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東京大学の学校推薦型選抜について

こんにちは。穎才学院講師のMです。

皆さんは、東京大学が一般入試とは別に、学校推薦型選抜を行っていることをご存知ですか?実は、私はこの推薦型選抜(当時は推薦入試という名前でした)を使って合格し、東大に入りました。今回の記事では、経験者としての視点も交えつつ、学校推薦型選抜についてご紹介します。

推薦型選抜とは?一般入試とどう違う?

皆さんは東大入試と聞いて、どんな試験を思い浮かべますか?高難易度の問題がずらりと並んだ問題用紙を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。実際、東大のほとんどの学生はこういった試験をくぐり抜けて合格を勝ち取っています。一方ではっきりとイメージしづらいのが推薦型選抜ではないかと思います。

学校推薦型選抜は、平成28年度の入試から、一般入試の後期日程に代わって導入されました。私は平成29年度入学生なので推薦第二期ということになりますね。この選抜方式の目的とは何なのでしょうか。東京大学が公開しているアドミッション・ポリシー(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/admissions/undergraduate/e01_26_01.html)には大学の理念や求める学生像などについて書かれています。ポリシーの基本方針の項によれば、東大は学生の多様性を促進することを重視して、推薦型選抜を実施しています。

確かにペーパーテストは学力を測る基準として公平性の観点からも効率性の観点からも優秀です。しかし、ペーパーテストに強い学生ばかりでは多様性がなくなるから、別の観点から選抜した学生も欲しい、というのが大学の考えのようです。実際、私が受験した際も選抜の内容は書類審査と二度の面接という内容で、ペーパーテストは課されませんでした(但し、センター試験での足切りはありました)。

書類審査用の提出書類としては、例えば、海外留学の経験や、学術的な研究での実績、数学オリンピックのような学術コンクールでの成績などが求められました。その後の試験の詳細な内容は学部によって異なるようですが、いずれも小論文やポスター発表、グループディスカッションなど、ペーパーテストとは一味違った選抜方法を採用しているようです。

東大入試に詳しい読者の方は、前の項を読んで「おや?」と思ったかも知れません。東大の一般入試では、他の多くの大学と異なり、学部ではなく科類で受験します。文科一類や、理科三類など聞いたことのある方もいらっしゃると思います。文理それぞれに3区分で合計6の科類があり、合格後は受験した科類でクラスに振り分けられ、その科類と2年次春学期までの成績に基づいて進学する学部に振り分けられます(進学振り分け)。一方で、推薦型選抜は各学部に分かれて受験します(医学部のみ医学科と健康総合科学科に分かれています)合格後は学部ごとに予め設定された科類としてクラスに振り分けられますが、その後の進学振り分けの際には、受験した学部にのみ進学することができます。

この進学先の固定がメリットかデメリットかについては様々な意見があります。多くの推薦合格者は、高校時代から特定の分野への興味関心を深め、実績を上げています。そのため、成績競争の必要なしに望みの学部に進学できることはメリットだと思われます。一方で、合格から進学振り分けまでの2年の間に興味が変わってしまう人も少数ながらいるらしく、本人にとってデメリットになってしまうケースも度々あるようです。

私の推薦入試体験記

さて、ここからは私の体験を語りつつ推薦型選抜の大まかな流れに触れていきたいと思います。ただし、私が受験したのは5年ほど前のことですので、記憶に正確性を欠く場合もありますし、最新の状況と異なる部分も多いと思われます。予めご了承下さい。最新かつ正確な情報をお求めの方は東京大学の公式ホームページをご覧ください。

まず志望学部について、私は農学部を選択しました。元々生物学に興味があったことと、食糧生産をはじめとする、産業応用的な研究に関心が強かったことが理由です。もちろん、仮に法律に興味があったとしたら法学部を志望したか、歴史に興味があったら文学部を志望したかと言うとそうではなく、その場合は恐らく推薦入試は受けられなかったでしょう。後述しますが、学部によって要求する実績の内容は異なり、その学部が主に扱っている分野とその近接分野であることがほとんどです。僕が高校時代にやった学術的な課外活動は化学・生物学の分野のものが大部分を占めており、その段階で志望できる学部は絞られていたわけです。実際このように、興味のある分野の課外活動を積極的にやっていると、その分野を含む学部の要件を自然と満たしやすくなるものだと思います。ある意味、推薦入試というのは高校入学時点から始まっているわけですね。もちろん、高一からの学力の積み重ねが高三の受験時点での学力であると言うことを考えれば、一般入試もそうだとも言えますが……。

推薦入試を受けるにあたっては、最初に学校から推薦を受ける必要があります。当時の推薦入試は、1つの高校からは男女各1名ずつが受験者の上限でした(現在は男女各3名まで、かつ合計4名まで)。高校によっては、この時点で競争が厳しいものだと思います。推薦の基準として成績優秀であることと、学術的な課外活動での実績があることを重視する学部がほとんどです。成績は上の下といったところで何とかクリアしました。課外活動について、私は部活動で化学研究をしていて、その研究発表が全国高等学校総合文化祭の自然科学部門で優秀賞を受賞しました。これをアピールポイントとして、部活動の顧問の先生の多大な助力の下、学校長の推薦状を得ることができました。なお、ここまでは校内での選考であり、高校によって状況は変わってくると思われます。課外活動を積極的に推奨するような高校だと、ライバルが多いかもしれません。

次に、書類審査用の書類を準備しました。必要な書類の内容は受験する学部によって異なりますが、その学部の分野に関係する活動実績の証明であることが多いです。入試要項によれば、農学部は「農学とその関連分野に関する特記すべき推薦事由」を要求し、その証明になる書類の提出を求めていました。例えば、学術的な研究での実績や学術コンクールでの成績、分野に関連する活動への参加の証明などです。学術コンクールでの成績は特になかったので、学術的な研究と分野に関連する活動への参加の2本柱で挑むことになりました。

学術的な研究としては、部活動でやっていた研究について、論文と研究発表大会での受賞の証明書を送りました。分野に関連する活動としては、九州大学が実施している高校生向けの教育プロジェクト (FC-SP) に参加しており、そこで行った研究発表についての書類を用意しました。部活での研究は生化学に関連する一方で、FC-SPでは生態学についての研究だったため、ちぐはぐな印象を与えてしまわないか不安でした。しかし後で聞いた話では、分野横断的ということでむしろ好印象だったようです。

書類審査を通過すると、いよいよ本試験です。前項でも書いたように、その内容は学部によって大きく異なります。農学部では面接が2回行われました。面接に対応するため、高校では部活の顧問の先生やクラス担任の先生、生物の教科担当の先生にも協力していただき、放課後に練習を何度も行いました。それと並行し、面接で聞かれるかもしれない内容について勉強するため、図書館に足を運び、自分が大学で学びたい分野に関する最新の情報や、東大で行われている研究についての論文や書籍を探し、勉強しました。初回の練習の時には全く話すことができず、悔しい思いをしたものですが(比喩でなく、本当に泣いたこともありました)、3ヶ月ほどの練習を通じ、最終的には自信を持って話せるようになったと自負しています。

実際の試験が行われたのは12月のことでした。会場の部屋に入ると、面接官の先生が6名もいらっしゃって、随分と緊張したことを覚えています。予告されていた自己PRからはじまり、提出した書類の内容や志望動機について質問を受けました。その後、面接官を総入れ替えして2回目の面接が行われ、やはり提出した書類の内容や志望動機について質問を受けました。鋭い質問が多く、中々難易度の高いものでしたが、何とか切り抜けることができたと思います。

最後に、センター試験 (現在は大学入学共通テスト) を受験しました。東大推薦では、概ね8割以上の得点を要求されます。恐らく点数が足りていないと、本試験の成績が良好でも不合格になってしまうのだと思われます。私は8割のラインを超え、合格することができました。実は数学が苦手だったので、担任の先生を随分心配させてしまっていたようでしたが、苦手に的を絞った対策のお陰か、本番ではIAとIIB合せて9割取ることができました。

推薦入試を受けてみたい方へ

ここまで読んで、推薦入試に興味を持ったあなた、自分も受けてみたいなと思ったあなたに何かアドバイスができればと思います。とはいえ、推薦入試が導入されたのは私が高校二年生の時で、推薦入試のことを知ったのは三年生になって先生に受験を勧められてからでした。ですから、推薦入試のために長期的な何かをやったわけではなく、興味のあることにチャレンジしていたらいつの間にか条件を満たしていたという感じでして、あまり参考にはならないかもしれません。以上のことを念頭にお読みください。

まず、推薦入試に必要なのは、興味のある分野での実績と十分な学力です。従って、課外活動と学業を両立しなくてはいけません。両立のためには、少なくとも片方は苦にならない必要があるのではないかと思います。もし勉強が全く苦にならないなら、一般入試も戦えそうな気がします。ですから、取り組みたい、もしくは既に取り組んでいる学術的な活動があって、それが楽しい!好きだ!という方がいらっしゃるなら、きっと推薦入試はあなたのためのものです。もちろん、普段の勉強も十分やっておく必要はありますけどね。

そして、学術的な活動に興味はある、けど何をやったらいいのか分からないという方、学校を頼りましょう。あなたの通っている/志望している高校に、科学研究や社会学的な調査、国際交流等を主題にしている部活動はありますか? もしあるなら幸運です。1人で研究を始めるのは難しいことですし、資材や資金も必要です。部活動に加入して、先輩や顧問の先生からノウハウを学び、学校の備品や予算を利用しましょう。

次に直前の時期の対策について考えてみます。二次試験の内容は学部によって様々ですが、形式は事前に入試要項書類で公開されます。何らかの発表を要求される学部では、その準備についての指示もあるでしょう。自分が受ける学部の過去の試験内容について調べることも必要です。情報を集め終わったら、準備を始めなくてはいけません。

二次試験の内容に共通して言えることは、自分の意見を表明させる問題が出るということです。面接、グループディスカッション、小論文、ポスター発表など、自分の意見をまとめて話す、あるいは書くことになります。長期的には、分野に関する知識を収集しておくことが必須です。知識は、あなたが意見を持ち、言語化することを助けてくれます。次に、それを発表する練習が必要です。小論文ならば、書く練習をしましょう。面接やグループディスカッションは、どうしても話す相手を要求され、実践的な練習をしにくいものです。そのような時には、学校の先生や、学習塾の指導者を頼ってみると良いかと思います。

本番についてのアドバイスは、そう多くありません。とにかく、緊張しすぎないことです。初めての体験ばかりで、雰囲気に気圧される可能性は高いでしょう。しかし、それは他の受験生も一緒です。そういう時に、あなたを支える「自信」は、これまでの練習から生じてくるものです。事前準備を抜かりなく行っておけば、本番も自然と余裕が出てくることでしょう。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。東京大学の推薦入試に興味のある方、実際に受けるつもりのある方、皆さんにとって参考になれば幸いです。


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