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まだらになっちまった哀しみに「英語のそこのところ」第123回


【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年12月8日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 前回に引き続き、「他人様に迷惑をかけないようにしなさい」についてのお話です。「他人様に迷惑をかけないようにしなさい」という社会で助けを求めることの難しさをNative English Speakerと話し合った内容をもとにしています。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル13」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっています。
 この「ドリル13」では「12」に続いて、地震に遭遇した際に困っているNative English Speakerを助ける言い回しとUKの高級紙ガーディアンの記事を題材に英文を作っていきます。

あ、でも、地下鉄は動いてるってさ。
地下鉄は詳しい? 
ううん。乗ったことないよ。
新宿のホテルに帰りたいんだ。
憑いてるね、おれも新宿方面なんだ。一緒に行こうぜ。
イスタンブールがずっとマンチェスターシティとチェルシーを主催することになっていたが、一週間にわたる交渉ののち、ポルトがチャンピョンズリーグの決勝のための会場として確認されている。(from the Guardian the 13th of May, 2021)
などは、英語でどう言うのでしょうか? 
このテキストを使えば、きっちり身に付きます。お試しください。

大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

【本文】

 ガシャッと外でモノが壊れる音がした。布団で眠りかけていた田所は起き上るとつっかけを履いて外に出る。狭い裏路地いっぱいに、まん丸で中央に風防がついている平べったい車が停まっている。カタ、カタ、カタ、と下駄を鳴らして田所の下の部屋に住んでいる源さんが出てきた。
「事故かい」
「ああ、今晩は。そうらしいですね」
「でも、変わった形の車だなぁ」
 源さんが車の下を覘く。
「タイヤがないや」
「おかしいですね。見るからに乗り物ですけど」
 そうこうしているうちに安アパートの住人達が出てきた。
「あたしこれ見たわ。やあねえ、これ、あれよ」
 田口さんというおばさんが素頓狂な声で言った。
「知ってるの、おばさん」
 田所が訊く。
「知らないの。空飛ぶ円盤って」
「空飛ぶゥ……」
 田所は目を剥く。
 と、風防の中の緑色のかたまりが、ムクムクと盛りあがり、風防の外へ半分出た。
 頭でっかちで目がふたつ。鼻がなくて小さな口。両側にとがった大きな耳がひと揃い。
「フーッ」
 と音をたてて深呼吸をした。
「すみません、どうも」
「いやだ、宇宙人じゃない」
「夜分おさわがせして申しわけありません。上でちょっと事故がありまして、その……緊急事態という奴なんで」
 と言いながら宇宙人はぐらぐらっと体を傾け、倒れそうになって円盤のへりに手をつく。
「いけねえ、どこか怪我をしてるらしい」
「いや、大丈夫です。傷はないようです。ただ、ちょっと目まいが……」
「入って休みなよ」
 田所が言う。

 長くなっちゃいましたけど、これ私の好きな作家半村良の「となりの宇宙人」という短編のひとくさりを記憶をもとに私なりに再現させていただいたものです。ちょっと前回からのテーマに関係するなぁっと思って、書いてみたんですけど、本当に巧いなぁと思っちゃいます。
 安アパートの住民たちのところに空飛ぶ円盤が不時着してくる。非常識な出来事なんだけどそれを登場人物のセリフ回しで自然な感じに仕上げてしまって、相手が宇宙人でも怪我しているみたいだから「休みなよ」と言って物語が始まる。これがハリウッドなんかになると、子供たちの秘密になって【E.T.】とか、政府の機関が登場して【Men in black】とかになるんでしょうけど、「となりの宇宙人」ではそうならない。人情話が始まっちゃう。ちょっといい話なんです。ご興味がある方はぜひ手に取ってみてください。

 ちょっと話がズレちゃいましたけど、この話を思い出したのは宇宙人のセリフがいいなぁっと印象に残っていたからでして。だって、円盤から出てきて、
「すいません、どうも」
「夜分おさわがせして申しわけありません」
 心配されて、
「いや、大丈夫です」
 ですから。
 まるで普通の日本人みたいに、迷惑かけて申し訳ない、という気持がいっぱいになっている。お、宇宙人もおれたちと同じだね、と嬉しくなる。
 そりゃ、ボロの安アパートだけど入って休みなよって言えてしまいます。
 ここでもし円盤から出てきた宇宙人が、
「困ってるんです。助けてくださいよ。困ってるのを助けるのは当たり前でしょ? 緊急事態で不時着したんですから。迷惑かけるのは不可抗力っすよ」
 って声高に言ってきたらどうでしょうね。
「ええ、弱ったなぁ。そんなこと言われたって、おれたちも生活があるし。明日も仕事なんだ。勝手に狭い道路に不時着しやがって。ものを頼みたいなら、まずそれを謝ってからってのが筋ってものじゃないのかい?」
 なんてちょっとぎすぎすした話になりそうです。

 このあたりは我々日本人の心情の微妙なところで、じっと我慢している人に対しては優しくなりやすいし、窮状を声高に訴える人に対しては優しくなりにくい。『困っている』という情報が過剰だということもあるんでしょうし、迷惑をかけることを申し訳ないと言わない相手から助けを要求されると、どうしても煙たく思ってしまう。言ってはいけない、言葉にならない気持が生じてしまうんだと思います。

 こういうことを思っちゃったのは、マタニティマークバッジをつけている女性に対して、
「何様のつもりだ」
 とか、
「席は譲らないぞ」
「優先席は譲らないぞ」
 というひどいことを言う人がいるという話を読んだからなんです。

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