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【Wine ワイン】2017 Château Souverain Merlot



【Wine ワイン】2017 Château Souverain Merlot

Mike Gargichも在籍した老舗ワイナリーのしっとりMerlot

■Producer (生産者)
E.&J.Gallo

■Region / Country(地域 / 生産国)
Sonoma / Clifornia / U.S.

■Variety (品種)
100% Merlot

■Pairing (ペアリング) 
Rib Steak

■生産地概要

California カリフォルニア州

■プロフィール
 カリフォルニア州には、2021年現在、約5,900のワイナリーがあり、アメリカの総生産量の約80%を生産している。
 太平洋岸のノース・コーストからセントラル・コーストにかけては、ナパ、ソノマを筆頭に高品質ワインの産地が集中しているが、年間生産量5,000ケース以下の小規模な生産者が多い。一方、セントラル・ヴァレーで栽培されるブドウからは、世界的巨大ワインブランドの多くが造られている。
 1970年代以降長らく、温暖な地中海性気候から生まれる重厚なカベルネ・ソーヴィニヨンがカリフォルニアワインの筆頭とされてきたが、最近はよりソフトでエレガントなスタイル持ったワインや、冷涼な産地で生まれるピノ・ノワールやシャルドネの評価も高まり、多様性が認められてきている。
 2021年7月現在、カリフォルニア州には142のA.V.A.が存在する。


■歴史
20世紀以前
 スペインは、フロリダ半島を含むメキシコ以南を植民地化していたが、18世紀後半から、フニペロ・セラ神父に率いられたフランシスコ修道会がメキシコから北上し、先住民族の改宗をすすめるために太平洋岸地域に21の伝道所を築いた。この時にもたらされたブドウはミッション種(Mission=修道会)と呼ばれ、伝道所からカリフォルニア各地に伝播した。ミッション種はDNA解析の結果、アルゼンチンのクリオージャ・チカ、チリのパイスと同一品種で、スペインのListan Prieto リスタン・プリエートに遡るとされる。
 19世紀初頭、アラスカやカナダ周辺に毛皮貿易で進出していたロシアは、カリフォルニアに南下し、ボデガ湾の北にフォート・ロス(ロシアの砦の意)と呼ばれる拠点を築いた。ここがソノマ・カウンティで最初のブドウが植えられた場所である。ジェンナーから内陸へ続く川はロシアン・リヴァーと命名され、この周辺にロシア人が入植した。
 1821年にメキシコはスペインから独立し、宣教師達はスペインへ引き揚げることを余儀なくされた。その後、 西部への勢力拡大をすすめるアメリカとメキシコの間で起こった戦争にアメリカが勝利し、カリフォルニア州が誕生した。
 19世紀後半、西部はゴールド・ラッシュによる人口の急増で、ワインの需要も拡大する。ヨーロッパから多くの優良なブドウの苗が持ち込まれ、東部よりもブドウ栽培に適した気候の恩恵を受けて、ワイン産業は発展を遂げつつあったが、19世紀末にフィロキセラが発生し、またたくまに多くのブドウ畑を壊滅させた。その後、ラブルスカ系を台木にした接木苗が開発されて、ブドウ畑の再建が進んだ。

20世紀
 1920年〜1933年まで禁酒法が施行された間、各家庭での自家消費用ワイン製造用のブドウや濃縮果汁がカリフォルニアでも大量に生産され、全国へ出荷された。禁酒法撤廃後、ワイン産業は復興し、第2次世界大戦でヨーロッパのワインが輸入できなくなると、カリフォルニア・ワインへの需要が増大した。
 禁酒法時代を生き抜いた一握りの生産者達は、ワイン・インスティテュートやカリフォルニア大学デイヴィス校と協働して、再び高品質ワイン造りを目指した。Beaulieu Vineyard ボーリュー・ヴィンヤード(BV)のジョルジュ・ドゥ・ラトゥールは、フランスでのワイン醸造経験が豊富なロシア人醸造家、Andvé Tchelrstcheff アンドレ・チェリチェフを雇い入れ、高品質ワインを生産した。チェリチェフは、低温発酵、マロラクティック発酵、 オークの小樽を使った熟成などの技術を用いて、 カリフォルニアの高品質カベルネ・ソーヴィニヨンのスタイルを確立し、 彼が造ったボーリューのジョルジュ・ラトゥール・プライベート・リザーブはホワイトハウスの多くの晩餐会(ばんさんかい)で用いられた。また、彼は他の多くの生産者の指導にも当たり、 Robert Mondavi ロバート・モンダヴィ、Louis Martini ルイ・マーティーニ、Joseph Heitz ジョセフ・ハイツMike Grgich マイク・ガーギッチといった、 近代カリフォルニアワインを牽引(けんいん)するワインメーカーの多くを輩出した。
 近代カリフォルニアワインの父と呼ばれるロバート・モンダヴィは、カリフォルニアで世界的高品質ワインを造るという夢を実現するため、1966年にオークヴィルにワイナリーを設立し、高品質ワイン造りへの情熱と優れたマーケティング手法(ワイナリーツアーを実施したり、フランスから有名シェフを招聴してプロモーションを行ったりした)により、ワインに親しみのなかったアメリカの消費者の教育・啓蒙に努めた。
 1976年、パリで開催された比較ブラインド・テイスティングで、ナパのスタッグスリープ・ワインセラーズのカベルネ・ソーヴィニヨンと、同じくナパのシャトー・モンテレーナのシャルドネが、フランスの一流ワイナリーを抑えてそれぞれ1位となり、カリフォルニア・ワインを国際的に認知させた。
 1978年にロバート・モンダヴィとボルドーのシャトー・ムートン・ロッチルドのフィリップ・ド・ロスチャイルド男爵による、初の新旧世界のジョイント・ヴェンチャー・ワインとして、ナパ・ヴァレーにOpus One Winery オーパス・ワン・ワイナリーが誕生する。1980年代前半には、シャトー・ぺトリュス等を所有するクリスチャン・ムエックスも、ナパ・ヴァレーにDominus Estate ドミナス・エステートを築いている。
 1983年にナパで発見された新種のフィロキセラ(バイオタイプB)に対しては、ヴィティス・ヴィニフェラとルぺストリスの交配台木であるAXR1に抵抗力がないことが分かり、多くの畑で植え替えを余儀なくされた。しかし、これにより、それぞれの畑のテロワールに、より適したブドウ品種、仕立て方、植密度等の再選択を行うことができたため、ワインの品質向上につながる側面もあった。


21世紀以降
 2000年代に入ると、ロバート・パーカー等の影響でビッグな方向に振れがちだったワインのスタイルは、今度は反対方向に振り戻されていく。エレガント、ナチュラル、バランスが良い、料理に寄り添うといった、ヨーロッパ的なスタイルのワインを志向する生産者が増えていった。
 カリフォルニアで、エレガントで優れたバランスをもつピノ・ノワールとシャルドネを造ろうとするワイン生産者が産地にとらわれずに集まってつくったグループがIn Pursuit of Balance イン・パーシュート・オブ・ バランス(IPOB)でSandhit サンディとDomaine de la Côte ドメーヌ・ド・ラ・コートでワインを造り、マイケル・ミーニャ・グループのワイン・ディレクターを務めていた Rajat Parr ラジャ・パーとソノマコースト Hirsch Vineyards ハーシュ・ヴィンヤーズのJasmine Hirsch ジャスミン・ハーシュの主導のもと、 国内外で試飲会を開催するなど活発な活動により、カリフォルニアの新時代を象徴するワインの存在をアピールした(IPOBは目的を達成したとして既に解散した)。
 サンフランシスコ・クロニクル紙のワイン・エディターを長年務めたJon Bonné ジョン・ボネが2013年に著した「The New California Wine」は、そのようなカリフォルニアワインの新しい潮流をとらえて注目を浴びた。その中でボネは、「カリフォルニア・ワインが、パーカー前、パーカー後に続く、第3世代に入った」と述べている。


[サステイナビリティの時代]
 カリフォルニアの人々の健康や環境への意識の高さから、アメリカで初のオーガニック認証機関であるCCOF(California Certified Organic Farmers)が1973年に設立された。強い民意とCCOFの積極的な働きかけにより、カリフォルニア州政府は1990年に全米に先駆けてオーガニック(生産加工流通)に関するガイドラインCalifornia Organic Food Act カリフォルニア・オーガニック・フード・アクトを制定し、オーガニック農産物の生産・加工・販売に関する認証制度の礎を築いてきた。このことは、アメリカ農務省 (USDA)による2002年のナショナル・オーガニック・プログラム (NOP) 制定にも影響を与えた。
 CCOFはUSDA Organicの認証機関として、 2020年に米国46州およびカナダ、メキシコで4,045のオーガニック認証を行うまでに成長している。現在アメリカ国内で販売されているオーガニック製品の売り上げの約40%をカリフォルニア州が占めている。
 2000年代に入ってからは、オーガニックから更に進んで、自然環境や地域社会、経済へのインパクトを含んだ、循環可能な農業生産方式としての「サステイナブル」が主流となりつつある。オーガニックでは、主に畑において農薬や化学肥料等の化学物質を極力使用しないことが主旨だが、サステイナブルでは主に下記のような要素が含まれる。

自然環境
*統合的病害虫防除:農薬を使用せずに、害虫を排除するため、有益な昆虫や害虫の天敵となる昆虫・鳥の棲息を促すことや、害虫をフェロモンによって混乱させ、繁殖ができないようにする方法(Sexual Confusion セクシャル・コンフュージョン)の使用。畑にカバー・クロップ(クローバーのような有益な草)や虫の嫌うハーブ等を植え、雑草が生えないようにする等。

*水資源の管理:畑とワイナリーで使用する水の削減と使用後の水のリサイクル

*省エネルギー:ソーラーパネル設置による太陽エネルギーの利用、風力エネルギー等の代替エネルギーの利用。ワイナリーの構造に耐熱壁材を取り入れる等。

*二酸化炭素排出量の削減。

*生態系の維持:ブドウ畑の周囲に野生地を残し、元々生息している動植物の生態系を維持する、又は復活させる。


社会的健全性
*従業員の健全な生活の維持:適切な労働時間、医療補助、トレーニング等の提供。

*社会貢献:地城社会の一員として、地元の経済活動や教育、福祉に寄与する。

経済的健全性
*ビジネスとしての継続性を重んじ、経営の健全性を維持する。

*従業員への適切な賃金の支払いや、取引先に対する支払いを含めた社会的責任を全うできるよう、健全な経営を行う。



[カリフォルニアにおけるサステイナブルの歴史]
 カリフォルニアワインに関しては、2003年にWine Instiute ワイン・インスティテュート及びCalifornia Assosiation of Winegrape Growers
カリフォルニア・アソシエーション・オブ・ワイングレープ・グローワーズの協働により、Sustainable Winegrowing Program サステイナブル・ワイン・グローイング・プログラム(SWP)が開発された。このプログラムは、「健全な環境」、「公正な社会貢献」、「経済的健全性」の3つの柱によって、健全なブドウ栽培とワイン造りが長期的に継続可能となり、ワインの品質が高められていくよう、ブドウ栽培者及びワイナリーにサステイナブルなブドウ栽培とワイン造りに関する教育を与えることを目的とした。また、カリフォルニア各地での、より地元に即したサステイナブル・プログラムと認証制度の開発を促すものでもあった。現在カリフォルニアで運用されている主なサステイナブル認証制度と取り組みは下記の通り:

*CCSW(Certified California Sustainable Winegrowing サーティファイド・カリフォルニア・サスティナブル・ワイングロウイング)
 SWPから発展して2010年にできた認証制度。2020年現在、カリフォルニアの全ブドウ畑の約32%に相当する約82,600haのブドウ畑と171のワイナリーがこの制度の下で認証されている。

*Fish Friendly Farming フィッシュ・フレンドリー・ファーミング
 1999年にローレル・マーカスによって起案され、現在はCalifornia Land Stewardship Instiuteカリフォルニア・ランド・スチュワードシップ・インスティテュートが運営する河川の水質保全を主眼とした認証制度。現在までに約60,700haが認証を受けている。

*Lodi Rules ローダイ・ルール
 インランド・ヴァレーズのローダイは、樹齢100年を超えるブドウ畑の存在でも知られる、長い歴史を持つブドウ栽培地区で、多くの大規模ワイナリーにブドウを供給している場所でもある。1990年代初期から、ブドウ畑の長期的健全性の維持と、そこで働く人々の健康を守るため、Dr. Cliff Ormart クリフ・オーマート博士の主導により、持続可能な統合的ぶどう栽培への取り組みが始まり、2005年に正式なサステイナブル認証制度としてローダイ・ルールが制定された。カリフォルニアの中でも最も早い時期に制定されたサステイナブル認証制度で、ローダイからカリフォルニア州全体へ広がり、他州や海外のイスラエルでも採用されている。2020年現在約22,258haのブドウ畑が認証されている。

* SIP(Sustainable in Progress サスティナブル・イン・プログレス)
 2008年に、先ずモントレー・カウンティからサンタ・バーバラ・カウンティまでのブドウ畑を対象に制定されたサスティナブル認証制度で、現在カリフォルニア州とミシガン州の約17,000haの畑が認証されている。

*Sonoma County Sustainability Program ソノマ・カウンティ・サスティナビリティ・プログラム
 2014年にソノマ・カウンティ・ワイン・グローワーズは、ソノマ・カウンティのブドウ畑は数年以内に100%サステイナブル認証を取得すると発表した。認証には上記の4つの認証制度のいずれかを使用し、ソノマ・カウンティ・ワイン・グローワーズが初年度の経費の一部を負担する。2020年現在、ブドウ畑の99%が認証を受けている。
 ワインのボトルにSonoma County Sustainableのロゴを表示する場合は、使用されているワインの85%以上が認証を受けたものでなければならない。

*ナパ・グリーン(Napa Green Land / Napa Green Winery)
 2000年代初期から制定されたナパ・ヴァレーの認証制度で、ブドウ畑を含む敷地全体に関する認証制度のNapa Green Landとワイナリーを対象とする認証制度のNapa Green Wineryに分けられている。元々ナパ川流域の水質保全を目的とした制度であるため、ブドウ畑の敷地が隣接する小川の水質や、岸辺の浸食防止も対象とするなどの特徴がある。現在ナパ・ヴァレー全体の80%に当たる14,974haと、89以上のワイナリーが認証されている。


■文化
 スペインからのキリスト教修道会による開拓とそれに続くメキシコ人による植民の歴史は、スペイン語の地名やミッション・スタイルと呼ばれる建築様式に今も色濃く残っている。カリフォルニア州は他州に比べると、メキシコ及び南米諸国や、中国、日本を含むアジア諸国からの移民が多い。特にカリフォルニア南部ではヒスパニック系住民の占める割合が高いことが、カリフォルニア文化の形成に大きな影響を与えている。


■経済
 カリフォルニア州は、アメリカで最大の人口を持つ州である。2020年のカリフォルニア州内総生産額(GDP)は約3兆1千6百4十億ドルで、アメリカ合衆国のGDPの約14.7%に相当する。
 シリコン・ヴァレーを中心とするIT産業や、ハリウッド映画に象徴されるエンターテイメント産業を含むサービス産業が主要産業で、カリフォルニアの進取の精神を現している。
 広大なセントラルヴァレーを擁する農業や畜産業もカリフォルニアの主要産業である。2019年のカリフォルニアワインの国内小売金額は約436億ドル。アメリカ全ワイン輸出金額13億6千万ドルの95%をカリフォルニアが占める。


■気候風土
 太平洋岸にある海岸山脈は1,200m級で、これより160〜200km内陸に入った3,000〜4,000m級のシェラネヴァダ山脈も、太平洋とともにワイン産地の気候形成に影響を与えている。この起伏の多い地勢は、約1億5千万年から2千4百万年前にかけて起こった地殻変動により形成された。土地の隆起、火山の噴火、海面の上昇による洪水等が繰り返し起こったために、ローム質、火山灰堆積土、石灰土、粘土、砂礫等入り混じった多様な土壌が存在する。
 太平洋岸を北から南へ流れるカリフォルニア海流が水温の低い寒流である影響で、海に近いほど冷涼で、内陸に行くほど暑く乾燥した気候となる。
 海岸山脈とシェラネヴァダ山脈の間にある広大な農業地帯であるセントラル・ヴァレーは、非常に乾燥していて、夏は気温が40℃に達する。太陽が照り出すと、温まった空気は上昇するため、底部に真空地帯ができる。ここに、太平洋上で夜間に発生した大量の霧や冷たい空気が引っ張られて流れ込む。内陸ヘ川のように流れ込む霧は、非常に早い速度で流れ、200km以上も内陸の地点に到達して、自然のクーラーの役割を果たす。途中の山脈にぶつかって進路を変えたり、渓谷に沿って進んだりするので、太平洋岸から内陸部にかけては、海からの影響の大小により多様な微気候(マイクロ・クライメット)が生まれる。
 早朝からの霧の流入は、温暖な時期はほとんど毎日繰り返されるため、ブドウ生育期間中、朝から昼頃にかけての気温上昇は非常にゆっくりしたものとなり、タ方から夜間は急速に冷え込む。昼夜の気温差も大きいため、ブドウはゆっくりと成熟する。ブドウ生育期の雨の降らない温暖な気候は、ブドウの確実な成熟を保障するため、カリフォルニア州の法律では1次発酵における補糖は禁止されている。
 カリフォルニア大学デイヴィス校は、マイクロ・クライメットの研究を長年続け、様々な気候・風土に合ったブドウ品種の選定を行い、栽培法の改良を行ってきた。年間降水量は400〜600mmと平均的だが、雨は冬の間に集中して降り、成育期間はほとんど雨が降らないため、ブドウが理想的な成熟に達するまで待って収穫することができる。冬の間に降る雨を貯水する池やダムが建設され、灌漑に使用されている。
 カリフォルニアでは秋の収穫期に雨が降らず強風が吹くことが多いため、山火事が起こりやすい傾向があるが、 地球温暖化のために益々乾燥と風の強さが増していることで、被害が大きくなってきている。 2012年から5年間干ばつが続いた後、2017年から連続して大規模な山火事が起こり、2019年にソノマ・カウンティで大きな被害が出たのに続き、2020 年もナパを中心に広範囲に被害が及んだ。 まず8月17日にカリフォルニア北部で起こった落雷に起因する複数の山火事は、長期間にわたって燃え広がり、 被害地域は合計で 147,000haに及んだ。 火災そのものはワイン栽培地に到達しなかったものの、数週間にわたって煙が滞留したため、ヴェレゾンの時期にあったブドウが煙のためにスモークテイント(煙香)のダメージが広範囲に及んだ。その後9月27日にナパのセントヘレナ近郊で発生した山火事は30以上のワイナリーを含む多くの建造物とブドウ畑を焼失させ、被害面積は約 27,200haに上った。ちょうど収穫時期に当たったた め、特に赤ワイン用ブドウに大きな影響が出た。スモークテイントはブドウそのものの分析値に現れるもののほかに、醸造後の時間経過によって出現する影響もあるため、ワインを製品として瓶詰めできるかどうかの判断には時間がかかる。
 UCデイヴィスが、以前からスモークテイントに関する研究を進めているオーストラリアの研究機関(AWSI)の協力を得て、ブドウ果を煙から防除する方法やワインからスモー キーなアロマを除去する方法を研究しているが、完全に除去する方法はまだ開発されていない。
 ナパ・ヴァレー・ヴィントナーズが実施した温暖化と気温に関する研究結果によれば、温暖化でカリオルニア内陸部の気温上昇が強まると、温められた空気が上昇する度合いも強まり、結果的に海からの冷たい空気や霧を引き込むバキューム効果も強まる。そのため、海に近い地域では一概に気温が上がるわけではなく、 マイクロ・クライメットによっては気温が下がる傾向を示す地域もあるという。


■地方料理と食材
 広大なセントラル・ヴァレーでは多様な野菜、果物、ナッツ類が生産されている。牧畜も盛んで、肉やチーズの種類も豊富である。太平洋に面しているため、魚介類もふんだんにとれる。これらの豊富な食材に加え、文化の多様性がカリフォルニアの多様な食のスタイルを構成している。イタリアン、メキシカン、中華、最近では日本食も融合したカリフォルニア料理は多彩である。
 アメリカの中でも特に先進性の強い土地柄から、へルシーな食への志向も強く、オーガニック農産物やそれらを使った料理への関心も高い。アリス・ウォーターズが1970年代にバークレーにオープンしたレストラン「Chez Panisse シェ・パニーズ」は、地元の有機農産物を使ったへルシーな料理が特徴で、カリフォルニア・クイジーヌの元祖とされる。
 1990年頃から、サンフランシスコを中心に、プレミアム・ワインをバイザグラス(グラス売り)でサービスするレストランが増え、ソムリエやワイン・ディレクターが考案するワイン・プログラムは、高品質ワインの消費拡大に貢献してきた。このトレンドはアメリカ全土に広がり、ワインに馴染みのなかった地域の消費者にも高品質ワインが浸透していった。
 高品質ワインの生産量が増えるに従い、洗練された料理を提供するレストランが増え、2019年に発行されたミシェラン・カリフォルニア版(対象が前年までのサンフランシスコ・ ベイエリアから拡大された)では、ナパ・ヴァレーとソノマを併せると星付きレストランが10軒ある。また、星を獲得した90軒のうち日本食レストランが15軒あり、ロサンゼルスの寿司店2軒と和食店1軒 (いずれも日本人シェフの店)が2つ星を獲得するなど、アメリカの美食文化における和食の存在の大きさが感じられる。
 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に加えてカリフォルニア全域で大きな山火事があり、ナパのMeadwood Resort メドウッド・リゾートが3つ星レストランとともに焼失するなどの大きな被害が出たため、ミシュランはカリフォルニア版の改訂を見送り、 次回改訂は2021年後半以降となる見込み。アメリカ全土のレストランが大きな打撃を受けるなか、長年にわたりミシェラン3つ星を冠するナパのFrench Laundry フレンチ・ランドリーやニューヨークのPer Se パー・セを含む人気レストランを経営してきたスター・シェフのThomas Keller トーマス・ケラーは、 新型コロナウイルスの影響で被った損害について賠償金を支払わない保険会社を相手取って訴訟を起こした。ケラーは、これは現在苦しんでいるレストラ ン業界全体にとっての闘いであるとしていたが、2021年3月に米国連邦地裁は、当該保険においてウイルスによる損害は免責条項に含まれるとしてケラーの申し立てを却下した (2021年4月28日付 CBS SF)。


■主要ブドウ品種
[白ブドウ]
⁃ シャルドネ
⁃ フレンチ・コロンバール
⁃ ソーヴィニヨン・ブラン
⁃ ピノ・グリ

[黒ブドウ]
⁃ カベルネ・ソーヴィニョン
⁃ メルロ、ジンファンデル
⁃ ピノ・ノワール
⁃ シラー

 *フレンチ・コロンバール:フランス、コニャック地方原産のコロンバールで、主に大量生産型の白ワインとスパークリングワインの原料となる。

 *ジンファンデル:DNA解析の結果、イタリア南部プーリア州のPrimitivo プリミティーヴォと同一品種で、どちらもルーツはクロアチアの土着黒ブドウ品種Plavac Mali プラヴァッツ・マリであると長い間考えられてきた。しかし、1990年代後半にUCデイヴィスのDr. Carole Meredith キャロル・メレディス博士が行ったDNA解析の結果、ジンファンデルとプリミティーヴォはプラヴァッツ・マリではなくクロアチアの地中海沿岸部ダルマチア地方の土着品種Tribidrag トリビドラグとDNAが一致し、 これがルーツであることが分かった。 トリビドラグはクロアチアではCrljenak kaštelanski シェリニナック・カシュテランスキ、Pribidrag プリビドラグとも呼ばれるが、トリビドラグが15世紀にさかのぼる最も古い起源をもつとされる。 これがアドリア海を渡ってプーリアにもたらされたものがプリミティーヴォになり、当時地中海を制していたヴェネチア共和国を経由してオーストリアに運ばれ、そこからアメリカ大陸にもたらされたものがジンファンデルになったとする説が有力視されている。

 * Petite Sirah プティ・シラー(プティットゥ・シラーとも発音される):アメリカ及び南米で、色が濃くタンニンの強いワインを造るブドウ。カリフォルニアでは昔からポートタイプの酒精強化ワインに使われていたが、近年はジンファンデル等にブレンドされることが多い。樹齢の高いブドウで単一品種の優良なワインを造る生産者もいる。以前は南フランス原産のデュリフだとされていたが、DNA鑑定の結果、プティ・シラーとされる古い畑の中には、初期移民による混植の名残で、デュリフの他、シラー、プルサン、プルサンとデュリフの交配品種も含まれていることが分かった。

[2020年カリフォルニア州主要ブドウ品種栽培面積]
出典:California Grape Acreage Report 2020(USDA National Agricultural Statistics Services)

[白ブドウ] 2020 (ha)
Chardonnay シャルドネ  36,699
French Colombard フレンチ・コロンバード  6,950
Pinot Gris ピノ・グリ  6,649
Sauvignon Blanc ソーヴィニヨン・ブラン  6,421
Chenin Blanc シュナン・ブラン  1,726
Muscat of Alexandria マスカット・アレキサンドリア  1,678
White Riesling ホワイト・リースリング  1,481
Muscat Blanc マスカット・ブラン  1,137
Viognier ヴィオニエ  1,034
その他の品種  5,738
合計  69,512

[黒ブドウ]  2020 (ha)
Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニヨン   38,312
Pinot Noir ピノ・ノワール 19,378
Zinfandel ジンファンデル 16,017
Merlot メルロ 14,553
Syrah シラー  6,035
Petite Sirah プティ・シラー 4,842
Rubired ルビーレッド 4,059
Barbera バルベーラ 1,885
Grenache グルナッシュ 1,780
Malbec マルベック 1,582
Ruby Cabernet ルビー・カベルネ 1,507
Petit Verdot プティ・ヴェルド 1,403
Cabernet Franc カベルネ・フラン 1,356
その他の品種 7,529
合計 120,236
白ブドウ+黒ブドウ合計 189,748




[2020年カリフォルニア州主要ブドウ品種栽培面積]
出典:California Grape Acreage Report 2020(USDA National Agricultural Statistics Services)

[白ブドウ] 2020(ha)
Chardonnay シャルドネ 36,699
French Colombard フレンチ・コロンバード 6,950
Pinot Gris ピノ・グリ 6,649
Sauvignon Blanc ソーヴィニヨン・ブラン 6,421
Chenin Blanc シュナン・ブラン 1,726
Muscat of Alexandria マスカット・アレキサンドリア 1,678
White Riesling ホワイト・リースリング 1,481
Muscat Blanc マスカット・ブラン 1,137
Viognier ヴィオニエ 1,034
その他の品種 5,738
合計 69,512

[黒ブドウ]  2020(ha)
Cabernet Sauvignon カベルネ・ソーヴィニヨン 38,312 
Pinot Noir ピノ・ノワール 19,378
Zinfandel ジンファンデル 16,017
Merlot メルロ 14,553
Syrah シラー 6,035 
Petite Sirah プティ・シラー 4,842
Rubired ルビーレッド 4,059
Barbera バルベーラ 1,885
Grenache グルナッシュ 1,780
Malbec マルベック 1,582
Ruby Cabernet ルビー・カベルネ 1,507
Petit Verdot プティ・ヴェルド 1,403
Cabernet Franc カベルネ・フラン 1,356
その他の品種 7,529
合計 120,236
白ブドウ+黒ブドウ合計 189,748


■ワイン生産量(2020年)
ブドウ栽培面積:193,974ha
ブドウ破砕量:3,540,000t(2020年)
ワイン生産量:24,055,419hℓ(2020年)



[カリフォルニア州のワイン産出カウンティ]

■North Coast ノース・コースト
⁃ Mendocino メンドシーノ
⁃ Sonoma ソノマ
⁃ Napa ナパ
⁃ Solano ソラノ
⁃ Lake レイク
⁃ Marin マリン

■Central Coast セントラル・コースト
⁃ Contra Costa コントラ・コスタ
⁃ Alameda アラメダ
⁃ San Francisco サン・フランシスコ
⁃ San Mateo サン・マテオ
⁃ Santa Clara サンタ・クララ
⁃ Santa Cruz サンタ・クルーズ
⁃ San Benito サン・ベニート
⁃ Monterey モントレー
⁃ San Luis Obispo サン・ルイス・オビスポ
⁃ Santa Barbara サンタ・バーバラ

■Sierra Foothills シエラ・フットヒルズ
⁃ Yuba ユバ
⁃ Nevada ネヴァダ
⁃ Placer プレイサー
⁃ EI Dorado エルドラード
⁃ Amador アマドア
⁃ Calaveras カラヴェラス
⁃ Tuolumne トゥオルミ
⁃ Mariposa マリボサ

■Central Valley セントラル・ヴァレー
⁃ Yolo ヨーロー
⁃ Sacramento サクラメント
⁃ San Joaquin サン・ホアキン
⁃ Stanislaus スタニスラウス
⁃ Merced マーセド
⁃ Madera マデーラ
⁃ Fresno フレズノ
⁃ Tulare トゥラーレ
⁃ Kings キングス
⁃ Kern カーン

■South Coast サウス・コースト
⁃ San Bernardino サン・バーナーディーノ
⁃ Riverside リヴァーサイド
⁃ San Diego サン・ディエゴ
⁃ Los Angeles ロサンゼルズ
⁃ Orange オレンジ

■その他
⁃ Siskiyou シスキュー 
⁃ Shasta シャスタ
⁃ Tehama テハマ
⁃ Trinityトリニティ
⁃ Humboldt フンボルト
⁃ Ventura ヴェンチュラ

A ファー・ノース・カリフォルニア Far North California
 カリフォルニアの北端、ノース・コーストより北の、オレゴン州との境界までの地域にあるワイン・リージョン。 標高の高い山岳地帯で、樹齢の高いレッドウッド(セコイア)がそびえ立つ森林や雪を冠した山峰など、手つかずの自然の美しさが息づく。その合間に小さな村や集落とともに、いくつかの小規模なワイン産地が存在している。

B ノース・コースト North Coast A.V.A.
 ノース・コーストA.V.A.は、サンフランシスコ湾より北の太平洋岸のナパ、ソノマ、メンドシーノ等のカウンティを内包する広域のA.V.A.で、下記の主要A.V.A.を含む。


■ナパ・カウンティNapa County
 ナパ・カウンティのほとんどの部分は、ナパ・ヴァレーA.V.A.に含まれる。

Napa Valley ナパ・ヴァレー A.V.A.
 サンフランシスコからナパ・ヴァレー南端のカーネロス地区までは、車で約1時間の距離にあり、ヴァレー中央部を北へ走るルート29や、並行してヴァカ山脈よりを走るシルヴァラード・トレイルを中心に、約500以上のワイナリーが存在する。傑出した品質のカベルネ・ソーヴィニヨンは、世界的にも高い評価を受けているが、生産量はカリフォルニア全体の約4%となっている。
 ほとんどのワイナリーがビジター向けのワイナリー・ツアーを実施し、テイスティングができるショップやレストランを併設している。ワインと美食のレストランや豪華なリゾートホテルも多く、年間を通じて国内外から多くの観光客が訪れることが、ワインの品質の高さとともに、ナパ・ヴァレーをアメリカで最も著名な銘醸ワイン産地としている。ブドウ栽培面積は、約18,400ha。主要品種のカベルネ・ソーヴィニヨンが、栽培面積の約50%を占め、その他シャルドネ、ピノ・ノワール、メルロ、ソーヴィニヨン・ブラン等からも高品質ワインが造られている。
 西側のソノマ・カウンティとの間にはマヤカマス山脈があり、東側のソラノ・カウンティとの境界線にはヴァカ山脈がある。東、西、北を山脈に囲まれ、南側だけがサン・パブロ湾に向かって開けているため、南から吹き込んでくる冷たい海風と霧が与える影響の大小がナパ・ヴァレー内に多様なマイクロ・クライメットを形成する。
 ナパ・ヴァレーには、火山性土壌、海洋性土壌、堆積土壌等を含む30以上の異なった土壌体系が存在し、100種以上の土壌があるとされる。ヴァレー北部は火山性土壌が主体で、海に近いカーネロス周辺は海洋性堆積物を含む浅い粘土質土壌、ヴァレー中央部では粘土質や砂利質の混ざった沖積土を主体とする土壌となる。ナパ川の浸食によって両側の山脈から削り取られた様々な土壌も流れ込んでいるため、多様な土壌が存在し、隣接する区画でも土壌が異なることは珍しくない。
 ナパ・ヴァレーA.V.A.内には現在16のサブリージョンがある。ナパ・ヴァレー南部のCarneros カーネロ スA.V.A.が最も海からの影響が強く冷涼で、Coombsville クームズヴィル A.V.A.。Oak Knoll District of Napa Valley オーク・ノール・ディストリクト・オブ・ナパ・ヴァレー A.V.A.、Yountville ヨーントヴィル A.V.A.あたりまでは海からの影響が強く比較的冷涼である。クームズヴィルの東側のWild Horse Valley ワイルド・ホース・ヴァレー A.V.A.は海から離れるが標高が高いため、適度に温暖となる。
 ナパ・ヴァレーを北へ向かうに従って海からの影響が弱まるので、気温は除々に上昇する。ヴァレー北部の夏の最高気温は、南部より約10℃高くなり、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、ソーヴィニヨン・ブランのように温暖な気候に適したブドウが栽培されている。
 温暖なナパ・ヴァレー中央部には、St. Helena セント・ヘレナ A.V.A.、Rutherford ラザフォード A.V.A.、Oakville オークヴィル A.V.A.と、やや南東側のStags Leap District スタッグス・リープ・ディストリクト A.V.A.があり、歴史的なワイナリーやカルトワインの生産者が集中している。畑の多くはヴァレー・フロアと呼ばれる、昔川底だった比較的平坦な土地にあるが、東西の山脈に近付くと、一段高くなった段丘(ベンチ)や傾斜地(ヒルサイド)がある。従来はヴァレー中央部に評価の高い畑が集中していたが、より高品質なワインを目指す生産者は徐々に、標高の高い丘陵の斜面に畑を求める傾向にある。
 西側のマヤカマス山脈にあるMt. Veeder マウント・ヴィーダー A.V.A.や東側のヴァカ山脈側にあるHowell Mountain ハウエル・マウンテン A.V.A.、Atlas Peak アトラス・ピーク A.V.A.等の山地の畑は、高い所では標高800mに達し、霧が流れる線より高い位置にあるため、冷涼ながら日照量が多い。ヴァレー・フロアよりも日中は比較的涼しく、水捌けも良い。ブドウの成熟はゆっくりすすむため、凝縮度の高いブドウが得られる。一般的には、ヴァカ山脈側では西向きの斜面に畑があることから、午後からの強い日射しを受けて、よりカ強いスタイルのワインとなる傾向があり、ー方、マヤカマス山脈側では東向きの斜面に畑があり、朝から午前中の穏やかな太陽を受けて、よりみずみずしいスタイルのワインとなる傾向がある。
 ナパ・ヴァレー北端のセント・ヘレナ山に近いCalistoga カリストガ A.V.A.は、ソノマ側から入ってくる海風の影響がある程度あり、適度な降雨量もある。この地区に典型的な火山性土壌がワインに強いミネラル感を与えているといわれる。



(ヴァレー中央部のA.V.A.)
Carneros / Los Carneros A.V.A. カーネロス / ロス・カーネロス
 カーネロスはナパ・ヴァレーの南端にあり、最もサン・パブロ湾に近い。東半分はナパ・カウンティ、西半分はソノ・マカウンティに含まれる。標高は0m〜213m。常に冷涼な海風が吹き、夏でも最高気温は27℃位までしか上がらないため、シャルドネ、ピノ・ワールの評価が高い。高品質スパークリングワインの生産拠点でもあり、フランスのシャンパーニュハウスもここにワイナリーを築いている。土壌は粘土質主体で、硬い粘土の岩盤がある。全体的に表土が浅いため、収量が低く抑えられる傾向がある。

Coombsville クームズヴィル A.V.A.
 2011年に承認されたA.V.A.。ナパの町の西側からヴァカ山脈の麓の斜面迄を含むエリア。標高は30m〜305m。海からの影響が比較的強いため、夏は日中の平均最高気温が他の地区と比べて5℃程度低くなる。ヴァカ山脈からの火山灰が堆積した層の上に、川の流れによる土砂が堆積した水捌けの良い土壌。山側の斜面は主にカベルネ・ソーヴィニヨン、南側の平地ではシラー、シャルドネ、ピノ・ノワールも栽培されている。

Oak Knoll District of Napa Valley オーク・ノール・ディストリクト・オブ・ナパ・ヴァレー A.V.A. 
 サン・パブロ湾からヴァレーを北上する海風と霧は、オーク・ノール地区の北側にあるスタッグス・リープ・ディストリクトの背後の切り立った斜面に沿って北西へ進む。そのため、オーク・ノール地区まではヴァレー中央部の中でも海からの影響が強く、比較的涼しい。真夏の最高気温は33℃まで上がることもあるが、夜には10℃前後まで下がる。
 標高は0m〜244m。北西部の土壌は小石混じりの火山性土壌で、南部、東部は、小石の混ざったシルト(粘土)質ローム土。カベルネ・ソーヴィニヨン主体。

Yountville ヨーントヴィル A.V.A. 
 温暖だが、海からの影響も比較的強いため、ヴァレー北部よりもやや涼しい。真夏の最高温度は33℃まで上がることもあるが、夜間との気温差は大きく13℃の開きがある。標高は6m〜61m。土壌は主に小石の混ざった粘土質ローム土と沖積士。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ主体。

Stags Leap District スタッグス・リープ・ディストリクト A.V.A.
 東側はアトラス・ピークを背後に控えるヴァカ山脈の裾野で、岩山の断崖がそそり立っている。日中の太陽を岩壁が幅射してブドウを熟させる。ヴァレー中央部よりもやや海に近いため、タ方からは涼風が吹いて急速に気温が下がるため酸も充実し、特に優良なカベルネ・ソーヴニヨンで知られる。標高は0m〜123m。平地は火山性で小石の混ざったローム質土壌。山の斜面は岩が多い。堅い粘土の岩盤がある。

Oakville オークヴィル A.V.A. 
 温暖だが夜間と早朝に出る霧の影響を強く受け、酸味のしっかりした高品質カベルネ・ソーヴィニヨンが生まれる。中央のヴァレー・フロアからヴァカ山緊側では約300m、マヤカマス山脈側では約150mまで標高が上がる。東側は特に午後の強い陽射しを浴びるため、より力強い味わいのワインとなる。標高は40m〜305m。西側は小石の混ざった堆積ローム質で、東へ行くほど火山性の重い土壌となる。栽培品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、ソーヴィニヨン・ブラン等。

Rutherford ラザフォードA.V.A. 
 ラザフォードはナパ・ヴァレーの中でも最も日照量の多い地区の1つで、オークヴィルやスタッグスリープ地区よりやや気温が高く、昼と夜の気温差も大きい。 砂利や砂を多く含む水はけの良い土壌も合わさった好条件が長いハングタイムを与え、ぶどうのフェノール類を良く成熟させるため、ワインに複雑性と 「土埃(ぼこり)」 あるいはココアパウダーを思わせるきめ細かいタンニンが備わる。これが、かつてアンドレ・チェリチェフが 「ラザフォード・ダスト」 (Dust=土ぼこり) と表現した ラザフォードのカベルネ・ソーヴィニヨンに特徴的なテクスチャーを与えている。Rutherford Bench ラザフォード・ベンチと呼ばれる西側の段丘は、強い西日があたらず、海から流れ込む午後の涼風の影響もあり、特に高品質なカベルネ・ソーヴィニヨンが生まれる。標高は47m〜152m。西側の丘陵地の周辺は小石や砂の多い堆積士と沖積土。東側は火山性土壌が多い。カベルネ・ソーヴィニヨン主体。

St. Helena セントヘレナA.V.A.
 西側の山に守られて霧や涼風の影響が薄れるため温暖。ヴァレーの北部は細く狭まり山腹斜面からの熱の照り返しがある。真夏の最高気温は35〜37℃に達することが多い。標高は46m〜145m。南西側は砂利や粘土を含む堆積土が主で、北東側は火山性土壌が多い。栽培品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ等。

Calistoga カリストガA.V.A.
 ナパ・ヴァレーの北端に位置するカリストガは、サン・パブロ湾からの影響は少なく、夏場は日中の最高気温が38℃を超えることもある一方で、午後からタ方には西側の山脈の切れ目、チョークヒル・ギャップを通って到達する太平洋からの冷たい風の影響で6℃位まで落ち込む。標高は92m〜370m。火山性土壌主体で、山の斜面は岩石の多いローム層。ヴァレーの中心部は粘土やシルトを主体とする土壌。栽培品種は、カベルネ・ソーヴィニョン、ジンファンデル、シラー等。


(ヴァカ山脈側のA.V.A.)
Wild Horse Valley ワイルド・ホース・ヴァレー A.V.A.
 ヴァカ山脈の南端に近い、標高259m〜650mの丘陵地の上にあり、独立したヴァレーを形成するエリア。サン・パプロ湾に近く、海からの影響が強いことと、標高が高いことにより、ナパ・ヴァレーの栽培地域の中で最も柔和な気候となる。火山性土壌で、玄武岩が多く、浅い赤土の表土。主な栽培品種は、カベルネ・ソーヴィニョン、ピノ・ノワール、シャルドネ等。

Chiles Valley チャイルス・ヴァレー A.V.A.
 ヴァレー中央部から北東側のヴァカ山脈の中にあり、高い峰に囲まれた独立したヴァレーを形成しているエリア。標高は182m〜366m。夏の日中は30℃を超えるが、タ方から夜は風が強く、周囲の峰からの冷気が集まるため、かなり冷え込み10℃を下回るため、ヴァレー中央部よりもブドウ生育期間が長くなる。土壌は主に海洋性シルトと粘土質の沖積土。栽培品種は、ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン主体。

Atlas Peak アトラス・ピーク A.V.A.
 ヴァカ山脈を構成する尾根の一つであるアトラス・ビークにあるA.V.A.で、標高は232m〜806m。ブドウ畑は主に西向きの斜面にあるため、午後の強い日差しを受けるが、標高が高いため、夏の間は、ナパ・ヴァレーの平地よりも5〜8℃ほど気温が低く、降霧線より高い場所は、夏の気温が32℃より高くなることは稀。夜間は急速に気温が下がるが、昼夜の気温差は平地よりも小さい。土壌は火山性で、赤色の玄武岩が多く、表土は浅い。主な栽培品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ等。

Howell Mountain ハウエル・マウンテン A.V.A.
 禁酒法以前から高品質赤ワインの産地として知られていたが、1983年にナパ・ヴァレーで最初のA.V.A.に認定された。東のヴァカ山脈でヴァレーの北端近くに位置する。標高は427m〜792m。海から離れていて、霧の流れる位置よりも高い場所にあるため、海の影響をほとんど受けない。平地に比べて、日中の気温は低めで、タ方はやや高めになる。乾燥度が高く、表土の浅い、やせた水はけの良い斜面から凝縮したブドウが生まれる。火山性土壌で、多孔質の火山岩と、鉄分を含む赤い粘土が主体。栽培品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ主体。


(マヤカマス山脈側のA.V.A.)
Mount Veeder マウント・ヴィーダー A.V.A. 
 西のマヤカマス山脈にあるAVAで、標高152m〜792m。ナパ・ヴァレー南端のカーネロス地区に降接し、サン・パブロ湾からの冷たい空気の影響を受ける。ブドウ畑のほとんどは霧の流れる線より高い位置にあり、ヴァレー・フロア(平地)よりも日中は比較的涼しく、夜間は比較的暖かい。真夏でも最高気温29℃位で、ブドウ生育期が長い。斜度が30度に達する所もあるほど傾斜の強い畑が多く、非常に日照量が多く、水はけが良い。
 土壌は古代の海底が隆起した堆積土で、砂または砂混じりのローム質は水はけが良い。
 主な栽培品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、ジンファンデル、シャルドネ等。

Spring Mountain スプリング・マウンテン A.V.A.
 ヴァレーの比較的北部で、マヤカマス山脈の東側斜面にある。標高は183m〜792m。ほとんどの畑は霧が流れるラインより上に位置し、ヴァレー・フロアに比べると夜は暖かく日中は涼しい。真夏の最高気温は通常29℃程度。土壌は主に堆積土で、風化した砂岩、頁岩等。非常に水捌けが良く、肥沃度は低い。主な栽培品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ等。

Diamond Mountain District ダイアモンド・マウンテン・ディストリクト A.V.A.
 ヴァレー北端で、マヤカマス山脈の一部を構成するダイアモンド・マウンテンの、傾斜の強い斜面を主体とするAVA。標高は130m〜530m。北西側の山脈の切れ目から太平洋の冷たい空気が入り込んでくるため、気候は穏やかで、谷床平地よりも最高気温は低く、最低気温は高い。成育期の気温は10℃から32℃。土壌は主に風化した火山性土壌で、やせていて、水はけが良い。主な栽培品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネフラン等。


[ナパ・ヴァレーのワイン産地]
⁃ Chiles Valley チャイルス・ヴァレー
⁃ Howell Mountain ハウエル・マウンテン
⁃ Calistoga カリストガ
⁃ Diamond Mountain District ダイヤモンド・マウンテン・ディストリクト
⁃ Spring Mountain District スプリング・マウンテン・ディストリクト
⁃ St.Helena セント・ヘレナ
⁃ Rutherford ラザフォード
⁃ Oakville オークヴィル
⁃ Stags Leap District スタッグス・リープ・ディストリクト
⁃ Yountville ヨーントヴィル
⁃ Oak Knoll District of Napa Valley オーク・ノール・ディストリクト・オブ・ナパ・ヴァレー
⁃ Mount Veeder マウント・ヴィーダー
⁃ Carneros / Los Carneros カーネロス/ロス・カーネロス
⁃ Atlas Peak アトラス・ピーク
⁃ Coombsville クームズヴィル
⁃ Wild Horse Valley ワイルド・ホース・ヴァレー


■ソノマ・カウンティSonoma County
 東西83km、南北75kmの大きさはナパ・カウンティの2倍以上のエリアで、そこに大小のヴァレーや多くの丘陵地帯が広がる。ブドウ栽培面積は約24,000ha。多様な気候風土のもと60種以上のブドウが栽培され、425以上(2021年)のワイナリーがある。
 平均気温は、サン・パブロ湾から北上するに従って、徐々に上がっていくが、西側の太平洋からの影響で緩和される。特に太平洋岸は海からの影響が強いため、非常に冷涼な気候となる。海岸山脈が途切れるペタルマ・ギャップ(峡谷)付近は内陸にも海風が吹き込むため、冷涼となる。冷涼な地区のシャルドネや、温暖な内陸部で栽培されるカベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデルは以前から高い評価を得ているが、太平洋側の最も冷涼な地区へ生産地域が拡大するにつれて、品質の高いピノ・ノワールにも注目が集まっている。
 ソノマ・カウンティには、Northern Sonoma ノーザン・ソノマ A.V.A.、・Sonoma Valley ソノマ・ヴァレー A.V.A.、Sonoma Coast ソノマ・コースト A.V.A.の3つのAVAがある。
 ソノマの複雑な地勢のために、多くのA.V.A.の周縁部は隣接するA.V.A.と重複している。

Northern Sonoma ノーザン・ソノマ A.V.A. 
 ソノマ北東の内陸部を占める山地の多いエリア。温暖で乾燥しているため、高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンで知られる地域が多い。ロシアン・リヴァー・ヴァレー、アレキサンダー・ヴァレー、ドライ・クリーク・ヴァレー、ナイツ・ヴァレー、ロックパイルの各A.V.A.等を含む。ノーザン・ソノマのAVAが誕生したのは1990年だが、ソノマの中でも古い歴史を持つワイナリーが多く存在する。カリフォルニアの最大手ワイナリーであるE&Jガロ・ワイナリーが、1990年代からプレミアム・レンジのエステート・ワインを造る拠点を置いたのは、このエリアだった。

Russian River Valley ロシアン・リヴァー・ヴァレー A.V.A.
 サンタ・ローサの町の西から北にかけて広がる地区。このA.V.A.の西側にペタルマ・ギャップがあり、海からの冷たい空気が流れ込む。このため、ロシアン・リヴァー・ヴァレーは冷涼な気候で、他の地区よりもブドウ生育期間が長く、良い酸も維持することができる。ペタルマ・ギャップを通ってくる冷たい風は、ヴァレーに沿って東南のサン・パブロ湾の方向へ進むので、ロシアン・リヴァーより北の産地には影響が少なく、かなり温暖になる。

Green Valley of Russian River Valley グリーン・ヴァレー・オブ・ロシアン・リヴァー・ヴァレー A.V.A.
 ペタルマ・ギャップの北側にある、小規模なグリーン・ヴァレーにある比較的新しいA.V.A.。太平洋からの影響が強く、深い霧がたちこめる冷涼な気候で、ピノ・ノワールの栽培に適している。

Chalk Hill チョーク・ヒル A.V.A. 
 ロシアン・リヴァー・ヴァレーの北東部にあり、アレキサンダー・ヴァレーとナイツ・ヴァレーの間の標高約430mの尾根を含む。比較的温暖な気候と石灰質を含む白い火山灰土壌が他の地域と異なる特徴をワインに与えている。特にシャルドネとソーヴィニョン・ブランから高品質な白ワインが生まれる。

Rockpile ロック・パイル A.V.A. 
 ソノマ湖の西側からメンドシーノ・カウンティとの境界にかけての地区で、標高580mの温暖で日照に恵まれた斜面の畑から凝縮したフレーバーを持つ赤ワインが生まれる。カベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデル、プティ・シラー等が栽培されている。

Alexander Valley アレキサンダー・ヴァレー A.V.A. 
 マヤカマス山脈に近く温暖な気候。砂利質土壌を持つヴァレー底部は、ナパ・ヴァレーと並ぶ高品質カベルネ・ソーヴィニヨンの産地で、シャルドネも定評がある。斜面上部では、ジンファンデル、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンから複雑で凝縮した味わいのワインが生まれる。

Knights Valley ナイツ・ヴァレー A.V.A. 
 アレキサンダー・ヴァレーの東側で、マヤカマス山脈に入りこんでおり、ナパ・カウンティに近い。標高が高く、火山性の土壌から良質のカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネが生まれている。

Dry Creek Valley ドライ・クリーク・ヴァレー A.V.A.
 周囲を湖、ヴァレーや高い山に囲まれた複雑な地勢のため多様性を持った地区だが、全般的に温暖で、砂利質と粘土質の混ざった水はけのよい土壌から生まれる、凝縮したジンファンデルや、カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブランが最も成功している。

Sonoma Valley ソノマ・ヴァレー A.V.A. 
 ソノマの南東部を占める広域A.V.A.で、東のマヤカマス山脈と西のソノマ山脈の間にあるソノマ・ヴァレーを中心に、その周囲を取り囲むようにベネット・ヴァレー、ソノマ・マウンテン、ムーン・マウンテン・ディストリクト、ロス・カーネロスの各A.V.A.がある。太平洋との間にソノマ山脈があるため、北部から中部にかけては太平洋からの影響がほとんどなく、温暖で乾燥した内陸性気候となり、南のロス・カーネロスに近づくほど冷涼な気候となる。
 セバスチャーニ、グレン・エレン、グンラック・ブンシュ等、カリフォルニアでも長い歴史を持つワイナリーが多く存在するエリア。

Sonoma Mountain ソノマ・マウンテン A.V.A. 
 ソノマ・ヴァレー西部にある小規模なA.V.A.で、ソノマ・マウンテンの北側と東側の斜面だけを含む。標高130〜400mにかけて様々なマイクロ・クライメットがあり、日照に恵まれているため良質のカベルネ・ソーヴィニヨンが主体。ピノ・ワール、シャルドネ、シラーも優良なものができる。

Carneros / Los Carneros カーネロス/ロス・カーネロス A.V.A. 
 サン・パブロ湾に近く、冷たい海の影響を最も強く受けるカーネロスA.V.A.の西半分はソノマ・カウンティ、東半分はナパ・カウンティに含まれる。冷涼な気候が生む良質なシャルドネやピノ・ノワールと、それを用いた高品質スパークリングワインがこの地の名声を築き、フランスのシャンパーニュハウスやカバの生産者もここにワイナリーを築いている。最近の傾向として、シラーやメルロ等も栽培されている。なだらかな丘陵地帯で、土壌内部は多様だが、全体的に表土は浅く、硬い粘土の岩盤によって根が深く張りずらいことや、気温の低さ、降雨量の少なさなどの諸条件により収量が抑えられる傾向にある。

Bennett Valley ベネット・ヴァレー A.V.A. 
 ソノマ中央部からやや南に寄った内陸部に位置するため、適度に海からの影響を受ける地区。火山性の粘土質土壌と、適度に温暖な気温による長いブドウ生育期から高品質なメルロが生まれる。

Moon Mountain District ムーン・マウンテン・ディストリクト A.V.A.
 ソノマの南端で、ナパとの境界のマヤカマス山脈の西側斜面にある畑は、標高120〜670mまで達し、標高の高い所ではジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン等に適するが、南のサン・パブロ湾からの涼風の影響もあり、標高の低い所はかなり冷涼な気候になるため、ピノ・ノワールやシャルドネに適している。

Sonoma Coast ソノマ・コースト A.V.A. 
 太平洋岸のメンドシーノ・カウンティとの境界から南のマリン・カウンティとの境界線に沿ってサン・パブロ湾にかけてのエリアと、内陸のロシアン・リヴァー・ヴァレーのほとんどを含む、ソノマで最大のA.V.A.であり、多様性のある広城A.V.A.。当然、この中には多くの異なった気候区分や地勢が存在するが、グリーン・ヴァレー、フォート・ロス・シーヴュー、ペタルマ・ギャップの各A.V.A.のような、特に太平洋からの影響が大きく冷涼な気候となる地区が新しいA.V.A.として承認されている。
 現在注目されているのは、ウェスト・ソノマ・コースト地区で、太平洋岸の海岸線に沿って続く標高450mを超える尾根にブドウ畑が点々と存在する。標高の高さから、冷涼で昼夜の寒暖の差が大きく、水はけが良いとともに、フォッグ・ラインの上にあることから、豊富な日照量を享受できることで、非常にエレガントで凝縮度の高いワインが生まれる。ピノ・ノワールとシャルドネではすでに定評があるが、近年はシラーの評価も高まっている。この地区のテロワールは、広大なソノマ・コーストA.V.A.の他の地区と大きく異なり、生まれるワインのタイプも異なることから、早ければ2019年中にも新しいA.V.A.として正式承認される見込みである。

Fort Ross-Seaview フォート・ロス・シーヴュー A.V.A. 
 2012年1月に新設されたA.V.A.。太平洋岸の北部にあり、ウェスト・ソノマ・コーストの典型的なテロワールを持つ地区、太平洋岸の切り立った断崖絶壁の上のブドウ畑から長年ワインを造り続ける家族経営のワイナリー、Hirsch Vinyards ハーシュ・ヴィンヤーズ、Flowers フラワーズ等がある。

Petaluma Gap ペタルマ・ギャップ A.V.A. 
 2018年1月に新設された、ソノマ・コーストA.V.A.の南部からマリン・カウンティの一部を含むA.V.A.。ペタルマ・ギャップ(峡谷)は海岸山脈が途切れている場所で、太平洋で発生する霧と冷たい海風が、ここから内陸側に流れ込み、サン・パブロ湾に向かって吹き抜ける。このため、ペタル・マギャップA.V.A.では特に冷たい風が吹き続けることが気候の大きな特徴となっており、ブドウの果皮が厚く、凝縮度の高いブドウから、高品質なピノ・ノワールやシャルドネの生産に適している。

[ソノマ・カウンティのワイン産地]
⁃ Carneros カーネロス
⁃ Moon Mountain ムーン・マウンテン
⁃ Sonoma Valley ソノマ・ヴァレー
⁃ Sonoma Mountain ソノマ・マウンテン
⁃ Bennett Valley ベネット・ヴァレー
⁃ Pine Mountain-Cloverdale Peak パイン・マウンテン・クローヴァーデール・ピーク
⁃ Alexander Valley アレキサンダー・ヴァレー
⁃ Knights Valley ナイツ・ヴァレー
⁃ Chalk Hill チョーク・ヒル
⁃ Dry Creek Valley ドライ・クリーク・ヴァレー
⁃ Rockpile ロック・パイル
⁃ Russian River Valley ロシアン・リヴァー・ヴァレー
⁃ Green Valley グリーン・ヴァレー
⁃ Sonoma Coast ソノマ・コースト
⁃ Fort Ross-Seaview フォート・ロス・シーヴュー
⁃ Northern Sonoma ノーザン・ソノマ
⁃ Fountain Grove ファウンテン・グローヴ
⁃ Petaluma Gap ペタルマ・ギャップ


■メンドシーノ・カウンティ Mendocino County 
 メンドシーノ・カウンティは山地が多く、総面積の60%は森林に覆われている。初期のイタリア移民によって植樹されたレッド・ウッド(セコイア)の森がこの地域の特徴となっている。
 ノース・コーストで最も北にあることと、太平洋の影響が強いことから、沿岸部は特に冷涼な気候の地区が多い。
 カリフォルニアで最も早く1980年代から有機栽培に取り組んできたフェッツァー家の影響で、メンドシーノ・カウンティの全ブドウ栽培面積は約7,000haで、その約25%がオーガニック認証を受けている。カウンティの東側を流れるロシアン・リヴァー沿いの地域は太平洋からの影響が少なく、比較的温暖な気候。北東部の産地は、海からの影響がほとんど届かないため、大陸性気候で寒暖の差が大きい。

Mendocino メンドシーノ A.V.A.
 アンダーソン・ヴァレー、メンドシーノ・リッジ、レッドウッド・ヴァレー、マクドウェル・ヴァレー等、カウンティ南部の主要産地を含む広域のA.V.A.。古くからあるジンファンデルやローヌ品種の畑が存在する。

Anderson Valley アンダーソン・ヴァレー A.V.A.
 海岸山脈をほぼ東西に貫いて流れるナヴァーロ川とその上流のアンダーソン川沿いにあるアンダーソン・ヴァレーA.V.A.は、ナヴァーロ川が太平洋に注いでいるため、海からの冷たい風、霧や雲がヴァレーに流れ込み、この地をカリフォルニアで最も冷涼なブドウ栽培地の一つにしている。ピノ・ノワール、シャルドネの他、リースリング、ゲヴュルットラミネールといったアルザス品種が成功している。1980年代にRoederer Estate ロデレール・エステート が設立されるなど、以前から高品質スパークリングワインの生産地としても知られている。近年はカリフォルニアの高品質ピノ・ノワール生産者の多くがこの地に進出している。

Mendocino Ridge メンドシーノ・リッジ A.V.A.
 霧がかかる位置よりも高い標高350m以上の尾根だけがこのA.V.A.の対象となっている。山岳での栽培を得意とした初期のイタリア移民がジンファンデルを植え、現在も樹齢の高い畑から高品質ワインが生まれている。冷涼で日照量が多いため、近年はシャルドネとピノ・ノワールも成功している。

Eagle Peak Mendocino County イーグル・ピーク・メンドシーノ・カウンティ A.V.A.
 2014年に設立されたA.V.A.で、海岸山脈の一部である イーグル・ピークの峰を含むことから命名された。 ブドウ畑は東から南向きの標高300~1,000mの高い峰の上にあるため、内陸に位置していても朝晩には海からの霧が到達する。 日中の日照量は多いが東側のレッド・ウッド・ヴァレーやポッ ター・ヴァレーよりも冷涼な気候のため、ピノ・ノワールのような冷涼気候品種の栽培に適している。粗い砂利、粘土、 ローム質の混合した土壌は水はけが良く、ブドウに凝縮度を与える。既存のメンドシーノA.V.A.とレッド・ウッド・ヴァレー A.V.A.とは気候条件が大きく異なるため、新A.V.A.の範囲は 上記2つの既存A.V.A.の面積から除外された。



■セントラル・コースト Central Coast A.V.A.
 サンフランシスコ・カウンティ南部からロサンゼルスに近いサンタ・バーバラまでの南北約400km、東西約40kmにある10のカウンティを包括する広大なセントラル・コーストA.V.A.が太平洋岸中部のほとんどを占める。
 沿岸部は冷涼な産地が多く、カリフォルニアの優良なピノ・ノワールやシャルドネの産地が集中している。内陸は乾燥して温暖な気候で、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、ジンファンデル等の他、早い時期からシラー、グルナッシュ、ヴィオニエのようなローヌ系品種が栽培されてきた。
 セントラル・コーストの北部は、カリフォルニアの中でもブドウ栽培とワイン造りの長い歴史を持つ地域である。サンフランシスコ湾の南端から南へ広がるサンタ・クララ・ヴァレーでは、フランスからやってきたCharles Le Flanc シャルル・ル・フランが1852年に高品質ヨーロッパ産ブドウの栽培を開始し、カリフォルニアで最古のワイナリーとされるオールド・アルマデン・ワイナリーを建設した。このワイナリーに加わった、やはりフランス出身のポール・マッソンは、後に高品質ワインと瓶内2次発酵のスパークリングワインの生産で高い評価を得た。
 サンフランシスコ・ベイA.V.A.の南側にはサンタ・クルーズ・マウンテンズ A.V.A.があるが、サンタ・クルーズ・マウンテンズは標高の高い地勢条件が特殊なため、セントラル・コーストA.V.A.には含まれず、独立したA.V.A.として位置付けられている。セントラル・コーストにあるA.V.A.は、いくつかのカウンティにまたがっているA.V.A.が多いため、下記の産地説明は、必ずしもカウンティ単位にはなっていない。

Santa Cruz Mountains サンタ・クルーズ・マウンテンズ A.V.A.(セントラル・コーストA.V.A.には含まれない)
 サンフランシスコの南にあるサンタ・クルーズ山脈を主体とする比較的広範囲なA.V.A.で、 近代カリフォルニアワインの黎明期(れいめいき)にPaul Masson Martin Ray ポール・マッソン マーティン・レイなどがワイナリーを築き、 その後Paul Draper ポール・ドレーバーによる卓越したカベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルで知られる Ridge Vineyards リッジ・ヴィンヤーズやカリフォルニアにおけるローヌ品種の旗手Randall Grahm ランドール・グラームのBonny Doon Vineyard ボニー・ドゥーン・ヴィンヤードなどが築かれた、由緒あるワイン産地である。 森林の多い山地の中に点在する畑は低い所で標高120m、高い所は800mにも達し、眼下にはサンタ・クララ・ヴァレーと太平洋を見下ろす。優良な畑の多くは、霧のかかるフォグラインの位置よりも高く、冷涼ながら日照量の豊富な場所に開かれている。
 粘板岩や石灰岩を含む土壌から、カベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルとともに、ピノ・ノワールとシャルドネもカリフォルニアを代表する高品質なワインが生み出されている。

 Livermore Valley リヴァモア・ヴァレー A.V.A. 
 オークランド南東の丘陵地にあるA.V.A.で、比較的温暖な気候がソーヴィニヨン・ブランやカベルネ・ソーヴィニヨンに適している。19世紀にフランスからこの地にもたらされたソーヴィニヨン・ブランやシャルドネの苗木から、カリフォルニアで初のヴァラエタル・ワインが生まれ、これらの苗木の子孫は、優良なクローンとして、カリフォルニアの多くの地域で栽培されている。特に、シャルドネのウェンテ・クローンは、現在カリフォルニアで栽培されている全シャルドネの90%以上がこのクローンから派生したものとされる。


■サン・ベニート・カウンティ San Benito County 

Mount Harlan マウント・ハーラン A.V.A. 
 カリフォルニアにおけるピノ・ノワールのパイオニアの一人であるJosh Jensen ジョシュ・ジェンセンは、ブルゴーニュでワイン造りを学んで帰国し、ブルゴーニュと同じ石灰岩土壌を2年間探し続けた結果、1974年にガヴィラン山脈のマウント・ハーランにそれを見い出し、Calera カレラを創設した。標高670mに至る畑は、非常に乾燥していて、海風の影響で冷涼だが、霧の上に出ているため日照に恵まれている。
 このA.V.A.にあるワイナリーはカレラのみである。


■モントレー・カウンティ Monterey County 

Monterey モントレー A.V.A. 
 風光明婿なカーメルやペブル・ビーチで知られるモントレーからサリーナス・ヴァレーまでを含む広大なA.V.A。太平洋に大きく開いたモントレー湾周辺には海からの影響を遮る丘陵がないため、東南に向かってキングシティまで続く広大なサリーナス・ヴァレーには、太平洋の冷たい空気や霧が大量に流れ込む。
 また、雨量が非常に少なく乾燥しているため、ブドウの生育期間はカリフォルニアの他の地区より約2週間も長くなる。主要ブドウ品種はシャルドネで、北部ではピノ・ノワールやシラー、南部ではカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ等も栽培されている。

Santa Lucia Highlands サンタ・ルチア・ハイランズ A.V.A. 
 サリーナス・ヴァレーの南西側にあるサンタ・ルチア山脈中腹の台地にあるA.V.A.。冷涼だが、標高が高く日照に恵まれた畑からは高品質のシャルドネやピノ・ノワールが生まれている。ここには、Pizzoni ピゾーニ、Rossella ロセッラ、Francioni フランチョーニ等、著名なグローワーによる単一畑も多く存在する。

Chalone シャローン A.V.A.
 ガヴィラン山脈のシャローン峰に近い、約600mの斜面に最初のブドウが植えられた。石灰岩質を主体とする土壌で、ほとんどの時間霧の上に出ているため昼夜の温度差の大きく乾燥した気候から、ミネラルの凝縮したワインが生まれる。このテロワールに惚れ込んだDickwGraff ディック・グラフは、ここにあったワイナリーを買い取り、1966年からChalone Vineyard シャローン・ヴィンヤードとしてワインを造った。このA.V.A.にあるワイナリーは現在もシャローン・ヴィンヤード(現在はFoley Family Wines フォーリー・ファミリー・ワインズ社の所有)のみである。


■サン・ルイス・オビスポ・カウンティSan Luis Obispo County 

Paso Robles パソ・ロブレス A.V.A. 
 サン・ルイス・オビスポ・カウンティの北半分を占める大きなA.V.A.で、この中に11のサブ・リージョンが認定されている。
 1797年にフランシスコ修道会によって最初のブドウが植えられたが、近代に本格的なワインブドウの栽培が始まったのは1960年代から1970年代だった。大小のブドウ園やワイナリーが設立され、中には生産規模の大きな企業も現れた。
 西側に山脈があるため、海の影響は遮られ、日中は日照量が多く温暖で、夜は急激に気温が下がる。カベルネ・ソーヴィニヨンが最も多いが、ジンファンデルとローヌ系の品種が成功している地域としても知られる。シャトード・ボーカステルのシャトー・ヌフ・デュ・パープで知られるペラン家は1987年にアメリカのパートナーであるハース家とともにパソ・ロブレスの北西部にTablas Creek Vineyard タブラス・クリークを設立した。ペラン家はワインの品質を期すため、1999年にローヌの自社畑からまず9つのブドウ品種(ムールヴェードル、グルナッシュ・ノワール、シラー、クーノワーズ、ルーサンヌ、ヴィオニエ、マルサンヌ、グルナッシュ・ブラン、ピクプール・ブラン)を輸入した。 これらはTCVクローンと呼ばれ、 UCデイヴィスでの3年間の検査期間を経てタブラス・クリーク・ヴィンヤードに植えられるとともに、 苗木業者を通じて他の生産者にも提供されたため、カリフォルニアのローヌ品種全般の品質向上に貢献した。2003年にはさらに7品種 (サンソー、テレ・ノワール、ミュスカルダン、ヴァカレーズ、ピカルダン、クレレット・ブランシュ、ブールブーラン) が輸入され、シャトーヌフ・デュ・パー プの許可品種13種を含む品種が揃った。

Edna Valley エドナヴァレー A.V.A. 
 サンタ・ルチア山脈の西側にあり、太平洋に向かって大きく開けたヴァレーであるため、冷たい空気が大量に流れ込み、非常に冷涼な気候になる。高品質なシャルドネとピノ・ノワールが産出されている。

Arroyo Grande Valley アローヨ・グランデ・ヴァレー A.V.A.  
 エドナ・ヴァレーの東側に隣接するA.V.A.。霧より標高の高い畑は日照量が多くカベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデルに適し、それより低い場所は非常に冷涼になるため、ピノ・ノワールとシャルドネに適している。


■サンタ・バーバラ・カウンティ Santa Barbara County 
 サンタ・バーバラ・カウンティはセントラル・コーストの1番南にあり、西から南が太平洋に向って開けているため、海からの冷たい風や霧が大量に流れ込む。サンタ・バーバラの南側では、北から流れてきた寒流と南カリフォルニアから上がってくる暖流がぶつかるため、特に大量の霧が発生する。

Santa Maria Valley サンタ・マリア・ヴァレー A.V.A. 
 サンタ・バーバラ・カウンティの北西側にあり、太平洋から続く平坦で広大なエリアを含むサンタ・マリア・ヴァレーは、非常に風が強く冷涼な気候で、カリフォルニアで最も高品質なピノ・ノワールやシャルドネの産地の一つとして知られる。土壌は砂質ロームや粘土質ローム。ピノ・ノワールの伝道師と呼ばれるJim Clendenen ジム・クレンデネンは、1982年にAu Bon Climat オー・ボン・クリマを設立し、ブルゴーニュスタイルを追求したワイン造りでサンタ・マリア・ヴァレーを世界のワイン地図に載せた。

Santa Ynez Valley サンタ・イネズ・ヴァレー A.V.A.
 サンタバーバラ・カウンティの中心的ワイン産地であるサンタイネズ・ヴァレーは太平洋に近く、東西方向に約50kmにわたって延びるヴァレーは太平洋からの強い風が吹き込み、日中の気温上昇が抑えられる。 ヴァレーの北側と南側に沿って丘陵地が続いていて、 北側は標高300mに達するが南側はゆるやかな斜面となっている。海から離れるほど気温が高くなり、1マイル東へ行くごとに温度が0.5℃ずつ上がるといわれる。西から東へ異なる気候条件を反映した4 つのサブリージョンがあり、それぞれの地区で適するブドウ 品種が異なる。A.V.A.全体では60種以上のブドウ品種が栽培されている。
 最も西側にあるSta. Rita Hills サンタ・リタ・ヒルズ A.V.A. は、 太平洋から約 20kmの距離にあり、冷涼な気候と石灰質を含む土壌から特に高品質なピノ・ノワールとシャルドネが生まれる。1971 年にカリフォルニアを代表するピノ・ノワールの畑であるSanford & Benedict Vineyard サンフォード&ベネディクト・ヴィンヤードが誕生した場所であり、ここを中心にサンタ・イネズ・ヴァレーのワイン産地が形成され た。サンタ・リタ・ヒルズから離れて少し東側に入ったバラード・キャニオン A.V.A.は、やや温暖な気候がシラーに最適とされ、グルナッシュ、ヴィオニエなど、他のローヌ品種も栽培 ロス・オリヴォス・ディストリクトされている。この東に接するLos Olivos District A.V.A.は、さらに温暖な気候となり、カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブランなどのボルドー系の品種とともにローヌ系の品種から良質なワインが造られている。ロス・オリヴォスの街には映画「Sideways サイドウェイ」に登場したカフェがある。 最も東側にあるHappy Canyon of Santa Barbara ハッピーキャニオン・オブ・サンタ・バーバラ A.V.A.は背後にサン・ラファエル山脈があり、日中の気温が上がりやすく最も温暖な気候となる。粘土ローム質のやせた土壌でぶどうの収量が抑えられることからも、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロ、ソーヴィニヨン・ブランなどのボルドー品種に最適とされる。

Alisos Canyon アリソス・キャニオン A.V.A. 
 2020年8月に承認されたA.V.A.。
 サンタ・イネズ・ヴァレーとサンタ・マリア・ヴァレーの中間に位置する、総面積2,337haの比較的小規模なA.V.A.。太平洋から約32kmに位置し、朝晩はサン・アントニオ・クリーク・ヴァレーを通って海からの冷たい風や霧が流入するため、気温の日較差が大きく、特にローヌ品種のブドウから優良なワインが造られている。砂岩と片岩が風化してできた土壌の中を、石灰岩の層が脈状に走っている。
 主要ブドウ品種は、シラー、グルナッシュ、グルナッシュ・ブラン、プティ・シラー。


[セントラルコーストのワイン産地]
⁃ San Francisco County サンフランシスコ・カウンティ
⁃ San Francisco Bay AVA サンフランシスコ・ベイ
⁃ San Mateo County サン・マテオ・カウンティ
⁃ Santa Cruz County サンタ・クルーズ・カウンティ
⁃ Santa Cruz Mountains AVA サンタ・クルーズ・マウンテンズ
⁃ Contra Costa County コントラ・コスタ・カウンティ
⁃ Alameda County アラメダ・カウンティ
⁃ Livermore Valley AVA リヴァモア・ヴァレー
⁃ Santa Clara County サンタ・クララ・カウンティ
⁃ San Benito County サン・ベニート・カウンティ
⁃ Mt. Harlan AVA マウント・ハーラン
⁃ Monterey County モントレー・カウンティ
⁃ Chalone AVA シャローン
⁃ Monterey AVA モントレー
⁃ Santa Lucia Highlands AVA サンタ・ルチア・ハイランズ
⁃ Arroyo Seco AVA アロヨ・セコ
⁃ San Luis Obispo County サン・ルイス・オビスポ・カウンティ
⁃ Paso Robles AVA パソ・ロブレス
⁃ Edna Valley AVA エドナ・ヴァレー
⁃ Arroyo Grande Valley AVA アローヨ・グランデ・ヴァレー
⁃ Santa Barbara County サンタ・バーバラ・カウンティ
⁃ Santa Maria Valley AVA サンタ・マリア・ヴァレー
⁃ Santa Ynez Valley AVA サンタ・イネズ・ヴァレー



■シエラ・フットヒルズSierra Foothills AVA
 シエラ・フット・ヒルズは、シェラ・ネヴァダ山脈の西側の山麓(さんろく)に点在するブドウ畑の総称で、北はユバから南はマリポザまでの8つのカウンティにわたる広域のA.V.A.。標高1,200mに達するブドウ栽培地区は、非常に冷涼な気候の場所もある。ここは、1840年代から50年代のゴールドラッシュの舞台となったエリアで、その当時にブドウ栽培が始まった。その後、19世紀末のフィロキセラ禍によってほとんどのブドウ畑は打ち捨てられたが、ジンファンデルの畑のいくらかは生き残り、100年を超える樹齢のブドウから凝縮した味わいのワインが生まれる。シエラ・フット・ヒルズ内に含まれるA.V.A.は、全ての地区でジンファンデルが代表的なブドウ品種となっている。

California Shenandoah Vally カリフォルニア・シェナンドア・ヴァレー A.V.A.
 アマドール・カウンティにある、シエラ・フット・ヒルズ内で最も歴史の長いワイナリーが集まっている地区。日照に恵まれた樹齢の高い畑が多く、非常に深みのある味わいのジンファンデルで知られる。

El Dorado エル・ドラド A.V.A.
 シエラ・フットヒルズ A.V.A.の中で最大のサブ・アペレーション。標高 360~1,060mに及ぶ多様で複雑な地勢をもつ斜面に畑がある、日照量豊富な山岳栽培地帯で、凝縮度の高いワインが生まれる。土壌はきめ細かい火山岩、崩壊質花崗岩(かこうがん)、片岩などが多い。 シエラ・ネヴァダ山脈から吹き下ろす風によって冷やされると同時に、標高が上がるにしたがって気温が下がるため、地区によって様々な気候条件が あり、ボルドー、ローヌ、イタリア、スペイン、ドイツ系品種を含む約50種の品種が栽培されている。特にジンファンデル、バルベーラ、ゲヴュルツトラミネールなどの評価が高い。

Fair Play フェア・プレイ A.V.A.
 エル・ドラドA.V.A.の中にあり、標高600~900mというカリフォルニアで最も高い標高を誇るA.V.A.の1つ。なだらかな斜面にあるブドウ畑は花崗岩質土壌が主体で、イタリアやフランス系品種が栽培されている。 特にジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーなどが高い評価を受けている。

■Inland Valleys インランド・ヴァレーズ
 海岸山脈とシェラネヴァダ山脈の間にある、肥沃で広大 な農業地帯(一般的にはセントラル・ヴァレーと呼ばれてきた地域)。ここでは、柑橘類(かんきつるい)を始めとする、果実、野菜、ナッツ、綿花など、あらゆる農産物が栽培されていて、膨大な面積のブドウ畑もある。干しブドウや生食用ブドウの生産も多い。
 この広大なエリアの中には、多様な地勢・土壌と異なる気候条件をもつワイン産地が存在し、近年はこれらを包括するワイン・リージョンとしてインランド・ヴァレーズと呼ばれるようになった。 インランド・ヴァレーズを大きく分けると、北部はサクラメント・ヴァレー、南部はサン・ホアキン・ヴァレーからな り、ここからカリフォルニアの日常消費用大型ブランドワインのほとんどが産出されるが、それらのほとんどは “カリフォルニア”という州名表示のワインとなる。
 南部のサン・ホアキン・ヴァレーは、ストックトン周辺からベイカーズ・フィールドまでの南北約350km、東西約80kmにわたるエリアで、肥沃な土壌と、厳しい日照のために、ブドウの収量は高く、機械化されたブドウ栽培管理と、近代的な醸造方法を駆使するワイナリーにより、クリーンでフルーティな味わいと安定した品質をもつ、世界的な大型ブランドのワインが生産されている。
 サンフランシスコ湾と内陸のサクラメントの間には、サクラメント・デルタと呼ばれる低地帯がある。 その一帯は、海岸山脈が途切れているため、海からの冷たい風がサクラメン ト・ヴァレーに流れ込み、 インランド・ヴァレーズの他の地域より、かなり穏やかな気候となる。この地域では、手ごろな価格ながら充実した品質のワインが生まれるため、ローダイを始め、いくつかのA.V.A.が認定されている。

Lodi ローダイ A.V.A.
 ローダイはカリフォルニア開拓の初期の時代からワインが造られてきた長い歴史を持つワイン産地で、 19世紀からカリフォルニアの中心的ワイン産地だった。
 1919年から1933年まで禁酒法が施行されている間、個人消費のために毎年200ガロン (757ℓ) のワインを家庭で造ることは許可されていた。ミネソタに住んでいたイタリア系移民のチェーザレ・モンダヴィ (ロバート・モンダヴィの父)は家庭用ワイン製造のためのブドウの取引に携わり、良質なブドウを大量に生産しているのがカリフォルニアのローダイだと知ると家族でローダイに移り住み、東海岸の都市へ向けてブ ドウを販売した。禁酒法撤廃後、ロバートと兄のピーターはのCharles Krug Winery チャールズ・クリュッグ・ワイナリー ナパ・ヴァレーを購入してワイン 造りを始めた。ロバートは世界最高峰の高品質ワインを造るため、1966年に自らの名を冠するワイナリーを設立して大きな成功を収めたが、消費者に手頃な価格で良質な日常ワインを提供したいという思いから、 若い頃からその品質を信頼していたローダイのブドウでワインを造ることを決め、ワイナリーの名もローダイの町の名を取ってWoodbridge ウッドブリッジと名付けた。
 このように、ローダイの栽培農家の多くは、 長年にわたって大手ブランドを含む多くのワイナリーに原料を供給してきたが、近年は樹齢の高いジンファンデルに代表される高品質なブドウ産地としてのローダイに注目が集まっており、自らワイ ンを造る栽培農家も増えている。
 1986年に制定された Lodi ローダイA.V.A.はサンフランシスコ湾 とシェラネヴァダ山脈の間に位置し、 総面積約222,600haとカリフォルニアで最大のA.V.A.の一つで、2006年に7つのサブA.V.A.(Alta Mesa アルタ・メサ、Borden Ranch ボーデン・ランチ、Clements Hills クレメンツ・ヒルズ、Cosumnes River コサムニーズ・リヴァー、Jahant ジャハント、Mokelumne River マカロミー・リヴァー、Sloughhouse スラウハウス) に分けられた。 ブドウが植えられているのは合計約40,500haで、その約40%はローダイやウッドブリッジの町があるマカロミー・リヴァーA.V.A.にある。
 気温が高く乾燥した気候の場所が多いインランド・ヴァレーズの中で、 太平洋からサンフランシスコ湾とサクラメント・サンホアキン・デルタを抜けてくる冷たい空気が吹き込む位置にあるローダイは、涼やかな海風が吹く穏やかな地中海性気候となる希少なブドウ栽培地区である。 積算温度はナパ・ヴァレー中部に近いが、昼夜の寒暖差はそれほど大きくなく、より穏やかな酸と豊かな果実味をもったワインが生まれる。 特に西側にあるマカロミー・リヴァー A.V.A.は最も海からの影響が強いため、日中の気温の上昇が抑えられて長いブドウ生育期間が得られる。 土壌も深い砂質ローム質が主体で水はけが良く、 樹勢が抑えられることがブドウの品質を高め、砂地で生息できないフィロキセラの被害を受けづらいことが、 樹齢100年を超える自根のジンファンデルの存在を可能としている。イタリアからの移民によって持ち込まれ、 株仕立てで栽培されてきたこれらのブドウは、ドライ・ファーミ ング (乾地農法: 乾燥地帯において、限られた雨水などを有効に活用して行う農法。灌漑を行わないか、最小限の水 量で行う場合もある) で栽培されているものも多い。
 ローダイA.V.A.の東部は、シェラネヴァダ山脈に向かって標高が高くなり、山脈から流れ出たミネラルの多い粘土ローム質土壌から優良な赤ワインが造られている。
 ローダイは長年、優良な赤ワインの産地として知られてきたが、近年は白ワインの生産も増え、赤が3分の2、白が3分の1を占めるまでになっている。多様なブドウ品種が栽培されており、乾燥した気候に適するスペイン、ポルトガル、ローヌ系の品種も増えている。主要ブドウ品種は、黒ブドウではカベルネ・ソーヴィニヨン、ジンファンデル、メルロ、ピノ・ノワー ル。 ジンファンデルは歴史的にもローダイを代表するブドウ品種であり、ローダイのあるサクラメント・カウンティとサン・ホアキン・カウンティのジンファンデル栽培面積は、カリフォルニア全体のジンファンデル栽培面積の約40%を占める。白ブドウはシャルドネ、ピノ・グリ、ソーヴィニヨン・ブランが主要品種で、近年はアルバリーニョが高品質かつフードフレンドリーなワインとして注目を集めている
 ローダイではブドウ栽培農家が多いことから、特にサステイナブル農法に関する取り組みを早くから実施しており、ローダイ・ワイングレープ・コミッションが1992年に始めたサステイナブル農法に関する教育プログラムは、カリフォルニア州内外で採り入れられ、2005年にはLODI RULE ローダイ・ルールとして正式 な認証制度として制定された。 カリフォルニア州およびその他のいくつかの州と、海外ではイスラエルでも採用されており、2020年現在、 カリフォルニア州、ワシントン州、イスラエルにある22,258haのブドウ畑が認証されている。

F  サザン・カリフォルニア Southern California
 サザン・カリフォルニアは、セントラル・コーストより南のマリブ・コーストA.V.A. から南へメキシコ国境までのワイン産地を包括するワイン・リージョン。温暖な気候と青空の下に広がるビーチのある風景は、誰もが思い描くカリフォルニアだ。  


South Coast サウス・コーストA.V.A.
 カリフォルニア州南部のロサンゼルス・カウンティから南を包括する広域のA.V.A.。レインボー峡谷を通って入ってくる冷たい空気の影響を受けるテメキュラ周辺を除いては、非常に暑く乾燥している。この地域はメキシコ国境に隣接し、北部カリフォルニアより長いワイン造りの歴史をもつが、現在では農業地の市街化と長期的干魃(かんばつ)による水不足が脅威となっている。

Temecula Valley テメキュラ・ヴァレー A.V.A.
 サンディエゴとロサンゼルスの間に位置するテメキュラ・ヴァレーは、日中は日照量が多く非常に温暖で、夜間は周囲の山から吹き下ろす風で気温が下がる。レインボー・ギャップを通ってくる海風の影響で適度な湿度もある。ピアス病でかなりのブドウ畑が被害を受けたが、植え替えを余儀なくされたことにより、よりこの地の気候に適した、高品質ワイン用ブドウ品種が栽培されるようになった。

参考資料 日本ソムリエ協会教本、隔月刊誌Sommelier  

最後までお読み頂きありがとうございます。

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