正々堂々
「雨が降っているから、濡れて帰ろう」
君はそう言って、ゆっくりと豪雨の中を歩いていく。またか、と僕は心の中で大きく呟いた。
彼女の突拍子のなさは、いつもこんなふうに始まるのだ。それが芸術家だと友人は言うが、僕にとってはただの非常識でしかない。
でも、こんなに風が強くては傘はなんの役にも立たないし、邪魔になるだけだ。
守ろうとするのも難しい。
正々堂々と雨に濡れてやろうじゃないか、と腹を括った。少し見えにくくなった彼女の背中を目指して、今、僕は雨に飛びこむ。
Art by : Hirayama Ikuo Museum of Art
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