの。最低アルコール濃度7%。 イタリアのFrizzante フリッツァンテ、フランスのPétillant ペティヤンに相当する。炭酸は一次発酵に由来する場合と、スティルワインに添加したものとがある。
 Perlwein ペールヴァインの品質は、ベースとなるワインにより左右される。最上のものはQualitätsperlwein b.A.クヴァリテーツペールヴァイン (特定生産地域呼称高品質ペールヴァイン) であるが、この場合炭酸は、そのワインの一次発酵で生じた炭酸でなければならない(一次発酵で生じた炭酸を収集し、発酵後に吹き込んでも可)。
 残糖値はtrocken トロッケン0~35g / ℓ、halbtrocken ハルプトロッケン33~50g / ℓ、 それ以上はmild ミルトと称する。 通常ミュラー・トゥルガウなど、酸味が緩くアロマティックなワインがPerlwein ペールヴァインに仕立てられることが多い。

(2)Schaumwein シャウムヴァイン、Sekt ゼクト
 Schaumwein シャウムヴァインは発泡性ワインの総称で、品質によって以下に区分される。
 Schaumwein シャウムヴァイン:炭酸の気圧は20℃で3.0bar 以上、アルコール濃度 9.5%以上。 白・赤・生産国など異なるワインをブレンドしたベースワインを用いることができる。

 Sekt ゼクトもしくは Qualitätsschaumwein クヴァリテーツシャウムヴァイン:炭酸の気圧は 20℃で3.5bar以上、アルコール濃度10%以上。 ベースワインの基準はSchaumwein シャウムヴァインと同じ。

 Deutscher Sekt ドイッチャー・ゼクト:ドイツ国内産のベースワイン (ラントヴァインの基準をクリアしたもの) から生産。

 Sektゼクトb.A. もしくはQualitätschaumwein クヴァリテーツシャウムヴァインb.A. : 特定生産地域で生産されたクヴァリテーツヴァインから生産。

Sekt ゼクトb.A. もしくはQualitätschaumwein クヴァリテーツシャウムヴァインb.A.には以下の2つのカテゴリーがある。

Winzersekt ヴィンツァーゼクト
生産者が自家栽培したブドウを自家醸造したベースワインを、自家醸造もしくは専門業者に委託してゼクトに仕立てたもの。 伝統的瓶内二次発酵を用いる。製造期間は一次発酵を含めて 9ヵ月以上。

Crémantクレマン
高品質なSekt ゼクトb.A. で、 手作業で収穫し、 除梗(じょこう)せずに房をまるごと圧搾し、150kgの収穫から得る果汁を100ℓ以下に抑え、伝統的瓶内二次発酵で製造したもの。製造期間は一次発酵を含 めて9ヵ月以上。生産地域により使用可能な品種が限定されており、残糖値は50g / ℓ (ラインラント・ファルツ州では20g / ℓ)以 下などの規定がある。

 ドイツでは通常の醸造所が醸造したワインを、ゼクト醸造 のノウハウをもつ専門業者 (Lohnversekter ローンフェアゼクター) に委託して、PerlweinペールヴァインやSekt ゼクトにすることがよく行われている。そのため一般の醸造所でもスパークリングワインをリリースしていることが多い。
残糖表記はEUの基準に準じる
 (brut nature 0~3g / ℓ、 extra brut 0~6g / ℓ、brut 0~12g / ℓ、 extra trocken 12~17g / ℓ、trocken 17~32g / ℓ、 halbtrocken 32~ 50g / ℓ 、 mild 50g / ℓ以上)。

(3)Pét-Nat ペット・ナット
 一次発酵の途中で瓶詰めして炭酸をワインに溶け込ませ る、メトード・アンセストラルと同様の製法で醸造するスパークリングワイン。 2015年産からファルツ、ラインヘッセン、フランケンの、主に若手のビオワイン生産者達が醸造を始め、近年はモーゼルでも造られるようになった。Pét-Nat ペット・ナットは本来 Pétillant Naturel ペティヤン・ナチュレルの略だが、 炭酸の気圧は3.0barを超える ものもあり、その場合Perlwein ペールヴァインではなくSchaumwein シャウムヴァインに分類される。 野生酵母で発酵し、亜硫酸塩も門出のリキュールも何も添加しない。 そのまま出荷されることもあるが、 出荷前にデゴルジュマンを行い、目減り分を同じワインで補うこともある。 完全発酵してもアルコール濃度 11%前後と軽やかなことの多い、酵母の風味の混じる辛口の白かロゼである。

ロゼワイン
(1) Roséwein ロゼヴァイン / Rosé ロゼ
 赤ワイン用品種のみから醸造された、淡い、もしくは明るい色調のワイン。地理的表示のないワインは、白ワインと赤ワインをブレンドして製造することができるが、ラベルに 「ロゼ」と表記することはできない。

 (2) Weißherbst ヴァイスヘルプスト
 単一の赤ワイン用品種から醸造されたロゼワインの一種 で、Qualitätswein クヴァリテーツヴァインもしくはPrädikatswein プレディカーツヴァインであることが必要。 95%以上は白ワインのように圧搾した果汁を用いるが、5%まで同一品種の赤ワインもしくはマストを添加して、色調を整えることができる。色調についての規定はないので、白ワインのような外見のものもある。Weißherbst ヴァイスヘルプストとラベルに表記する場合、品種名も表示しなければならない。また、ロゼワインと表示してはならない。 

(3) Blanc de Noirs ブラン・ド・ノワール 
 赤ワイン用品種のブドウを、白ワインと同様に圧搾して醸 造し、このタイプのワインに典型的な明るい色調を示してい るワイン。 2003年のEUの表記規定改正により任意で表記 が可能となっていたが、2021年のドイツワイン法改正により、 原産地呼称保護ワイン (g.U.) であること、という条件が加わった。 また、Blanc de Noir ブラン・ド・ノワール (Noirsのsが抜けているあるいはWeißgekeltert ヴァイスゲケルテルト(Weiß ヴァイス = 白、 gekeltert ゲケルテルト = 圧搾された) と表記されることがある。

(4) Rotling ロートリング
 赤ワイン用ブドウと白ワイン用ブドウ、もしくはそれぞれ破砕して、果汁に漬けた状態で混ぜて一緒に圧搾醸造した、 淡い赤色ないしは明るい赤色のロゼワイン。 生産地域によって独特の名称のものがあるが、ほとんど目にすることはない。
 ヴュルテンベルクではSchillerwein シラーヴァイン, バーデンでは Badisch Rotgold バーディッシュ・ロートゴルト(グラウブルグンダーとシュペートブルグンダーから醸造)、ザクセンではSchieler シーラー(伝統的には混植混醸)と称する。

ビオワイン
 ドイツの有機農法のブドウ畑面積は、過去10年間で約3倍以上に増えている。2019年の推計では約10,500haに達し、ブドウ畑全体のおよそ10.5%に当たる (DWIドイツワインインスティトゥート)。 基本的な考え方は、ブドウ畑の生態系と環境保護を推進し、生物多様性の促進を通じて、持続可能な農業を目指すことである。
 有機農法に取り組む生産者達の団体がいくつもある。最も規模が大きいのは1985年に設立されたECOVIN エコヴィンで、ワインの生産者のみが245軒加盟している (2020年12月現在)。バイオダイナミクスの団体 Demeter デメターも活動しており、ドイツでは2021年9月現在73軒の生産者 (転換中含む) が加盟している。 ほかにはNaturland Biolandナトゥアランド・ビオラントなど農業・畜産も対象にした団体がある。
 ドイツでは19世紀末に、都市化と工業化への反動から、生活と農業を含めた、人間本来の姿への回帰を目指す 「生活改革運動」 Lebensreformbewegung レーベンスレフォルムベヴェーグングが始まった。農地の微生物の働きが注目されるようになり、1924年にルドルフシュタイナーにより、人智学に基づくバイオダイナミック農法が提唱された。
 第二次世界大戦後、ドイツは奇跡の復興を遂げたが、高度経済成長の過程で進行した、自然破壊や環境汚染は、やがて人々の問題意識となり、1960年代から社会運動に発展。1970年代はBioland ビオラントを始め、ヨーロッパ各地で複 数の有機農法団体が設立された。
 1980年に緑の党が結成され、環境保護・反原発・反戦を主張。1980年代の有機農法の実践は、左翼政治思想と結び付いていることが多かった。
 1991年にEUで有機農法によるブドウ栽培規定(EG Öko-Verordnung 2092/91) が定められると、公的機関が啓蒙(けいもう)活動を行うようになった。そして2000年頃の狂牛病問題や鳥インフルエンザなどで、食の安全性がクローズアップされ、ビオブームが起こった。同時にテロワールのポテンシャルを最大限ワインに生かすために、できるだけ農薬や化学合成肥料の使用を抑えた栽培が意識されるようになり、有機農法へと向かった。2003年頃からは高品質なワインの生産者を中心に、バイオダイナミック農法を採用する醸造所が少しずつ増えている。
 そして2010年前後から、とりわけビオワインの生産者の中に、亜硫酸塩の添加量を極端に抑えた、いわゆるナチュラルワインや、白ワイン用品種で赤ワインのように醸し発酵を行う、いわゆるオレンジワイン、あるいはペット・ナットの醸造に取り組む人々が登場し、一部で注目され
また、生産者も増えてきている。


4. ドイツにおけるブドウ畑の格付け
A. VDP. Die Prädikatsweingüter ディー・プレディカーツヴァインギューター (プレディカーツヴァイン醸造所連盟)
 ドイツのブドウ畑の格付けを推進している生産者団体。 1897年のラインガウを皮切りに、1908年にラインファルツ (現ファルツ)、1910年にモーゼル・ザール・ルーヴァーとラインヘッセンで、ブドウ果汁だけから醸造した高品質なワインを競売にかける生産者団体が結成され、同1910年11月26日に全国組織ドイツ・ナトゥアヴァイン競売者連盟(Verband Deutscher Naturweinversteigerer フェアバント・ドイッチャー・ナトゥアヴァインフェアシュタイガラー、略称VDNV) が成立。 1971年のワイン法で 「Naturwein ナトゥアヴァイン」 のラベル表記が、 ワインは人為的技術を用いて造られるものなのに、自然にできたような印象を与え、消費者の誤解を招くという理由から禁止された。そこでVDNVはドイツ・プレディカーツヴァイン醸造所連盟 (Verband Deutscher Prädikatsweingüter、略称VDP) に改名した。そして2000年からはVDP. Die Prädikatsweingüter ディー・プレディカーツヴァインギューター(プレディカーツヴァイン醸造所連盟)と名乗っている。
 加盟生産者は厳しい自主規制に基づいて、毎年様々な面から検査される。1990年には161の生産者を数え、その後100以上の新しい生産者が加わった一方、60以上の生産者が退会させられた。近年の会員数はおおむね200で一定している。 定評のある知名度の高い生産者が多く、団体の規模は大きくはないが、ワイン業界への影響力は大きい。

B. ドイツにおけるブドウ畑の格付けの経緯
 1984年、当時のドイツワイン業界にはびこる量産体質と品質低下に、危機感を抱いたラインガウの一部生産者は、1885年に格付けされた、優れたブドウ畑からの高品質な辛口ワインの復興を掲げて、「カルタ醸造所連盟」 Vereinigung der Charta-Weingüter フェアアイニング・デア・カルタ・ヴァインギューターを設立した。 やがて 1990年代にラインガウの生産者全体を包括する、ラインガウブドウ栽培者連盟が、ガイゼンハイム大学に生産地域全 体のブドウ畑の、詳細な気象条件と土壌組成の調査を依頼。その結果、ブドウ栽培面積全体の約3分の1に当たる約 1,100haで、高品質なブドウを収穫できる条件が揃ってい あると認定された。その畑で栽培醸造規格に従って生産し、 官能審査に合格したリースリングとシュペートブルグンダーの辛口を、Erstes Gewächs エアステス・ゲヴェクス と称することになり、 1999年にドイツワイン法のヘッセン州条例として施行された。






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[VDP 4段階の品質基準] (2012年ヴィンテージより)

(4) Große Lage

(グローセラーゲ:特級区画=グランクリュ)

(3) Erste Lage

(エアステラーゲ:1級区画=プルミエクリュ)

(2) Ortswein

(オルツヴァイン:市町村名入りワイン)

(1) Gutswein (グーツヴァイン:醸造所名入りワイン)
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 ラインガウに先を越される格好になったが、 ファルツとラインヘッセンのVDP加盟醸造所を中心に、 ブドウ畑を格付けするプロジェクトが1992年から始まっていた。やがて2001年に、格付けされたブドウ畑の辛口をGroßes Gewächs グローセス・ヴェクスと称し、その下に市町村名ワインに当たるOrtswein オルツヴァイン、 エステートワインに当たる Gutswein グーツヴァインの3段階のヒエラルキー構成をとる   ことが決まった。 2002年に最初のGroßes Gewächs グローセス・ゲヴェクスがリリースされたが、実際に醸造した生産者は当時はまだ少な かった。
 2006年に最上のブドウ畑をErste Lage エアステ・ラーゲと呼び、そこから産する辛口をGroßes Gewächs グローセス・ゲヴェクスと称することになった。これにより、シュペートレーゼやアウスレーゼなどの甘口も格付け畑と関連させることができるようになり、それまで消極的だったモーゼルの生産者の参加を促し、全国13のワイン生産地域のVDPで足並みが揃った。
 2012年に格付けのヒエラルキーが従来の3段階から4段階になった。最上の格付け畑をVDP. Große Lage グローセ・ラーゲ 2段目VDP. Erste Lage エアステ・ラーゲ 、3段目をVDP. Ortswein オルツヴァイン、そして1番下をVDP. Gutswein グーツヴァインと称する。これはVDP. Große Lage グローセ・ラーゲの認定をより厳しくして、 認定から外れたが優れた畑をVDP. Erste Lage エアステ・ラーゲとして認める意図があった。 しかしVDP. Erste Lage エアステ・ラーゲを導入するかどうかは各地域の判断にゆだねられた結果、アールとモーゼルでは採用していない。
 2012年のVDP.Große Lage グローセ・ラーゲの導入に伴い、従来格付け畑の辛口をErstes Gewächs エアステス・ゲヴェクスと称していたラインガウのVDP加盟醸造所も、VDP. Großes Gewächs グローセス・ゲヴェクスに移行した。一方で1999年に導入されたラインガウのErstes Gewächs エアステス・ゲヴェクス は、2018年産からRheingau Großes Gewächs ラインガウ・グローセス・ゲヴェクスに改称されることが、2019年5月に決まった。これに伴い、従来は13g / ℓだったErstes Gewächs エアステス・ゲヴェクスの残糖量の上限は、VDP. Großes Gewächsグローセス・ ヴェクスと同じで、ドイツワイン法上の辛口の基準である 9g / ℓに引き下げられた。
 VDPやラインガウ以外には、モーゼルの醸造所団体べルンカステラー・リングが、2005年産から独自にGroßes Gewächs グローセス・ ゲヴェクスをリリースしている。また、ラインヘッセンでは2017年に結成された醸造所団体 Maxime Herkunft Rheinhessen マキシメ・ヘアクンフト・ラインヘッセンが、Gutswein グーツヴァイン(エステートワイン)、Ortswein オルツヴァイン(市町村名ワイン)、Lagenwein ラーゲンヴァイン(畑名ワイン)という、 VDPと同様のヒエラルキーを採用している。
 また、2021年のドイツワイン法改正で、単一畑呼称ワインの上級格付けとして Großes Gewächs グローセス・ヴェクスとErstes Gewächs エアステス・ゲヴェクスが設定された 
 使用可能なブドウ品種や官能審査の基準などは、各産地の保護委員会が2023年までに制定する。VDPの格付け呼称は、それぞれ「VDP.」 を前置してVDP独自の規約に従い栽培・醸造されたものであることを 示している (商標登録済)。


C. VDPの品質基準

(1) VDP. Gutswein グーツヴァイン
[生産規定]
・エントリーレヴェルのエステートワイン。
・生産地域の典型的な品種を80%以上用いる。
・ヘクタール当たりの収量は75hℓ / ha以下。

[表記規定]
・醸造所名、生産地域、ブドウ品種をラベルに記載する。 
・VDP. Gutswein グーツヴァインのラベルとキャップシールへの表記は任意。
・2019年産から、 辛口はQualitätswein trocken クヴァリテーシヴァイン・トロッケンとのみ表記し、Prädikatswein プレディカーツヴァインの肩書と併記しない。 
・甘口にはPrädikatswein プレディカーツヴァインの肩書 (Kabinett カビネット、Spätlese シュペートレーゼ、Auslese アウスレーゼ、Beerenauselese ベーレンアウスレーゼ、Trockenbeerenauslese トロッケンベーレンアウスレーゼ、Eisweinアイスヴァイン) を表記。 


(2) VDP. Ortswein オルツヴァイン 
[生産規定]
・市町村名ワインに相当。
・ヘクタール当たりの収量は75hℓ / ha以下。

[表記規定]
・市町村 (もしくはその区域) 名を産地として記載する。
・VDP.Ortswein オルツヴァインのラベルとキャップシールへの表記は任意。
・辛口はQualitätswein trocken クヴァリテーシヴァイン・トロッケン とのみ表記し、Prädikatswein プレディカーツヴァインの肩書と併記しない。 
・甘口はPrädikatswein プレディカーツヴァインの肩書きを表記。 
・リリースは収穫翌年の3月1日以降が望ましい。


(3) VDP. Erste Lage エアステ・ラーゲ 
[生産規定]
・プルミエ・クリュに相当する優れたブドウ畑。 
・産地ごとに定められた品種。
・ヘクタール当たりの収量は60hℓ / ha以下。
・手作業で選別しながらの収穫。生理的に完熟したブドウのみ収穫すること。
・伝統的な手法による醸造 (例えば逆浸透膜法などの技術を用いない)。
・ブドウ畑で品質を重視した作業が行われているかどうか査察され、最終的に官能試験で認定される。
・リリースは収穫翌年の4月末以降。

[表記規定]
・醸造所名、ブドウ品種、市町村 (もしくはその区域) 名とともに畑名を記載(例: Gimmeldinger Biengarten ギンメルディンガー・ビーンガルテン)。
・キャップシールに VDP. ERSTE LAGE エアステラーゲ と記載。
・VDP. Erste Lage エアステ・ラーゲの辛口は、VDP. Erstes Gewächs エアステス・ゲヴェクスと称し、ロゴを表ラベルに表記する。
. Qualitätswein クヴァリテーシヴァインに関してhalbtrocken ハルプトロッケン、feinherb ファインヘルプ は基本的にラベルに表記しないが、任意で表記することもできる。
・甘口はPrädikatswein プレディカーツヴァインの肩書きを表記。


(4) VDP. Große Lage グローセ・ラーゲ
[生産規定]
・グラン・クリュに相当する最上の区画。 
・産地ごとに定められ、それぞれのブドウ畑に適した品種。
・ヘクタール当たりの収量は50hℓ / ha以下。
・手作業で選別しながらの収穫。生理的に完熟したブドウのみ収穫すること。
・伝統的な手法による醸造 (例えば逆浸透膜法などの技術を用いない)。
・栽培状況 (特にヘクタール当たりの収量)はブドウの生育期間と収穫前に査察され、ワインは瓶詰めの前後に委員会の官能試験を含む審査を受ける。 
・リリースは白は収穫翌年の、赤は翌々年の9月1日以降。
赤は最低12ヵ月木樽で熟成すること。甘口は収穫翌年の5月1日以降。

[表記規定]
・VDP. Große Lage グローセラーゲ の辛口はVDP. Großes Gewächs グローセス・ゲヴェクスと称し、VDP. Großes Gewächs グローセス・ゲヴェクスのロゴのレリーフがある特製ボトルに瓶詰めされるが、やむを得ない場合は特製ボトルではなく、代替としてロゴを表ラベルに記載することができる。

・醸造所名、ブドウ品種、畑名を記載。 畑名は市町村(もしくはその区域)名なしで記載 (例: Bernkasteler Doctor ベルンカステラー・ドクトールならDoctorのみ)。
・キャップシールに VDP. GROSSE LAGE グローセ・ラーゲと記載。
・VDP. Großes Gewächs グローセス・ゲヴェクスのドイツワイン法上の格付けはQualitätswein クヴァリテーシヴァインであり、残糖度はtrocken トロッケンに相当する。
・ VDP. Große Lage グローセ・ラーゲで、Qualitätswein クヴァリテーツヴァインでもGroßes Gewächs グローセス・ゲヴェクスではない場合、味筋はhalbtrocken ハルプトロッケンかfeinherb ファインヘルプ である。
• VDP. Große Lage グローセ・ラーゲで
Prädikatswein プレディカーツヴァインの肩書(Kabinett, Spätlese Auslese など) が表記されるのは甘口に限られる。


(5) VDP. SEKTとVDP. SEKT. PRESTIGE
 2020年12月、VDPは高品質なゼクトの格付け規約を発表した。
①VDP. SEKT
・自家所有するブドウ畑から、基本的に手作業で収穫。
・市町村名を記載可(任意)。
・全房圧搾。 伝統的瓶内二次発酵で、15ヵ月以上の瓶内熟成 (ヴィンテージ付きは24ヵ月以上)を行う。
・ブドウ品種およびブドウ畑のブレンド可。

②VDP. SEKT.PRESTIGE
上記に加えて
・ブドウ畑名を記載可(任意)。 
・ヴィンテージの記載有無に関わらず36ヵ月以上の瓶内熟成が必須で、試飲審査に合格することが必要。


2021年に施行された新ドイツワイン法について

2021年1月に、第10次ドイツワイン法 (Weingesetz ヴァインゲゼッツ) が 施行され、3月には実行上の細則を定めた第24次ドイツワイン規則 (Weinverordnung ヴァインフェアオルドヌング) が施行された。 ただし、2025 年産までは移行期間であり、新ドイツワイン法に基づくラベル表記に全面的に切り替わるのは2026年産からの見込み。
「収穫時の果汁糖度」から「地理的呼称範囲」 へ
既に2009年のEUワイン市場改革に伴って、地理的呼称による格付けは導入されていたが 、2021年のドイツワイン法改正により、格付けの基準が従来の「収穫時の果汁糖度」 から 「地理的呼称範囲」へと変わり、フランスやイタリアなど、EUの他の生産国と足並みを揃えることになった。

A. 地理的表示のないワイン
(1)EU ワイン
(2)地理的表示のないドイツワイン

B. 地理的表示付きワイン
 「地理的表示保護ワイン (g.g.A.)」と「原産地呼称保護ワイン (g.U.)」に分かれる。

(1) 地理的表示保護ワイン (g.g.A.)
・Landwein ラントヴァイン
・現行のワイン規則の、一部の例外を除いてはtrocken トロッケンまたはhalbtrocken ハルプトロッケンのみ、という制限が撤廃される。

(2)原産地呼称保護ワイン(g.U.)
・生産条件は現行のQualitätswein クヴァリテーツヴァインと同じ 
・g.U. の表記があれば、Qualitätswein クヴァリテーツヴァインの表記は不要。
・地理的呼称範囲に基づく格付けは以下の通り。

① Anbaugebiet アンバウゲビート(生産地域名呼称ワイン)
・現行の13あるワイン生産地域のいずれかで栽培・醸造されたワイン。

②Region レギオン(地区名ワイン)
・生産地域内のBereich ベライヒもしくは集合畑 GroBlageグロースラーゲを名乗る場合は、Bereich ベライヒ名もしくは集合畑名と同じ書体・色・大きさで 「Region レギオン」 の語を表記する (例: Region Michelsberg レギオン・ミヒェルスベルク)。
・市町村もしくはその一部区域 (Ortsteil オルツタイル) の名称を名乗るには、そこからの収穫が85%以上を占めなければならない。
・従って、複数の市町村にまたがる地域からの収穫を用いたワインに、あたかも単一の市町村もしくはその区域で収穫されたワインのような印象を与える、代表市町村名 (Leitgemeind ライトゲマインデ) を用いることはできない。 例えば集合畑Piesporter Michelsberg ピースポーター・ミヒェルスベルクの場合、ピースポートの隣村Minheim ミンハイムの収穫を使っても、従来は集合畑名であるPiesporter Michelsberg ピースポーター・ミヒェルスベルクと表記することができたが、移行期間が終了する2026年産からは、Region レギオンMichelsberg ミヒェルスベルクと表記することになる。

③ Gemeinde ゲマインデもしくはOrtsteil オルツタイル(市町村名もしくはその区域名ワイン)
・収穫時の果汁糖度 (=潜在アルコール濃度) は、 現在のKabinett カビネットの基準を満たしていることが必要。
・消費者への販売開始は収穫年の12月15日以降。

④ Einzellage (単一畑)か、それよりも狭い範囲の地理的呼称
・ブドウ畑登記簿 (Weinbergsrolle ヴァインベルクスロレ) に登録されている、







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[2021年のドイツワイン法による格付け]

Großes Gewächs グローセス・ゲヴェクス (グラン・クリュ辛口)

Erstes Gewächs エアステス・ゲヴェクス (プルミエ・クリュ辛口)

Einzellage アインツェルラーゲ

収穫時の果汁糖度

Einzellage アインツェルラーゲ 

潜在アルコール濃度) は、 現行のドイツワイン法の (単一畑ワイン)

Kabinett カビネット以上

Gemeinde ゲマインデもしくはOrtsteil オルツタイル(市町村名もしくはその区域名ワイン)

Region レギオン

(ベライヒ名もしくは集合畑名ワイン) アンパウゲビート

原産地呼称 保護ワイン (g.U.) クヴァリテーシヴァイン

現行のQualitätsweinの

生産規定が適用される

Anbaugebiet (生産地域名呼称ワイン)

Landwein ラントヴァイン 

地理的表示 保護ワイン (g.g.A.)

地理的表示のないワイン
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Einzellage アインツェルラーゲか、 それよりも狭い範囲の地理的呼称 (Gewann ゲヴァン、Katasterlage カタスターラーゲ) を名乗るワイン。
・市町村名 (Gemeinde ゲマインデ) もしくはその区域 (Ortsteil オルツタイル) 名を同一ラベル上の見やすい位置に併記する。
・消費者への販売開始は収穫翌年の3月1日以降。
・使用可能なブドウ品種は、各生産地域の保護委員会(Schutzgemeinschaft シュッツマインシャフト) が認めたものでなければならない。
・収穫時の果汁糖度(=潜在アルコール濃度) は、現在のKabinett カビネットの基準を満たしていることが必要。

⑤Erstes Gewächs エアステス・ゲヴェクスおよびGroßes Gewächs グローセス ヴェクス
・これまでVDP.プレディカーツヴァイン醸造所連盟と、 ワイン生産地域ラインガウが用いていた、格付けされたブドウ畑の辛口ワインであるが、新しいドイツワイン法では、Einzellage アインツェルラーゲ 内の格付けとなる。 生産条件は以下の通り。

[Erstes Gewächs エアステス・ゲヴェクス]

a. 白もしくは赤のQualitätswein クヴァリテーシヴァインである。

b. 単一品種を用いる。

c. 生産地域の特徴にふさわしい品種であること。

d. 収量は1ha当たり60hℓ (Steillage シュタイルラーゲの場合は70hℓ) を10%以上超えないこと。

e. 健全性と成熟度を見極めながら、選りすぐって収穫したブドウを用いる。

f. 醸造に使う果汁は、潜在アルコール濃度が11.0%以上であること。

g. Einzellage アインツェルラーゲか、 その区画名を名乗る。

h. 生産年を記載する。

i. trocken トロッケンに相当するEUの基準を満たしていること。

j. trocken トロッケンなど、味筋に関する表記を用いない。

k. 消費者への販売は収穫翌年の3月1日以降。

l. 保護委員会や業界団体は、審査要綱の中で特別に 定めた官能試験を課すことができる。


[Großes Gewächs グローセス ヴェクス] 

a. 白もしくは赤のQualitätswein クヴァリテーツヴァインである。

b. Erstes Gewächs エアステス・ゲヴェクスの生産条件b.c.g. ~j.満たすこと。

c. 収量は1ha当たり50hℓ (Steillage シュタイルラーゲの場合は60hℓ) を10%以上超えないこと。

d. 手作業で収穫したブドウを用いる。

e. 醸造に使う果汁は、潜在アルコール濃度が12.0%以 上であること。

f. 公的検査から6ヵ月以内に特別検査を行い、 官能検査において生産地域とブドウ品種について特有の特徴を有していると認められたもの。

g.白は収穫翌年の9月1日以降、赤はさらにもう9ヵ月以降に消費者への販売を開始すること。

h. 以上のほかに、原産地の保護委員会や業界団体は、 産地と品種特有の香味を規定し、

⁃ 収穫時の果汁の潜在アルコール濃度の最低基準
⁃ ヘクタール当たりの収量
⁃ ブドウ畑内の区画の限定もしくは新規申請に関して、必要に応じてさらに厳格な基準を定めることができる。

i. 上記の規定を満たせば、現在既に “Erstes Gewächs エアステス・ゲヴェクス"や “Großes Gewächs グローセス・ゲヴェクス" を表記している団体は、そのまま表記を続けることができる。

補足: 法案段階では、 Pradikat プレディカートの肩書 (Kabinett カビネット、Spatlese シュペートレーゼ、Auslese アウスレーゼなど) は、補糖(シャプタリゼーション)をせずに残糖20g / ℓ を超える場合は必須記載事項とする、という項目があったが、削除された。
従って、Prädikat プレディカートの肩書と味筋の記載 (trocken トロッケン、halbtrocken ハルプトロッケンおよび feinherb ファインヘルプ) は、 現在の制度が維持される。


[ドイツワイン用語集]

用語 / 意味

A. ワイン法・ラベル用語

Etikett エティケット / ラベル

Jahrgang ヤールガング / ヴィンテージ

Weißwein ヴァイスヴァイン / 白ワイン

Rotwein ロートヴァイン / 赤ワイン

Herkunft ヘアクンフト / 產地

Anbaugebiet アンバウゲビート / 栽培地域
(複数形: Anbaugebiete アンバウゲビーテ )

Weinberg ヴァインベルク / ブドウ畑

Lage im Alleinbesitz ラーゲ・イム・アラインベジッツ / 単独所有畑。モノポール。

Steillage シュタイルラーゲ / 斜度30%以上のブドウ畑

Hanglage ハングラーゲ / 斜度5~30%の緩斜面のブドウ畑

Terassenlage テラッセンラーゲ / 急斜面にテラス状に仕立てられたブドウ畑

Abfüller アプフュラー / 瓶詰をした者

Erzeugerabfüllung エアツォイガーアプフェルング / 生産者元詰め。
生産者が、自己所有するブドウ畑で栽培・収穫 したブドウのみを用いて醸造し、 瓶詰めしたワ イン。醸造協同組合の場合は、 加盟する組合員が栽培・収穫したブドウのみを用いて醸造し、瓶詰めしたワイン。

Gutsabfüllung グーツアプフュルング / 醸造所元詰め。
生産者元詰めと同義だが、生産者が法人税を納めていること、醸造責任者が醸造に関する職業訓練を修了していることなどの条件がある。

Keller クラー / ワイン蔵。 セラー。

Kellerei ケラライ / 醸造会社。 生産規模が大きい醸造所で、ブドウやワインを小規模な生産者から購入して醸造・ 販売することが多い。

Weingut ヴァイングート / 醸造所。 主に自家所有するブドウ畑で栽培した ブドウからワインを醸造する農園。 


Winzer ヴィンツァー / ブドウを栽培し醸造する人。 ヴィニュロン。

Winzergenossenschaft ヴィンツァーゲノッセンシャフト / 醸造協同組合。 組合に加盟する、小規模なブドウ栽培農家が 納入したブドウを醸造して販売する組合。

Amtliche Prüfungsnummer アムトリッヒェ・プリューラングスヌマー / 公的検査番号。 エティケット上はA.P. Nummer と略して表記される。 


B. 栽培

Rebsorte レープソルテ / ブドウ品種

Weinbau ヴァインバウ / (ワイン醸造を目的とした) ブドウ農業

Weinanbau ヴァインアンバウ / ブドウ栽培

Wurzelecht ヴルツェルエヒト / 自根。 接ぎ木をしていないブドウ樹

Alte Reben アルテ・レーベン / ブドウ樹の古木

Austrieb アウストリープ / 新梢(しんしょう)の芽吹き

Rebblüte レーププリューテ / ブドウの開花

Physiologische Reife フィジオローギッシェ・ライフェ / ブドウの生理的完熟

Weinlese ヴァインレーゼ / ブドウの収穫


C. 醸造

Weinausbau ヴァインアウスバウ / ワイン醸造

Abfüllung アプフュルング / 瓶詰め

Fass ファス / 樽

Edelstahltank エーデルシュタールタンク / ステンレスタンク

Fuder フーダー / フーダー樽。 モーゼルで伝統的に用いられている容量約 1,000ℓの木樽。

Stückfass シュトゥックファス / ライン川沿いの産地で伝統的に用いられてい る容量約 1,200ℓの木樽。


用語 / 意味

Barrique バリック / 容量約225ℓの木樽。 ドイツでは1980年代半 ばからフレンチスタイルのワインを醸造するた めに一部で使われ始めた。

Ganztraubenpressung ガンツトラウベンプレッスング / 全房圧搾

Maischestandzeit マイシェスタンドツァイト / 果汁に果皮・果肉などを漬けて、香味を引き 出す操作にかける時間

Hefe ヘーフェ / 酵母

Spontangärung シュポンターンゲールング / 野生酵母発酵

Abstich アプシュティッヒ / 澤引き

Restzucker レストラッカー / 残糖。 RZと略されることがある。

Säure ソイレ / 酸

Malolaktische Gärung マロラクティッシェ・ゲールング / 乳酸発酵

Biologischer Säureabbau ビオローギッシャー・ソイレアブバウ / 微生物的減酸 乳酸発酵のこと。 略称 BSA。

Schwefelung シュヴェーフェルング / 亜硫酸塩の添加


D. 土壌

Schiefer シーファー / 粘板岩

Buntsandstein ブントザントシュタイン / 雜色砂岩

Muschelkalk ムシェルカルク / 貝殼石灰岩

Löss レス / レス土。 黄土

Basalt バザルト / 玄武岩

Gneis グナイス / 片麻岩

Granit グラニート / 花崗岩 かこうがん

Quarzit クヴァルツィート / 珪岩 けいがん

Porphyr ポーフェア / 斑岩 はんがん


E. ティスティング

Weinprobe ヴァインプローベ / ワインの試飲

vollmundig フォルムンディヒ / 口いっぱいに広がる味わい

harmonisch ハーモーニッシュ / 調和のとれた

opulent オプレント / 芳醇 ほうじゅんで華やかな

dezent デツェント / 控えめな

kräftig クレフティビ / 力強い

filigran フィリグラン / 精妙な

frisch フリッシュ / 新鮮な

reif ライフ / 熟成した

lebendig レベンディヒ / 生き生きとした

spritzig シュプリッツィヒ / (炭酸のように) ピチピチとした

blumig ブルーミヒ / 花のような香りのする

mineralisch ミネラーリッシュ / ミネラル感のある

salzig ザルツィヒ / 塩気のある

säurebetont ソイレベトーント / 酸味のはっきりとした

fruchtig フルフティヒ / フルーティな

Abgang アブガング / 余韻

nachhaltig ナッハハルティヒ / 余韻の長い

bekömmlich ベケムリッヒ / 体に負担の少ない


F. その他

Weinfest ヴァインフェスト / ワインまつり

Federweißer フェーダーヴァイサー / 白ワインの濁り新酒。 収穫期にワイン産地で出 フェーダーローター 回る風物詩。 赤の場合はFederroter と称する。


ワインの産地と特徴

1 Ahr アール

■プロフィール
 ミッテルラインの一部を除けば、ドイツ西部における最北 のワイン生産地域。 かつて西ドイツの首都だったボンに近く、中心地バート・ノイエナール・アールヴァイラーは、現在も温泉保養地である。アール川沿いの産地で、上流のアルテナール付近では、川は蛇行し渓谷は狭く急斜面だが、ハイマースハイム周辺の下流は、緩やかな斜面と平野が広がっている。約25kmにわたって川沿いに散在するブドウ畑の面積は563ha (2020年)と、ドイツで4番目に小さな産地である。
 アールは赤ワイン用ブドウの栽培比率が80%を超える赤ワインの産地である。1980年代までは観光客向けの、色が薄くほの甘い赤が盛んに造られていたが、80年代後半から、バリック樽で熟成した高品質な赤に挑戦する生産者が登場し、1990年代には他の醸造家達も追従して、産地の評価を高めた。現在はその次の世代の若手醸造家達が継いでいる。とりわけ粘板岩土壌の急斜面で栽培されたシュペートブルグンダーは、冷涼な気候と相俟って、フルーティでエレガントな個性をもつ。
 2021年7月中旬の豪雨に続く大洪水で、ほぼすべての醸造所が水没したり、樽、圧搾機やトラクターなどを流されるなど、深刻な被害を受けた。国内外のワイン業界の一致団結した支援活動が行われているが、復興には長い時間がかかるとみられる。


■歴史
 ローマ時代からワイン造りが行われていたという説もあるが、 史料的には9世紀後半に作成された、プリュム修道院の所領台帳の記載が、この地における最古のワイン造りの証拠である。 13世紀には多数の修道院や貴族が、ここにブドウ畑を所有していたが、教会関係の所領は、やがてフランス革命で没収され、競売にかけられた。ウィーン会議でプロイセン王国領になったが、関税政策や天候不順で経済的苦境に陥った生産者達は、1868年にマイショースに醸造協同組合を結成。ドイツで最初期の醸造協同組合の1つである。現在もアールの約80%のブドウ畑は小規模な兼業農家により栽培され、約60軒の個人経営の醸造所のほかに、4つの醸造協同組合が醸造・販売している。

■気候風土
 アイフェル山地の中にある渓谷で、 雨雲が高地で遮られるので、年間降水量は671mm(Bad Neuenahr-Ahrweiler バート・ノイエナール・アールヴァイラー、 1981~2010年の平均値)と比較的少ない。 アール川がライン川に流れ込む河口の標高は54mだが、上流のアルテ ナールでは標高150mで、比較的短い距離でも高度差があ る。年間平均気温は10.3℃と比較的温暖なのは、南東にあ る平野からの暖気が吹き込んで来ることと、おおむね東西方 向に流れるアール川沿いの、南向き斜面にある暗色の粘板岩が太陽熱を吸収するためである。
 アールはデヴォン紀の終わりに、大陸が衝突し隆起して 生じたスレート山地の一部であり、上流の急斜面の畑の土壌は主にデヴォン紀の粘板岩だが、硬砂岩が混じることがある。 下流の平地はレス土やローム質粘土が主体の肥沃(ひよく)な土壌で、これが上流と下流でワインの香味の差となって現 れている。

■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年 資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022)
⁃ ワイン生産量 40.147hℓ 
⁃ ブドウ栽培面積 563ha

■主要ブドウ品種
⁃ 白ワイン用品種 (全体の18.3%)
⁃  Riesling リースリング8.2%

赤ワイン用品種 (全体の81.7%):
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 65.0%
⁃ Frühburgunder フリューブルグンダー 6.0%

注:ブドウ品種の後に記されている栽培面積の割合は、産地全体の栽培面積に占める割合で、 白ワイン用品種や赤ワイン用品種それぞれに占める割合ではない。

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=1
⁃ Großlage=1
⁃ Einzellage=40

[ベライヒ] 
⁃ Walporzheim / Ahrtal ヴァルボルツハイム / アールタール

[市町村 (区域)名→ 単一畑名]
⁃ Altenahr アルテナール→ Eck エック 
⁃ Mayschoß マイショース→ Mönchberg メンヒベルク
⁃ Dernau デルナウ→ Pfarrwingert プファーヴィンゲルト
⁃ Walporzheim ヴァルボルツハイム → Gärkammer ゲアカマー
⁃ Ahrweiler アールヴァイラー → Rosenthal ローゼンタール 
⁃ Neuenahr ノイエナール→ Sonnenberg ゾンネンベルク
⁃ Heimershiem ハイマースハイム→ Landskrone ランズクローネ


2 Mosel モーゼル

■プロフィール
 2006年まではMosel-Saar-Ruwer モーゼル・ザール・ルーヴァーと称していたワイン生産地域。現在は単に「モーゼル」と称するが、支流のザー ル川とルーヴァー川流域を含むことに変わりはない。
 モーゼル川の水源はアルザスのヴォージュ山脈にある。フランスのロレーヌ地方を過ぎると、ルクセンブルクとドイツの国境となり、ザール川との合流地点コンツを過ぎると、北西にアイフェル山地、南東にフンスリュック山地に挟まれた渓谷に入る。そこから先は幾たびも蛇行を繰り返しつつ進み、コブレンツでライン川に合流する。ドイツ領内のモーゼル川の全長は231.5km。川の流れに沿って様々に向きを変える渓谷の斜面の約4割が、斜度30%を超える急斜面の畑 (Steillage シュタイルラーゲ) であり、時に左岸、時に右岸にブドウ畑が広がる。下流の一部は急斜面に石垣を用いてテラス状にブドウ畑を仕立てていることからTerassenmosel テラッセンモーゼルと称することがある。
 ブドウ畑の総面積は8,689ha (2020年) で、 オーバーモー ゼル (上流)、ミッテルモーゼル (中流)、ウンターモーゼル (下流)と支流のザールとルーヴァーに分かれる。オーバーモーゼルはルクセンブルクの対岸にあり、他の地域と異なり三畳紀の貝殻石灰岩やコイパーが主体で、エルプリングの特産地だが、近年はブルグンダー系 (ピノ・ノワールな ど) の栽培面積が増えている。その他の地域は全般に粘板岩土壌が広く分布しているが、粘板岩は組成成分により赤色、青色、灰色の色合いを帯びている。中流のヴェーレン村周辺には青色粘板岩が多く、多数の銘醸畑が集中し、気品に満ちて余韻の長いリースリングを産することで知られている。同じく中流のユルツィヒ村付近には火山性の流紋岩が混じり、ハーブを思わせる華やかな独特のアロマを特徴とする。ザールにも粘板岩が多く見られるが、この地区のミネラリティに富んだ繊細さと複雑さは、モーゼル上流に近く標高が高いことに由来する、冷涼な気候が影響している。
 主要品種リースリングがブドウ畑の約60%を占める。 かつ ては専ら(もっぱら)甘味と酸味が調和した、 上品な果実味が魅力の甘口で知られていたが、近年は温暖化と栽培醸造技術の向上により、土壌の個性を反映した辛口からオフドライのワ インが増えている。一方、カビネットからアイスヴァイン、トロッケンベーレンアウスレーゼといった甘口もまた、モーゼル独特のエレガントな酸味により、世界でもここでしかできない特別なワインとして、愛好家をとらえて放さない。近年は温暖化で、低アルコール濃度のエレガントなワインが注目される傾向にあることも、モーゼルには追い風となっている。


■歴史
 紀元前50年頃にローマ人達がこの地方を征服した当 時、原住民のガリア人達が既にワイン造りを行っていたかど うかは議論が分かれるところだが、圧搾所の遺跡などから、紀元3世紀には盛んにブドウ栽培とワイン造りが行われていたことが確認されている。西ローマ帝国の滅亡後は修道院がワイン造りの伝統を受け継いだが、なかでもトリーアのザンクト・マキシミン修道院は、モーゼル一帯に多数の所領を所有し、現在も畑名や醸造所名にその名を残している。1464年のトリーアの聖ヤコブス施療院の会計簿に、リースリングの苗木を植樹したという記録があり、これがこの品種の最古の言及の1つである。1786年にトリーア大司教で選帝侯だったクレメンス・ヴェンツェスラウスが、劣った品質のブドウを引き抜いて、優れた品質のワインを産する苗木を植えるように命じたことが、モーゼルで広リースリングが栽培される契機となった。1868年にはプロイセン政府がブドウ畑の格付け地図を作成したが、これが現在VDP. Die Prädikatsweingüter ディー・プレディカーツヴァインギューター(プレディカーツヴァイン醸造所連盟)が行っている、 ブドウ畑の格付けの基礎資料に使われている。1950年代から80年代前半にかけて、甘口ブー ムに乗って栽培面積が急増し、急斜面以外の平地にもブドウ畑が造られたが、1990年代まで売れ行き不振と生産過剰が続き、採算がとれずに栽培放棄された急斜面のブドウ畑が目立った。しかし2000年前後から、異業種から参入した生産者や、 世代交代した若手醸造家による高品質な辛口系リースリングが注目されるようになり、現在は古くて新しい産地として、かつての勢いを取り戻している。


■気候風土
 モーゼルのブドウ畑は、フンスリュック山地とアイフェル山地に挟まれた渓谷にある。基本的に雪の少ない穏やかな冬 と、最高気温35℃を超えることもある比較的暑い夏と春から秋にかけて適度な雨に恵まれた気候が支配しており、たいていは年に数日氷点下7℃前後に達し、アイスヴァインの収穫が可能になる。
 急斜面の上にある森が、高地から入り込む冷気の影響を緩和し、南から南西向き斜面の上部は、とりわけ長時間の日照に恵まれる。モーゼルの上流は下流に比べると標高が高く冷涼で降水量が多い。年間降水量は697mm (Bernkastel ベルンカステル) ~ 795mm (Perl-Nennig ペアル・ネニッヒ1981~2010年の平均値)で、余分な水分が流下して地表が乾きやすく、 太陽熱を蓄積してブドウ樹付近に暖かい環境を作り出す、粘板岩の斜面が重要な役割を果たしている。

■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年 資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022) 
⁃ ワイン生産量 1,422,331hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 8,689ha


■主要ブドウ品種
白ワイン用品種 (全体の90.7%)
⁃ Riesling リースリング 62.4%
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ 9.8%、 
⁃ Elbling エルプリング 5.3%、 
⁃ Weißburgunder ヴァイスブルグンダー 4.2%、 
⁃ Grauburgunder グラウブルグンダー  2.4%
⁃ Kerner ケルナー 2.2%

 赤ワイン用品種 (全体の9.3%)
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 4.7%
⁃ Dornfelder ドルンフェルダー 3.1%


■主なブドウ畑
⁃ Bereich=6 
⁃ Großlage=18
⁃ Einzellage=524

[ベライヒ] 
⁃ Burg Cochem ブルク・コッヘム

[市町村(区域) 名 → 単一畑名]
⁃ Winningen ヴィンニンゲン → Uhlen ウーレン

[ベライヒ] 
⁃ Bernkastel ベルンカステル 

[市町村 (区域) 名 → 単一畑名]
⁃ Erden エルデン → Prälat プレラート
⁃ Ürzig ユルツィヒ → Würzgarten ヴュルツガルテン
⁃ Wehlen ヴェーレン → Sonnenuhr ゾンネンウーア
⁃ Bernkastel ベルンカステル → Doctor ドクトール
⁃ Brauneberg ブラウネベルク → Juffer-Sonnenuhr ユッファー・ゾンネンウーア
⁃ Piesport ピースポート→ Goldtröpfchen ゴルトトレプヒェン

 [ベライヒ] 
⁃ Ruwertal ルーヴァータール

[市町村 (区域) 名 → 単一畑名]
⁃ Maximin Grünhaus マキシミン・グリュンハウス → Abtsberg アブツベルク
⁃ Eitelsbach アイテルスバッハ → Karthäuserhofberg カルトホイザーホーフベルク

 [ベライヒ] 
⁃ Saar ザール

[市町村 (区域)名 → 単一畑名]
⁃ Kanzem カンツェム → Altenberg アルテンベルク
⁃ Wiltingen ヴィルティンゲン → * Scharzhofberg シャルツホーフベルク、Braune Kupp ブラウネ・タップ

[ベライヒ] 
⁃ Obermosel オーバーモーゼル

 [ベライヒ] 
⁃ Moseltor モーゼルトーア

*Scharzhofberg シャルツホーフベルクは単一畑ではなく、ヴィルティンゲン村の一部区域(Ortsteil オルツタイル)の地理的名称なので、 エチケット上に村名を表記しない。


3 Mittelrheinミッテルライン

■プロフィール
 ビンゲンとボンの間の約110kmにわたるライン流域の産地。 栽培面積は465ha (2020年) とドイツで2番目に小さい。城塞(じょうさい)が両岸の急斜面の上や川の中州に点在する風光明 媚(ふうこうめいび)な地域で、 ローレライの歌で知られるかつての船の難所も ここにある。 ビンゲンからコブレンツまでの景観は、2002年に ユネスコ世界文化遺産に登録されている。


■歴史
 3世紀後半からモーゼルでブドウ栽培が本格化すると、 ローマ人達はミッテルラインでもワイン造りを始めた。 588年にヴェナンティウス・フォルトゥナートゥスがモーゼル川を航行しライン川に至った際、 現在のミッテルライン下流にブドウ畑があったと証言している。 ライン川は中世の主要な交 易路でもあったので、川沿いの町バハラッハはワイン商業で栄えた。
 18世紀末に始まるラインロマンティックの流行以来、現在に至るまで、ミッテルラインは観光名所として人気があるが、観光客相手に凡庸なワインを提供するか、大規模な醸造会社に樽ごと販売する生産者が多かった。地域のブドウ畑の約85%は急斜面だが、栽培の手間に見合うだけの収入が得られず1950年には約1,450haあった栽培面積は、約3分の1前後にまで減少している。2010年には165ある醸造所のうち、 74が栽培面積0.3~1haの小規模生産者で、10ha以上はわずか7事業所。約50軒が自家醸造したワインを飲ませる居酒屋を経営していた。
 優れたワインを産する条件を備えていながら、 耕作放棄される畑が少なくない。そうした畑を、高品質なワインの生産者が買い足したり、意欲的な若手醸造家達が購入して、新たに醸造所を設立したりしている。


■気候風土
 ライン川は、ほぼ南南東から北北西に流れているため、支流の渓谷の南向き斜面もブドウ畑に利用されている。ブドウ畑の約85%が傾斜30度以上の急斜面で、機械化が難しい。上流のビンゲンから、モーゼル川と合流するコブレンまでは、右岸のタウヌス山地の非常に硬い珪岩の岩盤と、左岸のフンスリュック山地の粘板岩に挟まれ、 川幅が狭く、流れが速い。観光名所となっているローレライの岸壁も、 珪岩の岩盤である。 コブレンツから下流へ約25kmほど平野を流れた後、 再び河岸に迫る右岸の斜面に点在するブ ドウ畑の土壌は、風化が進んで粒子の細かくなった粘板岩と砂岩が多い。さらに下流のベライヒ・ジーベンゲビルゲでは、火山性の粗面岩や硬砂岩が見られる。 タウヌス山地、フンスリュック山地、アイフェル山地によって冷気が遮られ、ライン川の豊かな水量が冬も穏やかな気候に貢献している。年間降水量は607mm、年間平均気温は10.6℃、年間日照時間は1,417 時間 (Andernach アンダーナハ , 1981~2010年の平均値)。


■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局 2020年資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022)
⁃ ワイン生産量 28,050hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 465ha


■主要ブドウ品種
白ワイン用品種 (全体の84.7%)
⁃ Riesling リースリング 64.7%
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ 4.7%

赤ワイン用品種 (全体の15.3%)
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 10.1%


■主なブドウ畑
⁃ Bereich=2 
⁃ Großlage=10
⁃ Einzellage=111

[ベライヒ] 
⁃ Loreley ローレライ

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Boppard ボッパルト→ Hamm Feuerlay ハム・フォイアーライ
⁃ Bacharach バハラッハ→ Hahn ハーン

[ベライヒ] 
⁃ Siebengebirge ジーベンゲビルゲ


4 Rheingau ラインガウ

■プロフィール
 ラインガウは大きく3つの地区に分けることができる。1つはヴィースバーデンの東側郊外にある、ホッホハイム周辺のマイン川沿いの地区。 2つ目は南から流れてきたライン川がタウヌス山地にぶつかって西南西へ向きを変えてから、フンスリュック山地にぶつかって北北西へと再び向きを変えるまでの約24km。
この間にエアバッハ、ハッテンハイム、ヨハニスベルク、ガイゼンハイムといった有名なブドウ畑や大学のある村が続いている。 そして3つ目が観光地リューデスハイムや赤ワインの産地として知られるアスマンズハウゼンから、ミッテルラインと境界を接するロルヒハウゼンまでの、粘板岩と珪岩の急斜面が川沿いに迫るライン川右岸の約16kmである。
 この北緯50度に沿って広がるワイン生産地域の広さは3,200ha (2020年) で、ブドウ畑の78%をリースリングが、12%をシュペートブルグンダーが占める。修道院や貴族の所有だった、数百年の伝統を誇る醸造所のいくつかは、1970年代以降廃業したが、現在も続いている醸造所もある。「カビネット」の語は1971年のドイツワイン法により、補糖(シャプタリゼーション)せずに醸造した、一定の収穫時の果汁糖度を満たしたワインの肩書Kabinettカビネットになったが、それ以前は特別に優れた品質のワインを貯蔵する部屋(Cabinet カビネット)を指し、1712年にエーバーバッハ修道院が用いたのが最初といわれている。通説では1775年にヨハニスベルクにブドウの収穫開始を告げる伝令の到着が遅れて、シュペートレーゼが発見されたことになっているが、実際には既に18世紀前半から、貴腐のついたブドウを選りすぐることで高品質なワインができることが知られていた。そして1867年に、ドイツで初めてブドウ畑を3段階に格付けした地図がラインガウで刊行された。19世紀末から20世紀初めにかけて世界各地でドイツワインが称賛されたが、当時ラインガウの最上のワインは「ファースト・グロウス」(1st. Growth) と呼ばれ、後の格付けErstes Gewächsエアステス・ゲヴェクスはこれに由来するなど、高品質なドイツワインをリードする産地であった。
 ラインガウにはまたドイツのブドウ栽培醸造技術を研究し、若手醸造家を育成するガイゼンハイム大学があり、近年は有機栽培の研究指導や、気候変動のブドウ栽培への影響などの研究を行っている。ここでワイン造りを学ぶ学生は国外の醸造所で研修した経験を有する者が多く、卒業生同士で若手醸造家団体を結成するなど、近年のドイツワインの新たなムーヴメントの震源地となっている。


■歴史
 ラインガウのブドウ栽培は紀元1~3世紀のローマ時代に始まったが、最初に史料に登場するのは779年のブドウ畑の寄進証書である。1136年にはシトー派のエーバーバッハ修道院が設立され、彼らがシュペートブルグンダーをラインガウに持ち込んだものと思われる。エーバーバッハ修道院は1500年頃にはラインガウだけでなく現在のナーエ、ライン・ヘッセン、ミッテルラインにもブドウ畑を所有し、修道院の収入の約40%をワイン販売でまかなっていた。
 第二次世界大戦後もドイツワインを代表する銘醸地であったが、1980年代初頭の過剰生産による品質低下を憂えた一部生産者達が「食事とともに楽しむ高品質な辛口の「復活」を掲げてカルタ同盟を1984年に結成し、紆余曲折(うよきょくせつ)を経て1999年にVDPラインガウに吸収された。2000年頃からラインガウ以外の出身者が新しい醸造所を設立したり、伝統的醸造所の醸造責任者に就任するなど、新しい風が吹いている。


■気候風土 
 タウヌス山地の森林が雨雲と北風をせき止めるとともに、多くの畑はライン川に向かって下る南向き斜面にある。夏は暑く冬は温暖な気候で、年間平均気温は10.5度、年間降水量は546mm、年間日照時間は1,635 時間 (Geisenheim ガイゼンハイム、1981~2010年の平年値)。 斜面の上に行くほど気温が下がり、薄い表土の下に粘板岩、珪岩、千枚岩などの混じる水はけの良い土壌が多く、川に近づくほど表土が深く保水性が良くなり、砂、砂利、粘土、レス土の割合が増える。ヨハニスベルクはとりわけ珪岩の割合が高く、これがワインに力強さと繊細なニュアンスを与えている。リューデスハイムから 下流は粘板岩の比率が増え、ワインのスタイルも繊細に軽やかになる傾向がある。東のマイン川沿いの地区では都市部に近く温暖で、土壌は石灰質を含む砂や粘土が多く、柔らかで重めの酒質となる。


■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022)
⁃ ワイン生産量 232,676hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 3,200ha

■主要ブドウ品種
白ワイン用品種 (全体の85.7%)
⁃ Riesling リースリング 77.6%

赤ワイン用品種 (全体の14.3%) 
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 12.2%

■主なブドウ
⁃ Bereich=1
⁃ GroBlage=11
⁃ Einzellage=129

[ベライヒ] 
⁃ Johannisberg ヨハニスベルク

[市町村(区域) 名 → 単一畑名]
⁃ Hochheim ホッホハイム → Königin Victoriaberg ケーニギン・ヴィクトリアベルク, Hölle ヘレ
⁃ Rauenthal ラウエンタール→ Baiken バイケン、Nonnenberg ノネンベルク
⁃ Kiedrich キートリッヒ →
⁃ Gräfenberg グレーフェンベルク, Turmberg トゥルムベルク
⁃ Hattenheim ハッテンハイム → *Steinberg シュタインベルク 
⁃ Winkel ヴィンケル→ * Schloss Vollrads シュロス・フォルラーツ 
⁃ Johannisberg ヨハニスベルク→ *Schloss Johannisberg シュロス・ヨハニスベルク
⁃ Rüdesheim リューデスハイム→
⁃ Berg Rottland ベルク・ロットラント、Bepg Schlossberg ベルク・シュロスベルク 
⁃ Assmannshausen アスマンズハウゼン → Höllenberg ヘレンベルク
⁃ Lorch ロルヒ→ Krone クローネ

*印はヘッセン州条例で認められた、市町村の一部区域 (Ortsteil オルツタイル) の地理的名称を表記するブドウ畑。上記のほかに Schloss Reichartshausen シュロス・ライヒャルツハウゼン、Insel Marienaue インゼル・マリーナウエがある。ただし、 Ortsteillage オルツタイルラーゲは、その畑の立地条件が、特に優れているから認められているとは限らず、単に複数の市町村にまたがっているからのこともある。 
参照: Dritte Verordnung zur Änderung der Hessischen Ausführungsverordnung zum Weinrecht und zur Reblausbekampfung. Vom 7. Juli 2015, Anlage 3(zu §3 Abs. 1).


5 Nahe ナーエ

■プロフィール
 ワイン生産地域ナーエは、ラインヘッセンとミッテルラインに挟まれた生産地域で、ナーエ川河口から南西に向けて扉を半ば開いたような形をしている。ナーエ川の河口ビンゲンからモンツィンゲンに至る約60kmの流域と、その支流のグラン川、アルゼンツ川、エラーバッハ、グルデンバッハなどの流域が含まれる。
栽培面積は4,230ha (2020年)。
ナーエはフンスリュック山地とマインツ平野の境界にあり、粘板岩、斑岩、雑色砂岩レス土など多様な土壌が存在する(後述)。


■歴史
 ローマ時代からブドウ栽培が行われていたが、8世紀以降、修道院によるブドウ栽培が盛んだった。 神秘家として有名な修道女ヒルデガルド・フォン・ビンゲン (1098~1179) が、院長を務めていた女子修道院ディジボーデンベルクもナーエにあった。
 1980年代までは様々な交配品種が栽培され、栽培醸造試験場のような趣があった。かつては質より量のワイン造りがなされていたことは否めない。しかし1990年代以降は伝統品種への回帰が進み、現在はリースリングが栽培面積の約29%を占め、高品質なリースリングと赤白のブルグンダー系品種が産地のポテンシャルを示している。


■気候風土
 フンスリュック山地によって、西からの雨雲や寒風が遮られ、温暖な気候を享受している。年間降水量は約549mm、年間平均気温は10.1℃、年間日照時間は1,543時間 (Bad Kreuznach バート・クロイツナッハ 、1981~2010年の平均値)。
 北西部のナーエ川下流流域の土壌は、デヴォン紀の粘板岩や千枚岩、珪岩が主体で、モーゼルでは見られない緑色片岩 (ドイツ語で緑色粘板岩Grünschiefer グリュンシーファー) がある。西部のナーエ川上流では、上部赤底統の赤色礫岩(れきがん)と砂岩が分布し、南西部のアルゼンツ川、グラン川流域には、下部赤底統の風化の進んだ砂岩や、粘土質粘板岩が混じる土壌のほかに、火山性の流紋岩や安山岩がある。バー ト・クロイツナッハの北からナーエ川下流にかけての丘陵地帯は、三畳紀と洪積世の砂岩、礫岩、泥灰、堆積(たいせき)砂などが 分布している。 ナーエ川中流域のバート・ミュンスターからトライゼンにかけて、高さ約200m、長さ約1.2kmのRotenfels ローテンフェルス(「赤い岩壁」の意) と呼ばれる流紋岩 (微細な結晶構造を もつ珪質斑岩)の岩山がそびえ、ナーエの奥地への入り口のような趣をなしている。


■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022) 
⁃ ワイン生産量 202,681hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 4,230ha

■主要ブドウ品種
白ワイン用品種 (全体の76.4%)
⁃ Riesling リースリング 28.9%
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ 11.8%
⁃ Grauburgunder グラウブルグンダー 8.5%
⁃ Weißburgunder ヴァイスブルグンダー 7.6%
⁃ Silvaner ジルヴァーナー 4.7%

 赤ワイン用品種 (全体の23.6%)
⁃ Dornfelder ドルンフェルダー 9.6%、
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 6.7%

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=1 
⁃ Großlage=6
⁃ Einzellage=310

[ベライヒ] 
⁃ Nahetal ナーエタール

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Münster-Sarmsheim ミュンスター・ザルムスハイム →Dautenpflänzer ダウテンプフレンツァー
⁃ Dorsheim ドルスハイム → Burgberg ブルベルク, Goldloch ゴルトロッホ
⁃ Laubenheim ラウベンハイム→ St. Remigiusberg ザンクト・レミギウスベルク
⁃ Langenlonsheim ランゲンロンスハイム→ Königsschild ケーニヒスシルト
⁃ Wallhausen ヴァルハウゼン→Johannisberg ヨハニスベルク
⁃ Bad Kreuznach バート・クロイツナッハ → Kahlenberg カーレンベルク
⁃ Traisen トライゼン→ Bastei バスタイ
⁃ Niederhausen ニーダーハウゼン→ Hermannshöhle ヘルマンスヘーレ
⁃ Monzingen モンツィンゲン→ Halenberg ハレンベルク, Frühlingsplätzchen フリューリングスプレッチェン
⁃ Schlossböckelheim シュロスベッケルハイム→ Felsenberg フェルゼンベルク


6 Rheinhessen ラインヘッセン

■プロフィール  
 ドイツ最大のワイン生産地域26,943ha (2020年)。 温暖で石灰質を含む肥沃なレス土が多く、 農業が盛んな地方 で、第二次世界大戦後の甘口ワインブームでは、砂糖大根などの農作物を栽培していた土地がブドウ畑にされた。だが、化学合成肥料や農薬やトラクターを使った農業が、やがて土壌流出や健康被害を引き起こし、既に1950年代から、有機農法を採用するワイン生産者が登場した。
 1980年代までは量産甘口ワインの主要産地であったが、 ラインヘッセンのテロワールの潜在能力を確信する若手醸造家達が、2001年に団体Message in a bottle メッセージ・イン・ア・ボトルを結成し て、お互いのワインについて、忌憚(きたん)のない意見を述べ合い、経験を共有しながら高品質なワイン造りに取り組むようになった。彼らの造るリースリング、ジルヴァーナー、シュペートブルグンダーなどの素晴らしさが起爆剤となって、かつてのさえないイメージから、若くダイナミックで高品質なワインの産地へと大きく変貌した。
 2011年にはVDPとラインヘッセンブドウ栽培者連盟の有志が集まって、Ortswein オルツヴァイン (市町村名ワイン) をアピールする試飲会を開催。 彼らは2017年に醸造所団体 Maxime Herkunft Rheinhessen マキシメ・ヘアクンフト・ラインヘッセンを結成し、VDPと同様の地理的呼称範囲に基づく格付け (Gutswein グーツヴァイン、Ortswein オルツヴァイン、 Lagenwein ラーゲンヴァイン) を採用し、 産地全体で足並みを揃えてテロワールの個性を表現することを目指している。


■歴史
 ブドウ栽培が始まったのがローマ時代であることは、 マインツ周辺の多数の出土品が証明している。
 他の産地と同様に、中世を通じて教会と修道院がワイン造りを主導したが、1402年にはヴォルムスで、リースリングが 「Rüssling 」として最初に言及されたという説がある。 同じく ヴォルムスの聖母教会 (リープフラウエンキルヒェ)の周囲にあるブドウ畑からのワインが、リープフラウミルヒとして18世紀半ば頃から有名になり、20世紀初頭には世界的な銘酒として高値で取引されていた。しかし間もなく模造品が出回るようになり、1971年のドイツワイン法では、リープフラウミルヒは特定の個性をもつ甘口白ワインとして規定された。すなわちラインヘッセンだけでなくナーエ、ファルツ、ラインガウで生産されたクヴァリテーツヴァインで、 原料となるブドウ品種の少なくとも70%をリースリング、ジルヴァーナー、ミュラー・トゥルガウもしくはケルナーが占めており、 残糖値がリープリッヒに相当する甘口であればリープフラウミルヒと名乗れることになった (ワイン規則 Weinverordnung ヴァインフェアオルドヌング 1995 Abschnitt アプシュニット 5§33)。 1980年代には輸出されるドイツワインの約60%がリープフラウミルヒで、ドイツワインは安くて甘いという先入観が作り上げられた。しかしこうした状況があったからこそ、若手醸造家達は逆に何のしがらみもなく、品質向上に邁進(まいしん)することができたといえる。


■気候風土
 ラインヘッセンは西をフンスリュック山地、北をタウヌス山地によって風や雨から守られている。 ナーエと境界を接する 西側の南部は「ラインヘッセンのスイス」と称される、ハイキングに適した風光明媚な一帯である。東部のライン川沿いの北部は、 Roter Hang ローター・ハング(「赤い斜面」の意)と呼ばれる急斜面が、銘醸畑として知られている。 南部はファルツ北部のドナースベルク山(標高686.5m)の麓(ふもと)の、ゆるやかな斜面が広がっている。その他の内陸部は起伏に富んだ丘陵地帯であり、ラインヘッセン全域を指して「千の丘のある地方」と呼ばれている。 年間降水量は564mm、年間平均気温は10.0℃、年間日照時間は1,649時間 (Alzey アルツァイ、1981~2010 年の平均値)。
 土壌はおおざっぱに言うと、ナーエとの境界から南東に向かうに従って生成年代が新しくなる。産地全域にわたり表にレス土が堆積し、下層土と混じり合っている。 ビンゲン付近の北西部はデヴォン紀 (約4億年前)の粘板岩と珪岩、南西部はペルム紀 (約2億5千万年前) の下部赤底統、砂岩、粘板岩と火山性の斑岩、黒斑岩流紋岩が分布している。 Roter Hang ローター・ハングとして知られる赤色を帯びた土壌の斜面 がある、東部のライン川沿いには、ペルム紀の上部赤底統と礫岩、砂岩、片岩がある。それ以外の地区には第三紀から更新世(約7千万年から2百万年前)に堆積した砂礫、 粘土、石灰岩、泥灰岩が分布し、南部の丘陵地の斜面には、氷河期 (約2百万年前)に堆積したレス土が混じるローム質土壌の下に、厚い石灰岩の岩盤が横たわっている。


■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年資料およびDeutscher Wein Statistik 2021/2022) 
⁃ ワイン生産量 2,531,525hℓ 
⁃ ブドウ栽培面積 26,943ha


■主要ブドウ品種
白ワイン用品種 (全体の72.1%)
⁃ Riesling リースリング 18.4%
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ 14.9%
⁃ Grauburgunder グラウブルグンダー 7.6%
⁃ Silvaner シルヴァーナ 7.6%
⁃ Weißburgunder ヴァイスブルグンダー 5.6%
⁃ Chardonnay シャルドネ 3.3% 

赤ワイン用品種 (全体の27.9%)
⁃ Dornfelder ドルンフェルダー  12.2%
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 5.5%
⁃ Portugieser ポルトギーザー 3.8%

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=3 
⁃ GroBlage=23
⁃ Einzellage=414

[ベライヒ] 
⁃ Bingen ビンゲン

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Appenheim アッペンハイム→ Hundertgulden フンデルトグルデン
⁃ Bingen ビンゲン → Scharlachberg シャーラッハベルク
⁃ Siefersheim ジーファースハイム→ Heerkretz ヘアクレッツ

[ベライヒ] 
⁃ Nierstein ニアシュタイン

[市町村 (区域)名 → 単一畑名]
⁃ Nackenheim ナッケンハイム→ Rothenberg ローテンベルク
⁃ Nierstein ニアシュタイン→ Pettenthal ペッテンタール, Ölberg エルルベルク

[ベライヒ] 
⁃ Wonnegau ヴォンネガウ

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Westhofen ヴェストホーフェン→ Kirchspiel キルヒシュピール, Morstein モアシュタイン
⁃ Flörsheim-Dalsheim フレースハイム・ダルスハイム→ Hubackerフーバッカー 
⁃ Worms ヴォルムス→ Liebfrauenstift Kirchenstückリーブフラウエンシュティフト・キルヒェンシュトゥック



7 Pfalz ファルツ

■プロフィール
 ドイツで2番目に大きな生産地域で、栽培面積は23,721ha (2020年)。ラインヘッセンの南に地続きで広がっている。西のハールト山地からライン川に向かって続く平野にあり、ブドウ畑は山地の麓の斜面から東西に最大約15km、南 北に約85kmにわたって広がっている。南端はフランスとの国境に接し、一部のブドウ畑はフランス側にある。
 ブドウ以外にも桃やイチジクなど、様々な果樹の栽培にも適した温暖な気候で、ミッテルハールト地区の一部の伝統的醸造所を除いて、畜産や穀物の栽培と一緒にブドウを栽培している農家が多かった。村々のワイン祭りでは容量500mℓのDubbeglas デュッベグラスと呼ばれる、壁面に凹凸のついた独特のコップでワインが供された。現在は通常のチューリップ型のグラスも使われている。

■歴史
 ファルツでもやはりローマ人がブドウ栽培とワイン造りを始めたものと思われる。文書史料での言及は、653年のシュパイアー司教の10分の1税徴収が最古のものである。その後中世を通じて、教会や修道院を中心にブドウ栽培とワイン造りが行われた。
 この地方はフランス国境に近いこともあり、三十年戦争 (1618~48) とファルツ継承戦争 (1688~97) で甚大な損 害を被った。フランス革命により、修道院や教会の所有だったブドウ畑が没収され競売にかけられると、ミッテルハールトの名士や資産家達が購入して、銘醸として評判になった。

1980年代までは、交配品種による甘口の量産ワインが盛んに造られていたが、1990年代後半からは、伝統品種による辛口で、テロワールを表現することが目指されるようになった。ファルツの著名生産者の1つが、ブドウ畑の格付けを最初に始めたが、元々温暖な産地であったので辛口ワインの生産には向いており、その力強く複雑な味わいは注目を集めた。また、名醸造家として知られるハンス・ギュンター・シュヴァルツが1980年代に「ブドウ畑を徹底して世話をするが、 セラーではできるだけ介入しない」という基本方針を研修生達に徹底させた。シュヴァルツに学んだ若手達が、ファルツに限らずそれぞれの地域を代表する生産者に成長し、活躍しているケースが少なくない。例えば1991年にファルツ南部の5人の醸造家たちが結成した、若手醸造家団体Fünf Freundeフェンフ・フロインデのハンス・ヨルグレープホルツである。彼らは高品質なブルグンダー系の辛口を醸造して注目を集めた。やがて2000年頃に、やはり5人の若者がSüdpfalz Connexion ズュートファルツ・コネクションを結成し、1900年頃のシュペートブルグンダーを再現して話題となった。その後もVDP.プレディカーツヴァイン醸造所連盟の若手育成プロジェクトなどもあり、かつてファルツの3Bと呼ばれた大御所中心の産地から、品質向上に熱心な若手醸造家達の活躍する、ダイナミックな産地へと変貌している。


■気候風土
 ドイツで最も温暖な気候の地域で、年間平均気温は10.4℃、年間降水量は816mm、年間日照時間は1,711時バート・ベルクツァバルン間である (Bad Bergzabern, 1981~2010年の平均値)。 ハールト山地のファルツの森がこの地方を風雨から守っている。


■主要ブドウ品種
白ワイン用品種 (全体の66.2%)
⁃ Riesling リースリング25.0%
⁃ Grauburgunder グラウブルグンダー 8.0%
⁃ Müller- Thurgau ミュラー・トゥルガウ7.3%
⁃ Weißburgunder ヴァイスブルグンダー 5.9%
⁃ Chardonnay シャルドネ 3.5%

赤ワイン用品種 (全体の33.8%) 
⁃ Dornfelder ドルンフェルダー11.8%、
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー7.2%
⁃ Portugieserポルトギーザー  5.1%

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=2
⁃ Großlage=25
⁃ Einzellage=323

[ベライヒ] 
⁃ Mittelhaardt-Deutsche Weinstraße ミッテルハールト・ドイチェ・ヴァインシュトラーセ

[市町村 (区域) 名→単一畑名] 
⁃ Wachenheim ヴァッヘンハイム→ Gerümpelグリュンペル
⁃ Forst フォルスト→ Jesuitengarten イェズイーテンガルテン, Kirchenstück キルヒェンシュトゥック,  Ungeheuerウンゲホイアー
⁃ Deidesheim ダイデスハイム→ Hohenmorgen ホーエンモルゲン
⁃ Königsbach ケーニヒスバッハ → Idig イーディグ
⁃ Gimmeldingenギンメルディンゲン→Mandelgarten マンデルガルテン
⁃ Haardt ハールト→Bürgergarten "Breumel in den Mauern ビュルガーガルテン・"ブメル・イン・デン・マウエルン”

[ベライヒ] 
⁃ Südliche Weinstraße ズュートリッヒェ・ヴァインシュトラーセ

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Siebeldingenジーベルディンゲン→ Im Sonnenschein イム・ゾンネンシャイン
⁃ Birkweiler ビルクヴァイラー → Kastanienbusch カスターニエンブッシュ
⁃ Schweigen シュヴァイゲン Kammerbergカマーベルク


8 Hessische Bergstraße ヘシッシェ・ ベルクシュトラーセ

■プロフィール
 ドイツで最も栽培面積の狭いワイン生産地域463ha (2020年)。 オーデンヴァルトの山地の西側斜面と北の端 に散在し、 南をバーデン・ヴュルテンベルク州に接し、 境 界の向こう側はワイン生産地域バーデンのベライヒ・バー ディッシェ・ベルクシュトラーセである。
 ドイツのトスカーナあるいはリヴィエラとも称される、風光明媚で温暖な気候で知られる。この産地のワインを特徴づけているのは花崗岩土壌で、ブドウ栽培面積の約40%をリー スリングが占める。約90%が辛口かオフドライで、 専ら地元で消費されている。

■歴史
 元々はワイン生産地域ベルクシュトラーセであったが、1971年のドイツワイン法で、ヘッセン州内にあった北半分 がヘシッシュ・ベルクシュトラーセとなった。同じヘッセン州に あるラインガウの飛び地として扱う案もあったが、土壌も気候も違うため、独立したワイン生産地域とされた。歴史的には、ここでも恐らくローマ人がブドウ栽培を始めたといわれているが、史料に登場するのは8世紀以降のことである。

■気候風土
 ドイツで春が最も早く訪れ、 ブドウの芽吹きも早く、冬の訪れも遅いので長期間成熟させることができ、リースリングの栽培に向いている。畑は主にライン川から約20km離れた、南西から南向きの斜面にある。土壌は花崗岩の風化土壌、黄色雑色砂岩や珪質斑岩などが点在している。これは古第三紀 (約5500万年前) の地殻変動で一帯の山地が押し 寄せられて、ライン地溝帯が大規模に沈降したことによる。やがてライン川が運んできた礫・砂・粘土と、氷河期にアル プスから飛来したレス土が一帯に堆積し、ブドウ畑の土壌となった。この地域はユネスコが認定する、ベルクシュトラー セ・オーデンヴァルト・ジオ自然公園の一部となっている。

■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022) 
⁃ ワイン生産量 34,305hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 463ha

■主要ブドウ品種

白ワイン用品種 (全体の79.0%) 
⁃ Riesling リースリング 38.9%
⁃ Grauburgunder グラウブルグンダー 12.5%
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ 5.4%

赤ワイン用品種 (全体の21.0%)
⁃ Spätburgunder シュベートブルグンダー11.0%

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=2 
⁃ Großlage=3
⁃ Einzellage=23

[ベライヒ] 
⁃ Starkenburg シュタルケンブルク

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Bensheim ベンスハイム → Kalkgasseカルクガッセ
⁃ Heppenheim ヘッペンハイム→ Centgericht シェントゲリヒト

 [ベライヒ] 
⁃ Umstadt ウムシュタット


9 Frankenフランケン

■プロフィール
 バイエルン州に属する生産地域で、ブドウ畑面積は 6,163ha (2020年)と13生産地域の中で6番目に大きい。生産地域は大きく3つのベライヒに分かれる。マイン川下流かMainviereck マインフィアエック, Maindreieck マインドライエック, Steigerwald シュタイガーヴァルトである。このほかにMaindreieck マインドライエックの南側に、飛び地のようにしてタウバー渓谷 (Taubertal タウバータール) があり、フランケン、ヴェルテンベルク、そしてバーデンの3つの生産地域にまたがっている。
 フランケンは、他の産地が甘口を量産していた80年代以前も辛口にこだわってきた。ここでは残糖4g / ℓ以下のtrockenトロッケンを独自にFränkisch trocken フレンキッシュ・トロッケンと称する。ただし、この呼称をラベルに表記することは、ドイツワイン法では認めら れていない。
 また、ずんぐりとして平板な、ボックスボイテルと呼ばれる伝統的なボトルも良く知られている。2002年のEU委員会規則((EC) No 753/2002) で、ドイツではフランケンとワイン生産地域バーデンのベライヒ・タウバーフランケンとバーデン=バーデン周辺で産する高品質ワインのほか、イタリアとギリシャの一部のワインに用いることが認められた。 近年は伝統的スタイルのワインにはボックスボイテルを、ブルグンダー系品種による国際的なスタイルのワインには、ブルゴーニュ型のボトルを利用することが増えており、ボックスボイテルの割合は約30%前後である。
 2015年にフランケンワイン生産者連盟が、有名デザイナーに依頼した、新しいデザインのボックスボイテルを発表。やや角張った形をした高級感のあるボトルだが、瓶詰ラインなどに設備投資が必要となるため、普及に時間がかかっている。


■歴史
 フランケンのブドウ栽培の歴史は、ライン川沿いとは異なりやや遅く始まる。7世紀にアイルランドから宣教師キリアン が、 フランク族の支配していたこの地にキリスト教信仰をもたらして以降にブドウ栽培が始まった。 史料的には8世紀にカール大帝がフルダの修道院に、この地のブドウ畑を寄進した書状が最古である。
 三十年戦争 (1618~48) で荒廃したブドウ畑再興のため、1659年にカステル村にオーストリアから苗木を取り寄せて植えたのが、シルヴァーナーのドイツにおける起源である。 オーストリアから取り寄せた品種ということで、20世紀半ばまでÖsterreicherエスタライヒャー  (オーストリアもの) と呼ばれた。1970年代 以降ミュラー・トゥルガウが普及するまでは、ドイツのブドウ畑の約3分の1でこの品種が栽培されていた。
 ボックスボイテルについては、紀元前1400年頃のケルト族の陶製の容器が元祖だといわれている。中世には首が短く胴がずんぐりした形の水筒を、巡礼がよく持ち歩いていた。 語源については山羊 (ドイツ語でBockボック) の睾丸(こうがん)袋 (Beutel ボイテル) という説が一般的だが、ほかにもBooksbüdelという、低地ドイツ語の 「祈疇書(きとうしょ)を入れる袋」に由来するという説もある。 あるいはまた、Buggesbüdel ブッグスビューデル(Bug ブーグ =体の前、büdel ビューデル=袋で「体の前に装着した (携帯用の) 袋」)を語源とする説がある。


■気候風土
 大陸からの気候的影響を受けて夏は暑く乾燥し、冬の寒さが厳しく、遅霜のリスクが他の生産地域よりも高い。 年間 平均気温は9.8℃、年間日照時間は1,608時間、年間降水量は607mmである (Kitzingen キッツィンゲン, 1981~2010年の平均値)。 乾燥対策に灌漑(かんがい)設備を敷設したブドウ畑も多い。
 この生産地域の土壌は三畳紀 (約2億5000万年~2億 年前)に生成されたトリアス層が特徴となっており、西から東にかけて生成年代の古い地層から新しい地層へと移行 する。すなわちマインフィアエックは雑色砂岩、マインドライエックは貝殻石灰岩、シュタイガーヴァルトがコイパー統である。
 Mainviereck マインフィアックは1990年代から高品質なシュペートブルグンダーで知られるようになり、ビュルクシュタットや川沿いの急峻(きゅうしゅん)な段々畑のあるクリンゲンベルクのものが名高い。一部に19世紀まで一般的だった混植混醸 (Gemischter Satz ゲミシュター・ザッツ) の伝統を守るブドウ畑がある。
 Maindreieck マインドライエックはヴェルツブルクを中心とする地域である。 気候的に遅霜のリスクが高いため、川の水が熱を放射する川沿いの、寒気の滞らない急斜面が重要な栽培条件となっている。 
 Steigerwald シュタイガーヴァルトは上流域で標高が高く冷涼だが、コイパー統の泥灰質土壌はミネラル豊富で保水性が良く、暖まりにくいがいちど暖まると冷めにくく、ゆっくりと暖気を放出する。とりわけシルヴァーナーは牧草を思わせるスモーキーな香りが漂い、 ミネラル感のあるボディに穏やかな酸味を備えていることが多い。この辺りでは近年リースリングも存在感を示している。

■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022)
⁃ ワイン生産量 263,064hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 6,163ha

■主要ブドウ品種

白ワイン用品種 (全体の82.1%)
⁃ Silvaner シルヴァーナー 25.0% 
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ23.7%
⁃ Bacchus バッフス 12.2%
⁃ Riesling リースリング 5.5% 

赤ワイン用品種 (全体の17.9%)
⁃ Domina ドミナ5.0%
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 4.4%

 ベライヒ・マインドライエック南部のタウバー川沿いでは一時絶滅しかかっていた地場品種Tauberschwarz タウバーシュヴァルツが栽培され、近年注目されている。ミュラー・トゥルガウの栽培面 積が多いのは、耐寒性とともに安定した収穫が可能だからである。

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=3 
⁃ GroBlage=23
⁃ Einzellage=216

[ベライヒ] 
⁃ Mainviereck マインフィアエック

[市町村 (区域) 名 → 単一畑名]
⁃ Klingenberg クリンゲンベルク→ Schlossberg シュロスベルク
⁃ Bürgstadt ビュルクシュタット→ Centgrafenberg ツェントグラーフェンベルク
⁃ Homburg ホンブルク→ Kallmuth カルムート

[ベライヒ] 
⁃ Maindreieck マインドライエック

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Würzburg ヴュルツブルク→ Stein シュタイン
⁃ Randersacker ランダースアッカー → Pflübern プフリューベルン
⁃ Escherndorf エシェルンドルフ→ Lump ルンプ

[ベライヒ]
⁃ Steigerwald シュタイガーヴァルト

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Iphofen イプホーフェン→ Julius-Echter-Berg ユリウス=エヒター=ベルク
⁃ Castell カステル→ Schlossberg シュロスベルク

10 Württemberg ヴュルテンベルク

■プロフィール
 ヴュルテンベルクのブドウ畑は、ネッカー川の中流から上流と、その支流沿いに分布しているが、ボーデン湖畔にも飛び地がある。栽培面積は11,424ha (2020年)とドイツで4 番目に大きな生産地域であるが、生産されるワインの約80%が地元で消費されるため、規模に比べると産地の外での存在感が薄かった。また、栽培面積の7割近くを赤ワイン用品種が占めている。
 ダイムラーやポルシェ、ボッシュなど、ドイツを代表する企業の本社とその下請け関連企業を抱えるシュトゥットガルトや、古都ハイルブロンなどの観光資源にも恵まれ、ワインの需要が高く、1人当たりの年間ワイン消費量はドイツの全国平均20.7ℓ (2020年) の約2倍という説がある。居酒屋では0.25ℓ入りのガラスのマグカップで供されることが多かった。そうしたワインは軽く口当たりが良く、複雑さには欠けるが食 事には合わせやすい、快適な日常酒である。
 しかしながら、モーゼルにも比肩しうる川沿いの急斜面で、専らそうした気軽なワインしか造らないのは、ブドウ畑のポテンシャルを無駄にしているという批判もある。だがブドウ栽培者の大半は、週末を利用してブドウ畑の世話をし、収穫を醸造協同組合に納める副業農家である。栽培面積の約20%を占めるトロリンガーは、房が大きく食用にも向いているので人気がある。このような事情から、ヴュルテンベルクで生産されるワインの約80% を、50以上の醸造協同組合が生産しているが、産地を代表する高品質なワインの多くは、小規模な家族経営の醸造所が生産している。
 この生産地域のあるシュヴァーベン地方は倹約意識が高いことでも知られるが、一方で裕福な消費者を抱える地域でもあり、輸入ワインの需要も高い。1980年代後半からカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロといった国際品種をバリック樽で熟成した、力強い赤も少量生産されてきた。近年はトロリンガーとシュヴァルツリースリングの栽培面積は減少傾向にあり、シュペートブルグンダーのほかにレンベルガー(=ブラウフレンキッシュ)、ツヴァイゲルトといった隣国オーストリアの品種が増えつつある。

■歴史
 中世にはヴュルテンベルクは主要なワイン産地の1つとして、ネッカー川を経由して各地にワインを輸出していた。1552年にヴュルテンベルク公クリストフが、婚姻時に財産の一部を相続できるとした時から、ブドウ畑の細分化が始まった。やがてナポレオンの均等相続で、ブドウ畑の所有関係は一層複雑となり、後に醸造協同組合が盛んになる背景となった。三十年戦争でブドウ畑は激減したが、18世紀以降次第に回復。1806年に成立したヴュルテンベルク王国は、1866年の普墺戦争でオーストリア側について敗北、プロイセンの支配下に入った。 この当時のハプスブルク家への帰属意識が、現在この地域で、オーストリアの主要品種が盛んに栽培されていることに影響しているという説もある。

■気候風土
 北はオーデンヴァルト、西をシュヴァルツヴァルト、南東をシュヴェービッシェ・アルプとそれぞれ山地に囲まれており、シュヴァルツヴァルトに水源を発するネッカー川とその支流コッヒャー川、ヤクスト川、エンツ川、レムス川と、マイン川の支流タウバー川沿いの斜面と河岸段丘にブドウ畑が広がっている。年間平均気温は11.3℃、年間降水量は659mm、年間日照時間は1,720時間(Stuttgart シュトゥットガルト1980~ 2010年の平均値)。
 ネッカー川中流のハイルブロン周辺からシュトゥットガルト北部の川沿いは、貝殻石灰質土壌が多い。ネッカー川上流のシュトゥットガルト周辺やレムスタールの川沿いの斜面は、コイパー統の雑色泥灰岩 (ブンテ・メルゲル) やギプスコイパーが多く、東西に延びるフランケンの土壌分布を南北に置き換えたような配置になっている。

■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年 資料および Deutscher Wein Statistik2021/2022)
⁃ ワイン生産量 744.173hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 11,424ha

■主要ブドウ品種

白ワイン用品種 (全体の33.3%)
⁃ Riesling リースリング 18.5% 

赤ワイン用品種 (全体の66.7%)
⁃ Trollinger トロリンガー 17.7%
⁃ Lemberger レンベルガー 15.6%
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 11.6%
⁃ Schwarzriesling シュヴァルツリースリング 11.3%

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=6 
⁃ Großlage=17
⁃ Einzellage=210

[ベライヒ] 
⁃ Bayerischer Bodensee バイエリッシャー・ボーデンゼー

[ベライヒ] 
⁃ Remstal-Stuttgart レムスタール・シュトゥットガルト

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Bad Cannstatt バート・カンシュタット → Zuckerle ツッケルレ
⁃ Untertürkheim ウンタートゥルクハイム →
⁃ Gips ギブス, Herzogenberg ヘルツォーゲンベルク
⁃ Esslingen エスリンゲン → Neckarhalde ネッカーハルデ

[ベライヒ] 
⁃ Württembergisch Unterland ヴュルテンベルギッシュ・ウンターラント

[市町村(区域) 名→単一畑名] 
⁃ Schwaigern シュヴァイゲルン → Ruthe ルーテ
⁃ Neipperg ナイペルグ → Schlossberg シュロスベルク
⁃ Kleinbottwar クラインボットヴァー → Süßmund ズュースムント

[ベライヒ] 
⁃ Kocher-Jagst-Tauber コッパー・ヤクスト・タウバー

[ベライヒ] 
⁃ Oberer Neckar オーバラー・ネッカー

[ベライヒ] 
⁃ Württembergischer Bodensee ヴュルテンベルギッシャー・ボーデンゼー


11 Baden バーデン

■プロフィール
 ドイツで3番目に大きなワイン生産地域で、栽培面積は 15.812ha (2020年)。南北に約400kmにわたり細長く延びており、9つのベライヒ (地域)に分かれ、それぞれ地形・土 壌・気候・品種に特徴がある。すべてバーデン・ヴュルテン ベルク州に含まれているが、9つの異なる産地とみなした方 が特徴を把握しやすい。
 生産地域全体ではシュペートブルグンダーが栽培面積 の 33.3% (2020年) を占め、ブルグンダー系品種の産地というイメージが強いが、北部のベライヒはライン川を挟んでファルツの対岸にあり、シュペートブルグンダーとリースリングが盛んに栽培されている。アルザスの対岸にある南部のベライヒではブルグンダー系中心の品種構成になる。


■歴史
 バーデンのブドウ栽培の最も古い証拠は、ベライヒ・ボーデンゼーのライヒェナウ修道院のもので、8世紀のブドウの種が見つかっている。13世紀以降修道院によるブドウ栽培の記録が増え、1780年頃にカール・フリードリヒ・フォン・バー デン辺境伯がブドウ栽培を奨励した。当時彼がスイスから持ち込んだシャスラは、グートエーデルの名で今もベライヒ・ マルクグレーフラーラントで盛んに栽培されている。1880年代に各地で醸造協同組合が結成された。1960~70年代に大規模な耕地整理が行われ、カイザーシュトゥールやブライスガウでは山を削り、トラクターで作業できる広大なテラス状のブドウ畑に整地された。しかし湿気や冷気が停滞しやすく、大雨の際に擁壁が崩れるなどの被害があり、現在は元の斜面に戻した畑もある。
 フランス国境に接しているためアルザスの食文化の影響を受け、「料理を引き立てるワイン」を目指す生産者が1970年代末頃から登場。特にカイザーシュトゥール周辺の生産者は、1980年代からブルゴーニュを手本にした。ヴュルテンベルクと同様に、醸造協同組合に収穫を納める小規模な栽培農家が多く、厳しい価格競争にさらされて、質より量を強いられてきた。1980年代後半に、醸造協同組合から独立して高品質なワインを造る生産者が登場して以降、異業種から参入したり、海外で経験を積んだ次世代の醸造家達が跡を継いだり、新たに醸造所を設立したりするケースが時々注目を集めてきた。近年は醸造協同組合の吸収合併が進んでいる。


■気候風土
 ライン川対岸のヴォージュ山脈南部とジュラ山地の間に「ブルゴーニュの門」Burgundische Pforte ブルグンディッシュ・プフォルテといわれる低地があり、そこから暖かい風が流れ込み、とりわけベライヒ・ オルテナウから南部の地区に影響を与えている。大半の地区がライン川沿いに位置するが、ブドウ畑は川から離れた山裾(やますそ)か丘陵にあり、北部はオーデンヴァルト、南部はシュヴァルツヴァルトの山地が、それぞれの地区の栽培条件を形作っている。
 最も北にあるベライヒ・タウバーフランケンはフランケンの南のタウバー川沿いにある。貝殻石灰質土壌にミュラー・トゥルガウとシュヴァルツリースリングを主に栽培している。
 ライン川沿いの最北部はベライヒ・バーディッシェ・ベルクシュトラーセで、レス土の下に雑色砂岩、斑岩(はんがん)、片麻岩、花崗岩が分布する。
 その南がベライヒ・クライヒガウで、東にワイン生産地域ヴュルテンベルクが隣接し、ライン川の対岸は南ファルツである。レス土が厚く堆積した、なだらかな丘陵地帯に栽培されているのはリースリング、シュペートブルグンダー、ミュラー・トゥルガウが多いが、近年はヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、オクセロワの栽培面積が増えている。
 さらに南に下ると、シュヴァルツヴァルトの渓谷の斜面にブドウ畑が点在するベライヒ・オルテナウがある。昼はライン川からの暖かい風が、夜間は山地からの冷気が下りてくる。厚く堆積したレス土壌の下は雑色砂岩か貝殻石灰岩のことが多いが、局地的に花崗岩や斑岩が混じる地区があり、花崗岩のデュルバッハ、斑岩のノイヴァイアーはバーデ ンでは珍しくリースリングの名産地として知られる。
 その南隣のベライヒ・ブライスガウは全般にレス土が厚く堆積しているが、マルターディンゲン周辺には貝殻石灰質が、グロッター渓谷では片麻岩が混じる。シュヴァルツヴァルトの影響で降水量が隣接するベライヒよりも多い。シュペートブルグンダーが栽培面積の約40%を占める。
 ライン川とシュヴァルツヴァルトの間に広がる平野に、ぽつんとそびえる標高556mの死火山が、ベライヒ・カイザーシュトゥールである。 南から南西部にかけて火山岩(テフラ イト) が多く混じり、そのほかはレス土が厚く堆積している。
 カイザーシュトゥールの南にある、もう1つの山がベライヒ・トゥニベルクである。こちらはジュラ紀の石灰岩の基岩の上に、レス土が堆積している。 生産されたワインの大半は、近郊のフライブルクからの観光客に消費される。
 ライン川沿いのバーデン最南端にあるのがベライヒ・マルクグレーフラーラントだ。標高が高くやや冷涼で、シュヴァルツヴァルトの影響で年間降水量は約1,000mmとやや多いが、ブルゴーニュとシュヴァルツヴァルトからの風が常に吹いてブドウを乾かす。特産品種のグートエーデルはスイスではシャスラあるいはファンダンと呼ばれ、ドイツではその大半が、マルクグレーフラーラントで栽培されている。
 最後にボーデン湖畔の飛び地であるベライヒ・ボーデンゼーだ。標高が高く冷涼で雨が多いが、砕石堆積物の多い急斜面の土壌のお陰で水はけが良い。湖面から陽光が反射するとともに、豊富な水量が気温の急速な低下を防いでいる。 品種はシュペートブルグンダーのほかミュラー・トゥルガウが多く、独特の繊細なミネラル感がある。

■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022) 
⁃ ワイン生産量 1,092,880hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 15,812ha

■主要ブドウ品種

白ワイン用品種 (全体の60.4%)
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ 14.6%
⁃ Grauburgunder グラウブルグンダー 14.3%
⁃ Weißburgunder ヴァイスブルグンダ 10.2%、 Gutedelグートエーデル 6.8%
⁃ Riesling リースリング 6.1% 

赤ワイン用品種 (全体の39.6%)
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 33.3%

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=9 
⁃ GroBlage=16
⁃ Einzellage=306

[ベライヒ] 
⁃ Tauberfranken タウバーフランケン 

[ベライヒ] 
⁃ Badische Bergstraße バーディッシェ・ベルクシュトラーセ

[ベライヒ] 
⁃ Kraichgau クライヒガウ

[ベライヒ] 
⁃ Ortenau オルテナウ

[市町村 (区域) 名→単一畑名] 
⁃ Neuweier ノイヴァイアー → Mauerberg マウアーベルク
⁃ Durbach デュルバッハ→ Plauelrain ブラウエルライン

[ベライヒ] 
⁃ Breisgau ブライスガウ

[市町村 (区域) 名→単一畑名] 
⁃ Malterdingen マルターディンゲン → Bienenberg ビーネンベルク

[ベライヒ] 
Kaiserstuhl カイザーシュトゥール 

[市町村 (区域) 名→単一畑名] 
⁃ Ihringen イーリンゲン→ Winklerberg ヴィンクラーベルク
⁃ Achkarren アッパーレン→ Schlossbergシュロスベルク
⁃ Oberrotweil オーバーロートヴァイル → Eichberg アイヒベルク、Kirchberg キルヒベルク

[ベライヒ]
⁃ Tuniberg トゥニベルク

[ベライヒ] 
⁃ Markgräflerland マルクグレーフラーランド 

[ベライヒ] 
⁃ Bodensee ボーデンゼー



12 Saale-Unstrut ザーレ・ウンストルート

■プロフィール
 北緯51度付近にあるドイツ最北のワイン生産地域で、1990年の東西ドイツの統一で新たに加わった生産地域の 1つ。
 旧東独時代はブドウ畑は国営農場のもとで機械化され、大型のトラクターが通れるように畝の間隔は広くとられたため、ヘクタール当たりのブドウ樹の本数が少なく、従って収量も低かった。自家消費のためのブドウ栽培は少量許されていて、週末に趣味のようにしてワイン造りをしていた生産者が、東西ドイツの統一後にブドウ畑を買い足して醸造所を始めたり、国営醸造所で働いていた醸造家が独立したり、旧西側から移住してきたりと多様な生産者達がいる。ブドウ品種も、かつて多数の交配品種が試験栽培された名残で多様だが、現在はブルグンダー系の白に興味深いワインが多い。

■歴史
  ブドウ栽培を示す最古の史料は、998年の神聖ローマ皇帝オットー3世による、メムレーベン修道院への寄進状である。中世を通じて修道院の手でワイン造りが行われ、16世紀 には約1万haまで広がり、最盛期を迎えた。しかし19世紀に関税同盟による、南の産地からの廉価なワインの流入や、ウドンコ病ベト病、そしてフィロキセラによる被害で、1919年には約100haまで衰退した。旧東独時代に農産物生産共同体のもとで増産が進められ、共産圏へ輸出された。1990年の東西ドイツ統一以降、個人経営の醸造所が増えている。
 近年VDPと同様の格付けヒエラルキーを採用し、 産地の可能性を追求している醸造家団体Breitengrad 51 ブライテングラート51が注目を集めている。

■気候風土
 年間平均気温8.9℃と寒く、大陸からの気候的影響と北西にあるハーツ山地により雲が遮られるため、年間降水量は652mmとやや少ない。年間日照時間は1,637時間クライピッチ (Kreipitsch、1981~2010年の平均値)。温暖な気候条件で冷気のたまりにくい川沿いの、南向き急斜面にあるテラス状の畑でブドウ栽培が行われている。
 土壌は貝殻石灰質、雑色砂岩にレス土が堆積しており、気候的にもフランケンにやや似ている。ただし冬の寒さはより厳しく、氷点下30℃まで下がったこともある。

■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年 資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022)
⁃ ワイン生産量 31.943hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 819ha

■主要ブドウ品種

白ワイン用品種 (全体の75.1%)
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ14.8%、 
⁃ Weißburgunder ヴァイスブルグンダー 13.8%
⁃ Riesling リースリング 8.9%ー
⁃ Bacchus バッフス 6.5%
⁃ Silvaner シルヴァーナー 5.9%
⁃ Grauburgunder グラウブルグンダー 5.7% 

赤ワイン用品種 (全体の24.9%)
⁃ Dornfelder ドルンフェルダー 6.8%
⁃ Portugieser ポルトギーザー 4.6%
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 3.5%
⁃ Zweigelt ツヴァイゲルト 3.3% 

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=4 
⁃ Großlage=4
⁃ Einzellage=45

[ベライヒ] 
⁃ Thüringen チューリンゲン

[ベライヒ] 
⁃ Schloss Neuenburg シュロス・ノイエンブルク

[市町村 (区域) 名→単一畑名] 
⁃ Karsdorf カースドルフ → Hohe Gräte ホーエ・グレーテ
⁃ Freyburg フライブルク → Edelacker エーデルアッカー

[ベライヒ] 
⁃ Mansfelder Seen マンスフェルダー・ゼーン

[ベライヒ] 
⁃ Werder (Havel) * ヴェアダー ハーフェル

*;連邦食糧・農業省 (BMEL), Bekanntmachung der geografischen Bezeichnung für deutschen Wein (2015), S.36 参照


13 Sachsenザクセン

■プロフィール
 ドイツで最も東寄りの、ポーランドとの国境近くにあるワイン生産地域。栽培面積は496ha (2020年)とドイツで3番目 に小さい。大半のブドウ畑はエルベ川の流れる渓谷に沿って、南東から北西に向かって約45kmの範囲に散在しているが、ドレスデンから北西に約22km離れたベライヒ・エルスタータールにも、27ha余りのブドウ畑がある。
 ザクセン州の州都ドレスデンと、磁器で有名なマイセンを含む。伝統的建築物と緑豊かな田園地帯の広がる風光明媚な土地で、2004年にユネスコの世界文化遺産にも指定されたが、ドレスデンと対岸を結ぶ橋を建設したため、2009年に指定を取り消された。
 ワインの生産量はドイツ全体の約0.3%に過ぎない。「ザクセンコイレ」と呼ばれるボーリングのピンのような形をしたボトルと交配品種ゴルトリースリングが特産物である。 


■歴史
 11世紀初めに著された年代記によれば、 929年頃にマイセンの付近のエルベ渓谷に、ブドウ畑があったと伝えられる。17世紀前半までブドウ栽培が栄えたが、その後寒冷期が訪れ不作、霜、戦争で栽培面積は減少した。1799年に ヨーロッパで最初のブドウ栽培醸造学校が設立されて復興したものの、19世紀末のフィロキセラの被害を経た後、第二次世界大戦後には60haのみが残っていた。旧東独時代は国営農場と、自家消費用に小規模なブドウ栽培が許された副業農家がワイン造りを行っていたが、とりわけ急斜面のブドウ栽培の維持は、副業農家の貢献によるところが大きかった。
 現在は約2,500軒の栽培者の9割以上が、 小規模な副業としてブドウを栽培する農家で、本業として栽培・醸造を営んでいるのは37軒にすぎない。

■気候風土
 エルベ渓谷の影響で北緯51度付近にしては温暖な気候。年間平均気温は9.8℃、年間降水量は635mm、年間日照時間は1,634時間 (Dresden-Strehlen ドレスデン・シュトレーレン, 1981~2010 年の平均値)。 西側の生産地域に比べて春の訪れは4月末から5月初旬と遅いが、大陸からの気候的影響で9月から10月にかけて乾燥して暖かい日が多い。冬は非常に厳しく霜害の恐れがある。
 エルベ渓谷の基岩は粘板岩を主体とし、白亜紀の堆積岩が混じっている。ドレスデンから下流の斜面に風化した花崗岩、花崗閃緑岩(せんりょくがん) (Granodiorite グラノディオリート) が分布し、その上にレス土や、河川の運んで来た砂が堆積している。マイセンから下流は花崗閃緑岩の上に雑色砂岩とレス土がみられる。


■ワイン生産量
(出典: 連邦統計局2020年資料および Deutscher Wein Statistik 2021/2022)
⁃ ワイン生産量 21,598hℓ
⁃ ブドウ栽培面積 496ha

■主要ブドウ品種

白ワイン用品種 (全体の82.3%)
⁃ Riesling リースリング 13.5%
⁃ Müller-Thurgau ミュラー・トゥルガウ 13.3%
⁃ Weißburgunder ヴァイスブルグンダー 12.5%
⁃ Grauburgunder グラウブルグンダー 9.7%

赤ワイン用品種 (全体の17.7%) 
⁃ Spätburgunder シュペートブルグンダー 7.9% 

特産のゴルトリースリングはリースリングとFrüher Malingre フリューアー・マリングレの交配品種で、1913年から栽培されている。栽 培面積は28ha (2020年)。

■主なブドウ畑
⁃ Bereich=2
⁃ GroBlage=4
⁃ Einzellage=17

[ベライヒ] 
⁃ Meissen マイセン

[市町村 (区域) 名→単一畑名]
⁃ Proschwitz プロシュヴィッツ → Schloss Proschwitz シュロス・プロシュヴィッツ

[ベライヒ] 
⁃ Elstertal エルスタータール 


■ドイツの食文化とワイン
 国土の大半が内陸にあるドイツの食文化の基本は保存食である。肉類に塩や香辛料を効かせたソーセージやハムのヴァリエーションは極めて豊富で、地方ごとに伝統のレシピと食べ方があり、ソーセージだけでもその種類は1500種類以上にのぼる。料理の付け合わせも酢漬けのキュウリや乳酸発酵したキャベツ (Sauerkraut ザウアークラウト) といった酸味の効いたものが多く、酸味が持ち味のリースリングに共通する嗜好をみて取ることができる。ワイン産地の居酒屋にはたいていWinzervesper ヴィンツァーヴェスパーと呼ばれる地元産のハムとチーズの盛り合わせがあるが、この名はブドウ農家(Winzer ヴィンツァー )の夕食(Vesper ヴェスパー)の意味で、実際ドイツでは1990年代まで、夕食はドイツパンにハムやチーズを載せたもので簡単に済ませるのが一般的で、温かい料理は昼に食べるのが普通だった。従ってワインの消費スタイルは料理に合わせるよりも、夕食後の語らいや来客時におしゃべりしながら飲まれることが多かった。しかし近年は労働環境の変化に伴い、夕食にも温かいものを食べるようになり、ワインもまた料理に合わせて楽しむ機会が増えている。

■バイエルン
 今日16に分かれた連邦州は、1871年に統一される以前の領邦国家の枠組みが反映されており、文化習俗が各地域に伝統として残っている。その1つが郷土料理であるが、例えばかつてバイエルン王国であったバイエルン州では、ボイルした白いソーセージ (Weißwurst ヴァイスヴルスト) を午前中に食べ 
 る習慣があるほか、牛レバーを挽(ひ)いたものをパン粉、卵と混ぜてこぶしほどの大きさにした団子(Leberknödel レーバークネーデル)を浮かべたスープもよく知られている。硬くなったパンを刻んで牛乳、バター、卵、炒めたタマネギと混ぜて丸めて塩ゆでした団子(Semmelknödel ゼンメルクネーデル )は、牛肩肉の赤ワイン煮込み (Böfflamot ベフラモット) や、皮をパリパリにローストした骨付きの豚すね肉 (Schweinehaxe シュヴァイネハクセ) といった様々な肉料理に添えて供出されることが多い。 ドイツ料理の1つとして有名なEisbein アイスバインは同じ豚すね肉だが、 塩漬けしたものをゆでる点で異なり、北ドイツからポーランドにかけてが発祥地とされる。南ドイツの食文化は隣国オーストリアとの共通性がみられる。また、料理はやはりワインよりもビールに合わせることが多いが、バイエルンのビールは一般に北ドイツのものに比べるとホップの効きが弱くマイルドである。

■フランケン
 同じバイエルン州でも北部のフランケン地方では、細くて白っぽい色をしたソーセージ (Nürnberger Bratwurst ニュルンベルガー・ブラートヴルスト) が 有名である。豚挽き肉を羊腸に詰め、塩とマジョラムなどを香辛料に用いたソーセージで、通常は炭火で焼いて供する が、タマネギとワインビネガーと香味野菜のスープで煮込むこともあり、これBlaue Zipfel ブラウエ・ツィブフェルと称する。 フランケン産のボディがしっかりとして酸味の穏やかな辛口のミュラー・トゥルガウやシルヴァーナーに良く合う。また、同じくフランケン地方のマイン川上流は燻(いぶ)した麦芽で醸造するビール (Rauchbier ラオホビア) の特産地でもある。

■シュヴァーベン地方 
 郷土料理として人気のあるものの多くはドイツ全国に普及しており、その由来がどこか意識せずに食べられていることもしばしばあるが、 ラビオリに似たMaultasche マウルタッシェと、柔らかい卵入りの太麺に、セミハード系チーズをおろして溶かしからめてフライドオニオンを散らしたKäsespätzle ケーゼシュペッツレは、ワイン生産地域ヴュルテンベルクを含むシュヴァーベン地方の郷土料理としてよく知られている。マウルタッシェは8~12cm四方であることが多く、挽肉、タマネギ、卵、ホウレン草などに、硬くなったパンを砕いて混ぜた具をパスタ生地に詰めて塩水で ゆでた後、スープに入れたりフライパンで表面を焼いたりして供される。どちらもありあわせの食材を巧みに利用した料理で、シュヴァーベン地方の倹約精神の現れとされる。また、ヴュルテンベルク産のワインに軽やかで薄いものが多いのは、この倹約精神のせいではないかという説もある。

■ヘッセン
 金融都市フランクフルトやワイン生産地域ラインガウを含むヘッセン地方では、とりわけフランクフルトソーセージ(Frankfurter Würstchen フランクフルター・ヴェルスチェン) が有名だが、ニュルンベルガーと違ってこちらは燻製してあり、 約10分間沸騰させずにゆでて供される。薬味に洋がらしとジャガイモのサラダが添えられることが多い。ワインヴィネガーとタマネギ、キャラウェイ・シードでマリネした、乳酸で凝固させたチーズ (Handkäse mit Musik ハントケーゼ・ミット・ムジーク) もワイン居酒屋でよく見かける。 こってりとしたサワークリームに微塵(みじん)切りにした7種類の香草を混ぜた緑色のソース (Frankfurter Grüne Soße フランクフルター・グリューネ・ゾーセ) は、ゆでたジャガイモや白身魚のフライなどにかけると美味しい。 ラインガウの辛口リースリングに合う。また、フランクフルトはアップルワイン(Apfelwein アプフェルヴァイン) で知られる。 アルコール濃度が5~7%と低く、あっさりとして素朴な辛口である。

■ラインラント地方
 ワイン生産地域ラインヘッセン、ファルツ、ナーエ、ミッテルライン、モーゼル、アールを含むラインラント・ファルツ州からノルトライン・ヴェストファーレン州西部までを含むラインラント地方の郷土料理に、酢漬け肉のロースト (Sauerbraten ザウアーブラーテン) がある。北部では本来馬肉を使っていたが、現在は牛の外もも肉かランプ肉の塊を使うことが多い。3 ~10日ワインビネガーと香辛料・香味野菜にマリネしてから焼き色をつけ、柔らかくなるまで長時間蒸し煮したもので、ソースに干しブドウを用いるのがこの地方の特徴である。またファルツでは豚の胃袋に、塩ゆでした豚肉の細切れとジャガイモ (秋には栗が使われることも)とソーセージ用ペーストとスパイスなどを詰めて熱湯で火を通し、厚切りしてフライパンで炙って(あぶって)供されるSaumagen ザウマーゲンが名物で、これはファルツ出身のヘルムート・コール元首相の大好物だったことで知られる。 元々は屠殺(とさつ)した豚の残りを使った貧しい農民の料理であった。 モーゼル地方のGräwes グレーヴェスという、マッシュドポテトにザウアークラウトとベーコンを和えた料理も、農民の生活の知恵から生まれた料理である。それぞれ地元産の辛口から中辛口のリースリングがあう。

■食文化と季節感
 ドイツの伝統的な食卓は保存食中心で単調になりがちだが、だからこそ、季節ごとに彩りを添える食材と料理が愛されている。 復活祭前の2月から4月にかけての40日間の断食の時期に、 よく食卓にのぼるのが酢漬けのニシン (Hering ヘリング) である。これには季節柄カーニバルで有名な町ケルンの上面発酵ビール (Kölsch ケルシュ) が好んで飲まれるが、 リースリングのカビネット・トロッケンも合う。 4月上旬から聖ヨハネの祭日 (6月24日)まで続くのがアスパラガス (Spargel シュパーゲル) のシーズンで、ゆでたホワイトアスパラガスに、たっぷりのバターと卵黄を使ったオランデーズソースをかけるのが定番である。ラインヘッセンやフランケンの柔らかさのある辛口シルヴァーナーや、ファルツやバーデンのスッキリとしたヴァイスブルグ ンダーが合う。 続いてアンズ茸 (たけ)(Pfifferlinge プフィッファリング) のシーズンが 6月中旬から秋のジビエの季節まで続くが、これは肉料理の付け合わせやパスタのソースによく用いられる。 ジビエにはノロジカ (Reh レー)、シカ (Hirsch ヒルシュ)、イノシシ (Wildschwein ヴィルトシュヴァイン) ウズラ (Wachtel ヴァハテル) などがあるが、 ワイン生産地域ではブドウを食べるイノシシなどの狩猟を趣味にしている生産者も少なくない。 ジビエにはバリックで熟成したシュペートブルグンダーや上等な辛口リースリングが合う。また、9月上旬から10月に出回る濁り新酒 (Federweißer フェーダーヴァイサー) には、バターで炒めたタマネギとベーコンを、溶き卵と生クリームに混ぜ、生地に詰めて焼き上げたキッシュ (Zwiebelkuchen ツヴィーベルクーヘン) を合わせるの が定番となっている。 また秋から冬にかけての末尾にrのつく月にはムール貝のワイン蒸しが、 特にベルギーとの国境付近でよく食べられる。これにはアロマティックな辛口のリヴァー ナーやグラウブルグンダーがあう。

■国際化と健康志向
 このように保存食を土台としつつ地方色と季節感を織り交ぜたドイツの食文化は、 第二次世界大戦以降国際化してきた。1950年代から70年代にかけて戦後の復興の労働力として入ってきた数百万人のイタリア、スペイン、ギリシャ、トルコなどからの移民が定着し、ピッツェリアやケバブ屋、ギリシャ料理店を各地に開いた。中華料理店も比較的小さな町にもあるほど普及しているが、近年は回転寿司人気で和食レストランも増えている。1990年代以降は健康意識の高まりに伴って、脂肪や塩分を控えた軽めの料理が好まれるようになり、菜食主義も普及している。ワインもまた軽く繊細なスタイルの美点が再評価されつつある。


























































参考資料 日本ソムリエ協会教本、隔月刊誌Sommelier  

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