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「パンって愛でるものですよね?」パンを愛する開発担当に冷凍パン完成までのエピソードを聞いてみた

みなさんこんにちは。永楽堂の広報チームです。

永楽堂のパンは全国のカフェ、ホテル、結婚式場などで提供されています。

Instagramで #くちどけもちこ と検索すると、永楽堂のパンを食べられた方の投稿が出てきます。

実際に食べたことがある方は「えっ、これが冷凍のパンなの?」と思われるかもしれません。冷凍パンに対する世間のイメージは、

「パサパサしてそう…」
「焼きたてが1番美味しいでしょ!」

と、まだまだネガティブなイメージが多いのが事実です。

パンは焼いてから時間が経つほど中に含まれる水分が蒸発し、硬くなったり味が落ちてしまいます。

永楽堂の看板商品である冷凍パン「甘熟窯出しパン」は日本で唯一の氷熟製法で焼き上げているため、外側(表面)はパリッと軽く、内側にいくほど水分が含まれふっくら食感のパンになっています。

冷凍パンだから、おいしい。そしてたくさんの方にお届けできる。そんな甘熟窯出しパンはどのように生まれたのかーー。

今回は開発メンバーに当時のお話をお伺いしてきました!

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(左から)製品開発の浅井、商品企画の高野、工務の宮治

冷凍パンを作ることになった2つのきっかけ

広報:なぜ冷凍パンを作ることになったんですか?

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浅井:きっかけは2つあります。当時の営業から「新しいターゲットとして結婚式場向けの、シンプルな味わいのパンを作ろう」と提案がありました。

その頃は移動販売事業もおこなっていて、あんぱんやメロンパンなど50種類以上のパンを軽トラに積んで販売していました。

僕はシンプルなパンの製造経験がなく「中に(クリームや餡など)何も入っていないパンってどうやって作るんだ…」という状態だったので、製粉会社さんから講習を受けたり勉強しているうちに、冷凍パンの可能性を感じました。

2つ目は…、実は入社してからずっとうちのパンはおいしくないと思ってたんです(笑)

当時は会社に意見を言えなかったのですが【いつか変えてやる!】という気持ちを抱いてました。

ですので、冷凍パンという新しい商品を作って永楽堂を変えていこうと思いましたね。

宮治:実は僕も当時のパンはおいしくないと思ってて…(笑)

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広報:え!なんですって!

宮治:僕は当時、豊田店(※)でパンを作っていました。

店頭では焼きたてのパンが食べられるので、それと比較すると本社から届く1日経ったパンの味は「こんなものか」と。

※永楽堂は過去にリテール事業をおこなっていて、愛知県豊田市にパンの店舗を構えていました。現在は撤退しています。

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新商品開発のタイミングと、永楽堂のパンの味を変えていきたい想いが重なり、冷凍パンの開発が2010年にスタートしたそうです。

2011年、永楽堂で最初の冷凍パン「レアルペイン」を発売

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広報:開発にあたり、まず何から始めたんでしょうか?

浅井:製粉会社さんの講習を受けたのですが、またその講師が指折りの方で、初めて知ることが多く感銘を受けました。

広報:常温パンと冷凍パンでそんなに製法が異なるんですか?

浅井:そうですね。例えば温度管理や酵母の量や種類、それから小麦粉の選定が大切であることを学びました。

当時は恥ずかしながら、数ある小麦粉でもそこまで違いはないと思っていましたが全然違ったんですね。

広報:浅井さん1人で開発したんですか?

浅井:いえ、もう1人の女性と一緒に開発しました。

講習を受けた後、2人でどんどんアイデアが出てきました。夢中で開発を進め、2〜3週間で全ラインナップを決めて商品も作り上げました。

現在彼女は独立して店舗を経営していますが、職人として厳しい時代を乗り越えてきた戦友ですね。

2人ともこだわりが強いので、ぶつかることも多かったですが…(笑)

彼女はアイデアマンで一度生み出したものは二度と作れないタイプ。僕は、彼女のアイデアをもとに、安定的に供給できるよう形作るという役割分担でした。 

高野:2011年から発売がスタートした冷凍パンは「RealPain(レアルペイン)」というブランド名だったんですよ。

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広報:ターゲットが結婚式場オンリーということもあって、現在の甘熟窯出しパンとは雰囲気がちがいますね!

好調な売上の裏側では職人の苦労が…

浅井:冷凍パンの発売がスタートして、売り上げも好調…だったんですがレアルペイン時代は安定的な大量生産ができませんでした。

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パンを焼く窯のサイズが小さい上に、手作業だったので1人の担当者が6〜8時間かけてパンを窯に入れては出して…と焼き続けていました。

また技術が属人化していて、僕にしか作れないパンがあるので休日に出勤することもありました。

僕個人としてはやりたいことをやれて気持ちは楽しかったですが、身体は疲弊していましたし、より多くのお客さまに安定して提供できるように体制を見直す必要がありました。

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宮治:ちょうどその頃、代表から「本社で工務を担当してくれないか?」と人事異動の声がけがあり、僕もレアルペイン見直しプロジェクトに参画しました。

広報:宮治さんは機械に詳しいですもんね!車も組み立てられちゃうって本当ですか?

宮治:まぁ、そうですね(笑)おじいちゃんが自動車メーカーで勤めていたこともあり昔から機械をいじることに興味がありました。

広報:機械選びはどのように進んだのですか?

宮治:1台だけドイツ製のミキサーを使っていたので、そのドイツの製パン機械の会社さんに色々とご協力いただきました。

3年に1度ドイツで開かれる製パン・製菓業界の展示会「iba」へ足を運び、機械を見てきました。

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当初はオーブンの入れ替えのみ検討していましたが、より良い製品を作るため、オーブン・包装・ホイロ(発酵させる機械)・バキュームクーラー(真空冷却装置)を入れ替えることに決定しました。

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浅井:この頃、宮治さんと海外に出張に行っては2人で「あれもしたい!これもしたい!」と話が盛り上がりました。

色んな機械を見て「すげー!こんなこともできるんだ!」と2人とも熱量が高く、一緒に分かち合える仲間ができて嬉しかったです。

僕は、自分が作りたいパンは職人技でしか実現できないと思い込んでましたが宮治さんのおかげで機械で実現できることがわかり、機械の捉え方が変わりました。

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僕が「こんなパンが作りたいんだけどさ」と宮治さんに相談すれば、機械を使った製造方法を提案してくれるんです。お互い得意な部分を活かし、逆にわからないところは任せる。そんな風に一緒に製品づくりができる良きパートナーだと思っています。

工事でトラブル発生!メンバーを総動員して望んだ●●作業?!

広報:ところで、大きな機械を工場に入れ替えるのは大変な作業ですよね?

宮治:大変でしたね〜。工事の進行管理は僕が担当したのですが、初めての経験ですし不安はありました。

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写真から大掛かりな作業だとわかりますね

宮治:ちょっとした事件もありました(笑)

広報:事件…?!

宮治:機械の設置場所の床に穴が空いてたんです…。その上に3〜4トンの機械を設置する予定だったので「これはまずい…」となりました。

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「人手はこっちで何とかするので!」と頼み込みましたが、すぐに対応できる会社は見つからず…。

浅井:工場を3日間もストップさせてて、それ以上工事を伸ばせなかったんですよね。

宮治:なので、永楽堂のメンバー総動員で穴埋め作業をしました!

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高野:私は当時営業だったので、工場がストップする3日間はお休みだったのですが「なんか集合らしいよ」と電話がきました(笑)

浅井:女性メンバーは資材をホームセンターに買いに行ってくれて、男性陣はセメントを練って穴を埋めたね。

浅井:セメントがもんじゃ焼きみたいでしたね…。

一同:(笑)

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宮治:見返すと懐かしいなぁ。こんなことあったなー。

***

工事の思い出を振り返る時間は、その場にいたメンバーにしかわからない苦労や、一致団結して作業した想いがにじみ出ていました。

パンのおいしさを数字で証明

浅井:冒頭でも話しましたが、永楽堂のパンの味をおいしく変えたい想いがあり、機械を入れ替えている時期に製法の変更も始めていました。

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みんなは僕が作るパンを「おいしい」と言ってくれるけど、感覚的な「おいしい」ではなく、どうにかおいしさを証明できないかと考えました。

そこで製粉会社さんに相談し、パンの数値化の共同研究をおこなったんです。具体的にはパンの中にどれだけ甘みがあるか探るため糖の数値や、香りや硬さなどを分析しました。

分析中の2ヶ月間は、ちゃんと結果が出るのかドキドキでしたが、無事満足のいく結果が出て、自分がおいしいと思えるパンが数字から見ても正しいものであることがわかり自信がつきました。

そして一緒に研究してくださった製粉会社さんが、同じ技術者として楽しんで手伝ってくれて良い経験になりました。

ブランドの見直し

広報:ところで、なぜ甘熟窯出しパンに変わったんですか?

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高野:当初は「新しい機械が入ることで生産性がよくなり、パンもちょっとおいしくなるんだ」程度にしか考えていなかったのですが海外の機械を入れたり、製法も変わることになり商品が全くの別物になることからブランドの見直しを始めました。

広報:甘熟窯出しパンという名前はどなたが考えたのですか?

高野:ネーミングは社内で公募をおこない、120以上のアイデアが集まりました!

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集まったネーミングアイデアの一部

・名古屋発でらうま仕込み
・The真空!!
・ エイジングクールブレッド
・ 焼き立てのおいしさとじこめちゃいましたっ!!

…などがあったそうです!

***

高野:「甘熟窯出しパン」は、2名のアイデアを掛け合わせたネーミングです。「甘熟」のアイデアは確か浅井さんでしたよね?

浅井:そうですね。新しい冷凍パンは小麦の甘みと熟成にこだわって作ったのでそのキーワードを入れたくて、甘熟という造語を考えました。

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浅井さんが10年以上も熟成にこだわった理由は、また別のnoteでお伝えします!

3人に甘熟窯出しパンの魅力を聞いたら、3人はパンの変態だとわかった

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広報:それぞれの視点で甘熟窯出しパンの魅力・好きなところを教えてください!

浅井:甘味、食感、しっとりみずみずしいが甘熟窯出しパンの3つの特徴です。水なしでも食べられちゃいます!

高野:あとは味が濃いですよね。濃いといっても、バランスがいいんです。

例えばサンドイッチの具にドイツのソーセージを挟んでも、小麦の味がしっかり感じられてパンが負けない。でもくちどけは具より残らないという、ちょうどいいバランスだと思っています!

宮治:僕が思う魅力は、形がかわいいんです。

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普通はパンの下部分が角ばっちゃうんですが、うちのパンはくるんと、丸みを帯びてるんです。

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高野:わかるわかる!このプリケツ具合がかわいいんですよね…。

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浅井:パン屋からするとありえない形をしてるよね。僕も自分が作ったバケットを「どの角度が1番いいかな?」ってずっと眺めてられるもん。

高野:私も商品撮影の際、カメラマンさんに「子猫を見るような目でパンを見るんですね」と言われたことがあります(笑)

今後の展望

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宮治:まだまだ上を目指せると思っているので、今よりさらに冷凍の技術を上げ、保存期間を伸ばしたり味をもっと高めたいです。

浅井:僕も同じで、現状に満足せず追求していきたいですし、お客さまのニーズに応えていきたいです。

パンって既にイメージが出来上がってるプロダクトですが、その概念を覆すようなおいしいパンを作っていきたい。

高野:私は喫茶店への思い入れが強い(※)ので、より多くの喫茶店さんに甘熟窯出しパンの良さを知っていただきたいです。

冷凍に対するネガティブなイメージはまだまだ多いですが、常温パンよりもおいしい冷凍パンの存在を知っていただき、喫茶店やパンの価値を上げていきたいです。

※高野さんの喫茶店に対する想いはこちらでインタビューしています。

まとめ

3人は本当にパンが好きなことがヒシヒシと伝わってくるインタビューでした!

特に、甘熟窯出しパンの魅力ポイントのお話は3人のパンに対する(変態とまで言える)熱量が聞いていておもしろかったです。「角が丸くてかわいい」なんて、パン作り素人の広報チームでは絶対に気がつかないポイントです!

3人の「永楽堂のパンをもっとおいしくしたい」「もっとたくさんの方においしさを届けたい」という熱い想いと、努力の積み重ねからできた「甘熟窯出しパン」。ぜひみなさんにも味わっていただきたい想いが強くなりました。

最後までお読みいただき誠にありがとうございます!

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