見出し画像

コロンバインの真実~『実存の書』の邦訳が完成しました!

 1999年4月20日に米国中西部コロラド州のコロンバイン高校で起った銃撃殺傷事件の犯人の一人、ディラン・クレボルドが書いた手記(ジャーナル)

『A Virtual Book 「EXISTENCES」』(実存の書)

の邦訳がおわりました。以下のPDFに収録されています。

 底本は以下の二つです。

↑『The Journals of DYLAN KLEBOLD AND ERIC HARRIS, Columbine Killers Diaries』
(Amazon ISBN:9781794109933)
 エリックとディランの執筆物と、未公開の地下室ビデオの解説が収録されています。

画像1

 ディランのジャーナルは、エリックの『神の書』と好対照をなす独特の告白が綴られています。
 エリックとともに数々の不良行為にいそしむ悪ガキでありながら、性格はむしろ繊細なロマンチストだった彼の妄想はナイーブなペシミズムの闇に沈んでいます。それは少年に特有のとらえどころがない自己愛の変形にもみえますが、悲劇的なことに(おそらくエリックという得意な悪友と出会ったせいで)、現世で得られない至純なる愛をもとめておそるべきテロリズムに参加するという暴挙をもって帰結しました。
 大人には理解しがたい不合理な自殺にすぎませんが、一人の少年が率直に本心を吐露した魂の軌跡としては一定の文学的価値があると、訳者は信じます。
 事件の経過とディランの人物像も(前回の『神の書』のPDF同様に)収録したので、米国のティーンエイジャーの英雄となった彼らの伝説について総合的に知見を深めていただければ、これにまさる栄誉はございません。

コロンバインの事件の参考資料

コロンバイン論の決定版といえるレポートです。コロンバインについてのわたしの解釈は、この本に沿っています。事件の当事者の声については他に数多の資料がありますが、客観的な分析はこの本をもって完成としてよいと思います。

補足:海外記事

二年前の記事ですが、たまたま見つけて気になったので、紹介しておきます。議論の内容は以下の通り…

・ディランが生前に"真実の愛"を手にしていたら、NBKに参加するのを思いとどまっていただろうか。おそらく、彼は愛を理想化しすぎていたので、現実の恋愛は手に負えなかっただろう。
・ディランは『実存の書』のなかで、複数のちがう女を恋人として語っているようにもみえる。
・ディランにとってNBKの相棒は、エリックではなく、理想化された恋人の女だったのではないか。
・ディランの恋人はエリックだったんじゃない? 『実存の書』に書かれてる女は、じつのエリックのことだったのかも。

 みんな言いたい放題です。わたしが同意する結論も、よくわからない話もあります…すでに没後二十年も経っているのに話題になる彼らは、死んでもったいないことをした。ムショで臭い飯を食いながら、世間の反応を楽しん 
でいればよかったのに…

 事件から二十年を閲した現在でも、"Columbiners"と自称する十代から二十代の女性のファンが世界中にいるそうです。短い命をはかなく散らして非日常の主人公として認知されたからなのか。内気なので女性にアプローチできないことに悩んでいたディランに教えてやりたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?