見出し画像

私の趣味: 多すぎるので音楽のこと〜D線上の息子と私〜

これは自分の所属する医局が年1回出している会報のようなものに
何年も前に寄稿した記事のサルベージです。
寝ころんで学べないシリーズの続きじゃなくて申し訳ありません。
やる気はあります。
例年、医局の偉い人が適当に指名した誰かが趣味の話を書くもので、
ある年に担当をするよう命じられました。
結構頑張って書いたのが大して読まれもしないものに載ってもったいないので、
ここに公開してみます。

・緒言
ついに「私の趣味」寄稿の仕事をいただくに至りました。自他共に認める無節操多趣味男、いつかくるかもしれないが、もう少し長じてからだろうと思っていました。さて、何を書きましょうか。

これまで、ある程度以上やった趣味と言えば、時系列順に、ヴァイオリン、釣り、ギター、料理、ホームページ作成(1990年代に中学生でhtmlを直で書いていました、モデムのガーピー音が懐かしいですね)、DTM(2000年頃、伝説のソフトウェアPro Toolsと、名機の名高いハードウェアMIDI音源SC-88Proを使っていました。あと10年するとAppleが誰でも出来るGarageBandなるソフトを無料で配布し、音源は同ソフトウェアに内蔵されると言っても当時の僕は信じないでしょう、そして20年後のいま、SC-88Proの音源はiOSのアプリ化しているようです)、マンガ、DJ、ダンス(これはあまり医局の近しい人にも知られていません)、プラモデル(今どきのは凄いです)、腕時計、自動車(オープン2シーターのマニュアル車以外には乗れない病に罹患)、ロードバイク、和服、ボードゲーム、キャンプ(←New! 虫が苦手なので石油ストーブを持ち込んでの冬キャン専門医です)
とまあ、すぐに思い出せるものだけでもかなりとっちらかっていて、貯金は貯まらないわ、家はモノで溢れ返るわと散々な状況です。そして今回何を書けばいいかもわからなくなってしまうわけです。
せっかくの機会ですので、「競技人口」の少なそうな、ヴァイオリンをはじめとして、DJに向かって話を進めたいと思います。

・ヴァイオリンのこと
2019年、大河ドラマ真田丸で秀頼様役をしていた私 イチ押しのイケメン俳優が、ヴァイオリンを習うドラマをやっていました。これをみると、ヴァイオリンは弾けるように見せることすらなんと難しいことかと改めて思わされます。ヴァイオリンを弾いている時だけは多分イケメン勝負で中川大志君に勝てます。
母が何故3歳の息子にヴァイオリンを習わせようと思ったかはわかりませんが、富山の片田舎では3歳児に教えてくれる先生を探すのにも苦労したようです。さて、ピアノ教室といえばヤマハやカワイでしょうか。ヴァイオリンではスズキメソードという、鈴木慎一という先生が創設した教育システムがあり、これの教室へ通いました。かの葉加瀬太郎氏もスズキメソード出身です。お手本のテープをひたすら聞かせて耳で覚えさせて、楽譜の読めない幼児でもかなり弾けるようになる仕組みになっています。私はというと、小学校に上がる頃にはヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲イ短調第1楽章を弾いていたようです(参考映像: http://youtu.be/46w3KOy_ros)。この曲はスズキメソードの生徒からすると共通の最初のあこがれ曲みたいなもので、アーモール(=イ短調)という通称すら存在します(音楽業界の常識だと最近まで思っていました)。幼稚園児でこれを弾くのはザラにいると思いますので(冷静に考えるととんでもない気もしますが)、普通の進度と言えましょう。
スズキメソードの重大な弱点はその独特なやり方にあるとしばしば批判され、相当な難度の曲を弾けるのに、全然楽譜が読めないという人もいるようです。幸いなことに私の師事した先生はこの弱点を認識されており、早々に自身の指導する少年少女のオーケストラに入らせる方針にしておられました。小学校2年か3年のころに入団を認められました。普段はとても優しい先生でしたが、オーケストラの指揮台に立つと別人のように厳しかったのを記憶しています。のだめカンタービレの世界です。「ズレとるやつがおる!誰や!」と言って、みんなの前で一人ずつ弾かされるなど、全然文化系でなく、体育会系のノリです。しかも、奴の耳なら多分誰が間違っているかわかっていたはずです。そう、私ですら全盛期はホールでオーケストラの演奏を聴いていて、ミスした人、外れている人をほぼ特定できる耳がありましたから…
中学校に上がると、ご多分に漏れずギターなんぞをやろうとするわけです(ヴァイオリン教室の友人にはそんな人は1人もいませんでしたが…)。ヴァイオリンをやっているしまあまあできるだろうと思っていました。しかし、これがまあできない。擦弦と撥弦は当たり前ですが全然違うものでした。そして、左手も、どこを押さえたらどの音が出るか全然覚えられないので、自由自在にいかないのです。たまに思い出したようにしばらく練習しますし、バンドで人前で演奏したようなこともありましたが、これまでにもう20回は挫折しました、多分もう流石に弾かないと思います。もうケースの中で腐っているかも知れません。
さて、中学時代に教室にすごいやつが現れます。当時彼は高校生でしたが、急にヴァイオリンをやりたくなったらしく、自ら教室の門を叩いたようです。1日に5時間練習するという超人ぶりを発揮し、私がのんびり15年かかって到達した曲に、2年で追いついてしまいました。しかし、幼少期から習っている者に、「耳では勝てない」そうでいつも悔しがっていました。土曜の夕方、僕と彼のレッスンが前後で並んでおりましたが、先生には、「○○は練習の成果はわかるがもっと感情を入れてくれ。レオナはやりたいこと、気持ちはわかるがいかんせん練習せんから腕がついていっとらん、往年の名演奏家が年老いたみたいだ、いい加減にせい。」などと言われたものです。さて、そんな○○君、高3の秋に急に、「多分浪人が必要だが医学部に行くことにした」と宣言し、1年の浪人後に国立大学の医学部に入学、現在は心臓血管外科医として活躍しています。何故か漢方にも造詣が深く、昨年漢方専門医試験に合格していました。とんでもない人がいるものです。

・DJのこと
千葉大学医学部に入学すると、「軽音楽部」に誘われました。これがくせ者で、いわゆるバンド部ではなかったのです。存在する役職は、DJ、VJ、バーテンダーということで、「クラブ部」でした。2019年末、薬物の問題で逮捕されてしまった某女優さんがクラブで踊っている映像がテレビでも流れ、「やっぱりそういう奴ら/場所/文化か」、と思われている肩身の狭いクラブ文化。しかし、我々としては(少なくとも私は)健康優良不良少年として、健全なクラブ遊びを提供したいとのコンセプトの元に活動しておりました。一般にDJというと、キャップを被った輩がヘッドホンを片耳だけ当てて、レコードをこすっているもの、と思われがちですが、あれはDJの中でもごく一部の存在なのです。基本的には、曲と曲をスムーズにつなげたい、高度なカラオケメドレーみたいなことをやろうとしているイメージでしょうか。個々の曲にはBPM、すなわち速さ/テンポがあって、違う曲同士を重ねつつ移行しようとするとこれが問題になります。片耳だけヘッドホンを当てているのは、客に聞こえているスピーカーから出ている曲を聴きつつ、ヘッドホンから出る次の曲を聴いてテンポを調整しているわけです。このテンポ合わせはDJの仕事のそれなりのweightを占めていたのですが、この10年程度で状況が激変しました。CDを用いたCDJを経て、デジタルファイル(mp3など)を扱うデジタルDJ全盛の時代を迎えています。私はというと、デジタルなんかダメだ、と頑固親父のように特に理由もなくギリギリまで抵抗しましたが、気付けばデジタルサイドに深く堕ち、わが家のターンテーブルは置き場所がなくなって売られてしまった有り様です。現在の自宅DJブースの写真を示します。

画像1

デジタルDJは革命と言ってよいと考えています。DJ仕事のメインだったテンポ合わせが、機械がボタン一つで曲を解析して一瞬で完璧に合わせてくれるようになってしまったのです。それだけではなく、最近ではなんと、曲の調(ハ長調ないしC majorとか)まで全自動で解析するようになり、メロディーが前面に鳴っている曲同士でも、長時間違和感ゼロで重ねられるようになってしまっています。これをharmonic mixingと呼び…(以下略)

DJ作品集↓
https://www.mixcloud.com/reona-okada/

・最近の私とヴァイオリンと長男
自身の結婚披露パーティーの余興でジャズヴァイオリンのまね事をやってみたりして、ヴァイオリンをやるにしても節操がありません。以下にこれぞジャズヴァイオリンという卒倒モノの参考資料を示します。【寺井尚子氏によるリベルタンゴ】
http://youtu.be/KDKPiR8ghR0
しかし全く音楽理論というものを勉強したことがなく(こういうのがスズキメソードっぽいところですね、●長調とかの意味も実はわかっていなかった)、improvisation(いわゆるアドリブ)のため勉強したがどうにも身に付きません。ネタ元として、色々なパターンのリベルタンゴ動画を探していて、以下に出会いました。【Mark O’Connor氏によるF.C.’s Jig】
http://youtu.be/CRfhr0VMDtE
フィドルというやつでしょうか。これをどうしても演りたかったので、アメリカ版Amazonでしか手に入らない楽譜を、カナダ留学中の知人の家に送り付けて転送してもらいました。さて、ヴァイオリンデュオのこの曲、相方をどうしようか。
当時3歳を目前にした息子に聞いてみると、ピアノよりヴァイオリンをやりたいと言いました。3歳を超えた時点で楽器を買い求め(16分の1というサイズ。32分の1というのが最小とされますが、精度が出しづらく、近年はあまり作られていないようです)、自分で教えようと始めましたが、3歳児の持続力のなさに挫折しました。先生を探して行ってみるとやはりプロというのはすごいですね、3歳児に毎回30分のレッスンをし切るというのは感嘆させられました。

危惧していた通り既に長文になってしまっておりますが、この他にも、○○病院勤務時代に送別会(送別される側でしたのに)で演奏することになり、本番数日前に弓が折れた話、それで弓の修理とともに新たな弓を買い求めた時の話、売ってくれたナイスなヴァイオリン職人の話、ふるさと納税でヤマハの電子ヴァイオリンを手に入れた話など色々あります。が、「この余白はそれを書くには狭すぎる」。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?