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リチャード・フライシャー【絞殺魔】|意味のあるマルチ画面

映画について、深く教えてくれる映画監督をしている先輩がいます。
その先輩は、かつて有名なミニシアターの館長もされていた経歴を持っておられるくらいで、とても映画に詳しいんです。
この【絞殺魔】という映画は、その先輩から教えてもらいました。
1960年代に実際に起こった「ボストン絞殺魔事件」を映画化したサイコスリラーものなので、怖い映画を観てブルーになるあなたにはススメにくいけれど、なかなか味わい深かったのでメッセージします。

■職人映画監督フライシャー
リチャード・フライシャーという監督は、どんな映画もそれなりに面白く、サクッと観せてしまう職人監督です。
『ミクロの決死圏』なんて有名じゃないかな。
職人監督が撮った映画って、わりと一般的にはB級というか、”まあまあ”と捉えられガチに思うのですが、映画の面白さって、いわばその”まあまあ”のなかにあるというか、そこでこそ光ってるというか、カットの連なりの創意工夫や職人技にワクワクするんです。
低予算でも面白く撮ることが出来るということでもあります。
ああ、語弊があるかな、うまくいえないけれど。

■スタイリッシュなマルチ画面
【絞殺魔】では、マルチ画面が多用されます。
たくさんの視点の断片を与えられるんです。
それが、なんともお洒落なコラージュのように観えるんです。
ビンセント・ギャロ『バッファロー66』にも似たような質感のコラージュがあったように思いますが…どうだったかな。
しかし、ただ雰囲気のためのマルチ画面ではありません。
マルチ画面の意味は、後半に犯人の目線が入ってきて、事件の全貌が露わになって分かってきます。

■フレーム、扉、鏡
マルチ画面なので、画面の中にフレームがあるわけですが、それ以外にも扉や鏡というフレームがたくさん使われています。
何気なく映っているものが、メタファーになっている。
フライシャー監督は、これらの意味を考えながら、あるいは直感しながら撮っているのかなとか、そんなことがとても面白いです。

もし、興味が湧いたら、このマルチ画面から犯人の目線になっていくアイデアを味わってみてください。


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