男は女の告白に、「お幸せに…」とだけ告げた
ハードボイルド俳優が、メロドラマを演じたらどうなるか?
考えてみれば、ハードボイルド映画にパートナーはつきものである。だからそんな括りこそ、ナンセンスと言えるかも知れない。また、時代は更に進んで、ジェンダー平等があたりまえの社会だ。歳を重ねた者こそ、時代の変化に気づき、若い人達を応援したいと常に思う。
そんな時代の流れとは逆行して、古い「カサブランカ」のハンフリー・ボガートのように、彼女の幸せを願い、潔く身を引く男を描いたのが、この映画「プルーフ・オブ・ライフ」である。
夫を助けて欲しいと依頼され、現地に向かった交渉人テリーだったが、依頼人の人妻を見て、彼女に一目惚れしてしまう。提示した料金も払えない彼女に、赤字覚悟で助っ人を請け負う交渉人テリー。しかし彼は、お金のことはおくびにも出さず、必死に誘拐組織と交渉する姿に、彼女は惹かれ、いつしか愛が芽生えしまう。
しかし、救出作戦の成功には、同時に二人の別れが待っている。
ハードボイルドとは、やせ我慢の美学である。とかつてレイモンド・チャンドラーは何処かで書いていた。
人は引き際こそ、もっともその人の真価が現れると私は思う。